ゲームクリエイターになるには
――では、今後のこともお聞かせください。「みんGOL」は初代のプレイステーションから続く人気シリーズなので、今後も続くのだろうと勝手に思っているんですが、展望はいかがですか?
「みんGOL」って伝統的に、1作出るとつぎがなかなか発売されない……という傾向がありましたが、『New みんなのGOLF』の発売後にアップデートをくり返しながら、『みんなのGOLF VR』を作り、スマホアプリの『みんゴル』も手掛けたりと、これまでになく詰め込んだ数年間になりました。ですのでここでいったん区切り、仕込みをしないといけないかなと考えています。ハードも変わりますし、ちょっと充電期間も必要かなと思っているところです。
――とはいえ僕らファンからすると、プレイステーション5が出たらすぐに新しい『みんGOL』を遊びたいなー……と思います。
それも、重々承知しております(笑)。とりあえず、プレイステーション5でも『New みんGOL』は遊べますので、そちらを楽しみつつ待っていていただけると!
――なるほど! わかりました! そして今回のインタビューはプレイステーション 4の6周年記念ということで、ハードについてもお聞きしたいんです。プレイステーション 4のスペックを知ったとき、どんなことを思われましたか?
正直、オーバースペックにならないかな……という不安がありましたね。グラフィックはキレイになるし、パワーもスゴいのはわかるんですけど、このまま進んでいくとどこかで息切れを起こしちゃうんじゃないかな……と。たとえば、僕は当時PS Vitaのタイトルをいくつか持っていましたけど、これをプレイステーション 4に移植するとき、簡単な絵を1枚作るだけでかなりの人員を割かなきゃいけないかもな……なんて考えて。
――プロデューサーって、そこですよね。ゲームの規模を考えて、そこでお金をどう回してって考えなきゃいけないんで、ただ単純にスペックがあがればいいってもんじゃない。
ユーザー視点だと、強力なプラットフォームが出ることはすごくうれしいし、僕もそういうゲームを遊びたいんですけどね(笑)。いざ作るとなると、そうそう簡単な話じゃないですから。
――でも、プレイステーション 4が出ればゲームが変わるな……という感触はありましたか?
それはもちろん! 時代が変わるな……という確信はありました。
――その一方で、ハードのスペックが上がったことで、海外メーカーのAAAタイトルが目立つようになりましたよね。
おっしゃる通りで、ひと昔前まで“洋ゲー”って若干下に見られることがありましたけど、いまじゃまったくそんなこと思いませんもん。僕の奥さんもゲームが好きなんですが、かつてはかなりカジュアルなゲーマーだったんですね。それが、プレイステーション 4になってからふつうに海外メーカーのAAAタイトルを遊びこんでいるので、「本当に浸透してきたんだなぁ……」と実感しました。
――ちなみに、本村さんが遊んでみて「これはすげえな!」と思ったプレイステーション 4の作品って、何かありますか?
僕、わりとミーハーなので、技術がどうこうとかじゃなく、好きなものをひたすら遊びこんじゃうタイプなんですよ。
――ユーザー目線ですねぇ。
『ボーダーランズ3』とか、ずっと遊んでいますし、『DIABLO III』もプレイステーション3、4、Nintendo Switch版も全部買って遊んでいますし(笑)。……あ! 最近だと、『龍が如く7』にハマっています!
――同じく!! 『龍が如く7』、めっちゃおもしろいですよね!
おもしろいですねー。あれは技術うんぬんではなく、内容そのものに「やられた!」って思いました。僕らくらいのおじさん世代ってRPGで育ったくせに、忙しくて時間がないのもあって、RPGが億劫になっている人が多いと思うんです。そういう人たちに向けて、「RPGって、やっぱりおもしろいよ!」って言ってくれてる気がして。僕も、「そうだ。RPGって、おもしろかったんだよな」って思いながら遊んでいます。
――わかる! 気が付くと、役割に没頭しているんですよね。まさに、RPG。
もうひとつ、衝撃を受けたのは『モンスターハンター:ワールド』です。
――おおお!
「モンスターハンター」は無印から遊んでいますけど、当時はかなり尖ったタイトルでしたよね。それが『モンスターハンター:ワールド』では、ものすごい数のユーザーが、しかもグローバルで遊んでいるのを見て、「やっぱりすごいな!」と。
――ちょっとざっくりした質問なんですけど、ハードがどんどん進化していって、ゲームも変わっていくと思うんですけど、今後どんな進化をしていくと思いますか?
……システム的な話ではないんですけど、僕らの親世代ってテレビゲームで遊んでいなかったですけど、いまの4、50代の人ってふつうに遊んでいるじゃないですか。それはもう当たり前の風景で、きっとおじいちゃん、おばあちゃんになっても続けていると思うんです。そういう時代を前に、もっと本気でシニア層……というか、世代を超えて遊べるジャンルだったり、システムというものを考えていかなければいけないなと。実際、僕らの子どもは絶対にゲームをすると思うので、親子とか、3世代で遊ぶとなったときに、ツールとして何が必要になるのかを考え始める必要があるかなと思います。
――それは、AIとか?
そうですね。AIも、そのヒントだと思います。これからどんどん少子高齢化が進む以上、そこにアプローチできる手法は模索しないといけませんよね。逆に、チャンスだと思って。
――いや、じつに興味深いですね。テレビゲームって、なんだかんだ3、40年の歴史しかないので、これから先に何が起こるのか、誰も知らないですから。
はい、そうなんですよ。でも、アニメはすでにそういう段階に来ているじゃないですか。大人たちが楽しみにしているアニメが深夜に放送されていたり。ゲームもそれに倣って、ある程度は特化していかないと、時代に取り残されちゃうんじゃないかな、と。
――ちなみに、e-sportsについてはどう思いますか?
e-sportsは……難しいですね。
――「みんGOL」はそれこそスポーツゲームですし、親和性が高いと思いますけど。
『New みんなのGOLF』はRPGに寄せたため、競技にしにくくなったんですね。最初からe-sportsにも注力するように想定していれば何かしらの仕組みを入れ込めたんですけど、コンセプトがRPGだったのでなかなか難しくて。しかも「みんGOL」の場合、腕の差だけじゃなくキャラクターの性能差も出てしまう作りなので、e-sportsに向いているようで向いていないという……。そこは反省点として持ちつつ、今後に向けては前向きに考えたいと思っています。
――あと、コロコロオンラインってお子さんもみるメディアなんで、コロコロ的な質問もさせてください。先ほどもちょっと出ましたけど、「みんGOL」を作っている人って、みんなゴルフがうまいんですか?
僕以外はそうです。本当に、ゴルフは上手だと思います。
――まわりがゴルフをする中で、いまから始めよう! と思ったことは?
いや、やりたかったんですよ! 始めるつもりはめちゃくちゃあったんですけど、いろいろと忙しくて……という理由をつけて……。
――いまだに行ってない、と。
行ってないです(苦笑)。
――今度、いっしょに行きましょうよ。
え。マジですか?
――僕も、池尻さんと行って以来、休眠しているので。
僕なんて、振るところから練習なんですが!
――何を言っているんですか。『みんなのGOLF VR』で練習すればいいでしょう。
!!! 確かにそうですね! おっしゃる通り!!
――でしょう(笑)。練習になりますよ、絶対。
がんばります!(笑)
――もうひとつ、コロコロ的質問なんですが、本村さんがゲームクリエイターに進んだきっかけ、経緯を教えていただければ。
僕、人様にあまり言えたものじゃないんですけど、もともとゲームが大好きだったし、ずっとゲーマーだったのもあって、SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント。当時の社名)にはデバッグのアルバイトで入ったんです。そのときは、クリエイターになろうなんて意識はまったくなくて、月曜から金曜まで毎日ゲームをして、しかもお給料がもらえるなんて最高だなぁ……と考えていた程度です。でも、デバッグを続けるうちにゲームの仕組みがわかってきて、そこから俄然興味が出てきました。開発を志したのは、本当にそこからです。
――えー! 知らなかった!
なので、アルバイトでもなんでもいいから、まずはこの業界に入るのが大事かなと思います。モノ作りの世界って見たり聞いたりするよりも、実際に現場に身を置いて体験したほうが、100倍くらいノウハウが溜まっていくと思うので。
――興味本位でお尋ねしますが、その時デバッグしていたゲームって、なんだったんですか?
最初は『ポポロクロイス物語』です。
――へーーー! そうだったんだ!
僕がデバッグで入ったの、初代のプレイステーションが発売された1年後なので。
――あー、ちょうどそういう時代ですねー!
『ポポロクロイス物語』のあとに『WILD ARMS』、つぎが『アークザラッド II』をやって。気がつけば自分が、RPG屋さんになっていました(笑)。
――初代のプレイステーションで、もっともRPGの花が咲いていた時代ですね。
ありがたいことに、その流れに乗れた感じです。
――デバッグって同じことを何度も何度もくり返すイメージですけど、そのせいでゲームがイヤになったりは?
僕は大丈夫でしたねー。ただ、30人くらいいた同期が気づけば3人になっていたので、向いていない人は多かったかもしれないです。僕は2年半くらいデバッグのバイトをして、その流れでSCEに入った感じです。
――クリエイターを目指す子どもたちにアドバイスを送るとしたら、“まずは体験すること”ですか。
そうですね! アルバイトでもいいからとにかく業界に入って、そこから学んでいったほうが絶対にいいです。本や映像で勉強するより、圧倒的に早く身に付くと思います。
――わかりました! ありがとうございました! 今後の「みんGOL」にも期待しております!
ありがとうございましたー!
作品概要
『New みんなのGOLF』
発売元 (株)ソニー・インタラクティブエンタテインメント
ジャンル スポーツ
CERO(対象年齢) CERO A
プレイヤー 1~4人(オンライン:1人~ 全リージョン共通マッチ)
PS4 Pro ENHANCED 4Kテレビ接続時は4K解像度に適した高精細な画質でプレイできます
フレームレートが向上するフルHD画質のプレイモードが選択できます(発売日以降のアップデートで対応)
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