難易度をどう調整するのか?
――『ブラッドボーン』は高難度のゲームとして知られますが、この難易度の設定についてはどのような打ち合わせがされていたんでしょうか?
難易度に関しては、意識してユーザー目線を忘れないようにと思っていました。難しくても、いいと思うんです。理不尽でなければ。やられても、「自分のせいだ」と感じられるなら成立するはずなので。まあもちろん、理不尽じゃないにしても何十回も続けてゲームオーバーになってしまうような場所は逐一メモをしておいて、開発側にフィードバックを送っていました。ただ、慣れすぎてもいけないので、つねにフラットな気持ちでいられるよう注意を払っていましたね。
――ふむふむ。
一般的なところで言うと、ユーザーテストを行っています。日本に限らず、海外でも。
――ほーーー! 海外でもやられたんですか。
はい。難易度に対する感じ方は、日本と海外でそれほど差はなかったんですね。ただ銃の扱いに関しては、日本と北米で大きな差がありました。
――あー、はいはい!
北米の方は、日本より銃が身近なので、銃の攻撃でひるませるというのが不自然に感じるという意見がありました。「銃で倒せばいいじゃん」と。ただ、我々としては、銃を生かした近接バトルを実現したかったので、そういう意味でも、銃が万能ではない時代というのはうまい落としどころになったと思います。
――それはおもしろいなあ。
ユーザーテストのときは、フロム・ソフトウェアの開発陣も、時間があるときは足を運んでチェックしていました。そこで、「こういうところで詰まるのか」と実感し、制作に反映させたりしていたと思います。
――ユーザーテストを受けた結果、修正した点もあるんですか?
たとえば、「ボスのこういうパターンの攻撃は詰まりやすい」とわかれば修正を入れたり。また攻撃じゃなくても、“ここに行って調べてほしい”と仕込んだポイントに誰も気づいてくれなかったときは、「誘導が足りない」と判断していかにも怪しい灯りを置いてみたり。そういった細かな点も、ユーザーテストの結果を救い上げて調整していきましたね。
――……僕は“ガスコイン神父”で詰まりまくって、「もうやめよう……」と何度も思いました(苦笑)。
あれについては、ちょっと申し訳なかったなと(苦笑)。あそこで心を折られてしまったプレイヤーがかなりいらっしゃるようなので。ネットワークを使って他のプレイヤーに助けてもらうという道はあるんですけど、ひとりですべてクリアーしたい方にとってはかなり高い壁になってしまったなと思います。
――僕はネットワークにつながずに遊んでいたので心が折れかけましたけど、アレをひとりで越えられたので最後までできたのかも……といまは思います。
印象に残るボスにはなりましたよね。
――山際さんが個人的に忘れられないボスっていますか?
山際 気に入っているボスは“聖職者の獣”です。東京ゲームショウを始め、世界中のいろいろなイベントでデモプレイを行った相手なので、最終的には“戦友”くらいに思っていました(笑)。
――あははは!
僕、決してゲームがうまい人間ではないんです。でも、そんな人でもくり返しプレイしたり、学習することでなんとか壁を乗り越えられるし、達成感も得られて楽しいんだよ、ということを伝えたくて、「じゃあデモプレイをやりましょうか」という流れになったので。で、聖職者の獣を相手にずっとデモをやっていたので、非常に印象に残るボスになりました。
――なるほどなるほど。
苦手なボスは……ヤーナムの影です。じつは開発中のバージョンがめちゃくちゃ強くて、すぐに宮崎さんに電話しました。「無理です」と(笑)。製品版では、調整が入って倒せるようになりましたが、開発バージョンのトラウマが抜けきれず、いまだに苦手意識があります。
――ではその流れで、山際さんが気に入っている仕掛け武器を教えてください。
これも定番ですけど“ノコギリ鉈”ですね。ゲームを作っていく過程で“何か新しいものを”という話になるわけですが、“死闘感”というテーマをもとに「新しいアクション」や、「ペースの速いバトル」というイメージが出てきて、最終的に宮崎さんから「仕掛け武器」というアイデアが出されました。仕掛け武器はモーションのバリエーションが豊富に用意されているのですが、これも、メモリーに余裕のあるプレイステーション 4だからこそできたことだと思います。
――最初にノコギリ鉈を見たとき、どう思われましたか?
これはすごいものが出来たと思いましたね。このタイトルの特色が生まれたというか。見た目も独特でキャッチーだし、単純に変形するギミックって、心を躍らされるじゃないですか。このノコギリ鉈が最初に完成した武器だったので、“ブラッドボーンらしさ”というものを余計に感じられたんでしょうね。