レッツ&ゴーのマシンは“NIKEのスニーカー”に着想を得た
——でも、周りが時期尚早だと言ったミニ四駆が、どうして再びブームになったのでしょうか。
これは推測でしかないけど、2つあるんだよね。1つは、ラジコンをスケールダウンした“バギータイプ”から、ホイールをカバーするデザインの“フルカウルミニ四駆”に変わったこと。これはね、タミヤさんと話して決めたことなんだ。『ダッシュ!四駆郎』時代のミニ四駆との違いを明確にしていこうと。
でさ、『ダッシュ!四駆郎』では、作者の徳田ザウルス先生自らミニ四駆のデザインをしていたでしょ? その流れで、こした先生にもミニ四駆のデザインをお願いしたんだよね。これもすごいラッキーだったんだけど、こした先生って、車とかバイクが大好きなの。だから、メカニカルなデザインを起こすことを全然苦にしない人だったんだよね。
——こした先生が車やバイクを好きだというのを知っていて、新しいミニ四駆漫画をお願いしたのでしょうか。
こした先生は前作が『炎の闘球児 ドッジ弾平』だったから、劇中にメカは登場しないじゃない。でも、ほかの編集者から、何となく話は聞いたことがあったんだ。実際にデザインを起こしてもらうと、今までにない新しい匂いを感じたんだよね。それはすごい記憶に残っている。
——その「新しい匂い」は、どういった部分に感じたのでしょうか!?
こしたさんとよく話していたのは、NIKEのバッシュって近未来的だよね、ということ。当時、他のスポーツメーカーが出していたスニーカーと比べて、デザインが一歩抜き出ているように感じた。おれはさ、絵も描けないし、造形に詳しくもないけど、そういう身近にある“近未来”を感じさせるプロダクトデザインを雑誌から切り抜いて集めて、こしたさんと一緒に見ていたんだよね。
そのなかでも、NIKEのバッシュは圧倒的にイケてた。機能性を追求した結果のフォルムなんだろうけど、あの流線型が、新しいミニ四駆のヒントになるんじゃないかと話しながら、夜な夜な仕事していたよ。
——読み切りの段階から、“新しいマシンデザイン”というテーマは主軸にあったのでしょうか。
ありました。どうしてかと言うと、タミヤさんに商品化してもらうことが前提にあったから。おれはさ、『てれびくん』の編集者だったじゃない? 「仮面ライダー」も「ウルトラマン」も「戦隊シリーズ」も、番組に新しいキャラクターやロボットが登場すると、放送から間を置かずに立体物が発売するんだよね。
つまり、コロコロ読者っていうのは、「自分が目撃したカッコイイものを、(親が買ってくれれば)すぐに手に入れられる」という経験を、既にしているわけ。それを漫画でもやるべきだと思って形にしたのが、レッツ&ゴー。
もしかしすると読み切りで終わってしまうかもしれないという可能性を知った上で、タミヤさんは実現してくれた。漫画で見たものを、すぐにお店で買えるというのは、人気作になる上でものすごく大きいポイントだったと思う。