「四駆郎」「アバンテ兄弟」「レッツ&ゴー」へのバトン
——学年誌時代の黒川さんから見て、コロコロコミックはどのような存在でしたか?
私が小学館に入社した1977年は、ちょうどコロコロコミックが創刊した年なんです。当時、新入社員は書店での研修があったんだけれど、その書店研修の時にコロコロのことを知ったんです。配本されてきた、10冊のコロコロ創刊号。おもしろい判型の本で珍しかったのと、『ドラえもん』の表紙が目について、つい一冊購入しました。まさか自分が、ゆくゆくそこに配属されるとは夢にも思っていませんでした。
私はその後、『小学三年生』に配属されるんだけれど、当時はまだ“コロコロコミック編集部”というのは正式には存在しなくて、学年誌セクションの“低学年編集部”にいる編集者たちがコロコロをつくっていた。つまり、千葉さん(=千葉和治/初代編集長)と平山さん(=平山隆/3代目編集長)を中心とした、学年誌の編集者有志です。千葉さんは当時『小学三年生』の副編集長で、新入社員の私とは斜め向かいの席だったこともあり、よく話していました。
——黒川さんがコロコロで『ドラえもん』の担当になってから、“ドラバルくん”と“ソラえもん号”の企画を立ち上げていますね! この二つについて教えてください!
どちらのキャンペーンも、コロコロ流の三位一体の大きな展開です。どちらも社内公募をして生まれた社員原案の企画で、私はキャンペーンのまとめ役として、社員にアイデアを求めました。
“ドラバルくん”は、ドラえもん型の熱気球で、のちに日本各地の豊かな自然を訪れるというスペシャル番組が年に数回放送されましたね。ドラえもん型のソーラーカー“ソラえもん号”は、F先生のデザインがそのままいきています。海外にも『ドラえもん』を広めようということで、のちにオーストラリアで開かれるソーラーカーの国際レースにも出場しています。
10日間にわたって、北のダーウィンから南のアデレードまで約3,000キロメートルを野宿して走破するという厳しいレースで、編集部からは私ともう一人がレースに参加しました。この様子は、『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』と同時上映されたドキュメンタリー映画『太陽は友だち がんばれ!ソラえもん号』でも紹介されています。実は、レースの5日目ぐらいの時に、東京から藤子・F・不二雄先生が入院されたという連絡があり、私は急遽、中間地点から帰国したんです。『のび太と雲の王国』の連載途中でした。そんなこともあって、とても記憶に残っています。
——次に、『ダッシュ!四駆郎』(徳田ザウルス先生)のミニ四駆第一次ブームから、『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』(こしたてつひろ先生)での第二次ブームまでの空白期間について教えてください!
『ダッシュ!四駆郎』の担当だったこともあって、私が編集長になってからもタミヤさんとのミニ四駆のイベントを続けることにはこだわっていました。別コロでは、レッツ&ゴーの、こした先生が『燃えよ!アバンテ兄弟』というミニ四駆の漫画を連載していたんですよ。1989〜90年だから、レッツ&ゴー担当の佐上(=佐上靖之/7代目編集長)がコロコロ編集部に来る前のことですね。徳田先生も、本誌でミニ四駆漫画の第2弾を描いていました。
レッツ&ゴーは94年に連載が始まって、一気にブレイクしたでしょ。『ダッシュ!四駆郎』から『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の間まで、コロコロはミニ四駆の情報をずっと載せ続けていました。ブームが落ち着いても、そこは譲らなかった。だからこそ、レッツ&ゴーで一気に爆発したんだと思っています。
これは『ダッシュ!四駆郎』の中にも出てくるセリフなんだけど、「車——、それは男たちの永遠のホビーである!」なんです。
——スーパーカー、オフロードラジコン、ミニ四駆……脈々と続いていますね。レッツ&ゴーは、コロコロアニキで続編『爆走兄弟レッツ&ゴー!! Return Racers!!』が連載されています。
アニキといえば、『コロコロ創刊伝説』の打ち合わせで石井(=石井記者/同作にも登場する、現コロコロ副編集長だ!)と話していて改めて思ったんだけど、おれたちは仕事しながら遊んでるんだよね。会社でラジコンやミニ四駆をつくったりして。子どもと変わらないんだよ、コロコロの編集者って(笑)。
メーカーさんの持ってきた新製品を紹介するだけなら、どこの雑誌でもできる。でも、男の子って“自分だけのもの”を自慢したいんですよね。ミニ四駆なら、「こんなに軽量化したよ」「こんなカラーリングにしたよ」っていう。そういうのを、おれたち自身が企画して、記事にしているのがコロコロじゃない?
私はね、“ホビー”と“おもちゃ”とは違うと思う。自分でつくり出す世界と、与えられる世界の違いです。何か一つでも、自分だけの自慢できるオリジナリティを盛り込めるのがホビーなんだよね。「おれは改造はできないけど、操縦テクニックはすごい」とか「テクニックはないが、コレクションはすごい」とか。希少価値を含め、コレクションも自慢のできる立派なテクニックなのです。
自慢できる何かを求めて、夢中になる——自分自身、そういう小学生でした。プラモデルを楽しんで、写真を撮ってね。好きが高じて編集者になったんですよ。コロコロの編集者って、みんなそういうところがあると思う。
商品概要
『月刊コロコロコミック12月号』
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