コロコロアニキで激推し中の『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』のNintendo Switch版が3月14日(木)に発売。テンション上がりまくり中のアニキ編集部スタッフが、発売直前で慌ただしい最中のメーカーMAGES.(メージス)に突撃インタビューを敢行! プロデューサーの浅田氏と開発の外崎氏、さらに特別ゲストの高橋名人が応対してくれたぞ!! ここでしか読めない怒涛のインタビューの続きを見逃すな!アニキとの約束だぜ!
【コロコロアニキ×YU-NO】 Nintendo Switch版『YU-NO』発売記念緊急インタビュー!(前編) |
~原作のPC版との違い(その2)~
アニキ:
何人ぐらいで当時は『YU-NO』を作っていたんですかね?
浅田誠(以下、浅田):
そんなに人いなかったんじゃないですかね?
高橋名人(以下、名人):
昔はマンションの1室だけでPC用のゲームを作るところがいっぱいあったので、それと一緒じゃないかな?
浅田:
グラフィッカーは別にけっこう人数いたかもですね。中心のメンバーは少数で。
アニキ:
『YU-NO』自体もA.D.M.S(※1)とか特殊なことをやっていますよね。
浅田:
そこは他の人が手を入れられないようになっていて、実質制作に1年かかってないんじゃないかな?
アニキ:
当時のメーカー、エルフがPC-98で最後にだしたソフトですしね。当時の雑誌広告ではずっとイメージイラストが載っていて超大作感が出ていましたが、事前情報がほとんどなくて…。
名人:
当時Windowsが出始めて、PC-98陣営はヤバいという時代だったからねぇ。
浅田:
そもそもねぇPC-98だって、ヘンテコなマシンじゃないですか。
名人:
そうだよN88-BASICがメインなんだもん(笑)
浅田:
Cバス(PC-98用の拡張スロット)とか今の子たちが聞いたら「はぁ!?」って感じで。
名人:
ハードディスクはSCSI/SASIだしね。
浅田:
後期のPC-98なんかPCIスロットが装備されてたよ?
外崎剛(以下、外崎):
PC-9821シリーズですね。
浅田:
…マニアックすぎないかこの話?(一同笑)
アニキ:
とにかく菅野氏が急いで作っていた感じがすると。
浅田:
元々、自分の古い友人が作品の中にクリエイターとしていたので、その当時の話を聞いていたので、本当にバタバタで作っていたんだなというのはわかっていました。そういう意味では、よく1人でこれだけの作品を作ったなと今でも思いますね。
昔のクリエイターって、名人の時代のクリエイターさんもそうですけど限られた表現の中で、すごい手の込んだことをしていたんだなと。
有名な話で『ドラゴンクエスト』でお爺さんをどう表現するのかというと、言葉で「~~じゃ」と言わせることでお爺さんを表現するとか、そういうアイデアはすごいなって。自分らの時代だと容量あるので絵を描いちゃえばいいじゃんという感じなので。
アニキ:
当時は容量や予算が限られていたということですね。
名人:
ゲーム内の文字を全部テキストに起こして、「この文字使われてねーじゃん!」っていうのがあったらその文字を消して容量を稼いだり。
アニキ:
『ドラクエ』のダースドラゴンもダークドラゴンのクの文字をスで代用したという有名なエピソードがあります。
浅田:
そんな1文字の容量でね!
名人:
たった8ドットだよ~?(笑)
~一筋縄ではいかなかった『YU-NO』の移植!?~
アニキ:
菅野さんの作品を引き継いだ経緯というか、浅田さんが『YU-NO』を移植するきっかけになったのは何だったのですか?
浅田:
元々、自分の友人が『YU-NO』をやってて、まだ『YU-NO』でやり残したことがあったみたいで「そのうちやりたいよね」と話していたのですが、その想いの途中で亡くなられて…。ちょうどその時、自分がケイブからMAGES.に移って「あ、MAGES.だったらアドベンチャーメインで作っているし、『YU-NO』の移植に向けて挑戦してみようかな?」と思いました。
いろいろな人に話を聞いてみたところ、元メーカーのエルフさんには『YU-NO』の版権がないという話も聞いていました。たまたま知り合いを通じて話をしていたら、エルフのスタッフとで『YU-NO』の作曲を手掛けた梅本さんと仲が良い役員の方と会うことになって…。
『YU-NO』の話をしたところ、「権利はエルフにある」と。でもエルフの中でも亡くなられている菅野さんの作品で、どうしていいのかわからないと…。
ちょうど同じ時期にいろんな会社からいろんな作品の移植の話がきていたようだったんですが、その役員の方との繋がりで「もうエルフにあっても、さわることもできないので、MAGES.さんに権利を移管します」という話になり、移植をする流れになったんですね。
アニキ:
一番『YU-NO』に思い入れがある人に権利がいった感じになったんですね。
浅田:
ちょうどその時、エルフ作品を多数移植しているメーカーも声をかけていたらしいので、なんで『YU-NO』だけないの?という風になったと思います。だから、この話が一ヶ月くらい遅かったらそのメーカーに話がいってたかもしれません。そんな中、こっちは一週間で話をまとめて急遽書類を作成して(笑)
アニキ:
「よし!押さえろ」的な。
浅田:
そういう意味では、MAGES.の志倉(代表取締役会長)の決断が速いので、「いいよ!」みたいな感じで(笑)
アニキ:
それがなかったら他社さんでエルフシリーズまとめ売りみたいな感じになっていたかもですね。
浅田:
でもリメイクしてみて思ったんですけど、大変だ!と(笑) 名人もわかると思うのですが、意外とアドベンチャーゲームやシューティングゲームってユーザーからお金かからないと思われてますよね。でもそれは昔の話で、意外と制作費掛かってます。
名人:
意外とお金かかるよ~。うちもハドソン時代に、とある作品をすぐ作れると思ったら1年かかって…。3~4か月でできないのか?って急遽、宣伝部から開発資金を用立ててもらったりとか。
浅田:
今の時代もシューティングゲームを作るとなると結構かかるかなと。自分が以前やっていたケイブの作品は●△$%円くらいかかっていたので。
この『YU-NO』に関しては予定していた製作費かなり超えてます!
アニキ:
これって言える話なんですか!?
浅田:
言ってもいいと思うんですけどね(笑)
名人:
全然問題ないよぉ~(笑)
アニキ:
そういった感じで大切に受け継いで、予算もかかっていると。
名人:
『YU-NO』の開発がちょっと延びたのもあるね。
浅田:
もともとあった仕様を一度全部ひっくり返して作り直したので(笑)
アニキ:
原作に準じて移植されてるんですよね?
浅田:
そうですね。基本的に性表現とか、どうしても家庭用ゲームのCERO(※2)に引っかかってしまう部分がありまして。そういう部分だけ変えさせていただきましたけど、ほぼほぼ、98%くらい一緒じゃないかなと思います。
名人:
当時はCEROとかなかったからね。
浅田:
表現についてはCEROの方と押し問答で「表現を変えるとかありえないです」とか(笑) やはり今の時代にあわせた表現にすると世界観が変わっちゃう部分を気を付けましたね。
アニキ:
基本的に原作に忠実と。
浅田:
意外に“手を加えない”っていうのは難しいんですけどね。「どう見ても、この構図おかしいよな?」みたいな部分とか(笑) でもリメイクするにあたって大事なのは“原作の雰囲気をどう保てるか?”だと思うので
アニキ:
イラストのレイアウトとかもあまりいじってない感じですか?
浅田:
構造上これは?という部分だけは修正してますね。
外崎:
あとはヒント機能が強化されてます。画面上に重要な場所が色付きアイコンで表示されています。A.D.M.S上でヒロイン毎に分けているルートカラーが同じなので、分岐によってどのカラーにつながっていくのかも、A.D.M.Sを表示させなくても把握できるようになっています。
名人:
今のゲームはそうなってるんだねぇ。
浅田:
だからね今のユーザーさんに『さんまの名探偵(※3)』をクリアしてといっても多分クリアできないでしょ?
名人:
多分『サラダの国のトマト姫(※4)』もクリアできないんじゃない?
浅田:
蟹のカーソルを動かしてねぇ。最初の金田七の墓場にもいけないかもね(笑)
名人:
『たけしの挑戦状(※5)』の“ゲームを進めるためにコントローラーをリアル1時間触っちゃいけない”っていうのも無理なんじゃないの?
浅田:
だいぶ懐かしい話をしましたね!(笑)
名人:
当時のユーザーからしたら「そんなに簡単にしていいの?」って思われちゃうかもしれないけど、今のユーザーさんはそんなことしたら99%投げちゃうからね。
アニキ:
話を戻しまして『YU-NO』はPC-98のデータをサルベージする感じで移植したのですか? 当時の開発資料とかあったのですが?
浅田:
いや当時の資料は一切なくて、一部保管されていたものをたどって集めて…。実はセガサターン版『YU-NO』の資料はあったのですが、PC-98版のものを自分たちで解析しながら作っていきました。
PC-98版のデータの中身をのぞいてそれを見て書き写す…“目コピ”の世界でしたね。自分は他にもリメイクを多数手がけているのですが、リメイクはリメイクで大変で絶対“目コピ”しないといけない部分が出てくるんです。どうせやるなら、最初から“目コピ”したほうが楽だなと。忍耐の作業なんですけど。
アニキ:
サターン版も参考にされたりしたのですか?
浅田:
実はサターン版の解像度が低くて、絵をそのまま移植できないという(笑) 解像度が320×224だったので。ほんとはサターン版準拠にしようと考えていたのですが。
名人:
PC-98版の方が解像度よかったわけだね。
浅田:
PC-98版からの移植でPS4版の特典とかで気づいたユーザーさんもいるかと思うのですけど、けっこう修正していて…。
アニキ:
職人技の世界ですね。
浅田:
そうした移植でPS4からNintendo Switchまで出せて…この作品を最大限広げることができたかなと。
まぁ、これ書いちゃいけないのかもだけど本当は●●●●●●●版もあったんですよ。途中まで作ってたのですが、やはり市場があまりにも狭まりすぎちゃって。●●本くらい売れればなんとかなるんですが。
アニキ:
リメイクにあたって、菅野さんとかエルフさんの資料をもらったという感じですか?
浅田:
資料をもらっても当時の開発ソフトとかがあるだけで、データがほぼない状態でした。そこからの解析ですね。
アニキ:
誰か当時の開発者にあたったという感じではないんですね。
浅田:
そうですね、当時音楽をやっていた梅本さんは自分と仲が良かったので、どんな音源を持っていたかとかは、当時のハードディスクを持っていたのでそこから調べてみたりとか。
あと今回のリメイクの曲をやってもらったヨナオケイシさんも、梅本さんとずっと長く仕事をやってこられて当時のデータを持っておられたので、そういう意味では音楽の再現度は結構できているんじゃないかなと思いますね。
アニキ:
昔のハードディスクを今の開発環境でのぞくことは可能なのですか?
浅田:
可能ですね。当時のデータは自分が所有するハードディスクにも入っています。
多分『YU-NO』の使われていない曲とかも入っているんじゃないかな?
アニキ:
梅本さんはどんな作品の作曲を手がけられていたんですか?
浅田:
菅野さんの作品を手がけていて、後期はケイブのシューティングゲーム系の作曲をお願いしていました。
アニキ:
思い入れがあるからこそ、夢のリメイク作品ができたってことなんですね!
…来週22日(金)掲載のインタビュー後編ではNintendo Switch版の初回限定特典ファミコレACT「ゆーののだいぼうけん」やアニメ版についてもいろいろ聞くぞ。
浅田誠 |
高橋名人 |
タイトル:この世の果てで恋を唄う少女YU-NO |
※1…『YU-NO』独自のオート分岐マッピングシステム。このシステムのおかげでいろんなヒロインと出会うことができ、物語の深みが増していく。
※2…ゲームのレーティング。ゲーム内での暴力や性表現に対する規制のベースとなる。
※3…1987年ナムコが発売。明石家さんまが探偵となったファミコン時代のアドベンチャーゲーム。結構難しい。特にボートレース。
※4…1988年にファミコン版が発売。ハドソン製のファンシーなアドベンチャーゲーム。
※5…1986年タイトーより発売。ファミコン時代の理不尽の塊みたいなゲーム。当時の小学生プレイヤーは、ほぼみんなトラウマを抱えている。