ゆよゆっぺさんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2021年10月には1周年を祝した特集の展開や、
2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施。
さらに2023年10月に『プロセカ』3周年記念特集を掲載するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、“Leo/need”(レオニ)にオリジナル楽曲『Voices』を提供された“ゆよゆっぺ”さんだ。
『Voices』が書き下ろされたイベントストーリー“Don’t lose faith!”は、ライブ前の強化合宿でのひとコマが描かれている。ひとり実力が抜きん出る志歩に追いつこうと、必死に努力するレオニの3人。志歩もその手応えを感じながらも、セッションの段階で他のメンバーのレベルに合わせた演奏をしてしまう。これに反発し、「全力で演奏してほしい!」と訴える3人を見て、志歩は思い出すのだ。「こういうみんなだから、私はいっしょにプロを目指したいと思ったんだ」と……。
レオニの4人が殻を打ち破る重要なストーリーに書き下ろされた『Voices』には、どのような想いが込められているのだろうか? じっくりと語ってもらいました!!
※インタビューは、オンラインで行ったものです。
レオニみたいな高校生活を送りたかった
――たいへん恐縮なのですが、ゆよゆっぺさんのこれまでの経歴などを教えてください。
ゆよゆっぺ わかりました。ゆよゆっぺ、と申します。……大塚さん(インタビュアーのこと)、いま嚙まずに言ってくれましたけど、皆さんたいてい噛むか、「よよゆっぺ」みたいに言いやすい呼び方にしちゃったりするので、すごく新鮮でした(笑)。
――よかった!(笑)
ゆよゆっぺ そんな名前でなんだかんだ……16年ほど、インターネット上にボーカロイドの楽曲を上げたり、作曲家やDJ、バンド活動などをさせていただいております。本日はよろしくお願いいたします!
――よろしくお願いいたします! ゆよゆっぺさんは『プロセカ』にオリジナル楽曲の『Voices』を提供されたわけですけど、まずはこの依頼が来たときの率直な感想から教えてください。
ゆよゆっぺ とうとう来たか……!! みたいな感慨も覚えたんですけどね……。
――はい。
ゆよゆっぺ じつは昔、ゲームセンターに置かれている『Project DIVA』というアーケードゲームに、僕が書かせていただいたボーカロイドの曲が収録されたことがありました。その当時、「ボカロ楽曲が、ゲームセンターの音ゲーとしてプレイできるなんて!」と感慨深いものがあったんですけど、それから何年も経過して……いまではスマホのアプリで同じことができるわけです。その事実に、まず驚きました。そして、そういったコンテンツにいろいろなボカロPが楽曲提供をしていることも知っていたんですけど、まさかこんなロートルボカロPに依頼が来るなんて……夢にも思ってもおらず(笑)。
――そんな(笑)。
ゆよゆっぺ というのも、僕はメインストリームのポップな楽曲を作って来た人間ではなく、すごくニッチなバンドサウンド……わかりやすく言うとメタルとかラウドロックという激しい音楽とボカロを掛け合わせた楽曲を作ってきたんですね。そんな人間に、どのようなオーダーをしてくれるんだろう……という、ある種の戸惑いとワクワクも生まれました。
――感情としては、喜びがいちばん大きかったですか?
ゆよゆっぺ うれしいというプラスのマインドだけではなく、不安も30%くらいはあったと思います。僕は商業でアニメソングとか、さまざまなアーティストに楽曲提供を行っているんですけど、その現状の中でボカロPに立ち返り、いったいどんな曲が書けるのか……という不安が芽生えたという感じです。
▲2018年に投稿されたゆよゆっぺさんの代表曲『Leia – Remind』。プロセカでも遊ぶことが出来るぞ!
――でも、ゆよゆっぺさんが作られた『Leia – Remind』は、『プロセカ』がリリースされた直後の2021年10月に収録されていますよね。
ゆよゆっぺ はいはい。そうですね!
――既存楽曲が収録されるのとオリジナル曲の制作とでは、心境が……。
ゆよゆっぺ もう、ぜんぜん違います。自分が好き勝手に書いたものに対して「使わせてください」と言われたならば、「ありがとうございます。どうぞ使ってください」と言えばいいだけですけど、こういうストーリーの中にいる、こういった子たちのために新しい曲を書いてほしい……という依頼になると、もう重圧が桁違いに違ってきますね。
――なるほど……!!
ゆよゆっぺ キャラクターを預かるという責任は、とんでもないものになりますよねーーー。
――ゆよゆっぺさんは、レオニの子たちのために楽曲を作られたわけですけど、彼女たちを初めて見たときにはどんな印象を持たれましたか?
ゆよゆっぺ 僕も、彼女たちと同じ年ごろからバンド活動を始めたので親近感が湧きますし、すごくかわいくてフレッシュだなぁ……と感じたんですけど、同時にちょっと悲しくもなりました。
――ほう……! それは、どんな悲しみですか?
ゆよゆっぺ 僕がバンドを始めた当時は、こんなに輝いていなかったなと(苦笑)。
――あーーー! 青春キラキラみたいな感じではなかったんですね……。
ゆよゆっぺ はい。加えて、僕が曲を書き下ろしたころのストーリーでは、彼女たちはまったく芽が出ていない設定だったじゃないですか。
――はい、そうですね。
ゆよゆっぺ そういった状況は、僕たちと同じなんです。でも、僕らはレオニの子たちのように正直にぶつかり合ったり、ひとつの目標に向かってキラリとしたストーリーを描いたり……ということは、1ミリもできていなかったなぁ……と。それを思い出して、少々悲しくなったんです。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
――なるほどーーー! いやまさに、この“Don’t lose faith!”というイベントストーリーは、レオニのメンバーが志歩ちゃんに思いのたけをぶつけるシーンが中心ですもんね……。そんな、イベントストーリーのキーキャラクターである志歩ちゃんは、どうご覧になりましたか?
ゆよゆっぺ じつは僕、ギターを始めることができたタイミングがかなり早かったんです。小学校6年生のときに、父親にギターを買ってもらって、そこで始めたんですね。
――おお……!
ゆよゆっぺ そこから、いわゆるインディーズバンドブームが始まって、BUMP OF CHICKENだとか175Rとか、あと先日亡くなられてしまったんですけどB-DASHのGONGONさんとかにめちゃくちゃ憧れて、「自分もバンドをやりたい!!」って思い始めるんです。そして高校生になって気の合う仲間と出会って、「キミ、音楽好きなの!?」、「いっしょにバンドやろうよ!」なんて、完全にレオニの子たちと同じような道を歩みました。しかも僕は声を掛ける側で、気づけば自然と、バンドの中心になっていったんですね。ギターボーカルを務めて、自分で作詞作曲もして……。そしてある程度できるようになったら、ライブハウスにも出るようになって。
――レオニだ……!
ゆよゆっぺ その当時のことを考えたときに、思ったんです。僕が当時、もっと志歩ちゃんみたいな考えかたができていたら、もう少し豊かな高校生活になったんだろうな、って。
――はい。
ゆよゆっぺ このイベントストーリーで、すごく印象に残っているシーンがあるんです。志歩ちゃんは幼いころからずっとベースに親しんできて、演奏もとてもうまいわけです。仲間のみんなは少しでもそれに追いつこうと、必死に個別練習をしていますよね。その必死さは志歩ちゃんもわかっていたんですけど、いざ合わせるとやはり、明らかなレベルの差があったわけです。
――印象的なシーンですよね。
ゆよゆっぺ じつはこれ、僕も同じようなことを感じた記憶があります。
――!!!
ゆよゆっぺ 仲間とのレベルの差を感じてつい、「ぜんぜん違うじゃん!」、「ちゃんと練習してんの!?」なんて、高校生の男子なんて気持ちが無敵だから、思っていることをそのまま発言してしまったわけです。でも志歩ちゃんは、これ以上がんばらせたら潰れちゃうと思って、自分のほうが合わせるしかない……と思うんですよね。そしてそれに対して仲間のほうが、「本気でやって! 合わせないで!」と、逆に志歩ちゃんを怒る……。このシーンが、あまりにも美しくて、まぶしいんです。で、何が言いたいのかと言うと、高校生だった僕はそういうことがいっさいできなかったな、と……。
――あーーー……!
ゆよゆっぺ しかも、高校生で耳も肥えていなかったので、具体的にどこが悪いのかなんてわかっていなかった。なので指摘をするときも、「なんとなく合ってないけど、誰が悪いの!?」とか色々考えちゃって……。レオニの子たちと違って、ぶつかったことをきっかけに良い方向に持っていこう……というマインドにはなれませんでした。だから、思ったんです。「レオニみたいな高校生活を送りたかった!」って(苦笑)。
――でもお話をお聞きしている限り、すごく似た歩みをされているんだなって。
ゆよゆっぺ 似て非なるモノです(笑)。だからいま、ひとりでも活動できるボカロPを始めたんだと思います(笑)。
▲演奏のレベルを合わせにきた志歩に対して、本気でやってと訴えるメンバーたち。そのまっすぐな思いに、志歩は改めてこのメンバーでプロになりたいと思うのであった。
――(笑)。そんなゆよゆっぺさんがレオニに曲を書き下ろすわけですけど、まずはこの『Voices』という楽曲のテーマを教えてください。
ゆよゆっぺ これはですね……。聞く人が聞いたら「え?」って思われるかもしれないことを承知で言うんですけどね。
――はい。
ゆよゆっぺ 確かにレオニの子たちのために曲を書いたんですけど、ただのキャラクターソングだったらべつに自分じゃなくてもいいなと思ったんです。
――は、はい。
ゆよゆっぺ そこで、僕がどういう想いでバンドをやってきたのかとか、くすぶっていた時代にどういう気持ちを抱いていたのかとか……そういうことも、曲に乗せようと思いました。
――そうなんですね!
ゆよゆっぺ はい。ですので言ってしまうと、純度100%のレオニの曲……ではないのかもしれません。僕の経験から得た、バンドの楽しいこと、辛いこと……っていうのが、50%くらい入っちゃっていると思います。若かった当時を思い出しながら作っていった……というわけですね。
――でもレオニもバンドですから、それが見事に合致した感じがします。
ゆよゆっぺ ありがとうございます。そして『Voices』という曲名なんですが、僕が昔から好きなSaosin(セイオシン)というアメリカのバンドがいるんですけど、彼らも同じ『Voices』という曲を歌っているんです。僕はこの曲が当時めちゃくちゃ好きだったんですけど、その好きな気持ちを乗っけたいと思って、そのまま曲名に付けさせてもらいました。
――へーーー!!
ゆよゆっぺ そしてもうひとつ、音楽用語に“ボイシング”というものがあるんですけど、これは簡単に言うとコードの構成、音の重ねかたのことを指しています。
――はい。
ゆよゆっぺ 僕はバンドというものはハーモニーでできていると思っているんですが、これってコード進行ととても似ていると感じるんです。たとえば“ドミソ”だったら音が3つ重なって“C”になるんですけど、それと同じように人間が何人か集まってそれぞれが違う個性を発揮したら……それはひとつのコードを作っているのと同じだなと。
――なるほど! 確かに!
ゆよゆっぺ レオニの4人は、それぞれの境遇で違う景色を見ながら歩んできて、おのおのが個性的な“音”を持っているわけですけど、それが合わさってひとつのコードになる。つまり4人の心がちょっとずつ動いていくことによって、コードも変化していく……と。そういう意味で、『Voices』です。コードの中のボイシングが変わっていく……ということを表しています。
――深いなー!!
ゆよゆっぺ 彼女たちは、これまでにたくさんの物語を紡いできていると思いますけど、そのひとつひとつにコード進行があるわけです。僕は、ある瞬間のコード進行を切り取らせてもらって、『Voices』という曲名で楽曲を作った……ということになります。
――なんだか、鳥肌が立ちました。そういう意図が込められていたんですね……!
ゆよゆっぺ ですので歌詞の中にも、そういう気持ちが現れている箇所が多いんです。たとえば、「6つの景色を響かせた 右手で跳ね除ける逆境」の箇所。
――そこ、めっちゃいいですよね!
ゆよゆっぺ ありがとうございます。ギターの弦って6本あるんですけど、歌詞の“6つの景色”というのは、これを表しています。ギターの1本1本の弦を掻き鳴らすことでいまの自分たちの音が出せる……というわけですね。
――おおお……!
ゆよゆっぺ 若いころの自分が思っていたことと、バンドはコード進行でできている……ということをうまく重ね合わせて、今回の曲ができた感じです。
▲イベント『Don’t lose faith!』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。
――ありがとうございます! ではこの流れでぜひ、『Voices』の中で気に入っている歌詞を教えていただきたいのですが!
ゆよゆっぺ お気に入りの歌詞は……。「時間は戻らないから 積み重ねたイメージを 全て賭けろ 二度と来ない この一瞬に」のところですかね! これは僕がレオニに向けたメッセージです。彼女たちは……16歳(※進級前)ですよね。
――はい、そうですね。
ゆよゆっぺ 僕は同じ年代のころ、本気で音楽で世界を変えられるって思っていたんですけど……そう考えられる時間て、すごく尊いものだなって、35歳になったいま気付きました。あのときの気持ちを、100%音楽にぶつけられていたなら、また違った未来が拓けたんだろうなって感じます。もしかしたらボカロPになっていなかったかもしれないし、高校生のときに組んだバンドでもっともっと大きなステージに立てていたかもしれない――。想像するのは簡単なんですけどね。
――うんうん……。
ゆよゆっぺ もちろん、いまいる場所はすごく楽しいし、ありがたいんですけど、ほかのことはいっさい考えずにバンドにだけ打ち込めるって、すごく貴重だなって。この一瞬っていうのはたぶん……モラトリアムな時間(※責任を背負わない猶予の期間、の意)で、僕が気づかずにぶん投げてしまったものなんですけど、彼女たちにはここにすべてを懸けてほしい……と感じました。
――そこも含めて、強いメッセージ性を感じる歌詞ですよね。
ゆよゆっぺ でもだからこそ、書いていて悲しくなってきたんですよ……(苦笑)。くり返しになりますけど、レオニの子たちはあまりにも輝いているんです。僕はすごい縦社会でバンド生活を送ってきたんですけど、ときには理不尽なこととか、納得できない経験もしてきたわけです。でも、そういうことすら跳ねのけて、一瞬に懸けられるのはいましかないんだから、絶対にやり遂げてくれよ……という想いも込めました。
――じつはリスナーのコメントを追っていったときに、自分に置き換えてこの曲を聴いている子が多いなって感じたんですけど、そういう歌詞が響いているんですね。
ゆよゆっぺ ありがとうございます。そう受け取ってもらえることが、いちばんうれしいです。
――逆に僕のようなおじさんだと、ゆよゆっぺさんと同じように、過ぎ去った遠い日を思って複雑な気持ちになったりもしますが(苦笑)。
ゆよゆっぺ あははは! いやでもね、“最近の若い子”っていうくくりで言っちゃいますけど、いまの子たちにとってはこういう歌詞って、「暑苦しくてダサい」ってなるのかなぁ……とも思うんです。
――熱いメッセージゆえに。
ゆよゆっぺ はい。説教臭い……って思われることもあるかなって。……うん、でも、バンドって突き詰めていくと最終的に、音楽どうこうよりも気持ちの問題が大きくなると僕は思っているんです。なので、「バンドで音楽をやりたい!」って思っている、レオニみたいな子たちに向けて、「かっこつけてないで、とりあえずすべてを懸けてみようよ!」って言いたいなと。そんな気持ちも、『Voices』の歌詞には込められています。
――いやあ、響きますよそれは。とくに、マジメにバンドをやっている子たちにこそ、しっかり届くと思います。
ゆよゆっぺ だったらうれしいなぁ……!
――では、そんな『Voices』の聴きどころも教えてください。
ゆよゆっぺ まず歌詞の面で言ったら、「この16小節の上なら強さになる」のところ。これを思いついたときは、「俺、天才かも!」って思いました(笑)。
――そこ!! めっちゃいいですよね!
ゆよゆっぺ ここを解読すると、サビが始まってから「この16小節の上なら強さになる」の歌詞が終わるところまでが、ちょうど16小節なんです。
――!!!?
ゆよゆっぺ 本当は、サビは全部で20小節あるんです。そのあとに「ずっと鳴り響いてる この“セカイ”で」まで含めると。じゃあ16小節は何かと言うと、16歳の彼女たちがいるモラトリアムな時間の中で感じ取ったこと……という比喩をまずさせてもらって、かつ、イヤなことも音楽にしてしまえば自分の弱みも強さに変えることができる……ってところで16小節が終わります。そしてそこから先の4小節で、16小節の中で積み上げてきたものをさらに発展させることができるんだよ……と、言っているわけですね。これは我ながら、うまい具合にできたなと思います。
――スゴいな……! この限られた文字数の中で、よくぞそこまで……!
ゆよゆっぺ いえいえ、とんでもないです。でもいま思い出すと、このサビのメロディーと歌詞は両方いっぺんに出てきたんですよね。
――あ、そうなんですか!
ゆよゆっぺ まず“声”と“セカイ”というワードは絶対に入れたいと思ったんです。で、「この16小節~」の前にある、「溢れ出す“声”に、想いに 託したカリソメじゃ無い憧れ ありふれた涙、痛みも」っていうのは、自分たちのクシャクシャになった気持ちを表現したもの。この歌詞とメロディーが、いっぺんに降りてきました。
――へーーー!!
ゆよゆっぺ これは勝ったな……って思いましたねえ(笑)。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
――(笑)。でも、ふだんは歌詞と曲、どちらを先に作られるんですか?
ゆよゆっぺ 曲によって違うんですけど、今回みたいにしっかりとしたオーダーがある商業案件だと、まずオケをワンコーラス作ってからいろいろと考える感じになりますね。何を置いても、オーダーに沿った曲調にならないとお話になりませんから。逆に自分のオリジナルだと、たとえばある日、風呂に入ろうと思って全裸になった瞬間にワードとメロディーが思い浮かんで、「これヤバ!!」って言って裸のままリビングに飛び込んでボイスメモを取る……なんてこともあります(笑)。
――そんなことが!!(笑)
ゆよゆっぺ 『Voices』はもちろん前者で、レオニはこういうバンドだよね……っていうところからサウンドを作って、どんなテーマ性の歌詞にしようか……と考えていったパターンになります。
――ありがとうございます! ……あと聴きどころで言うと、フルバージョンを聴いたリスナーたちがこぞって、間奏にある「レッツゴー!」がかわいいって言っています。
ゆよゆっぺ あーーー!(笑) 僕、意外とリアリティを求めるタイプで、時代考証みたいなことをするんですよ。で、僕が高校生のときだったらどんな演奏をするだろう……と考えたときに、「きっと、そんなに難しい英単語は使わないな」って結論付けたんです。
――あ!! なるほど!!
ゆよゆっぺ 言いやすいし、みんなで声を揃えやすいし……ってところで、レオニの子たちも「“レッツゴー”でいいんじゃない?」って話すんじゃないかなと思いました(笑)。……あ、それで思い出したことが!!
――お!
ゆよゆっぺ 僕が高校生のころにできたことだけで、すべての楽曲を構成したい……と思ったんです。
――なんと!!
ゆよゆっぺ たとえばイントロで、ギターとシンセサイザーがユニゾンしているフレーズがあるんですけど、あれは僕の高校のころの友だちがすごく得意にしていた奏法を真似てみた箇所(笑)。「あいつ、こういうフレーズ弾いていたよなー」って思いながら。
――うわ! めっちゃステキですね!
ゆよゆっぺ あとドラムも、もっと難しくしようと思えばいくらでもできるし、かっこよくもできるんですけど、やっぱりそうじゃないよね、と。高校生の自分が叩ける限度としてはこれくらいの速さだよな……って考えて作ったものです。こういったことをいちいち検証しながら、オケを作っていきました。
――え、ということは、レオニの子たちが実在するとしたら、彼女たちにもキチンと弾ける楽曲になっている……ということ?
ゆよゆっぺ はい。「これならいける!」と確信して作りましたから。
――すげーーー!! おもしろいですね!!
ゆよゆっぺ 僕、若い女性バンドのプロデュースとかもやらせてもらっていたんですけど、そのときに得た知見も役に立ったんだろうなって思います。若いドラマーはこういうときに走りがちだよね……っていう意識が自分の中にあったので、「それを避けるためには、こういう構成で……」と、その知識を活かさせてもらいました。
――でも素人目に、ドラムとギターがかっこいいなーって思いながら聴いていたんです。
ゆよゆっぺ たぶん、当時の自分を思い出すとあのへんが限界だと思います。高校生バンドの。
――なるほどーーー!! いやでも、それだけ考えて作られたとなると、制作日数はかなりのものになったのでは?
ゆよゆっぺ それが、めちゃくちゃすんなりまとまったな……という印象なんです。僕が楽曲を作るうえでいちばん時間かかるのって、じつは自分のギターのテイクだったり、フレーズをもっと複雑化しようかな……なんて考えたときなんですね。でも『Voices』は先ほどいったように、昔の自分に立ち返って考えればよかったので、当時の手癖とかを思い出しつつバーッと弾いてみて、「うん、これならOK!」って割り切ることができました。
――複雑化させる必要がなかったわけですね。
ゆよゆっぺ はい。ですのでたぶん……5、6時間くらいでワンコーラス分の土台が出来上がって、そこから商業作品らしい華やかさとかを付け加えたりして……。なんだかんだ、オケは1日くらいでできたんじゃないかなと。
――それはめちゃくちゃ早いですね!!
ゆよゆっぺ 僕はそこから、歌詞とかに時間を掛けたかったので。そっちは、相当な時間になったと記憶しています。
――制作時を振り返ってみて、いかがですか?
ゆよゆっぺ すごく楽しかったですね。高校生のころを思い返しながらの作業だったので、ちょっと臭い言いかたをすると、あのころの自分にまた会えた……って気がしました。「おい俺、大人になっても音楽を続けているぞ」と言えたような感覚がありましたし。
――うわーーー! そういうの最高ですよ……(感涙)。
ゆよゆっぺ よかった(笑)。
――そんな『Voices』がゲームに実装されたのをご覧になって、どう思われましたか?
ゆよゆっぺ じつは僕、自分の曲が収録されたコンテンツって、可能な限り見ないようにしているんです。なんだか、純粋にそのお話に入れなくなっちゃう気がして。フィクションの中の出来事のはずが、一気に現実に引き戻される感覚になるんですよね。こういうクリエイター、けっこう多いと思うんですけど。
――これまで50人以上のボカロPにインタビューしてきましたけど、ゆよゆっぺさんが初めてです。
ゆよゆっぺ あ、本当ですか!?(笑) ……それプラス、この曲はレオニに実際に演奏してほしいと思いながら書いたので、あまり現実感に浸りたくなかったのが正直なところですね。それくらいの責任を感じながら気持ちを乗せて書いたので、ゲームをプレイした瞬間……35歳の自分に戻るのがイヤだなと(苦笑)。
――わかりました(笑)。では、この曲が大好きなファンに向けて、ぜひひと言お願いいたします。
ゆよゆっぺ 今しかないんで、やってください! ……これに尽きますかね。
▲“コネクトライブ Leo/need × Vivid BAD SQUAD RESONANCE BEATS!!”では一歌と志歩が背中合わせで歌う姿が印象的だった。
――ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……ゆよゆっぺさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!
ゆよゆっぺ まったく参考にならないと思いますが……! 高校生のころからバンドをやっていたというお話をしましたけど、19歳のころに、このバンドという形態が辛くなったことがあるんです。
――はい。
ゆよゆっぺ 縦社会でいろいろな付き合いがあったんですけど、それになかなかついて行けなくなって。しかも同じタイミングで仲間ともギクシャクし始めて、心が圧迫されてしまったんです。で、(ひとりでできる音楽はないかな……)と考え始めたときに出会ったのがニコニコ動画の初音ミクでした。友だちが教えてくれたんですけど彼自身は否定派で、「なんか流行ってるみたいだけど、興味ないよね」ってくらいのテンション。でも僕はなんとなく気になって、見てみたんですね。そのときに聴いたのが……“ryo”さんの『メルト』でした。
――おお!!
ゆよゆっぺ そこから、“cosMo@暴走P”さんの『初音ミクの暴走』などを聴いていって、衝撃を受けるんです。「なんだこれ!! すげえな!!」と。友だちは微妙な顔をしていましたけど、僕はもうそれどころじゃありません。初音ミクはちゃんと歌っているし、「むしろ、俺らよりぜんぜんうまくね!?」って思いました。
――すぐにのめり込んでいったんですね。
ゆよゆっぺ そしてボカロについて調べていくうちに、メジャーレーベルに所属もしていない一個人がとんでもない曲を作って、それが世界にも発信されていて、かつ100万再生とかを余裕で超えている……と。「こんな凄まじい世界があったのか!」とカルチャーショックを受けるのと同時に、「これなら、自分ひとりでできるかも」と思いました。当時、僕は父親のおさがりの古いノートパソコンを持っていたので、それを持ってすぐさま楽器屋さんに突入です。「初音ミクください!」って(笑)。そしてなんとか手に入れて、ワクワクしながらショボい音源を打ち込んでミクに歌わせてみた……ってのが、僕とボカロのスタート地点です。
――へーーー!!
ゆよゆっぺ そういう意味では、僕は“ボカロPになりたかった”というわけではなかったんです。自分ひとりでできる音楽で、なおかつ世界に発信できるものを……と探していたときにボカロに出会い、そのままボカロPになっただけで。そのときに、まさか15年先でも使うなんて夢にも思わず、テキトーにキーボードを叩いたときに出た“ゆよゆっぺ”という名前で活動を始めてしまいましたしね(笑)。
――あ! そんな経緯だったんですか!?
ゆよゆっぺ そういうことも含めて、ホントにノリと勢いだけで、いつの間にかボカロPという立場になっていた……という感じです。
――そんなゆよゆっぺさんに、ぜひボカロPになるために必要なスキルを教えていただきたいのですが! 何かありますか?
ゆよゆっぺ 本当に説教臭いんですけど、“ボカロPになりたいから音楽をやる”のではなく、“音楽をやりたいから音楽をやる”という心積もりでいてほしいです。ボカロはあくまでも、音楽をやる上での手段のひとつですから。何か表現したいことがあるんだけど、自分で歌えないし、いっしょにやっていく仲間もいない……という人だったら、真っ先にボカロに触ってみるといいでしょう。でも最初から、「ボカロPとして有名になりたい」なんていう気持ちで音楽を始めると、あまりいい結果にはならないかもしれないなと感じます。ですので、必要なものはスキルじゃなく、“本当に音楽をやりたいかどうか”の気持ちだと思うんです。
――自分が表現したいことを表す手段のひとつがボカロ……と。
ゆよゆっぺ そうだと思います。音楽を作るのが好きで、なおかつボカロに歌わせることに生きがいを感じるなら、迷わずやってみるべきですしね。でも、うまくなるためには当然ながら、たくさんの時間を費やす必要があります。それはまわりの人から見ると、「めっちゃ努力してるな」って思われるかもしれないんですけど、本当に好きなことって、やってる本人は1ミリも努力だとは思わないんですよね。
――わかる!! それは真理ですよね!
ゆよゆっぺ ですよね(笑)。だからこそ続けられるわけだし。そういう意味でも、必要なモノって“好き”という気持ちだけだと思います。スキルなんて、あとからいくらでも付いてきますから!
――ありがとうございます! ではもうひとつ、ボカロPになってよかったと思うこと、何かありましたら教えてください!
ゆよゆっぺ ボカロPとしては……とくにないですね(笑)。
――え(笑)。そうなんですか?
ゆよゆっぺ はい。強いて挙げるとすれば、名前を知ってもらう機会が増えてよかったな……というところでしょうか。僕はたぶん、ボカロというフックがなかったら、たぶんほとんどの人に名前を知ってもらえなかったと思っているんです。ボカロに出会わぬままひたむきに音楽を続けていたら、茨城の片田舎で、6畳一間の部屋で淡々と音楽を作っているだけの男になっていただろうなぁ……って。でも、ボカロの爆発力に乗って多くの人に知ってもらえたので、そこはもう感謝しかないです。ただきっかけとしてよかったというだけで、ボカロPになって以降だと……あまり思いつかないんですよね。なので「よかった」よりも「感謝」が先に来ます。
――わかりました! では……ボカロPの先達として、少年少女たちにエールをお願いしたいのですが!
ゆよゆっぺ これまたおじさんの説教臭くなっちゃうんですけど、いまボカロPになりたいとか、音楽をやりたいと思っているなら、“いましか時間はないと思って、やれるだけやってほしい”と言いたいです。その好きな気持ちは大切に持ち続けて、ブレずにがんばってください!
――ありがとうございます! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いしたいのですが。
ゆよゆっぺ ……よろしければもう一度、楽曲を書かせていただけるとうれしく思います!!(笑)
――太字で書いておきます(笑)。
ゆよゆっぺ ぜひぜひ(笑)。いやあ、たいへん楽しかったです。今日はありがとうございました!
――こちらこそ、お忙しい中、本当にありがとうございましたー!
ゆよゆっぺ
茨城県大洗町出身。
2008年ボカロPとしての活動を開始。
バンド「Naked Identity Created by King(N.I.C.K)」のメンバー。
作家として西川貴教、BABY METAL、大人気スマホゲーム#コンパスなど多方面に楽曲提供等を行う他、「DJ’TEKINA//SOMETHING」(ディ―ジェーテキナサムシング)の名義で、DJ、トラックメイカーとしても活動。
ROCK IN JAPAN 2013~2019やSUMMER SONIC等の大型フェスの出演や、国内のみならず、海外公演も多数行っている。
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タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
■対応OS:iOS/Android
■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710
■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai
■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai