キタニタツヤさん、はるまきごはんさんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、なんとおふたり! それもキタニタツヤさん、はるまきごはんさんという黄金タッグであります!
キタニタツヤさんとはるまきごはんさんは、共同制作したオリジナル楽曲『月光』を“Vivid BAD SQUAD”(ビビバス)に提供。この楽曲が提供されたイベントストーリー“THE POWER OF UNITY”はビビバスの節目となる重要な物語で、伝説の“RAD WEEKEND”の映像を見た4人がこれ以上ないほどの刺激を受け、仲間たちを集めて主催イベントを開催することを決める……という、ビビバスの今後の鍵となるストーリーが紡がれている。
そんな物語のために書き下ろされた『月光』はどんな曲なのか? そしてボカロPの活動を経て現在はシンガーソングライターとしてNHK紅白歌合戦にも出場したキタニタツヤさんと、イラストレーターとしても、ボカロPとしても幅広く活躍されているはるまきごはんさんは、どのようなやり取りを経てこの曲を作り上げたのか? 超ロングインタビューをじっくりとご覧あれ!
※インタビューはオンラインで実施したものです。
黄金タッグは、こうして成された
――“超”が付く有名人であるおふたりに聞くのがたいへん心苦しいのですが、まずは簡単に自己紹介をお願いしたいしたく……!
はるまきごはん わかりました! いまでこそボカロPとして活動をしているんですが、最初はイラストを描いていたんです。でもそのうち、曲も作ってニコニコ動画にアップロードを始めるんですけど、それが2014年のこと。ボカロの存在を知ったのは中学生のときで、『初音ミクの消失』を聴いて衝撃を受けました。
キタニタツヤ 自分がボカロで作った曲を公開し始めたのは、確か、はるまきごはんの2、3ヵ月あとくらいです。ですので同じく2014年ですね。
――非常に近いんですね。
キタニタツヤ そうなんです。はるまきごはんが大学入学直前くらいに始めたとしたら、僕は大学に入ってすぐくらいに始動したという感じですね。ボカロにハマりだしたのは高校1年のときで、ニコニコ動画を開いたときに新曲として上がっていた“ぽわぽわP”の『lifeworks』という曲を聴いて衝撃を受けました。それまで自分はロックバンドの曲ばかりを聴いていて、電子音楽の世界に馴染みがなかったのもあるんですが、そもそもテクノロジーとしておもしろいし、素人が作って投稿しているという文化に対しても「すごい!」と思って、以来高校時代のバイト代はすべてボカロの同人CDにつぎ込みました。
――へーーー!!
キタニタツヤ ボカロのことが好きで、憧れていたので、「大学に入ったら俺もやるぞ!」と決めていたんです。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
――そのあたりのこと、ぜひ後半の質問でも詳しくお聞かせください!では、そんなおふたりに『プロセカ』からオリジナル楽曲の依頼が来るわけですけど……そもそものことを教えてください! いったいどんな流れでおふたりがタッグを組まれたのか……ということを!
キタニタツヤ もともと、僕のほうに依頼が来ていたんです。「キタニさんに曲を書いてほしいのですが」という打診が。ただ、すでに『プロセカ』は“ボカロPが曲を作る世界”という雰囲気が出来上がっていて、ボカロPが憧れる場所にもなっていました。
――はい。
キタニタツヤ そういう空気をボカロリスナーのひとりとして感じ取っていたので、いまボカロPとして活動していない僕が“元ボカロPだから”を理由にホイホイとこの依頼を受けてしまうのは、なんだか誠実じゃない感じがしました。実際、『プロセカ』に実装されるもののほかに、ボカロP自身がセルフカバーのような形でボカロバージョンを公開するという流れになっていたし、それをリスナーたちも期待していると感じていたので、そんなところに僕がいきなりボカロ版を出しても……見え方として、あまりよくないなと。そういう、どっちつかずな感じではあまりやりたくないなと思いました。
――なるほど。
キタニタツヤ でも一方で、『プロセカ』自体にはすごく関心があったんです。そこで、現役でボカロPとして活躍している人とコラボレーションのような感じで作るのはどうですか? と逆に提案させてもらいました。すると、「もちろん、どなたを呼ばれても大丈夫です!」とおっしゃってくれたので、同世代で、みずから歌いながらもボカロPとして最前線で活動をしているはるまきごはんにお願いしよう……と決めました。
――はるまきごはんさんは、そのお話を聞いたときにどう思われたのですか?
はるまきごはん 「キタニが『プロセカ』に曲を書くの!?」って、そっちのほうにビックリして(笑)。しかも、いまキタニが話したことを僕はそのとき聞いていなかったので、ちょっと状況が飲み込めなかったんですよ。「え? いっしょに作んの?」って感じで。でも作業が進んでいくうちに、「なるほど、こういうことか」と何かをつかんだ気がしました。発表されたとき驚いてくれる人もいて、コラボで書き下ろしが出来てよかったなと思いました。
――おふたりは、いつくらいからの知り合いなんですか?
キタニタツヤ いつだっけ!?
はるまきごはん “ボーマス”だったよね?
キタニタツヤ あー、そっか。じゃあ2015年にはもう会っていたのかな?
はるまきごはん 2015か16年のボーマスで、キタニに会いにいった記憶があるんよ。
キタニタツヤ ……どうやら、お互いボカロを始めて1年くらいのときに最初のからみがあったようです(笑)。
――は、はい(笑)。
はるまきごはん ボーマス……『THE VOC@LOiD M@STER』っていう即売会があるんです。そこでふたりともCDとかを売っていたんですけど、2015年のその会場で、「は、はじめまして」みたいな感じで挨拶をしたと思います。そこから、共通の友だちのライブ会場で会ったりとかしているうちに、ふつうに遊ぶようになった感じですね。
キタニタツヤ 同世代で、共通の友だちがとにかく多かったんです。加えて、いまみたいにボカロPがたくさんいる……って感じもなく、いい曲を書いていたらすぐに互いを認知するような距離感にありました。辿って行けばどっちかの友だちにたどり着く……という雰囲気があったのでSNSでも繋がりやすかったですし。
はるまきごはん 狭い界隈だったんですよね。いまと比べると、ずっと。ボカロP全体が、同じクラスにいる友だちって印象でした。
――そうか。おふたり、完全に同い年なんですもんね。
はるまきごはん そうなんです。それも大きかったかもしれないですね。
▲イベント『THE POWER OF UNITY』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。
――ここを掘り下げるだけでもめちゃくちゃおもしろい記事になりそうなんですが……曲について切り込ませてください!
キタニタツヤ よろしくお願いします(笑)。
――書き下ろし楽曲『月光』を提供したユニットはビビバスですけど、彼らに対してはどんな印象を持たれていましたか?
キタニタツヤ 僕は、『プロセカ』のストーリーについては事前知識がいっさいない状態で、いただいた台本や資料に目を通していったんです。ただ、曲は聴いていたんですよ。……ビビバスって確か最初のころから、八王子Pとかがいい意味でオラついている感じの曲を書き下ろしていたじゃないですか。それを聴いていて、「なるほど。だから俺にお声が掛かったんだな」と思ったりしていました(笑)。
――確かにほかのユニットと比べると、明らかにギラつきかたが違いますもんね。
キタニタツヤ そうなんです。攻撃力が高い感じでね。
――でははるまきごはんさん、ビビバスの印象はいかがでしたか?
はるまきごはん 自分みたいな、インターネット上で音楽をやっている人間とは真逆の、現場で音を出すことに注力している子たちなのかなと思いました。そういう意味では、僕らとはちょっと違う世界観を持っているのかなって。
キタニタツヤ はるまきごはんは、どっちかと言うとニーゴに近い人間ですから(笑)。
はるまきごはん そうそう(笑)。でも真逆ではあるんですけど、ストーリーを読み込んでいくうちにギラつきの中にピュアな部分が見えてきて、(なるほど、こういう子たちか)と思ってきたんです。
――その流れでお聞きしたいんですけど、『月光』が書き下ろされたイベントストーリー“THE POWER OF UNITY”のキーキャラクターは東雲彰人です。彼については、どう思われましたか?
はるまきごはん 最初は「怖い人かな」と思って(笑)。そういう先入観のあるままストーリーを読み始めたんですけど、最終的には、すごく熱くて、ピュアで、真っ直ぐな気持ちのある男だなと思いました。
キタニタツヤ 自分も同じように、包み隠さず言ってしまうと、イケイケでチャラい子なのかも!? って思っていました。(俺とは仲良くなってくれなさそうだな……)って。
――はい。
キタニタツヤ そういった先入観がある中で掘り下げていったんですけど、だからこそのギャップか、すぐに「あれ……? 彰人って意外と、話せばわかる男なのかも……?」って思い始めるんです。はるまきごはんも言うピュアなところが見えてきたので、「じゃあこういう曲を書いてみようかな」と徐々に考えることができるようになりました。
――そこで! 『月光』のテーマをぜひ教えてください。
キタニタツヤ どんな感じだったかなぁ……! ……確か、リリック(歌詞)はけっこう後回しだったと思います。……これさ、はるまきごはんのデモが最初だったんだっけ?
はるまきごはん デモの前に、まずキタニの家に行って“リファレンス決め会議”をやったじゃん。
キタニタツヤ あー、そうだ! “好きな音楽教え合い会”ってのをやったんです(笑)。
――へーーー! それはおもしろそうですね!
キタニタツヤ その会を開いた時点で、ヒップホップっぽいノリにするということは決まったんです。と言うのも、はるまきごはんはふだん作っている音楽とは裏腹に、けっこうマッチョなヒップホップが好きなんですよ。
――え!? そうなんですか!!?
はるまきごはん あはは。はい、当時はとくにそうだったんです(笑)。
キタニタツヤ 「男くさいヒップホップをめっちゃ聴いてる!」ってことを言っていたので、だったらそういう、オラついた曲を作るのもいいねと。はるまきごはんのソロだとできないかもしれないけど、このコンビだったらいけるでしょ……と話したことを覚えています。
――タッグならではですねえ……!
キタニタツヤ そこで、いつものはるまきごはんっぽいエッセンスもありつつ、ちょっと男くさいヒップホップのビートも入れてみよう……というところで、まずは音楽性から決めていった感じです。で、そのテーマに合わせて、確か僕とはるまきごはんそれぞれでデモを作ったんです。
――はい。
キタニタツヤ その結果、骨組みの骨組みははるまきごはんが作ったデモになりました。ただ、やっぱりそのデモは、皆さんが知っているはるまきごはんっぽいモノだったんですね。なので、それを僕が受け取ってめちゃくちゃ男くさくしていく……という作業を行いました。そしてそれをはるまきごはんに渡して、さらにいじったものを僕が受け取って……ということを何往復も繰り返したんです。それにより、なんとなくの方向性が見えてきたんですよね。
――それは、作曲の流れですか?
キタニタツヤ そうですね! 歌詞に関しては……どのへんでできてたんだっけ?
はるまきごはん 歌詞に関しては最初にキタニが、「“コピーキャット”をテーマに書くのはどうだろう?」って言ってきたんですよ。
――コピーキャット……。模倣者とか、イミテーションってことですね。
はるまきごはん そうですそうです。で、「めっちゃいいじゃん!」と僕も賛同して、歌詞を入れ始めるんです。……まあどっちが先に書き始めたのかはぜんぜん覚えていないんですけど(笑)。でも、そういった根底に置くテーマをキタニが出してくれたおかげで作業が進んで、『月光』の形が見えてきたんですよね。
キタニタツヤ そうですね。サビの……本当に最初の数フレーズを僕が書いて、そこから広がった印象です。ですので、曲ははるまきごはんがきっかけで、リリックに関しては僕がきっかけだったと思います。そこからは、お互いが空気を読みながら作業をしていたように思います。
――空気を読みながら……っていうのが、タッグっぽいですねえ。
キタニタツヤ ですので歌詞に関しては、何かに憧れて模倣していくうちにオリジナリティが出てくる……とか、そういう“クリエイターあるある”がテーマでもあるんです。何かに憧れて追いかけ続ける人間の曲がいいよな……っていうのは、ある程度曲が固まった段階で僕がコンセプトを立てて、サビのフレーズをちょっと書いたあとに、はるまきごはんが続きを書く……というようなことをやっていたと思います。……確か、サビは半分ずつ書いたんだよね?
はるまきごはん そうそう。歌唱で、お互いが歌うところをそれぞれが書いた記憶があります。
キタニタツヤ あ、そうだ。そんな感じだった!
――おもしろいですね……! そんな作り方ができるんだ……!
はるまきごはん そうですね(笑)。互いにデータの受け渡しをしてそれぞれが作業をする……という感じでした。キタニからデータが返ってくると、なんか曲が進んでいるんですよ。
キタニタツヤ あれ、よかったよね(笑)。
はるまきごはん うん(笑)。自分は何もしていないのに、勝手に良くなっていくんです。不思議な感覚でしたね。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
――あの、おふたりで曲を作るのって『月光』が初めてだったんですよね?
はるまきごはん 初めてですねー。
――それで、こんないい感じのキャッチボールをしながら作れるものなんですね……!
はるまきごはん そうなんです。いま思い出しても、苦しい部分とかはほとんどなかったような……。もう2年くらい前のことなので、そういったことを忘れているだけかもしれないですけど(笑)。
キタニタツヤ あれ、そんな前なの!? それがヤバい……。
――お互いにダメ出しというか、「ここを直してほしいんだけど」という要求はあったんですか?
はるまきごはん いや、たぶんそういうところがあったら、勝手に自分の作業のときに変えちゃえばいいやと思って作業をしていたと思います。改めて言葉に出して「ここ、イマイチだよね」とか、ネガティブなことは言っていないですね。
キタニタツヤ そこで、自分のデータが間引かれていたり、若干変えられていたとしても、「ああ、なるほどね!」って納得していました。お互いに、「了解了解! よし、つぎ行こう!」というモードになっていたんですよね。
はるまきごはん 「確かに、ここはいらないな」とか(笑)。行き来するデータで会話している感じでした。
――でもそれができるのは、お互いにリスペクトしあっているからですよね。
キタニタツヤ そうですね。付き合いも長いですし。
はるまきごはん 「この音楽のここが好き」みたいな、想いの部分で共通していることが多いんです。世代が同じなのも大きいんでしょうけど、決定的な哲学の違いみたいなものがないので、ぶつかり合うことなく仕事ができましたね。
――振り返ってみて、やりやすかったですか?
キタニタツヤ もう、ぜんっぜんやりやすかったです。
はるまきごはん 同じく。でもコライト(※複数で楽曲制作を行う手法のこと)の現場によっては、めっちゃケンカになったりする人たちもいるかもしれないですね(笑)。
――では歌詞に踏み込みたいんですけど、ぜひおふたりが気に入っている箇所を教えていただきたいのですが。
はるまきごはん 自分は歌詞だけじゃなく、MVとか、曲の雰囲気も含めた全体で言及したいんですけど、その観点から「廃物と化したアイロニー クリシェを抜け出したいのに 「また誰かの焼き直し?」 数多の星の屑たち 沈み消えゆくユースタシー 無慈悲な月の光 「アイデンティティさえまやかし?」 「盗んででも愛が欲しい?」」の1ブロックがいいなと思っているんです。確かここを書いたのは自分ではなく、キタニだったと思うんですけど……そうだよね?
キタニタツヤ ……すげえイヤミったらしいから、俺だと思う(笑)。
一同 (爆笑)
はるまきごはん この部分が、『月光』という曲の本質を聴いている人たちに気づかせてくれると感じているんです。直接的なセリフには、あえて鍵括弧が付いていたりね。
――うんうん。
はるまきごはん ボカロバージョンのMVのその箇所は僕が作っているんですけど、羽がバーッと広がるみたいな感じにするなど、作品として見たときにすごく気に入っているんです。
――リスナーのコメントを追っても、この箇所に反応している人はすごく多かった印象です。
キタニタツヤ 僕も、聴いてくれた方の反応を見て、この箇所がめちゃくちゃ響いているんだな……とわかりました。とくに、2次創作を始め、ご自身でクリエイティブをなさっている人たちにグサグサと刺さっているんだなと思ったんです。そういう人たちって、自分の作品に寄せられる声を見て少なからず傷ついていますから。
――ああ、わかります……!
キタニタツヤ そういう意味では、よかったなと思います。これは自分を刺している言葉でもありますし、つねに自戒のように留めておくべきことだなと考えていたので。それにグサッと刺されている人たちを、僕も同じなので、ニヤリとしながら見ていました。
――こういった歌詞は、ビビバスのストーリーを紐解いて考えていったのですか?
キタニタツヤ 具体的なストーリーの運びというよりかは、とにかく彼らの関係性にスポットを当てていきましたね。なのでちょっと視座が高いというか、ストーリーの再現性という意味ではぼんやりしているかもしれないです。
――ふむふむ。
キタニタツヤ でも、これにも理由があります。いつも僕が曲を書いて発信している人たちと比べると、『プロセカ』のメインユーザーって年齢が低いと思うんです。いまは小学生が夢中で『プロセカ』で遊んでいるという話を当時から聞いていたし、中学生のプレイヤーも多いじゃないですか。こういう子たちって、確実に大人よりも想像力が豊かなので、あまり具体的にしたくなかったんですよ。あえてぼやけているほうが、彼らにとってはうれしいんじゃないかと思って。
――そんな狙いが……!
キタニタツヤ そこで、ビビバスのメンバーの関係性に焦点を当てることにしました。この、誰かに憧れているけどぜんぜん追いつけない……っていう経験は僕にもあったので、ここだけを取り出して作ってみたいなと思いました。
――では、はるまきごはんさんはいかがですか?
はるまきごはん 自分はストーリーをひと通り読んでから書き始めたんですけど、けっきょくはキタニの歌詞に足並みを合わせて、ちょっと抽象的な表現を使う方向性に落ち着きました。ですので、ストーリー上で起きた具体的な出来事をそのまま表現することはしていません。でも聴いたときに、「彼らはこうは思わないだろ」とか、「彰人はこのように言わないだろ」みたいな違和感は生まれないように、完全に違う方向を向くことがないように気を付けていました。
――ありがとうございます! では、いまの質問とちょっと似通ってしまうんですが、『月光』の聴きどころを教えてください。
キタニタツヤ やっぱりサウンドが、全体的にめちゃくちゃキタニタツヤとはるまきごはんの中間……ド真ん中にある感じがするんです。しかもそれが、「この部分はキタニじゃない?」、「このあたりのサウンドははるまきでしょ!」とか、ファンの方が考察してコメントしたりしているじゃないですか。
――はい、すごく多いですよね。そういう反応。
キタニタツヤ それが、じつは真逆だったりするからおもしろいんです!
――あー! そうなんですね!
キタニタツヤ 中間を突けたからこその反応だと思うんです。なので、「これはいいクリエイティブだったなあ」と、そこでひしひしと感じたりしています。この曲って、各楽器がめちゃくちゃ混ざり合っていて、たとえばはるまきごはんのギターとピアノがあれば、僕のピアノとギターもあったりするんです。あと、ドラムもそうですね。言ってみればグチャグチャなんですけど、そこがおもしろいし、聴きどころだと思います。
はるまきごはん サウンドはキタニが言った通り、僕もかなり気に入っているんですけど、いま改めて聴いてみて、ふたりで合作する際にこのテーマはすごく合っていたな……って思いました。『月光』っていうのは、“月の光”と“コピーキャット”というテーマが重なったタイトルなんですけど、自分たちふたりが作ったからこそ、この歌詞、この曲になったんだなと感じました。
――その“合作”というところに関して、ぜひお聞きしたいことがあるんです。リスナーのコメントの中に、「サビのリズムや音程はキタニさんで、2分45秒からはるまきごはんワールドが全開になる」というものがあるのですが、この答えを知りたいなと。
キタニタツヤ おお?? 2分45秒……って、どのへんだろう?
はるまきごはん ちょっと、聴いてみますね(笑)。
――ありがとうございます!
はるまきごはん ……あー! 「月の光~」のところだ。
キタニタツヤ はいはい! ここ、ギターはすごくはるまきごはんなんですけど、後ろの「ガゥ~~~ン……!」っていうピアノも「いかにもはるまきごはん!」って言われているんです。
――はい、そういう論調ですよね。
キタニタツヤ じつは、僕なんですよ。
――!! そうなんですか!
キタニタツヤ この壮大な感じは、ふたりで作り出しているってことですねぇ~。
はるまきごはん コメントではわりと、この箇所は全部はるまきごはんが担当して作ったのでは……って言われることが多いんです。
――はい、非常に頻繁に見かけます。
キタニタツヤ それも、すごくわかるんだよな~~~!(笑)
はるまきごはん でもじつは、大本はキタニが作って、そこに自分がギターを重ねたりしているんです。
――おもしろいな~~~!
キタニタツヤ 俺が擬態しているんです。はるまきごはんに。
――擬態(笑)。
はるまきごはん そういう感じかもしれないですね(笑)。
※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。
――でも、『月光』は共同制作ですし、こだわりも多いので、完成までかなりの時間がかかったのではと思うのですが、いかがですか?
はるまきごはん あーーー、どうだったっけなー! ……具体的なことはあまり覚えていないんですけど、そもそも『プロセカ』の書き下ろし楽曲自体が、すごく丁寧に進行していくんです。レコーディングも4人分なので、チェックすることも沢山あるし。加えて今回は、ふたりでデータのやり取りもしていたので……。……でもさ、キタニ的にどう? 「曲作り自体はいつもの半分になってる」って感じなかった?
キタニタツヤ そう、相手が作業しているのを待っている時間を、別の仕事に使えるのは大きかった!
はるまきごはん なので感覚的に、ふたりで作っている時点で、作業時間が半分になる感じがしました。さっきも言いましたけど、待っているだけで曲ができ上がっていきますし(笑)。
キタニタツヤ 総合的な時間で言うと、はるまきごはんが作った最初のデータを僕が魔改造し、そこから微調整して「あとはエンジニアさんに託すだけだね」って話した段階で……たぶん、1ヵ月は掛からなかったと思います。
――え、そうなんですか?
キタニタツヤ データの日付を見ると……ちょうど3週間てところですね。
――それって、めちゃくちゃ早くないですか!?
キタニタツヤ 早い……ですね(笑)。片方が3日作業してデータを渡したら、もう片方も3日作業して戻す……ってことをくり返しています。長くても、一方がボールを持っている時間は1週間以内で、早いときは2日で相手に戻していますね。
はるまきごはん 僕もデータを見てみましたけど、やり取りが始まったのは11月の頭で、その月の末にはデモが完成しています。
――それは、相当な効率で作業が進んだってことですよね。
キタニタツヤ そうですね(笑)。それは間違いないです。
――じゃあ、難産だったな……という気持ちは?
キタニ・はるまき なかったです!
はるまきごはん ぜんぜん、ですね。止まりませんでした。
キタニタツヤ ここ、どうしよっかなぁ~~~……って悩んだところは、相手にボールを投げちゃいましたし(笑)。
はるまきごはん あ、確かに! ひとりで作っているときに止まっちゃうところを、相手に任せられるのが大きかったんです! やりながら思いましたもん。「なんかいつもよりめっちゃ進むんだけど!」って(笑)。
――まさに、好循環ですねえ!
はるまきごはん ひとりで曲を作っていて悩んだときって、その解決策も自分で出さないといけないから、ドツボにハマると動けなくなっちゃうんです。
キタニタツヤ そうなんだよね~~~! でも『月光』のときは、「悩むくらいなら入れるだけ入れて、はるまきごはんに託そう」と思えたんですよ。それがすんなり通れば、「大丈夫だった!」って喜べばいいし、直されて戻ってきたら、「やっぱそうだよね」って納得できましたし(笑)。
――わかりました! では、ゲームに実装されたときの感想も聞かせてください。
はるまきごはん すごく達成感を感じました。自分たちの曲がこうしてゲームの中に入り、たくさんの人が遊んでくれていると実感するのは、すごく独特なものがあります。
キタニタツヤ 僕は、ファン……というか、子どもたちが喜んでくれているのを知って、すごくうれしかったんです。……なんか、おじさん目線のコメントになっちゃっていますけど(笑)。「はるまきごはんと、キタニタツヤのコラボだー!」というピュアな反応を見て、「はるまきごはんを選んだ、自分の戦略勝ちだな」とも思いましたし(笑)。あとは、単純にゲームでプレイできて楽しかったです! 特徴的な譜面が難しくて、難易度MASTERまではクリアはできなかったんですけど、やっぱりいいですよね。リズムゲームで自分たちの曲が流れるのは。
――配信後に多くの反響があったと思いますけど、とくに印象に残っていることは?
はるまきごはん さっきもちょっと話題に出ましたけど、制作中に「ここ、自分が作ったの丸わかりじゃん」って感じた部分が、意外と伝わり切らないんだと実感できたことですね。真逆の解釈をされていたりとか、「ここははるまきごはんでしょ」って言われている部分を、じつはキタニが作っていたりとか。想像以上に、そういう反応が多かったと感じます。
キタニタツヤ 僕は、自分たちで作ったMVの話になるんですけど、基本的に僕、映像のことはぜんぜんわからないんです。
――はい。
キタニタツヤ なのでMVを作る段階で、僕がよく制作をお願いしている“イノウエマナ”という映像作家兼コラージュアーティストがいるんですけど、「楽曲が共作なんだから、映像も彼女と共作にしたらおもしろいじゃん!」って思い付きで言ったんです。それを聞いたとき、たぶんはるまきごはんは内心、(え? そんなことできんの?)って思ったと思いますけど。
はるまきごはん はい(苦笑)。
キタニタツヤ でも、結果的にできたし、その映像もすごく評判がよかったので、何も知らないバカなフリして言うのも悪くないなって思いました(笑)。はるまきごはんの仕事量がやたらと多くなっちゃいましたけど。
はるまきごはん それでも、感覚的にはいつもの半分だからね。
キタニタツヤ そっかそっか!(笑)
――僕がいろいろと拾っていったリスナーのコメントで印象的だったのは、「この曲は、噛んでも噛んでも味がなくならないガムだ」というもの。ああ、これは言い得て妙だと感じました。
はるまきごはん ああ、そんなコメントがありますか。おもしろいですねえ。
――では、『月光』が大好きなファンに向けてひと言お願いいたします。
キタニタツヤ この曲を配信してからすでに2年くらいになりますけど、かなり長いこと愛していただけているな……という実感がすごくあります。……が、いまだから言えますけど、じつは発表したあとに、ちょっと派手さが足りないかもな……と思ったことがあるんです。でもそれが、先ほどの味がなくならないガムに通じると思うんですけど、長く楽しめる耐久力を持った作品につながったのかなと感じました。ふと思い立った日常に聴いてほしいですし、クリエィティブを目指している人は、恐れず、誰かのマネをしながら成長してほしいなと切に思います。
――ありがとうございます! では、はるまきごはんさん。
はるまきごはん 僕もキタニと同じで、「長く聴いてくれてありがとうございます!」と、まず言いたいです。そしてクリエイターじゃなくても、誰しもが何らかのクリエィティブを発揮しなければいけない場面にぶつかると思うんです。そんなときに、困ったり、悩んだりしたら、この曲の歌詞からヒントを見つけてもらえればなと思います。
――わかりました!! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは、はるまきごはんさん。ボカロPになられたきっかけを改めて教えてください。
はるまきごはん わかりました! 自分はもともとイラストレーターとして作品をネット上で公開していたんですけど、すでに音楽も趣味で作っていたので、このふたつを合わせて公開したらもっと多くの人に見てもらえるのでは……と思い至って、あくまでも“イラストレーター視点のアイデア”としてボカロを使い始めました。すると、だんだん聴いてくれる人が増えてきて、1年も経たないうちにボカロPとしての活動がメインになっていました。
――ボカロのソフトは、すぐに使いこなせたのですか?
はるまきごはん いや! 始めたてのころは本当に、ただのベタ打ちです。初音ミクを、ごまかしごまかし歌わせている感じでした。それでも続けていくうちにボカロPの友だちが増えていって、その中に……調声がうまい人がいたんです! これは僕に限った話じゃなく、仲間が増えるとそういう人は絶対にいると思うんですけど。
――はい(笑)。
はるまきごはん その人を見て、(いったいどういうやりかたをしているんだろう)と、自分なりに考えてコツを覚えていきました。
――では、キタニさんはいかがですか? 音楽との出会いもお聞きしたいのですが。
キタニタツヤ 音楽を始めたのは、高校1年のときに初めて楽器を持ったのがきっかけです。ベースだったんですけどそのうちギターも弾きたくなって練習していました。するとドラムにも興味が出てくるわけですけど、パソコンをいじっていたときに、「これ全部やったら、ひとりで曲を作れるよな」ってひらめくんです。すでにボカロの曲は大好きだったので、“自分にもできるかも”という感覚はずっと持っていたんですよね。そこからSNSとかも使って調べていくと、現役のボカロPが曲の作り方とか機材のことをつぶやいているわけですよ。でも、バイト代はすべてボカロのCDにつぎ込んでいてお金がなかったので、「大学に入ったらボカロのソフトを買って、すぐに曲を作って世に出すぞ!」って決めました。それくらいしっかりとイメージしていたので、ボカロのソフトを買う前から歌詞とかメロディーも頭の中で妄想していたんです。「大学受験が終わったら、速攻で作業をして発表するぞ!」ってね。
▲2018年に投稿されたはるまきごはんさんの代表曲『メルティランドナイトメア』。プロセカにも収録されており、MORE MORE JUMP!と初音ミクが歌唱しているぞ!
――そんなおふたりに、ボカロPになるために必要なスキルをお聞きしたいのですが!
はるまきごはん んーーー……いまは違うのかもしれませんけど、自分の時代はやはり、パソコンと向き合うことでしたね。
キタニタツヤ 確かにーーー!!
はるまきごはん いまだとタブレットとかスマホがあれば曲も作れちゃうんですけど、それでも、そういった機器とは向き合わないといけないので、“機材と長時間やり取りする力”は鍛えたほうがいいかもしれません。
――なるほどー! ではキタニさん、いかがですか?
キタニタツヤ はるまきごはんと近いんですけど、やっぱり機械の使い方を覚えなければいけないので……“めちゃめちゃググる力”ですね!
――あーー!!(笑) 検索能力ですね。
キタニタツヤ そうですそうです。あとは“ためらわないこと”ですかね。自分の作品を世に出す行為って、ボカロに限ったことじゃないんですけど、「恥ずかしい」と思ってしまう人がどうしてもいるんですよ。
――はい。子どもたちにも多いです。
キタニタツヤ でも、僕が接したボカロPとか絵師さんて、全員その感覚がないんですよ。しかもヘタクソなうちから、「自分、めっちゃ天才かも!」、「すごいのできちゃったから、みんなに見てほしい!」って言っていて(笑)。恥ずかしいっていう感覚をすっ飛ばしているわけですね。この、「自分の作品最高!」って思えることって、わりと大事だなといまになって思います。その境地に達するにはどうすればいいのか……という問いに対する答えを持っていないのですが、才能のひとつとして、その感覚は憶えておいてほしいなと思います。
はるまきごはん そういう意味では、音楽を始める前に想像していた必要そうなものって、意外といらなかったりするなーって感じます。
キタニタツヤ わかる! そういうものほど、あとでどうにでもなるんだよね。
――楽器とか、楽譜のことですよね。
キタニタツヤ そうです。楽器は弾けなくてもいいですし、仲間がいなくてもどうにでもなりますしね。
はるまきごはん あはは。そうかも。ボカロPなら、師匠とかもいらないですしね。
キタニタツヤ ぶっちゃけ、お金もそれほど必要ないですしね。
――なるほど~~~!!
はるまきごはん ボカロPは、とくにそれが強いかもしれないですね。やる気さえあればなんとでもできちゃう、みたいな。
――でも子どもたちが持つ先入観として、「ピアノが弾けないと厳しそう」とか、「楽譜は必須でしょ?」とか思う子は多いと思うんです。
キタニタツヤ 確かにな~~~! でも、必須じゃないんですよね~!
はるまきごはん “あれば役に立つ”ってくらいですね。楽譜も、奏者がいる現場がない限りは必要ないですし。DTMするだけだったら、パソコンがあれば大丈夫な世界ですから。
キタニタツヤ あと、下手に楽器が弾けると……楽器に触ったこともないのに超いい曲を作っている人に出会ったときに、すさまじく凹みます。
一同 (爆笑)
キタニタツヤ それくらい、楽器のスキルは関係なくなってきているんです。必要なのは本当に、やる気、根性になりますねえ。
▲2018年に投稿されたキタニタツヤさんの代表曲『悪魔の踊り方』。プロセカにも収録されており、Vivid BAD SQUADと鏡音リンが歌唱しているぞ!
――あの、先ほどキタニさんがおっしゃった“恥ずかしさ”についてですけど、作品を身内に見せるのも恥ずかしい……っていう子も多いんです。はるまきごはんさん、これを払拭する方法、何か思いついたりします?
はるまきごはん 難しいですけど、いちばんの方法は“見せない”じゃないですかね。
――ほほう……!
はるまきごはん 僕も、同級生を始めリアルな友だちにはまったくボカロP活動のことは話していないですし。近しい人に話していないからこそ自由にできるというのは絶対にあるので、身内には“言わない、見せない”というのもひとつの方法だと思ってもらいたいかなと。
――それは目から鱗ですねえ。
キタニタツヤ 理解のない身内に見せるのがキツイんです。それよりも、ネットの向こう側にいる顔も名前も知らない人たちのほうが想像以上に優しい……ってことを憶えておいてもいいかもですね。「この曲、いいじゃん!」とか、素直に伝えてくれますから。
はるまきごはん そうそう。“インターネットのみんなに見せる”でいいと思います。
――ありがとうございます……! もうひとつ、ボカロと出会ってよかったと思うことを、ぜひお聞かせください。
キタニタツヤ めっちゃめちゃあるなあ……! たとえば、クリエイターの友だちが増えまくるっていうのは、非常に大きなポイントです。「俺、友だちいないんだ」っていう人でも、長く活動を続けていくうちに必ずひとりやふたりは親しいクリエイター仲間ができるはずです。この、“学校以外の友だち”のすばらしさたるや……! 共通の趣味の友だちって、本当にかけがえがないと思います。大人になっても変わらずに関係が続くので、まずはこれを挙げたいですね。
――はるまきごはんさんは?
はるまきごはん 自分は、音楽活動のほとんどがボカロPとしてのものなので、もしも出会っていなかったら、果たしてどんな人生を歩んでいたのか……。正直、想像もできないです。そういう意味で、やっぱりボカロPって自分の人生そのものなんですよね。
――そもそもおふたりも、ボカロきっかけで出会ったんですもんね。
キタニタツヤ まさに!
はるまきごはん そうですね。それも含めて、ボカロPになってよかったなと思います。
――では、将来ボカロPになりたいと思っている人たちに向けて、先達としてエールをお願いしたいのですが!
はるまきごはん 自分は、ボカロPが増えていくこと自体が本当にうれしいし、ルーキーの方の活躍によってこの界隈が盛り上がっているのも肌身で感じているので、これをお読みのみんなも、ぜひ気軽に飛び込んできてほしいなと思います。
キタニタツヤ すごく夢のある世界なんです。でもそれは、音楽でお金が稼げるとかそういうのではなく、さっきも言った“一生の友だちができる”とか“世界が広がる”とか、あと“音楽を通して自分が世界と接続する”って感覚も覚えられることにあるんです。たとえ300再生くらいしかいかなくても、「こんなに聴いてくれた!」って感激するはずですしね。いまでこそ、僕の音楽はたくさんの人に聴いてもらえていますけど、数百再生で感動していた当時の感覚って、いまでもはっきりと覚えていますから。
――いいですねえ……!
キタニタツヤ いままでの人生にはいなかった理解者に出会えた……と思えるはずなので、そういうことも楽しみにしていてほしいと思います。
――では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いしたいのですが。
はるまきごはん いまのボカロ界隈の隆盛って、『プロセカ』が担っている部分がすごく大きいと思っています。小学生とか、『プロセカ』がなかったらボカロそのものを知らなかったって子も多いはずですし。そんな子たちをひとまとめにするゲームって本当にいいものだなって思うので、これからもボカロそのものとともに、ぜひいっしょに盛り上げていければなと思います。
キタニタツヤ はるまきごはんがいいことを言ってくれたので、僕は『プロセカ』の運営さんに対してちょっと怖いことを。いま『プロセカ』って、ボカロPにとっての甲子園的な立場になりつつあるんです。採用されることが夢でありつつ、ほとんどのボカロPが届かずに夢破れていく……と思っている節があると感じます。ですので運営はユーザーだけではなく、そういう責任も背負っているなと思うんですね。はるまきごはんも言うようにこの世界の一端を確実に担っているので、そこをしっかりと捉えつつ、ますます『プロセカ』の世界を盛り上げていってほしいなと願います。
――わかりました! ありがとうございます!! ……あの、最後にもうひとつだけよろしいですか?
はるまきごはん どうぞどうぞ。
――あの……おふたりの合作というか共同のクリエイティブは、今後も可能性としてはあるんですかね?
キタニタツヤ あー! またやっても、いいよねえ?
はるまきごはん うん、ぜんぜんやりたいよね。
――おお!!
キタニタツヤ ちょっと時間を空けて、お互いの手札がちょっと変わってから作ってみるのも楽しいよね。
はるまきごはん そしてやるなら『月光』を上回るじゃないけど、組むなりの納得感というか文脈みたいなのは欲しくなるよね。
キタニタツヤ はいはい、そうだね。せっかくだから、すごく変なことをやりたいよね。もうひとりくらい加えちゃうとか(笑)。
はるまきごはん プラスアルファという点ではありかも(笑)。『月光』と同じようなことをもう1回やって、「またこの感じね!」って言われてしまってもつまらないですから。
キタニタツヤ あとは、お互いの音楽の趣味がもうちょっと変わってからやるのもいいですよね。まだ『月光』から2年しか経っていないですけど、あと数年も寝かせれば、ふたりともぜんぜん違う音楽を作っていそうですし(笑)。
――ありがとうございます! 個人的にも、非常に楽しみにしております!
キタニ・はるまき ありがとうございましたーーー!
キタニタツヤ
2014年頃からネット上に楽曲を公開し始め、ボカロP”こんにちは谷田さん”として活動をスタート。
2017年より、高い楽曲センスが買われ作家として楽曲提供をしながらソロ活動も行う。
シンガーソングライター以外にも、サポートベースや楽曲提供など、ジャンルを越境した活動を行う。
はるまきごはん
札幌市出身のボカロP/イラストレーター/アニメーター。
自身の楽曲のアニメーションMVやアートワークなど全てのクリエイションを手掛ける。
スープカレーが好き。
YouTube : http://youtube.com/c/harumakigohan
niconico : http://nicovideo.jp/mylist/57349416
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タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
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■ジャンル:リズム&アドベンチャー
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