【プロセカ】ボカロPに直撃! “じん”さんが語る“Leo/need”(レオニ)と、オリジナル楽曲『ステラ』について!【ボカロPインタビュー企画 #4】

じんさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年3月にはハーフアニバーサリーを祝した特集を展開し、

『プロセカ』ハーフアニバーサリー特集は下記の画像をクリック!!
 

 さらに2021年10月には『プロセカ』1周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

『プロセカ』1周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“Leo/need”(レオニ)にオリジナル楽曲『ステラ』を提供された“じん”さんだ。

 さまざまな事情ですれ違いをくり返す、音楽が大好きな幼馴染4人組。仲の良かったあのころに戻りたいのに、なかなか戻ることができない……という、切なくも熱い彼女たちの心模様を、じんさんが作られた『ステラ』が一気に描き切る……! 『カゲロウプロジェクト』の作者としても有名なじんさんに、『ステラ』の誕生までと“ボカロP”という存在についてお聞きした!

※インタビューは、オンラインで実施したものです。

歌詞は、メロディーが乗らないと完成しない文学

じん コロコロの愛読者でしたので、たいへんうれしく思っております!

--ありがとうございます! ……まずはたいへん恐縮なのですが、じんさんがコロコロに登場されるの初めてだと思うので、簡単に自己紹介をお願いできればなと!

じん わかりました! “じん”という名前でボーカロイドの楽曲を作らせていただいておりまして、活動開始が2011年。ですので、今年で11年目になります。僕は『カゲロウプロジェクト』という、音楽や小説、マンガなどなど、いろいろなメディアでひとつの世界観を別の視点で描くという作品群を作ってきて、現在に至る感じです。

 ……えーっと、これじゃ薄いかな。自己紹介……自己紹介……ほかに言えることは……あ! アボカドが好きです!!

--!!?

じん これで、すべて出し切りました。

--ありがとうございます(笑)。じんさんは『カゲロウプロジェクト』があまりにも有名ですので、そもそも自己紹介をお願いすることに無理があった気がしてきました……。

 ではさっそく、楽曲に関するお話をお聞かせ願えればなと。今回、『プロセカ』のユニット“Leo/need”(レオニ)にオリジナル楽曲『ステラ』を提供されましたが、この依頼を受けたときの率直な感想をお聞かせください。

じん じつは僕、ボーカロイドを用いて楽曲を作り、世に向けて公開する……という活動はしていたんですけど、初音ミクちゃんをテーマにした作品作りはほとんどやっていなかったんです。あくまでも、『カゲロウプロジェクト』とか自分で考えたお話をボーカロイドで表現する……ということがメインでしたので、お話をいただいたときは率直に「なんで僕なんだろう?」と思いました。

--あ! そうだったんですね!

じん そうなんですよ。なんて言うか……不思議な感じがしました。「よく僕に頼もうと思ったなー!」って(笑)。僕、自分が作った曲はすごく好きなんですけど、それでも「ボカロP、たくさんいるのにな」なんて思ったんですよね。

▲プロセカではじんさんが作った『カゲロウデイズ』(作詞・作曲:じん)、『チルドレンレコード』(作詞・作曲:じん)、『夜咄ディセイブ』(作詞・作曲:じん)が遊べるぞ!

--そんな中、レオニのメンバーをご覧になったときはどのような印象を持たれましたか?

じん レオニが「バンドをやっている女の子たちです」という話は聞いてはいたんですけど、キチンと設定を見たときに「本当にバンドっぽいな!」と感じたことをよく覚えています。とくに、他のユニットと比べると圧倒的にロックバンドじゃないですか。僕もロックバンドが好きで、いろいろな影響を受けながら音楽をやってきた人間ですけど、それもあってかレオニのメンバーが目指す音が……スッと思い浮かぶくらいしっくりきたんです。「ああ、バンドなんだな」って。もしも他のユニットの楽曲を依頼されていたらもっと悩んだりとか、深掘りするのに時間が掛かったと思うんですけど、そういうことはほとんどありませんでした。レオニの子たちが考えていること、悩み、方向性などなど、すごく“ふつうっぽい”って感じたんですよね。

--ふつう……ですか。

じん はい、ふつうです。僕、音楽ってぜんぜん特別なものではなく、むしろ“ふつうの人がやらなきゃいけないからやるもの”だと考えているんですね。そういう意味でレオニのメンバーを見たときに「ふつうの子たちだ」って思ったし、「この子たちからは……こういう音が生まれるんだろうな」って、すんなりと受け入れることができたんだと思います。

--依頼を受けたときは戸惑いを感じながらも、彼女たちを見た瞬間、スッと腑に落ちた感じで。

じん はい、そうですね。こういう曲を演奏しそうだな……という妄想がすぐに浮かんできました。

--確かにレオニの子たちって、他のユニットとちょっと違うかもしれませんね。根底にはもちろん悩みや葛藤があるんですけど、それもじつに高校生っぽいというか。

じん そうなんです! 「ふつうの子だなー!」って感じがしますよね! 僕はそれを、すごくステキだなと捉えることができたので、いい出会いだったんでしょうね。“特別じゃないから音楽をやる”という気持ちも理解できたし、その上で「きっとパワフルな音楽をやるんだろうな!」とも感じることができました。

--そして作られた『ステラ』はイベント“雨上がりの一番星”に合わせて公開された楽曲になります。このイベントストーリーは天馬咲希ちゃんがキーキャラクターとなっていますが、咲希ちゃんに対する印象は?

じん 表面的には元気そうな印象を受けつつも、葛藤を経て絆が試される……というお話になると事前に伺っていました。咲希ちゃんは、パッと見は明るそうだけどそれだけではなく、表には出さない悩みもある。ふだんの明るい自分も、悩みを外に出さなかった自分もしっかりと見つけることができて、その先にある演奏で気持ちを爆発させる……。すごく人間らしい、魅力的な子ですよね。強い……という感じは受けませんけど、それでも“かっこいいキャラクター”。自分に向き合える人って、すばらしいですよね。

--ほかのレオニの子たちって、ある意味わかりやすい発露がありますけど、咲希ちゃんに関しては表面的には明るいけど、何かを押し殺している感じもして読み切れないですよね。

じん そうなんです! すべてをさらけ出さずに抱え込んでいく……という部分を、『ステラ』を作るときに大切にしました。表面的に明るいということは、きっと心の中に泥臭い何か……“それ以外の自分”を持っているんだろうな、って。そんな、内面にある自分を爆発させるものが咲希ちゃんにとっては音楽で、そこでは明るく元気なだけではなく、もっと本音の部分をさらけ出すんじゃないかと考えました。ということは、そういうことをしっかりと“言える”音楽じゃないとダメだな、と……。

--いまの言葉に、『ステラ』で語られていることがすべて詰まっている気がします。

じん はい。テーマとなると、やはりこのへんになるかなと思います。

▲イベント「雨上がりの一番星」の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--僕も何度も何度もくり返し『ステラ』を聴いています。じんさんのおっしゃる通り、ただ前向きなだけじゃなく、葛藤とか、殻を破ろうともがく姿も表現されているなと感じました。

じん ありがとうございます。おっしゃる通りで、とくにテーマにしたのは“葛藤”ですけど、あとは自分の好きな小説などをイメージして膨らませていった曲なんですよね。「星の曲にしよう」とまず決めて、じゃあそれはどういう星かというと、地面から飛び上がって空にまで羽ばたいて、そこで光り輝く星……。最初からキレイに見えるモノや、夢のためになんの躊躇もなくがんばれる人ってとてもステキだなとは思うんですけど、そういったものよりも、むしろ……なかなかがんばれない、自分を出そうと思っても怖くてできないとか、ある種ネガティブなことのほうが多いよねってことを、『ステラ』を作り始めたときに思ったんですよね。

--すごくわかります。

じん 何かになりたいと思ったからではなく、“自分は自分だ”と気づいたことで光ることって、あるんじゃないかなって……。そこで、思ったんです。星になろうとするんじゃなくて、自分に気づいて光っているってものを人は星と呼ぶんじゃないかな、と--。これがテーマになった楽曲なんですけど、メンバーが胸に抱えている何かや葛藤といったものを、Leo/needの子たちが手を取り合って……いや音を重ねて表現する音楽とは、こういうものなんじゃないかなと思って、『ステラ』を完成させました。

--先ほどじんさんがおっしゃった小説って、宮沢賢治の『よだかの星』でしょうか?

じん あ! まさにそうです! 学生バンドの曲ということで、自分が学生時代に影響を受けた作品へのオマージュになっています。当時、『よだかの星』を読みながら「よだか君、かっこいいなあ」って思ったんですよね。なんたって彼は、星になりたいと思って上に上にと飛んでいきますから。それだけでも十分な才能というか、迷わず飛んでいける力があるだけでもすばらしいんですよ。ですので『ステラ』でも、何者かになるのではなく、自分の輝き方を見つけることをテーマにしたいなと考えました。

--すごく歌詞の中に表れていますね。「所詮 僕は僕だった」とか……。

じん はい。まさに、その部分ですよねー。

--僕も子どものころに『よだかの星』を読みましたけど、当時受けた印象と、大人になって読み返したときに受けた印象がまったく違って驚いた覚えがあります。

じん あー、わかります! そういう作品なんですよね。僕も、音楽を始めようと思ったときに、まわりの人から「音楽家になんてなれないよ」って言われましたけど、そういうネガティブな意見を突っ切って飛んでいくってことや不安を振り切る姿が、歌詞に表れていると思います。決してウソの話ではなく、僕がちゃんと見たものを歌詞にしようと思ったんだよなぁ……!

--とくにお気に入りの歌詞ってありますか?

じん いま挙げてくださった箇所が、とくに好きなんです。「世界にとって 僕にとって ふさわしかった役なんて 要らない 知らない  所詮 僕は僕だった」って言うんですけど、“所詮僕は僕”って……ある種、あきらめている歌詞なんですよね。「誰にもなれない」と打ちひしがれているというか。でも、なんて言うんでしょう……そのセリフを、顔を上げて言っているように聞こえる音楽にできたなと、自分で思っているんです。この部分、曲に乗せて流したら、後ろめたい歌詞には聴こえないと思うんですよ。「所詮僕は僕だった」、「僕でしかない」っていうことに気が付いた瞬間から光り始めるということを、ここで表現できたんじゃないかと思っています。

--ちなみに僕は「誰かの書いた地図じゃ灯る場所は 探せない」って部分が、めちゃくちゃ好きです。

じん あーーー! そうですね! そこ、僕もすごく好きです! 誰かが「こうだから」って言ったことをそのままやるんじゃなく、本当に自分で悩んだからこそ、その道が正しくなっていく……っていうことがあると思うんです。そういうことを、ここで表現したかったんですよねー。……っていうか、全体的に『ステラ』の歌詞は好きです(笑)。

--「今日を諦めなかった故の物語」とか、すごくレオニに通じるものがあって、歌詞を見たときに鳥肌が止まらなかったです。

じん ありがとうございます! やっぱり歌詞は詩ではなく、表現する文学だと思うんですよね。そういう意味では「今日を諦めなかった故の物語」って、パッと読むと日本語としては節が感じにくいと思うんですけど、曲に乗った瞬間に“引っ掛かる言葉”になるんですよね。僕、小説を書くときも、他の人が書いてこなかった表現をやってみたいとつねづね考えているんですけど、歌詞はメロディーが乗らないと完成しない文学なので、ここがまたおもしろい!

--僕も文章を書く人間なので、よくわかります。

じん あとはサビで、「吐き出す 息が白冷めて」という歌詞があるんですけど、“白冷める”っていう言葉がそもそも存在しないんです。

--あ! やっぱりそうなんですか! 調べちゃいましたもん!

じん すみません(笑)。空を飛んでいるとどんどん空気が冷たくなって、息も白くなっていく……という世界を簡潔な言葉でどう表現しようかなと考えたんですね。『よだかの星』のような、自分がリスペクトしている昔の文芸って、言うなれば小説家たちが日本語を作っていた時代に生まれたものじゃないですか。そこで生み出されたあまたの表現と同じように、決してハチャメチャなものではなく、ひと言だけでも何が起きてるかがわかる造語を作ろうと思って、“白冷める”と書きました。この字面を見ると、息が白く冷え固まっていくかのような寒い瞬間を思い浮かべてくれるかな、って。ですのでこの歌詞も、かなりのお気に入りです。

--近代の小説家たちって、言葉の発明家ですもんね。そういう意味ではじんさんの言葉作り、言葉の選びかたは、それに通じるものがあります。

じん ありがとうございます。でもこういった造語って、気づく人は少ないんだろうなって思います。とは言え“白冷めて”は、意味以上に“音”がよかったですね。歌詞として、それがとても大事だと思っていたので。

--では、この曲の聴きどころとなると……。

じん 「言葉を聞いてほしい」と思っていました。加えて曲としてですと、“ストレートなロックナンバー”と制作サイドからリクエストされていたんですけど、スタートからゴールまで一本道だとおもしろくない。もともと、少しひねくれているというか、変わった部分があったほうが聴いていて楽しくなると思っていたので、『ステラ』で言うと……Bメロですね。「あぁ、僕らの現状は いじらしく フラットして」の箇所、メンバーそれぞれが不思議な音を鳴らすんだけど、決してズレてはいない。あの刹那は音楽的に、自分で聴いても「かっこいいな!」って思います。「クールなことやるなあ!」って(笑)。

--ちなみに『ステラ』の制作日数って、どのくらいになるんですか?

じん えーっと、どれくらいだったかな……。わかりやすく、1番のメロディーとかが音としてできあがったのは、1日くらいだったと思います。その作業に至るまでの時間がかなり掛かったと記憶していますけど。頭の中でイメージが明確になるまで、本を読んだり、楽器を弾いたりしながら、「レオニって、どんな音を出すんだろうなぁ……」って、かなり長いこと考えていたんですよね。

--イメージを固めるまでに、相当な時間を……。

じん 全力疾走をする前に、準備運動をするじゃないですか。僕の曲作りってそんな感じで、あれこれと考える時間をたくさん取って、「……よし!」と思った瞬間から書きあげていく。その段階になると「こういう曲にしよう!」という考えが明確なので、その後は1日くらいでまとまるんですよね。なので、頭の中で設計図を作る作業のほうが圧倒的に時間が掛かります。

--全体的な印象で、難産だったなって思いますか?

じん いや、あまり悩まなかったですね。まるで最初からこの曲があったかのように、迷わず突き進めた印象です。完成したときも感慨というか……「うん、そうだよね」って感じで(笑)。それくらい、イメージがしっかりしていたんでしょうね。

--では、『ステラ』が『プロセカ』に実装されたのをご覧になったときの感想をお聞かせください!

じん それが……なんか、プロセカっぽくなかったかなと思いました(笑)。オシャレさよりも汗臭さを感じる曲だと思うので、これで大丈夫かな……って。揶揄しているわけではなく、『プロセカ』に入っている他の方が作られた楽曲って、すごくキレイでキラキラしているじゃないですか。そういった中だと、僕の曲が流れた瞬間に土の匂いがしてくるというか……。まあ、もともと僕はこういったゴツゴツした感じの曲が好きなので、「ああ、やっぱりこういう聴こえ方になるよな」と思ったんですけど。

--合わないなんて考えたことすらなかったので、じんさんがそう感じたとは意外です。

じん 『ステラ』っていまっぽい曲ではないし、キラキラとも、オシャレとも遠いと思うんですね。でも、僕自身はそういう曲が好きなのでいいんですけど、同じような嗜好の方が『プロセカ』を遊んでくれるかわからなかったので……。そもそも、僕が初音ミクに対して抱いていたイメージが“かわいい”、“華々しい”、“キラキラのステージが似合う”というものなので、僕の曲はそぐわないかなぁと考えていたのが大きいと思います。好き嫌いの話ではなく、あくまでも先入観なんですけどね。

--でも、やっぱり『ステラ』は、ユーザーに多大な影響を与えた曲だと思います。聴かれた方のコメントに、「『ステラ』は『プロセカ』の原点のひとつにして、到達点のひとつでもある」というのを見て、深く頷いてしまいましたもん。

じん あーーー! それはうれしいですねえ!! ありがとうございます!!

--『ステラ』が流れたのって『プロセカ』で実施された初めてのイベントのときなんですよね。咲希ちゃんに焦点が当てられたイベントだったんですけど、アフターライブで咲希ちゃんが歌い出して『ステラ』が初お披露目されて……。この一連の流れが非常に物語性が強くて、インパクトが絶大でした。

じん あ!! それほどの扱いだったんですね!! 僕、じつは『プロセカ』がめちゃくちゃヘタクソで、あまりやり込めていなかったんです。ギターのクセが出るのか、ノーツのタイミングよりもチョイ前で叩いてしまったりして……。なので、それほどの扱いをしていただいていたってことを、いま強烈に認識しました!

--多くの『プロセカ』プレイヤーが、初めて『ステラ』を聴いたときに悶絶していたんです。

じん うわー、それはうれしいですね! ありがとうございます! 皆、もっとオシャレな曲を期待していたかな……なんて考えたりもしたんですけど、よかったです!

--もうひとつ、印象に残っているのが、レオニの物語のカギを握っている“しし座流星群”です。『ステラ』のFull ver.が公開された翌日に……。

じん あ、そうでした! 公開の翌日に、この年のしし座流星群がもっとも輝きを増したんですよね。

--これは、じんさんからの提案で公開日が決まったのですか?

じん いえいえ! 逆に、そういうタイミングを見計らって公開してくれたんだと思います。こういったスケジュールは運営さんが決めているので、最善のときを選んでくれたんじゃないかな、と。そんなにロマンチックな曲ではないですけど、輝きを増した星を見上げながら『ステラ』を聴くって……やっぱり、いいですよね。

--そのあたりもひっくるめて、すごく物語性の強い楽曲になった印象です。

じん はい、そうですね。たくさんの名曲が収録されている『プロセカ』の中に、星をテーマにしたこんな曲が入っていてもいいのかな、って、いまは思います。

--本当に『ステラ』は多くのプレイヤーに影響を与えましたけど、そんな方々にひと言コメントをいただきたいのですが!

じん 僕が好きで作った曲なので、この曲が好きな人のことは僕も大好きです。Leo/needのことをしっかりと考えて作った曲なので、あの子たちがこういう音楽をやることに共鳴された方って、僕も尊敬するというか……感性を同じくする“同志”だなって思います。いい曲ですよね。僕も『ステラ』は大好きです。

--ではここから、ボカロPに興味津々なコロコロ読者が聞きたいことを質問させていただきます! まず……じんさんがボカロPになられたきっかけを教えてください!

じん 高校を卒業した当時、音楽がすごく好きだったのでロックバンドをやっていたんです。でも、あまりうまくいかなかったんですよね。人間関係の構築とか、ライブハウスでのやり取りとかも苦手で……。けっきょくバンドは解散してしまうんですけど、それでも音楽だけは続けたいなと強く思って。そこで、作曲家になるための事務所を見つけてそこに履歴書を送ったりもしたんですけど、連絡すら来なかったり、来ても一次試験で落ちまくったりして、「いよいよコレはダメかも……」って思い始めたんです。

--は、はい……!

じん そんなとき、友だちのお兄さんが“ボカロP”っていうものをやっていると知り、話を聞いているうちに「お前もやってみたらいいんじゃない?」と言われたのが出発点だったと思います。そして興味を持って調べているうちに、「ボカロだったら、ひとりでできるかな……」と思ったことが、いまにつながりました。そういう意味では、“ひとりでも活動できる”と知ったことが大きかったかなと。……うん、暗いですね。じつに(苦笑)。

--そして実際にひとりで活動を始めて……すんなりと曲作りは進んだのですか?

じん そうですね! 最初に作った曲が『カゲロウプロジェクト』の『人造エネミー』って曲。これが、僕が作る音楽を初めて体現した楽曲になると思います。いま聴いてもかなり好きな楽曲なんですが、制作期間は……3ヵ月くらいですかね。僕の印象としては、けっこうスラっと作れた感じではありました。

--3ヵ月間、ひたすら作業を?

じん はい。毎日毎日、あの曲を作るために、1日に何時間もあーでもないこーでもないってトライ&エラーをくり返しながら、ひたすら煮詰めていきました。おそらく、完成までにいちばん時間がかかった曲ではあるんですけど、それは本当に何も知らないところから始めたので、ソフトの学習もいっしょに進めていたからですね。ひとつ音を打ち込んだら、「これはダメだな」、「これはなかなか」なんてのをくり返して、その間にいろんなボカロの曲を聴いて、「どうやったらあんなにかっこよくなるんだろう……!」と考えて……。それもあってかなりの時間はかかっちゃったんですけど、ひとつの曲を積み重ねて作るっていう作業ができたので、結果的にはよかったんですけどね。

--その作業を3ヵ月も続けられたってことは、やっぱり楽しかったんですか?

じん いや! そんなこともなかったんですけど……生活のその他の部分が、楽しくなさ過ぎたんです! 友だちとかもぜんぜんいなかったので、楽曲作りをしているとき以外は無味乾燥としていたというか。……そういう意味ではもしかすると、退屈な生活をごまかすためにやむを得ず作曲をしていたって感じなのかな……(笑)。ていうか、こんな暗い話、ボカロPを夢見るコロコロの読者にするのが心苦しくなってきました!!

--いえいえ! こういう飾りのないお話こそ参考になると思います!

じん 確かに、正直に話すべきですよね、こういうことは……(笑)。当時、ゲームをやってもヘタクソでプロゲーマーを目指せるわけでもなかったですし、「じゃあオンラインゲームで楽しく遊ぼう!」と思っても、けっきょくオンラインでも友だちを作れなくてひとりで遊んでいましたし……(苦笑)。

--「じんさんも、そういう時代があったんだ!」って、逆に勇気と言うか、安心感を覚える読者が続出すると思います!

じん いやいや、ガッカリだと思いますよ!! 天才じゃなくてごめんなさい!(笑)

▲2011年2月17日にニコニコ動画に投稿されたじんさんのボーカロイド初楽曲『人造エネミー』。この楽曲を皮切りに数々の名曲が生み出されていく。

--では質問を変えまして(笑)、ボカロPになるために必要なスキルはありますか? たとえば、楽譜を読めたほうがいいとか、楽器やってた方がいいとか。

じん おそらくですが、楽譜が読める人のほうが少ないんじゃないかなー、と。読めそうな顔をしてる人も多いですけど、「本当にー?」って(笑)。僕も、いまとなっては楽譜を読んだり書いたりしますけど、じつは……書くのは超嫌いです。

--あ、そうなんですか?

じん 逆に、楽譜っていりますかね? いやもちろん、必要なときもあるんです。たとえば、初めて会う人に自分の楽曲を演奏してもらうときは、口でひとつひとつ説明できないので、楽譜をお渡ししますし。でも必須かと言われると、僕、基本的には書いていないですからね。ゆえに、結論としては楽譜が読めなくても問題ないです。

--おお! ハードルがひとつ下がりました!

じん それよりも重要なことがたくさんあるんです。楽譜で悩むくらいならそれは捨てて、どんな曲を作ろうかと悩むことに時間をたくさん使ってください。作曲家の仕事は楽譜を書くことじゃなく、“いい曲を作ること”ですから。焦らなくても、楽譜が必要になったらそのうち読めるようになりますので(笑)。

 それと楽器ですが、これはやった方がいいかなと個人的には思います。その理由は、単純に楽しいから。たまに、楽器を弾かずに曲作りをされている作曲家の方とお話する機会がありますけど、皆さん一様に「楽器が弾けたらよかったな」って言います。僕はギターやピアノを弾きながら曲を作ったりしますけど、べつにうまくもなんともありません。でもそれが、僕の曲作りのプラスになっているのは間違いないと思うんです。いまはネットを見れば楽器の弾き方を教えてくれる人や動画がいくらでもあるので、チャンスの時代です。高くなくてもいいから何かしらの楽器を買って練習すると、行き詰ったときに“演奏の楽しさ”が助けてくれるかもしれませんよ。

--楽器を弾いていると、“音楽が好き”という気持ちを再認識できそうですもんね。

じん まさに、その通りだと思います。それと……人に聞かせられる目標を立てることが、いちばん重要かもしれません。

--人に聞かせられる目標……ですか。

じん 音楽って、人に聴かせてナンボだと思うんです。それはイコール、想いを伝えること、気持ちを伝えること、「コレが好き!」って人に聞かせること……。これが音楽の正体だと僕は考えるんです。ぜんぜんヘタクソで、キチンとした形になっていないモノであっても、まずは誰かに聴いてもらって、その人から言葉をもらうまでがんばるってことが、何よりも重要なことなんじゃないかな、って……。

 まわりを見渡すと、スゴい人がたくさんいる世界なんです。それこそ音大出身だったり、絶対音感があったり、海外に留学して音楽を学んでいました……なんて人もいますしね。そんな中、僕は楽譜を読むのも人の10倍くらい時間が掛かるし、楽器もうまくないですけど、それでも“人に聴かせたい”、“この曲を完成させたい”っていう気持ちが強くあるから、こうしてやってこれたんだろうなって思います。

--これは、ボカロPを目指す人に響く言葉ですね。でも、人に作品を見せたり、聴かせたりすることって恥ずかしいじゃないですか。それを克服するにはどうすればいいのでしょうか?

じん 僕は、いまでも恥ずかしいです。作品を発表するって、自分の裸を見せるみたいものですから。本当は、モテたいのでかっこいい自分でいたいんです。「所詮僕は僕だった」なんて言っているのを見られたくないですし(笑)。もっとクールでかっこいい人になりたいんですけど、でもそういう姿を見せつけることが、自分の音楽でもあるんですよね。恥ずかしいと思っちゃうくらい心の奥の方にあるものを持ってこないと、響かない。逆に言うと、人に見せてもいいやって思ってるような、上っ面のだけのモノってべつに、音楽にする必要もないですからね。そういう意味では、恥ずかしいって思うことは当然で、なにもおかしなことではないです。だって、恥ずかしいに決まっているんですよ。歌詞を書いてポエムを書いて、自分で考えたメロディーに乗せてボーカロイドに歌わせるとか……。でも、それが音楽なんです。

--では、ボカロPになってよかったと思うことって、具体的に何かありますか?

じん 人の真似をしないで進んでこれたこと……ですかね。僕がバンドを続けていたり、歌い手になっていたら、おそらく誰かの歩いた道を後からくっついていくことだけ考えるようになっていたと思うんです。でも、ボカロPは目指した瞬間から前に道がまったくなくて、ずっと「何が正解なんだろう……?」と悩みながら、道なき道を歩いてきた印象なんです。でもそのおかげで、自分だけの道を歩いてくることができました。

--うんうん……!

じん いまでも、“これが正しいボカロPの道だ!”なんて断言できるルートは存在しない思うので、なんとなく誰かのマネをしたくなる子もいると思うんですけど、まずは踏み出す勇気を持ってもらいたいなと思います。

--わかりました! では、ボカロPを目指す少年少女に向けて先達としてエールをお願いいたします。

じん うわーー! なんだろう!! ……楽しくはないかもしれないけど、やってよかったって思えることは必ずあるので、「つまらないな」とか「退屈な人生だな」なんて思うことがあったら、僕みたいにとりあえず始めてみることをおすすめします。僕はボカロPになったことで“自分に出会う”っていう経験を何度もできたので、他人に迎合して何かをすることが苦手な子は、なんとかお父さんとお母さんを言いくるめて、ボカロの環境を整えてみてください!!

--では最後に、『プロセカ』にもエールがありましたらぜひ!!

じん 僕がエールなんて送らなくても大人気だと思うので……また楽曲の制作依頼、お待ちしておりまーす!!

--いいですね!!

じん 待ってまーす!!(笑) 今日はありがとうございました!

--こちらこそ、楽しいお話、本当にありがとうございました!!

じん

1990年10月20日生まれ。北海道出身。
作曲家、作詞家、小説家、脚本家などアーティスト・クリエイターとして幅広く活動。
巧みなメロディセンスに、世界観・ストーリーを盛り込んだノスタルジーな歌詞感が多くの反響を呼び、主に若年層から絶大な支持を得ている。

 

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☆☆ボカロPインタビュー企画☆☆

連載記事

#1:市瀬るぽさん       

#2:R Sound Designさん

#3:ナユタン星人

#4:じんさん

 

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ボカロPに直撃インタビュー!

#1:DECO*27さん

#2:ピノキオピーさん

#3:Mitchie Mさん

#4:Gigaさん

#5:syudouさん

 

 

衣装カタログ

#1:バーチャル・シンガー編

#2:Leo/need編                        

#3:MORE MORE JUMP!編

#4:Vivid BAD SQUAD編      

#5:ワンダーランズ×ショウタイム編

#6:25時、ナイトコードで。編

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai