市瀬るぽさんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
2021年3月にはハーフアニバーサリーを祝した特集を展開し、
さらに2021年10月には『プロセカ』1周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』は、ゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、『プロセカ』のリリース前に実施された“一緒につくろう!楽曲コンテスト”で見事採用作品に選ばれ、その楽曲『alive』を提供されている“市瀬るぽ”さん!!
コンテストで採用されたことで『プロセカ』に参画し、一気に知名度を上げた市瀬るぽさんの歩みは、まさに将来のボカロPを目指す少年少女たちに刺さりまくると思いますよ!
※インタビューは感染対策を行ったうえで、実施しております。
“いっしょに歩こうね”という想いを乗せた『alive』
--コロコロオンラインに市瀬さんが登場するのは初めてだと思いますので、まずは自己紹介をお願いいたします!
市瀬るぽ はい! 2011年からボカロPの活動としてニコニコ動画に動画の投稿を始め、昨年、活動10周年を迎えたボカロPです。ジャンルとしては“エレクトロ・ポップ”とか、ニコニコ動画で言うところの明るくてキラキラな“ミクノポップ”をおもに作っています。今回、『プロセカ』に採用された『alive』が、まさにその代表となりますね。
--かなり古くから活動されていたんですね!
市瀬るぽ “ボーカロイド”というものが出てきたのが、僕が中学生のころ。そこから遠くないうちにボカロPとしての活動を開始した感じですね。
--昔から、作曲に興味があったんですか?
市瀬るぽ じつは作曲自体は、ボカロを知る前からやっていたんです。ずっとエレクトーンを習っていて作曲コンクールにも出ていたので、曲を作ることは小学校1年生のころからやっていました。ボーカロイドを知って、環境を整えて曲作りを始めるのは高校生になってからですけど。
--小学校1年生のときからそういった環境にいた……ということに、まず驚かされます。
市瀬るぽ 僕、楽譜通りに演奏することが好きじゃなくて、コンクールに出ても楽しくなかったんですよ。そのことを正直に先生に伝えたところ、「じゃあ自分で好きな曲を作って、好きなように演奏すればいいよ」と言ってくれて、他の子どもとは別に作曲の勉強をさせてもらえるようになりました。まあ……かなり特殊だと思いますけど(笑)。
--その先生、スゴいですね! 見る目があるのはもちろんですけど、個性重視で育てるやりかたが。
市瀬るぽ そうですね! いま思うと、ちょっと変わった先生だったなって(笑)。
▲るぽさんオリジナルのマスク!とってもかわいい~!!
--そんな市瀬さんは、『プロセカ』のリリース前に行われた“一緒につくろう!楽曲コンテスト”でグランプリ受賞されたわけですけど、応募されたきっかけは?
市瀬るぽ このコンテストは“piapro(ピアプロ)”(※クリプトン・フューチャー・メディアが運営するコンテンツ投稿サイト)が主催だったと思うんですけど、piaproさんは以前から“マジカルミライ楽曲コンテスト”を展開されていました。僕はずっとそれに応募し続けていて、一度は準グランプリをいただいたんですけど、なかなかグランプリには手が届かず……。そんな2020年に『プロセカ』の存在が明らかになり、同時に“一緒につくろう!楽曲コンテスト”の告知がなされました。そのときの空気が……なんというか、「新しい何かが始まるのかも」という予感や希望にあふれるもので、僕もぜひ、この『プロセカ』というコンテンツに関わりたいと思ったんです。そこで、毎年応募していたマジカルミライ楽曲コンテストはお休みして、『プロセカ』のコンテストに全力を注ぐことにしました。
--新しい何かが始まる予感……ですか。ちょっと……心が奮えてくるものがありますね。
市瀬るぽ そうなんです! その時期、ボカロ界隈はちょっと落ち着いた感じになっていたと思うので、現在の『プロセカ』の隆盛は想像もできなかったですけど、“何かが始まる”ってのは確実に予感しました。このコンテスト、最終的にはかなりの楽曲が応募されたと思うんですけど、やっぱりみんな、僕と同じように心がザワザワしたんだろうなぁ……って思いました。
--でも実際、新しいことが始まりましたね。『プロセカ』、いま勢いが凄まじいですもん。
市瀬るぽ いやあ、始まりましたねやっぱり! さすがに、1年ちょっとでここまでの規模に成長することは想像の範囲外でしたけど(笑)。
--採用の報告を受けたときは、どう感じましたか?
市瀬るぽ いやーーー! もう、めちゃくちゃうれしかったですよ! メールで届いたんですけど、こういったコンテストで採用されること自体が初めてだったので、それもひっくるめてうれしくてうれしくて……。しかも僕、じつはひとつのこだわりをもってコンテストに応募していたので、それが認められたことも感動でした。
--ほう? そのこだわりとは?
市瀬るぽ 僕みたいな投稿者の間で、こういった楽曲コンテストは“初音ミクをフィーチャーした曲じゃないとグランプリは獲れない”という噂……都市伝説みたいなものがあったんです。でも、僕はどうしても自分の好きなボカロで受かりたかったので、『alive』も鏡音リンをフィーチャーして作りました。そして実際、この楽曲で選ばれたことで、“どんなボカロで作っても、しっかりと評価される”という実績を作ることができました。それが、何よりもうれしかったことかもしれませんね。
--ニコニコ動画で『alive』を見させていただきましたけど、弾幕で飛んでくるコメントも前向きなものばかりで、ちょっと感動してしまいました。
市瀬るぽ あれは、僕自身もビックリしたんです。ネットで投稿する以上、ネガティブなこともあるだろうなと覚悟はしているんですけど、『alive』に関してはそういった後ろ向きなコメントは見たことがありません。鏡音リンちゃんの明るさを大事にして作った曲ですけど、その通り、聴かれた方の反応も明るくて、僕のほうが感動してしまいました。
--率直に、すごくポジティブな楽曲ですね。
市瀬るぽ めちゃくちゃポジティブだと思います。……そう、ボカロの曲って、ちょっとダークな面があるものも多いじゃないですか。そういった楽曲を聴いていると、ある日ふと「明るい曲が欲しいな」なんて思う瞬間があると思いますが、そういうときに必要とされたいなと考えたんです。鏡音リンちゃんはいろいろな曲が歌いこなせると思うんですけど、僕の中にあるリンちゃんは……絶対に、明るくて元気いっぱいです。ポジティブで、一本気で、ストレートな歌詞を歌うのがいちばん似合う。ボカロPの“プロデュース”という部分において、僕はそれがいいかなって思って作りました。
--聴いた方からも、「すごく気持ちが明るくなった」、「明日への元気をもらったた」なんていうコメントが殺到しています。
市瀬るぽ いやあ、めちゃめちゃうれしいですね……。本当にそうなってくれてらいいなって、心から思います。聴いてくれた方たちの背中を押すというより、「いっしょに歩こうね」という想いを込めて作った曲なので、何らかの理由で元気を失くしてしまっている人たちに寄り添ってくれるといいなと思います。
--いま、ちょっと鳥肌が立ちましたよ。「いっしょに歩こうね」って、すごくいいですねー! そんな市瀬さんが、『alive』の中でとくに気に入っている歌詞は?
市瀬るぽ コンテストに応募するために『プロセカ』の情報をいろいろと集めていたんですけど、公式サイトから得られたキーワードは『Untitled(アンタイトル)』(※『プロセカ』のメインストーリーのカギを握る単語)とか“誰もいないセカイ”とか、とにかく規模の大きいものだったんですね。でもその中で、ゲームのタイトルにもある“カラフルステージ”がすごく印象に残って。そこで、「“色”をテーマにしよう」と思い、ボカロの鏡音リンを題材にすると決めて、サビの歌詞で「白紙の想いから 溢れ出したから七色に変わる 世界のカタチ」と書きました。
--うんうん……!
市瀬るぽ ここにちょっと仕掛けをしていて、「白紙の想いから 溢れ出したから」の”から”が平仮名なんですが、そこは英語の“color”とかけています。Cメロにある「たった一つ 変わらないから」の部分も同様で、“color”の想いを込めて書いています。一度聴いてもらえばわかる部分と、聴き込むごとに見えてくる仕掛けを作りたくて、“色”をテーマにしていろいろなことをやってみました。他にもこういった要素はたくさん入れているんですけど、これらの部分がお気に入りの歌詞になりますかね。
--昔から曲を作るときは、ちょっとした遊び心や仕掛けを入れるのですか?
市瀬るぽ そうですね! 日本語って、韻踏んだりするとおもしろいじゃないですか。文章だけ見ると意味がわからなくても、リズムが加わることでメロディーがキャッチーなものになったりしますし。メロディーと歌詞ってつながっていると思うので、そこを大事にしつつ仕掛けも入れ込むようにしています。
--では、いまの質問と似ているんですけど、この楽曲の聴きどころは?
市瀬るぽ 『alive』に限った話ではないんですけど、僕は鏡音リンちゃんの調声(※ボーカロイドの声を理想のものに近づけるための編集・加工のこと)に、めちゃくちゃこだわりを持っているんです。実際に人が歌う曲が山のようにある中で、「ボカロに歌わせる意味はなんだろう?」と考えるんですけど、答えのひとつは“その人の家にいるボカロが歌ってくれる”ことにあるんだろうなと……。そこで、鏡音リンちゃんの個性をどうやったら出せるのかと考えて、僕の場合はボカロ全盛期からあるような、ちょっと懐かしみもある調声……昔からあるアプローチを取り入れて楽曲を作っています。そこは本当にこだわっているので、ぜひ聴いていただきたいですね。
--そんな『alive』の制作期間はどれくらいになりますか?
市瀬るぽ ……コンテストの締切3日前に投稿したと思います(苦笑)。作りたい曲のイメージはあったんですけど、それを形にして、納得できるモノまで仕上げるのに何度も何度もブラッシュアップを重ねていった結果、ギリギリの滑り込みで応募することになりました……。けっきょく、最初に書いたメロディーからかなり変更したり、ゲームで使われるので2分以内に収めて、そのうえでどう聴こえるのかなど吟味しないといけないポイントが多かったので、時間がかかりました。
--じゃあ、かなりの難産で……?
市瀬るぽ 難産でしたね、『alive』は。なかなか決まらなかったほうだと思います。
--そうやって悩んだときに、何をきっかけにして切り替えるのですか?
市瀬るぽ 皆さんよく、「気分転換に海辺を散歩して」とか言われますけど、僕、まったくそんなことなくて……。ひたすら机とパソコンに向かって悩みながら、鍵盤で弾いて消してをくり返して、ようやく何かが見えてくるというタイプなんですよ。その“何か”が、皆さんがよく言われる“降ってきた”というモノなのかもしれないんですけど、それも翌日になって改めて聴いてみたらぜんぜんダメだった……ってことが多いです(笑)。けっきょく、数を重ねていくつか候補が生まれた中から少しずつ……という感じなんですけど、そうやって苦労して見つけた歌詞なりメロディーは大切なものなので、大事にしていきたいですね。
--私は文章とかシナリオを書く人間ですけど、「いいフレーズができた!」と思っても、つぎの日に見たら「なんじゃこりゃ……!」ってガッカリすることが多いです……。
市瀬るぽ あはは! まさにそれです!! 逆に、1日寝かしたあとに聴いても「いい!」と思えたら、それは間違いなくいいメロディーなんですよねー。きっとこの悩みって、モノ作りをしている人が共通で持っているんだろうなあ(笑)。
--『alive』がゲームに実装されたのを初めて見たとき、どう思われましたか?
市瀬るぽ リリースと同時に実装を目の当たりにしたんですけど、その日はなかなかログインできなくて、夕方くらいになってようやく見ることができました。でも、聴いても実感が湧かなかったというか……ずっと、夢を見ているような感覚で。それでも、Twitterの通知が鳴りやまないのをボーっと見ていて、「何かが起きているんだな……」ということだけはわかりました。
--ゲームに実装されたことで、何が変わりましたか?
市瀬るぽ ゲームのリリースに合わせてMV(ミュージックビデオ)も公開してもらえたらうれしいです……と運営サイドに言われていたので、準備していたんです。すると、ゲームがリリースされるやたくさんの人が見に来てくれて……。その感想も、「『プロセカ』で、すごく懐かしい感じの曲がある!」といろいろなところで書かれていて、それがすごくうれしかったことを覚えています。
--うんうん。
市瀬るぽ 僕らみたいなボカロ全盛期が好きだった人たちって、進学や就職の忙しさもあってそこから離れてしまったパターンも少なくないと思うんです。そんな人たちが『プロセカ』をきっかけに『alive』を聴いて、「あのころの音がする……」って思ってくれたとしたら……こんなに感動することはありませんよね! 僕もその時代を知っているので、声を大にして言いたいですもん。「あのころ、みんなが好きだった音はまだあるんだよ!」って。
--「あのころの音がする」って……すばらしく素敵な言葉ですよ!
市瀬るぽ 「2008年の音がする」というコメントもありました。『メルト』(作詞・作曲:ryo)が一世を風靡した、あの時代です。「ああ……。僕も2008年が好きだったよ……」って思いました。実際、僕はその時代を意識して作ったので、聴いてくれた方がそこに反応してくれたのを知ったときは「届いた!」って感激しましたよ。メッセージ性の強い曲が流行る中で、ときには『alive』のような懐かしい響きの曲を聴いて安心してもらえたらうれしいです。
--市瀬さんが、「こう聴いてほしい!」と願った通りに、多くのファンが耳を傾けている印象です。
市瀬るぽ はい、僕もそう思います。
--そんな『alive』のファンに向けて、言葉を贈るとしたら?
市瀬るぽ 『プロセカ』でたくさん遊んでほしいです! いまや数百に及ぶ名曲が収録されていますけど、『alive』は難易度もほどほどなので、楽しんでプレイしてもらえたらうれしいです!
--ではここから、ボカロPに興味津々なコロコロ読者が聞きたいことを質問させていただきます! まず……市瀬さんがボカロPになられたきっかけを教えてください!
市瀬るぽ 先ほど、高校のときにボカロPになった……って言いましたけど、さらに具体的に説明すると僕の進学した高校にボカロPがいたから、です! そのボカロP、じつは幼稚園からいっしょだった幼馴染なんですけど、彼がそういう活動をしていると知ったのは高校に入ってからだったんです。それも世間話をする中で、「最近、何かやってることある?」と聞いたら、「うん、ボカロPやってる」って(笑)。
--サラリと(笑)。
市瀬るぽ そうなんです。その流れで、「ボカロ、絶対に流行るからいまから始めたほうがいいよ」って言われて、「そんなもんかなぁ」と。でもなんとなく、「彼が作れるんだったら、僕もイケるだろ」と安直に思って環境を整えて、初めてエレクトーンで録音してボカロに乗せてみたのが始まりでしたねー。
--そのとき、「これはおもしろい!」って思えたんですか?
市瀬るぽ いや! 「……うまく歌わないなあ」と(苦笑)。そこから、「なんでみんな、こんなにうまく歌わせられるんだろう……?」と不思議に思って、ミクが悪いの? 僕が悪いの?? と悩み始めました。
--これは興味深い。
市瀬るぽ そこであれこれと調べていくうちに“調声”というものの存在を知り、これはボカロPそれぞれが社外秘の技を使ってやっていることなので自分で研究しなければいけない……というところに辿り着くんです。で、「これはおもしろいな!」と感動して、初音ミクにうまく歌ってもらうための研究を始めたんです。
--そういう意味では、すぐにハマってしまったんですね。
市瀬るぽ 音楽もパソコンも大好きだったので、障害になるものがなかったんでしょうね。また、先のボカロPの幼馴染がいたのも大きくて、わからないことがあったらすぐに質問できるのもありがたかったです。環境的に、恵まれていましたね。
--では、ボカロPになるために必要なスキルがあれば教えてください!
市瀬るぽ 「これは絶対に必要!」という、確固たるものはないと思います。ただ、楽譜が読めたり、何かしらの楽器ができるというのは、必須ではないですけど武器にはなるんじゃないかな、と。僕は、エレクトーンをやっていたのが大きかった。エレクトーンって、メロディーとコードとベースっていう作曲のもっともベーシックな部分を練習させてくれる楽器なんです。鍵盤をパソコンにつないで弾けば曲になるし、録音もできるので、作曲スピードがめちゃくちゃあがるんですよ。加えて、僕は吹奏楽部だったんですけど、そのときに顧問の先生にお願いして指揮者用の楽譜を見せてもらっていました。コンデンススコアと言って、どうやって曲ができているのかを簡易的にまとめたものになっているので、それを見るだけで勉強になりました。
--へーーー!! おもしろいなあ!
市瀬るぽ それを家に持って帰ってパソコンに打ち込んでみたり、自分なりに解析して勉強したり……。ですので、必須ではないですけど楽器をやられているのなら、たとえばピアノを習っているならその楽譜をパソコンに取り込んでみたりだとか、吹奏楽だったら別の楽器のパート譜を見せてもらったりだとか……。いまの環境を大事にして、さらに研究や練習をされるといいかなと思います。
--市瀬さん、努力家だ……!
市瀬るぽ いやいや、そんなことないですよ! 僕、そういう解析や研究は好きでしたけど、その分、楽器の練習はけっこうサボっていましたし(笑)。でも、顧問の先生も僕の特性をよくわかっていて、合奏の録音や楽譜の書き直し、パソコンへの取り込みなどを任せてくれていました。
--吹奏楽への向き合いかたも、クリエイティブですね。
市瀬るぽ 昔から、練習は好きじゃないけど作ることは好き……という性質だったんですよね。だって……作ったものって、なくならないじゃないですか。
--ボカロPになって、よかったことってありますか?
市瀬るぽ 山のようにあるんですけど……いちばん大きいのは、友だちができたことですね! もともと人付き合いが得意なほうじゃないので、まわりにいつも友だちがたくさんいるというタイプではないんです。でも、インターネットと音楽を経由してできた友だちって、その楽曲つながりなのでいっぱい話ができるし、何より……自分に似た人が多いな、って。
--うんうん。
市瀬るぽ で、プロセカNEXT(※定期的に開催されている、『プロセカ』の楽曲コンテスト“プロセカNEXT”のこと)の第1回目で採用された『Brand New Day』の作曲者“いるかアイス”とは数年前から知り合いだったんですけど、彼女と「いっしょに何かやってみよう」という話になって、配信企画をふたりで行ったりしていたんです。そういった、ボカロPの曲作りじゃないところでいっしょに活動できる友だちが、いっぱいできました。もちろん近場にいる人だけじゃなく、たとえば『alive』の絵を描いてくれた“おむたつ”さんとか、いろいろな場所に、さまざまな能力を持った友だちができたんです。リアルだと、学校を卒業した瞬間に疎遠になっちゃう人が多いですけど、ネットでつながっている限りはそうそう離れませんよね。このように、つながれる人ができたことが、ボカロPをやっていていちばんよかったことだと思います。
--いや、それって……思いっきり、ニーゴ(※25時、ナイトコードで。)のストーリーじゃないですか!
市瀬るぽ そうなんですよ!! いるかアイスと『Close to You』という合作曲を作ったんですけど、やり取りはDiscordです。つまり、ニーゴと似た制作方法(笑)。しかも、いるかアイスから「Aメロできたから聴いてー」ってファイルが送られてきたんですけど、ファイル名が『Untitled(アンタイトル)』(笑)。
--あははは!! ホントに、ニーゴの物語みたいですねー!
市瀬るぽ こういう魅力的な友だちが、『プロセカ』を通じてたくさんできました。彼らと夜中まで通話しながら、ひとつの作品を作っていったり。僕、最初に読んだのがニーゴの物語だったんですけど、「これ、ボカロPの世界そのものだな!」って思いましたもん。
--では、コロコロの読者にいっぱいいる、ボカロPを夢見る少年少女にエールをお願いしたいのですが!
市瀬るぽ ボカロとかパソコンで曲を作るって、最初は難しいことばかりだと思うんです。僕も、いまだにわからないことだらけですし、心が折れそうになることもあります。でも……11年間、あきらめずにやってきたことで、めちゃめちゃいいことがたくさんありました。「始めてみよう!」と思ったときの動機を大事にして、できた曲は恥ずかしがらずにインターネットに投稿してみてください。たとえヘタクソな曲でも、きっと誰かがホメてくれます。むしろ、ヘタな曲ほどホメられることが多いので、きっと力になるはずです。さらに、コンテストや公募はいっぱいあるので、臆せずに応募することを強くオススメしたいですね。いいことがいっぱい待ってる世界なので、くじけずにがんばって、作品をたくさん作ってみてください!
--自分で作ったものを見せるって、恥ずかしいんですよね。
市瀬るぽ はい、最初はめちゃめちゃ恥ずかしいんですけど、誰かにホメられればつぎのやる気につながるので。それをくり返しているうちに、恥ずかしさよりも「早く曲を出したい」という気持ちになってくるので、まずはそこを目指してほしいですねー。
--市瀬さんが“恥ずかしいの壁”を越えられたのは、いつごろですか?
市瀬るぽ いまでも恥ずかしいですよ!(笑) 1作目なんて本当にヘタクソだったので、初音ミクがすっごく音痴なんですよ……。それでも、これが紛れもない1作目だったので投稿しましたし、いまだに自分に対する戒めの意味も込めて消さずに残してあります。それでも、1年くらいがんばっていると、ボカロたちが思うように歌ってくるようになるんです! そのころにはコアなファンの方もついてくれて、僕の新作を心待ちにしてくれるようになりました。それが先ほど言った「早く曲を出したい」という気持ちに拍車をかけるようになったんです。
--では最後に、『プロジェクトセカイ』の今後について、何かエールがありましたらぜひ!
市瀬るぽ どんどん大きくなっていく『プロセカ』……! 日々、変わっていくのを見ているだけで楽しいです。今後もイチファンとして、新しい展開を期待しております!
--すごくおもしろい話がたくさん聞けました! とくに、ボカロPを夢見る読者に届くんじゃないかと思います!
市瀬るぽ 僕がいちばん近いかもしれないですね、そういった読者の方々に。もともとヘビーなリスナーでしたし、認められたのも公募のコンテストですし。もしも僕の通ってきた道筋が参考になるのなら、こんなにうれしいことはありません!
--コロコロの読者から、新たなライバルが生まれるかもしれませんよ!?
市瀬るぽ ぜんぜんいいと思います! 若い世代にライバルがたくさん生まれてほしいなってつねに思っていますし、僕も負けずにがんばります!!
--本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!
市瀬るぽ
Ichinose LUPO
2011年よりボカロPとして活動を開始
エレクトロサウンドを中心に、音色と歌声にこだわった楽曲を制作している。
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の関連記事はこちらをチェック!!
☆☆プロセカ一周年特集はこちら☆☆
ボカロPに直撃インタビュー! |
衣装カタログ |
☆その他の注目記事はこちら☆
タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
■対応OS:iOS/Android
■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710
■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai
■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai