【エヴォロイド】カラーチェンジで違った印象に!! 「EVR-01A ジェットン」&「E-REX-S1 E-レックス」のカラーアレンジを紹介!

妄想ショートストーリー

「恐竜さん、お腹すいたー」

 並んで歩く機械龍の頭に乗った人間が空腹を訴え、E-レックスはゲンナリと肩を落とした。

「ウチに着いたらメシ作ってやるから、我慢しろ」
「やだー。お腹すいたー、お腹すいたー!」

 何度目の問答になるだろうか。

 E-レックスは林道を歩きながら、後ろから声を張り上げる人間の声にチリチリと頭の中がかき乱される。白い機体とのケンカの後味の悪さもあって、彼の思考回路は言い知れない負荷がかかっていた。

 木々のざわめきや風の音さえ鋭敏になったE-レックスのセンサーには、気分を逆立てる要因となっていた。

 だからか、彼は嫌なものを感知して立ち止まる。

「静かにしろ。面倒なのが来てる」

 刺々しい声音でE-レックスは人間に言って、手振りで機械龍に停止の意図を告げる

 喚いていた人間もその声に彼の機嫌を察したのか、口をつぐんで体を機械龍に密着させた。機械龍もナイフのついた触覚(ケーブル)を揺らして、周囲を警戒する。

「奇遇だな、レックス」

 雑木林を踏み潰し、その巨体は風のようにE-レックスたちの前に現れた。

 風に揺れるマントと黒い装甲。

「同じ顔……」

 人間の目には、黒いE-レックスに見えた。しかし、その機体が纏う剣呑な雰囲気に悪寒が走る。

「奇遇? ここらは俺様のシマだぜ、ブラック。テメェが勝手に入っていいとこじゃねぇだろ?」
「そうだったか?」

『ブラック』と呼ばれた黒いE-レックスはとぼける風情のまま背中に背負う日本刀の柄をこれ見よがしに掴んで見せる。

 それも何度目になるか。E-レックスはため息をついて思考を切り替える。

「また、泣かされたいらしいな。お前ら、先に帰ってろ」

 E-レックスは機械の拳を握りしめて、一歩前に踏み出す。

「メシはこの遊びが済んでからだ」
「丸腰か?」

 ブラックは怪訝そうに言って、体を開く。抜刀の構えを見せ、臨戦態勢に入った。

 その気迫を機械龍は察して、ナイフのついた触手をE-レックスの左右に伸ばした。それを見て、E-レックスも相棒の気遣いに少し緊張がほぐれた。

「いや……」

 E-レックスがナイフのグリップを掴むと、ケーブルでつながった機械龍の頭部からツインブレードが分離。ケーブルがうねり、風を巻いてE-レックスの頭上にツインブレードが舞った。

 そして器用な手さばきで2本のナイフをツインブレードへと持ち換える。

「今日はこいつで相手してやる」
「ならば、結構!」

 瞬間、ブラックは一呼吸のうちにE-レックスの懐へ飛び込み、抜刀。

 それをE-レックスは受け止めてみせた。

「恐竜さん!」

 人間は刃の衝突に驚きながらも、E-レックスに向かって叫んだ。

「心配するな、こんな根性なしに負けねぇよ!」
「貴様ッ!」

 瞬間、E-レックスはブラックの日本刀を軽くいなし、体勢が崩れたところに回し蹴りがお見舞いする。ブラックの巨体が宙に浮き、吹っ飛ばされた。

 それを見届けた機械龍は即座にその場を撤退する。
 
 E-レックスは視界の端でそれ確認して、ほっと息をついた。

「まだ人間を庇うのか、レックス」

 E-レックスは気持ちを切り替えて、ブラックに集中する。体勢を立て直し、日本刀を構えるその姿は気迫に満ちている。

 何度も刃を交わしてきた。何度も殴り合ってきた。そして、何度も語り合ってきた兄弟だ。

「ケッ、弱い者イジメは俺様の趣味じゃねぇんだよ」
「その驕りで、また多くの仲間が……」
「昔話も趣味じゃねぇな!」

 E-レックスはブラックの言葉を遮って、ツインブレードで切り掛かる。

 二つの刃が流麗な剣線を描けば、ブラックの日本刀が柔軟に弾き落とす。そこにケーブルに繋がれたツインブレードのナイフが複雑に織り交ぜられ、E-レックスの手数は尋常ならざるものとなっていた。

 ブラックはその全てを一本の刀のみで捌きつつも徐々に劣勢となり、大きく後方へ飛び退いた。その先には岩が積み上げられた不安定な段差があった。

 E-レックスはその機を逃さず、ブラックの着地の瞬間を狙って、ナイフを放った。弧を描いて追尾する刃が煌めく。

「遅いな!」

 刃が届く寸前、ブラックは、マントに隠していた「右腕」を伸ばす。通常なら届くはずのない距離。しかし、彼の腕は伸展し、まだ勢いが乗り切らないケーブルを掴んだ。

 E-レックスはその奇怪な義手を見て、口元を緩めた。そして強い力で引っ張られるのを察知して、即座に左手の得物から手を離す。

 一瞬にして、ツインブレードの一つが空の彼方へと投げ捨てられてしまった。

「何すんだよ。探すの手間なんだぞ」
「いつまで『遊び』のつもりだ。これは真剣勝負だぞ!」
「テメェも三味線引いてただろ? その便利な腕を隠してよ」

 その挑発に、ブラックは静かに怒りをたぎらせる。そしてその怒りを両足にこめるように腰貯めに日本刀を構えた。

 E-レックスはその予備動作にこれまでにない危機感を察知。蓄積された戦闘経験からくる予測が働いた。

 わずか数秒の静寂、E-レックスは右手のツインブレードに残るケーブルをパージし、先端のナイフを空いていた左手につかむ。

 その刹那、ブラックが跳んだ。

「–っ!!」

 その一太刀をかろうじてE-レックスは受け止める。そして、反射的に左手のナイフをブラックのボディに走らせる。

 しかし、ブラックの義手がその腕を掴み拘束する。その力は凄まじく完全にE-レックスの動きを封じる。

 

「こんな腕、こんな体になったのは、誰のせいだ」

 ブラックの力が一層強まり、E-レックスの体が徐々にのけぞっていく。出力差で押し負けている。兄弟機であり、同じスペックのはずの2機の間に明確な差が生じている。

 だが、それは当然のことなのだ。

「人間だ。人間を信じたばかりにこうなった」
「だから、昔話は趣味じゃねぇ」
「人間に加担することは同胞を裏切ることだと理解している」
「だから–」
「同じエヴォビーストなら! 一緒に戦えるだろう!」

 ブラックの訴えに、E-レックスは足腰に力を込める。

「同じじゃねぇ……」

 その言葉にブラックは虚をつかれた。

 同じエヴォビースト。同じタイプの機体。同じ苦渋を味わった。ならば、その論理的思考も同じはずだ。そうあって然るべき事象だ。

 だが、E-レックスは違う。

「俺様は俺様で、テメェはテメェだ」

 E-レックスは全身に力を込めて、押し返し始める。誰かに負けるのは悔しい。誰かに屈するのは屈辱だ。そう論理づけたのは、E-レックスの意志に他ならない。

 そして、何よりも目の前にいるブラックには絶対に負けられなかった。

「お前はブラックっつー、どうしようもねぇ根性なしの俺様の弟だからな!」

 ブラックはE-レックスの表情が変わるのを見た。

 その顔を知っている。どんな窮地にあろうとも、どんな強敵が相手だろうとも、根拠のない勝ち誇った笑みが浮かび上がるのだ。“彼”を一番近くで見てきたブラックと、仲間のエヴォビーストたちだけが知るE-レックスの姿。そしてそれは仲間の誰にもまねできない機能だった。

 その瞬間、E-レックスの頭が思い切り、ブラックへと叩きこまれた。ヘッドバッドで両者の手元が緩み、一瞬足元がふらついた。

「こ、の–っ」

 ブラックが再度E-レックスから距離を取ろうとした瞬間、螺旋を描き追撃するツインブレードの切っ先が日本刀を巻き上げる。

 その動きを手先で感じ取ったブラックも負けじと対抗。腕を思い切り振り上げると、両者の武器が高々と宙へ放り上げられた。

「へへッ。やるようになったじゃねぇか」

 E-レックスは手元に残ったナイフを振るうが、堅牢な義手に受け止められ力任せに弾かれてしまった。

 そこに放り上げられた武器が風を切って落ちてくる。

 E-レックスとブラックは咄嗟に視界に入ってきた武器を掴んだ瞬間、決着がつくと感じた。そして、互いの武器を奮った。

 交差する刃は互いのボディに僅かに食い込んだ時点でピタリと静止し、剣風だけが両者の後ろへ駆け抜けていった。E-レックスとブラックは双方があと一押しで相手を仕留められるところまで来ていた。

 数秒の沈黙。その緊張の糸を切るように、E-レックスが息をついた。

「ハァ。テメェ相手にこれじゃ、俺様も落ちぶれたな」

 そう言って、E-レックスは日本刀を握る手を変えて、ブラックに差し出す。

「今日のところは引き分けだな」

 その申し出に、ブラックは不服そうにツインブレードを地面に突き刺した。

「そういうところが甘いんだよ」
「そうかよ。だが、遊びもケンカも最後は仲直りしろっていうのが、俺様の美学だ」
「……人間には通じない理屈だ」

 ブラックは精一杯の皮肉を言って、日本刀を受け取り、軽く一振りしてから鞘に収める。

 すると、遠くの空で爆音が轟いた。E-レックスたちはその方向に顔を向けて、険しい表情になる。

「人間たちがいる方角だな」
「お前、基地を襲撃するために囮になったのか?」
「そんな卑怯な真似、ボクの趣味じゃない」

 ブラックは本心でいって、義手を収納しマントを正す。彼は近々、自らの手で人間たちが駐留する基地を襲撃するつもりだった。

 だが、その前にE-レックスを倒すべきだと考えた。避けて通れば、効率的に人間陣営にダメージを与えることもできた。その道を選ばずあくまで勝負を挑んだのは、ブラックにとってE-レックスは無視できない絶対的な存在だったからだ。

 E-レックスが心配そうに爆音の方角を見つめているのを横目に、ブラックはその音とは反対の方向へと足を向けた。

「そんなに気になるなら、行ってやればいいじゃないか?」

 E-レックスが言葉に詰まっていると、はるか頭上でジェット音の残響がこだました。それが何者かをE-レックスは予想して、ひとまず肩の力を抜いた。

「俺様は忙しいんだ。お前らの仕業じゃないんなら、何もする気はねぇ」

 わかった、とブラックは言って歩き出す。森林の影に紛れて、木漏れ日を浴びながら進んでいく。

 E-レックスには信念がある。おおよそ効率的なことではない。非現実的な思考パターンだ。だが、それ故に誰にもない『強さ』を持っている。

 ブラックはそんな『強さ』を羨望した。理解しようと追求するほどに、明確な解は泥の底に沈むように消えていく。だからこそ、彼に勝負を挑む。それが強さの答えを知る方法だと結論づけて。

「そうだ! お前、投げ飛ばした武器一緒に探せ、コラァ! っていねー!!」

 背後でギャーギャー喚くE-レックスの声に、ブラックは思わず口元を緩めた。

「相変わらず、兄さんはバカだな」

商品概要
E-REX-S1 E-レックス
■発売月:2021年12月
■価格:2,860円(税込)
■スケール:NON
■製品サイズ:全高:82mm
■製品仕様:プラモデル
■パーツ数:51~200
■詳細:https://www.kotobukiya.co.jp/product/product-0000004206/
■予約・購入ページ:

※本レビューでは、開発中のサンプルを使用しております。実際の商品とは異なります。
※共通コア部分の成型色は、製品では「プログレスボディ」と同様のガンメタルとなります。
© KOTOBUKIYA