大好評配信中のYouTubeアニメ『でんぢゃらすじーさん』『リッチ警官 キャッシュ!〜ゼロの事件簿〜』の制作・配信を手掛ける、SORAJIMA Studio(ソラジマスタジオ)! 子どもも大人も夢中にさせる両アニメは、いかにしてつくられているのか――共同代表の萩原鼓十郎さんと『でんぢゃらすじーさん』監督の西渕隆さん、『リッチ警官 キャッシュ!〜ゼロの事件簿〜』監督の三木翔也さんに、両アニメの誕生秘話や作品づくりに掛ける思いを聞いてきたぞ!!
原作からのアップグレードが必要なところと必要ないところ
――8月、10月にそれぞれ始まったYouTubeアニメ『でんぢゃらすじーさん』『リッチ警官 キャッシュ!〜ゼロの事件簿〜』が大好評ですね!
萩原:とてもうれしく思っています。じーさんは、僕が小学校時代に読んでいた作品で、今もなお大人気の漫画です。なおかつ、YouTubeアニメの話を聞いた時に、パッとサムネイルのイメージが浮かび上がった作品。YouTube映えするだろうという確信めいた思いがありました。一方のキャッシュは、令和に生まれた作品で作者の黒田さくやさん・担当編集の栗木さんという若い世代の力を感じる作品です。同じく若い世代が躍動するソラジマとの相乗効果によって、エネルギーある作品を生み出していきたいという感覚を持ちながら、制作させていただいています。
――じーさんの監督を務める西渕さんは25歳、キャッシュの監督を務める三木さんも31歳とお若いですよね。お2人とも、原作に惚れ込んでくださっていると聞いています!
西渕:『でんぢゃらすじーさん』(曽山一寿先生)は小学生の頃にずっと読んでいた作品です! 年末の大掃除の時には必ずと言っていいほど、じーさんの単行本を読み直すのが恒例行事となっています(笑)。じーさんのすごいところは、何歳になって読み返してみても、必ず笑ってしまうところ。言語化するのは難しいですが、とにかくおもしろいです。読者の方なら、この感覚をわかっていただけると思っています。
三木:『リッチ警官 キャッシュ!』(黒田さくや先生)は主人公の警官・キャッシュが、膨大な財力を駆使して、さまざまな問題を解決していくというストーリーです。圧倒的なお金の力でスカッとさせてくれる、勧善懲悪の物語。ストーリーはもちろん、キャラの魅力がバツグンなんです。コロコロ本誌で子どもたちに大人気なのも納得しました。
――おお……、それは我が子のことのようにうれしいです……!! 漫画からアニメにするにあたって、それぞれどのようなアップグレードが必要でしたか?
西渕:じーさんに関しては、アップグレードするところとしないところを明確に分ける必要があると考えました。まず、原作が20年続いている作品なので、昔からのファンの方にも、現役読者の方にも納得していただけるような「原作の魅力を再現すること」が第一条件だと思ったんです。なので、アップグレードするというよりも、まずは、どう原作のおもしろさをYouTubeアニメで再現できるのか、と。その上で、セリフ回しのテンポ感をいかに今っぽくするかも気を遣った点です。
――かつての現役読者だった西渕さんだからこそ感じる重みですね。『でんぢゃらすじーさん』の作者である曽山先生のブログで「でんぢゃらすじーさんがダメな理由」という漫画シリーズが公開されていますが、YouTubeアニメ化に悩む先生が、アニメ制作スタッフの方が書き出した「でんぢゃらすじーさんの面白い理由」という文章のリストを見てアニメ化を決断する場面があります。「でんぢゃらすじーさんの面白い理由」は、西渕さんがつくったんですよね。
西渕:そうなんです。「でんぢゃらすじーさんの面白い理由」をつくったのには、先ほども申し上げたように「言語化するのは難しいおもしろさ」にあります。原作の魅力を再現するために、自分がじーさんのどこを、どんな風におもしろいと感じているのか言語化しようと書き起こしたもので。単行本をめくって、おもしろいと思ったシーンにチェックを付けていって、どうして笑ったのかを書いていきました。
――大変な作業ですよね。
西渕:そう思われるかもしれませんが、単行本を読んで、笑って、その理由を考えるというのは、とても幸せな仕事でした。
――キャッシュは、黒田先生の監修による本誌の前日譚という、大きな違いがあります!
三木:YouTubeアニメって、女性キャラの人気が出る傾向にあるんです。なので、キャッシュのバディの変更はマストでやるべきだと思い、それで物語も前日譚としました。一方で、じーさんと同じように原作を再現するという意味では、決めゴマの魅力に力を注いでます。原作では、キャッシュの決めゴマが丸々1ページ使って表現されているので、そこをYouTubeでも再現できるようにと意識しています。
――動画の長さは、じーさんが3〜5分、キャッシュが8分程度となっていますが、これにも理由があるんでしょうか!?
三木:YouTubeアニメでウケているものって、大体8分程度なんです。ストーリーもののキャッシュは、そのセオリーにならってつくっています。じーさんは違うよね?
西渕:ギャグ系のじーさんが一番おもしろい尺って何分なんだろう、と参考にしたのが「M-1グランプリ」などのお笑いコンテンツです。それらを分析した時に、3〜5分の動画が初見の方にも楽しんでいただけるだろうと。
――計算された時間の長さなんですね。原作者のお2人からは、どのような声がありましたか?
三木:Twitterでつぶやいてくださるのがうれしいよね。
西渕:そうですね。好意的に受け止めていただけているようで、とても嬉しいです。
三木:期待に応えられる作品をつくらなければ、と襟(えり)を正される思いです。
「うんこ回」の爆笑誕生秘話
――じーさんもキャッシュも6ケタ再生(10万回以上)ですから。十分、期待に応えてくださっているのではないかと思います! 特に、じーさんはセリフの全てが「うんこ」という原作の衝撃回をアニメ化して、ものすごい再生数を記録していますね!
西渕:小学館さんとの企画会議で、次はどのエピソードをアニメ化しようかという話になった時、僕が原作のうんこ回が頭に残っていて、ダメもとで提案したところ、担当編集者の古川さんが「いいじゃないですか、やりましょうよ」と2秒でOKしてくださって。いいんですね、本当にやりますよ、と進めさせていただきました(笑)。
――声優さんの表現力がすごかったです(笑)。
西渕:コロナ禍ということもあって、宅録で進めさせていただいているのですが、台本には基本的に「うんこ」と「うんこうんこ」としか書いていないので、声優さんは大変困惑されたことかと思います(笑)。ただ、ト書きの部分に「このうんこは、こういう感情のセリフなんです」という説明をしていたので、大丈夫だったかと思うのですが!
――匂ってきそうな台本ですね……!
西渕:臭くはないです(笑)。台本を読んだ声優さんから、声の録音が送られてきたものをボイスチェックしたところ、当たり前ですが、「うんこ」としかいっていないので、どのうんこがどの感情に当てはまるのかを聞き分けるのに必死でした。このテンションのうんこは、この感情のうんこだよな……、みたいな!
ーーめちゃくちゃ大変じゃないですか!
西渕:でも、そこはやっぱり、声優さんのすごいところで。よく聞くと、どれが、どのうんこかわかるんですよ!
――うんこ、うんこって、これ、本当に大人の会話ですか!?
三木:うんこ……(※すみません)。
西渕:うんこうんこ……(※大変失礼いたしました)。
萩原:うんこうんこ、うんこ……(※うちの社員がすみません)
――うんこ、うんこうんこうんこーーーっ(※うんこで会話すなーーーっ)!