合体変形で広がる無限の可能性! 「エヴォロイド」より「EVR-01A ジェットン」を先行レビュー

妄想ショートストーリー

 パイロットにとって、自分の身を預ける機体が優秀なほど慎重になるものだ。人型ロボットにもなれば、システムによる簡易的な起動手順や戦闘マニューバの簡略化など、複雑な機構を持つが故に、機体を制御するシステムに頼らなければならない。

 それらを解消するために、支援プログラムAIが搭載された「エヴォロイド」が存在するのだ。

 しかし、エヴォロイド「ジェットン」に乗るパイロットにとって、未だ疑念が拭えない部分もあった。ジェットンの試験運用機で何人ものパイロットが病院送りになったと耳にすれば、先行量産型で改良が加えられていても自分の全てを委ねる気にはならなかった。

『高度10,000メートルを超えました。モード4への移行を申請』

 無機質なアナウンス。パイロットは軽い操縦桿とペダルの踏みしろを確かめながら、肩を落とす。全く感触がない。当然だ。今の操縦権はジェットンが握っている。

 機械の確認をいちいち承認しなければ、パイロットとして働くこともできない。

 おまけに、横に視線を向ければ、引率する巨大な機体が飛んでいる。

 特別支援ユニットとして開発されたサポートビークル「ブルーインパクト」。その機体は誰も搭乗していない無人機で支援プログラムで動いている。

 エヴォロイドとの合体機構を有し、様々な戦況に対応できるよう設計されている。それら一連のマシンは、「B計画」という開発計画の中で開発が進められている。

 パイロットはその合体シーケンスの演習に駆り出されたのだ。

『再度申請。モード4への移行を承認してください』

 パイロットの耳にジェットンがアラームと共に告げる。

 アナウンスには怒りや不審がるような声音はない。淡々とシステマチックに鳴るだけだ。

 パイロットは操縦桿を握り直して、気持ちを整える。

「承認する」
『承認確認。バイタルに乱れあり、演習を中止しますか?』
「問題ない。すぐに終わらせよう」

 余計なことを、とパイロットの胸中は穏やかではなかった。

「お前こそ、大丈夫なんだろうな? プロトタイプの二の舞はゴメンだからな」
『当プログラムは厳正な命令系統の元、命令の厳守とパイロットの命を守ります。今一度、本プログラム基本規約を再生しますか?』

 結構だ、とパイロットはいって目の前にそびえる入道雲を見据える。皮肉を言ってもその意味を汲み取ることができないのが、機械の限界である。

 少し後ろを確認すれば、ブルーインパクトも穏やかについてきている。

『了解しました。では、合体演習に入ります。操縦権を委譲します』

 瞬間、操縦桿が重くなる。フットペダルに喝が入った。

ジェットンが少しぐらつくも、パイロットは手足に伝わってくる振動にようやく自分の役割を思い出す。ここからはパイロットの腕の見せ所だ。

「前に出る。各パーツの誘導を設定し、速やかにシーケンスに入る」
『了解』とジェットンは返答。パイロットはスロットルを上げる。

 ジェットンが加速して、ブルーインパクトの前に出る。翼が風を切る感覚。太陽の光が雲の影に隠れ、視界が一瞬の暗転を見せるが、白亜の雲が平衡感覚を呼び起こす。

 合体シークエンスはジェットンからプロトコルを送信して、ブルーインパクトが受信し各パーツへ分かれて合体する。

 しかし、パイロットの耳に準備完了の報告が来ない。

「どうした?」
『こちらのプロトコルに応答しません』

 パイロットは咄嗟に、機体を傾け、旋回させる。その後ろを同じく弧を描くようにしてブルーインパクトが追従する。

「なるほど。厄介だな」

 パイロットは頭からのしかかる負荷に耐えながら、後方のブルーインパクトを目の当たりにして緊張が走った。

 ブルーインパクトの下部にあるマルチミサイルのハッチが開き、弾頭がチラリと顔を覗かせているのを目の端で捉えたからだ。

「ジェットン。ブルーインパクトを強制停止させろ」
『こちらのプロトコルに応答しません』

 パイロットはブルーインパクトの遠隔操作を呼び出し、緊急停止信号を打つ。しかし、応答なしの表示が出た。原因は不明。遠隔操作での停止手段がない。

 ブルーインパクトには模擬弾を装填したミサイルポットの他にも、ロング・レーザーライフルが搭載されている。万が一にも暴走すれば、それらの武装は脅威になる。

「チッ。やるしかないか」

パイロットは不慣れな遠隔操作を打ち切って、操縦桿とフットペダルを機敏に操作する。

 瞬間、ジェットンは機首を上げて急減速。ブルーインパクトの頭上を通り過ぎながら、ロボット形態へと変形。そして、その手に銃を持ちブルーインパクトに狙いを定める。

「ブースターを落とす。照準」
『セーフティが作動しています。友軍への攻撃はできません』
「解除しろ!」
『できません』

 パイロットは不満を溜め込んだ息を吐き出して、一気に離れていくブルーインパクトを見送った。

 ジェットンは脚部のスラスターで減速をかけながら、制御不能の巨大戦闘機を目で追う。ロボット形態では飛行能力は著しく低下し、自由飛行はできない。

「センサーで追跡はできてるな。こちらに来る動きか」

 パイロットはキャノピーに映るCGのブルーインパクトの輪郭を追いながら、息を呑む。

 ブルーインパクトは入道雲を盾にしてぐるりと旋回している。ジェットンの識別信号を捉えている動きだ。

 逃亡する心配がなくなったのは不幸中の幸い。しかし、攻撃してくる様子でもない。ブルーインパクトにもジェットン同様に友軍への攻撃はできないようプログラムされているのだから当然だが、制御を受け付けない異常は続いている。

「基地との連絡もダメ、か。どうする?」

 パイロットは自問しつつ、マニュアルをざっと見返す。キャノピーのヘッドアップディスプレイに映し出された文字の羅列を目で追いながら、手足の感覚を研ぎ澄ませる。暴走の原因、遠隔操作で制御方法、解決方法を探す。

 ジェットンは徐々に雲と同じ高度にまで落ち込んでいる。

 パイロットが海面で対処する方法を考え始めた時、ジェットンのアナウンスが横槍を入れる。

『広域ジャミングが展開されています』

 そのジェットンの報告にパイロットは違和感を覚えたが、取るべき手段を見つけてそちらに意識を集中させた。

「ジェットン。ブルーインパクトのレーザー回線の受信機はどこにある?」
『機首にあります』
「なら、集積回路に直接プロトコルを流し込む。それで合体シークエンスに入る」
『了解』

 パイロットは再び向かってくるブルーインパクトを睨んで操縦桿を操作する。

 青い巨体が飛び込んできた瞬間、ジェットンは機体を捻って標的の下に潜り込んだ。空気の波が機体を吹き飛ばそうとする。

 肺の中の空気が容赦なく押し出される不快感を覚えながら、パイロットはブースターを支えるブルーインパクトの支柱を見据えて操縦桿を動かす。

 ジェットンが腕を伸ばし、マニュピレーターが支柱を掴んだ。その加速力にマニュピレーターが千切れそうになる。

 警告音がパイロットの耳を叩く。嫌味を立てる暇もなく、パワー配分を無視して、ジェットンの空いている腕部をブルーインパクトに掴ませる。脚部の推進装置で相対速度を合わせようとするが、巨大なブースターの推進力に追いつかない。

 ブルーインパクトも振り落とそうとロールをかける。さらに、上昇と下降。太陽と雲がミキサーにかけられたような風景をパイロットは見ている暇はない。

 ジェットンはその激しい機動に耐えながら、その一瞬一瞬をついて機首へと登っていく。そして、対応距離に入った。

「プロトコルを送信しろ」

 パイロットの命令を受けて、「ジェットン」の額にあるパーツが光り、レーザーがブルーインパクトの受信機に照射される。

 プロトコルの送信は数秒照射されると、ガクンッとブルーインパクトが振動を始める。加速で無理やり飛んでいた機体が、中途半端な減速を取ったのが原因だ。

『送信完了しました』

 パイロットはアナウンスを聞いて、ジェットンを離脱させた。

 すると、ブルーインパクトが弧を描いて上昇する。太陽の光を浴びて、上昇が止まると力尽きたように落下を始める。続いて、機体がバラバラに分離する。その落下軌道にジェットンが割って入り、同じ軌道で降下を始める。

『ガイドビーコンを確認。誘導に入ります』

 ジェットンの業務的なアナウンスとともに、機体の各部からガイドビーコンが発光する。その光に惹かれるように、サポートビークルの各部が反応する。

 そして、高度が急速に下がる中でジェットンは合体シークエンスを遂行。強靭な脚部が接続され、背中には複雑な6枚の翼が繋がり、両腕には武器が装着される。

『装備のコントロールを掌握しました』
「当たり前だ」

 パイロットはジェットンの報告に吠えて、下っ腹に力を入れる。海面まであと数百メートルと迫った時、合体が完了したジェットンが反転。脚部のブースターを全開にして、機体を持ち上げる。

 合体したジェットンが水飛沫を跳ね上げ、機体は再び大空へと舞い上がる。

パイロットは機体が安定したのを体感して、肩の力を抜いた。

『演習プログラムを完了。状況対応能力は本機操作水準を満たしました』

 ジェットンのアナウンスに、パイロットはムッとしてキャノピーに映るコントロール系のチェックを手で払い除けた。

「随分な茶番だ。お前が何もしないから、ビークルは制御不能になった。そうだろ?」
『本機は、上位の命令を遂行しただけです』
「……帰投するぞ」

 パイロットは自分の感情を押し殺して、機体を基地へ向けて飛ばす。そして、この茶番劇を設定した上官を殴り飛ばそうと心に決めた。


テストショットを触ってみて

前回紹介した「プログレスボディ」に続き、デフォルメデザインで可動範囲がばっちり確保されている「EVR-01A ジェットン」。

ヒロイックなデザインにジェット戦闘機型など「M.S.G.」シリーズのミリタリーテイストの武器との相性もいい。「ジェットン」に様々な武器を持たせることはもちろん、サポートメカとの合体シチュエーションも楽しめるのも魅力だ。

今回の作例では後者の改造例を紹介したが、手のひらサイズから一気に巨大感あるデザインに印象が変化した。「ジェットン」の足裏には3mm穴があるため、「レイジングブースター」のような脚部の延長もしやすくなっている。

「EVR-01A ジェットン」は12月発売! ぜひチェックしてくれ!

商品概要
EVR-01A ジェットン

■発売月:12月
■価格:2,860円(税込)
■スケール:NON
■製品サイズ:全高87mm
■製品仕様:プラモデル
■パーツ数:51~200
■詳細:https://www.kotobukiya.co.jp/product/product-0000004205/
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