コロコロオンライン真夏のホラーゲーム徹底特集⑤ サウンドノベルの金字塔! 本格ミステリーの大傑作『かまいたちの夜』


「どうもこんばんは!」(美樹本さん風)
 
7夜連続でお届けするホラーゲームカタログ! 
 
第5夜に紹介するのは1994年11月25日チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)からスーパーファミコン用ソフトとして発売されたサウンドノベルシリーズ第2弾 (※)かまいたちの夜』だ! 
 
※サウンドノベルシリーズには他に『弟切草』、『街』などのタイトルがあり、いずれもサウンドノベルゲームとして人気を博している。また、『かまいたちの夜』は後にシリーズ化し、続編が出ている。
 
初代はどちらかというと冬では?」なんて声が聞こえてきそうな気がするが気にしない!!
 
なお、今回はライター持参のPlayStation版リメイク作『かまいたちの夜 特別篇』を使って紹介していく。ネタバレは極力しないのでご安心を!
 

▲サウンドノベルシリーズの人気作品をリメイクする「サウンドノベル・エボリューションシリーズ」としてPSで発売した。

 

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そもそも
サウンドノベルって?

こんや、12じ、だれかがしぬ
 
吹雪に閉ざされたペンション。起きる殺人事件。一体犯人は――
 
……とその前に。
 
サウンドノベル”という単語に聞き覚えはあるだろうか。そもそもどんなジャンルなの? と首をかしげている方もいるかもしれないので、その簡単な説明から始めたい。90年代、チュンソフトサウンドノベルシリーズが爆発的にヒットしたことで確立したジャンルで、単にノベルゲームとも呼称される。
 
どんなジャンルか『かまいたちの夜』を参考に説明すると、「背景の上に表示されたテキストを読み、ときおり現れる選択肢を選びながら進めていくゲーム」といったところだ。
 

もっと言うと、「音声や音楽のついた小説」だろうか。ホラー的に演出するなら不気味なSEやBGMで不安を煽ることも可能だし、画面一杯に展開されるテキストは見せ方次第でより恐怖心が大きくなる。
 
とても表現の幅が広い反面、ゲーム的な操作はポチポチとテキストを送ったり、選択肢を選んだりするだけになるので、普通のゲームとも小説とも一味違う不思議なプレイ体験となる。
 
事実、少年時代に初めてサウンドノベル作品(それはまさに『かまいたちの夜』なのだが)に触れたとき、筆者は「いつゲームが始まるんだろう?」と思いながら家族のプレイを見守っていた。
 
ゲームといえばコントローラーをカチャカチャと動かすアクションゲームや、キャラクターを育成するRPGなどを思い浮かべていたからだ。はじめは退屈すらしていたかもしれない。
 

しかし、表示される文字を必死に目で追いかけているうちに、「事の真相が知りたい!」という好奇心と「これ以上は見たくない!」という恐怖心をない交ぜにした感情に変わっていったことも覚えている。
 
インタラクティブでありつつ、視覚聴覚に効果的に訴えかけてくる“サウンドノベル”だから惹き込まれるものがあったのだと思う。なにより『かまいたちの夜』の完成度がスゴイ!
 

▲自身の選択によって展開が変わるのはゲームブックのような感覚。

厳密には“サウンドノベル”はチュンソフトの商標なのだが、こういった形式のノベルゲームを“サウンドノベル”と呼んでいる場合が多いほど、『かまいたちの夜』などの作品が与えた影響は大きいといえる。
 
商標登録されている名称が代名詞になる現象……チャッカマンとか万歩計とか、あとキャタピラー(正式には無限軌道という、男の子が好きそうな名称があるぞ!)とかとか、そういうのと似た雰囲気を感じる。
 

吹雪に閉ざされた
ペンションで起きる殺人事件

少し話がそれたが、ここからは『かまいたちの夜』本編について紹介したい。
 
舞台は真冬の雪山のペンション“シュプール”。
 
スキー旅行のために訪れた主人公のとそのガールフレンド・真理は、吹雪に閉ざされた山荘の中で不可思議な殺人事件に巻き込まれてしまう……。
 

▲主人公とヒロインの名前は変更可能。

昔からミステリーとホラーの相性は良いと相場が決まっている!
 
と、ここで企画の原点を再確認しておこう。『かまいたちの夜』のホラーゲームとしてのオススメポイントはズバリ、人間の怖さだ。幽霊とか怪奇現象ではなく、疑心暗鬼になっていく人間猟奇的犯行にいたる人間。凄惨な事件の過程でジリジリと精神的に追い詰められていく感覚が本作のメインシナリオでは存分に味わえる。
 
マルチストーリー・マルチエンディングの本作は、プレイヤーの分身となる主人公・の選択次第で幾重にも変わる展開の中から、何度もトライ&エラーをしつつ真相を探していくことになる。はミステリーにおける探偵役でもあるが、選択によっては簡単に間違った思い込みをしてしまったり、謎の行動に走ったりしてしまう。そうなるとまともに真相を知ることはできなくなる。
 
推理に誤りがあると当然事件は解決せず、周りの人間や大切な人、果ては自分自身の命まで奪われてしまう。この「自分の判断ミスで、犠牲者が増えていく」ともいえる状況は、取り返しのつかないことをしてしまったという恐怖以外の何物でもない。
 
だからこそ、最悪なエンドの中からヒントを見つけ、真相に近づけたとき――恐怖をのりこえたときには、大きな達成感を得ることができる。一回では解き明かせない謎が繰り返し読み込んでいく中で少しずつ紐解けていく感覚は、ミステリー作品の大きな魅力でもある。
 
それにしても、叫び声や物音などの効果音やBGMが本当に心にクる。
 

▲余談だが、PS版の特別篇ではフローチャートが追加され、オリジナル版よりも分岐点を振り返りやすくなっている。章選択しかできないオリジナル版にあった“ミスできない緊張感”もひとつのスパイスだが、サウンドノベルはフローチャートでしっかり情報の整理ができた方が楽しいと思う、という個人の意見。

キャラクターの
シルエットの描写が秀逸!

ここまで、記事の画像を見てきて「なぜキャラクターがシルエット?」と思った方も、いるかもしれない。
 
そんな方々にお伝えしておくと、『かまいたちの夜といえばこのシルエット描写! と言っても過言ではない。雑誌に登場したジャニーズタレントのグレー塗りを見て必ず「うお、『かまいたちの夜』じゃん!」と発言する者が一定数いるほどだし(ライター調べ)。
 
ともかく本作のシルエット描写は最高に秀逸な表現だ。本作のもうひとつのおすすめポイントに挙げても良いくらいなので、ここで一度、キャラクター紹介を兼ねてこちらを見ていただこう。
 

真理

小林二郎

小林今日子

久保田俊夫

篠崎みどり

北野啓子

渡瀬可奈子

河村亜希

香山誠一

香山春子

田中一郎

美樹本洋介

90年代から変わらないザ・平凡なイメージ高嶺の花感のある真理。絶対イケメンだろ! という感じの俊夫さんオモロイ関西人(大阪人?)であろう香山さん……とシルエットを眺めているとなんとなく顔が頭の中に浮かんでくる。
 
しかしおそらく、イメージしている顔は見ている人プレイヤーひとりひとりによって違うだろう。
 
表情ひとつとっても、
 

細かいが「ここの俊夫さんはどんな表情をしているのだろう?」 と考えるといろいろな想像が働く。「じゃああのときはこんな表情かな」と、はっきりと見えていないからこそ知りたい心理になる。
 
サウンドノベルとして、テキスト以外でこちらに訴えかけてくる部分がたくさんあるにも関わらず、人物の“”という重要な部分だけはプレイヤー自身で補う必要がある。そんなシルエット描写には、物語を“想像力で楽しむ”余地がある。
 
個人的にノベル(小説)は読みながら情景を想像するところにも面白さがあると思っている。本作はサウンド(音)でこちらをビビらせつつ、一番楽しい“人物の想像”をさせてくれるステキな“サウンドノベル”なのだ。
 

▲完全に主観かつメタ的だが、プレイし始めたころの透の顔つきと、紆余曲折(何回もバッドエンド)を経てから再び推理に挑戦する透の顔つきはきっと違うのだろうな、と思っている。

 

サウンドノベルの金字塔
『かまいたちの夜』を遊ぼう!

トラウマ必至のバッドエンドも存在する『かまいたちの夜』。ホラー×ミステリーの傑作をこの夏に遊んでみてはいかがだろうか。なんと、メインシナリオの“ミステリー編”のほか、クリア後には趣向の違うシナリオが複数用意されているぞ。ぜひ攻略サイトを開かずにどんなエンディング、どんなシナリオがあるかを確かめてほしい。
 

▲事件の中で発展する(?) 透と真理の関係にも注目だ。

 

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作品概要
『かまいたちの夜』

 
対応機種:スーパーファミコン
発売元:チュンソフト
発売日:1994年11月25日
 
『かまいたちの夜 特別篇』
 
対応機種:PlayStation
発売元:チュンソフト
発売日:1998年12月3日

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