生クリーム+納豆=ピーナッツバター? 脳が錯覚する「なんちゃってグルメ」15レシピ実食&大学教授が解説【後編】

ラストスパート、頑張れ自分 〜飲み物編〜

【その14】牛乳+たくあん=コーンポタージュ


普段は「なんで自分はもっと頑張れないんだ」と後ろ向きな性格の自分だが、つい見出しに「ラストスパート」などと書いて健闘を讃えてしまった。とにもかくにもあと2品だ。
 

いざ実食!!

う〜ん。牛乳がシャバシャバしているのに対して、ポリポリと小気味よい音を立てるたくあんの食感がぶつかり合う。味が絡み合う感覚がなく、牛乳とたくあんを一緒に食べている感じ(※そのまんまじゃねーか)。
 

▲たくあんをミキサーにかけるといいのかもしれない。
 


 

【その15】麦茶+サイダー=ビール


あーーー!! これ、子どもの頃にやったことがある! なぜなら、かつて『コミックボ●ボ●』で連載していたグルメ漫画に載っていたから!! 安心感があるぜ。
 

いざ実食!!

うん、普通においしい。手づくりのノンアルコールビール的な感覚で、親につくってあげるとよろこんでもらえるんじゃないだろうか。言われてみればビールって麦だし。
 

▲ぐびぐびいける
 


 

「味覚を分析すれば、「好きな味」を未来に残せる」 〜味覚センサー研究者・都甲潔さんインタビュー〜

 
——都甲先生が考案した「しょうゆ+みかん+ノリ=イクラ」の再現度が衝撃的でした! どうすれば、こんな組み合わせを思いつくのでしょうか。まさか、日夜おもしろレシピの組み合わせを研究して……!?
 
違います(苦笑)。それはですね、私が研究している「味覚センサ」の賜物(たまもの)なんです。この記事を見ている小学生や大人のみなさん、自分の舌を鏡でよ〜く見てみてください。小さい粒々がありませんか?
 
——は、はりまふ(※あ、あります)!!
 
その粒々は舌乳頭(ぜつにゅうとう)と言いまして、「味蕾(みらい)」という味細胞からできています。一言で説明すると、味のもととなる物質……つまり、食べものが味蕾に触れると脳に信号が送られて、いろいろな味を感じるようになっているのです。味覚センサの研究では、そのメカニズムを人工的に再現することで、味を測ることに成功しました。
 
——味を測る!? それって、具体的にはどういうことなんでしょうか。いまいち想像がつかないというか……。
 
まず、味を構成する要素は「甘味」「うま味」「酸味」「苦味」「塩味」の5つからなります。一般にはこの5つに「コク」や「渋味」「辛味」も追加されます。これらを測定・数値化できるようにしました。
 
たとえば、メロンはコクの数値が低く、甘味の数値が高い。「ハチミツ+キュウリ」の組み合わせがメロンの味のように感じる理由は、5つの数値のバランスが似ているからなんです。もちろん、メロンのとろりとした食感までは再現できないですが、現在は「食感センサ」の研究も進めています。
 
——都甲先生は、ほかにもAI(※人工知能)で匂いを認識する「人工嗅覚システム(匂いセンサ)」の研究も行っていますね。
 
はい。イヌの嗅覚を超えるレベルの「超高感度匂いセンサ」の研究も進行中です。匂いセンサでは、空港や鉄道での爆発物探知、震災時の人命救助などへの応用が見込まれているんですよ。
 
——す、すごい!! コロコロ的には「何と何を混ぜるとウ●コの匂いになる」なんて内容を期待してしまいました、すみません!!  ちなみに、味覚センサはどのようなことに応用されているんでしょうか。
 
五感や味覚というのは、本来、主観的なものですよね。要は、同じ「甘い」でも、人によってどの程度甘いと感じるかは個人差があるじゃないですか。その「味」を数値化することで、客観的な「味の測定装置」としての役割を果たしています。わかりやすい例を挙げると、食品メーカーの新商品の開発などに使われているんですよ。
 
——今回の記事では、レシピのユニークさに気を取られてしまいましたが、その背景には最新鋭の研究があったんですね。
 
味覚センサの分析結果をコンピュータに保存しておけば、たとえば、やむなく店を閉めることになった名店の味を再現することができるかもしれません。将来、月面基地や火星基地が出来て、地球と同じように調理ができないとなった場合にもいろいろな味を再現した食べものを提供することが可能でしょう。ほかにも、伝統料理の味を何百年と変えずに受け継ぐ、忘れられない「お袋の味」を分析して再現するといったこともできるようになります。
 
——ものすごいロマンのある話ですね。未来の技術へのワクワク感がすごい! 自分だったら、どんな味を残したいかなぁ。都甲先生、ご解説ありがとうございました!!
 
※この記事を見て、都甲先生の研究に興味を持った人は「都甲・小野寺研究室」(九州大学 大学院システム情報科学研究院 情報エレクトロニクス部門)のホームページを見てみよう!! 
 
http://ultrabio.ed.kyushu-u.ac.jp
 
<参考文献>
『プリンに醤油でウニになる』都甲潔著(ソフトバンク クリエイティブ/2007)