3月といえば進級シーズン! 小学生にとっては、「誕生日」「クリスマス」に次いで、欲しいものを買ってもらう絶好の機会と言っても過言ではない!! ならば、どのように親におねだりをすれば、欲しいものをつかみ取れるのか——小学生から使える超実践的な交渉術について「NPO法人日本交渉協会」の常務理事・安藤雅旺(あんどう・まさあき)さんに聞いた!! 日常生活はもちろん、ビジネスでも役立つ交渉術を教えてくれたぞ! 社会人になった、アニキ・アネキのみんなも必見だぜ!!!!
プロフィール
<日本交渉協会>
元大学教授の藤田忠(ふじた・ただし)さんが、一般市民や青少年を対象に、交渉力(他者との話し合いによって、お互いが満足する合意を形成する力)に関する教育事業などの普及を目的に設立した団体。1973年にハーバード大学で交渉学を学んだ藤田さんが、帰国後に国際基督教大学で開設した「交渉行動」の講座は、日本で交渉学を普及する礎(いしずえ)となった。日本交渉協会は、「交渉アナリスト」の資格制度を創設し、同資格の認定機関となっている。マスコットキャラクターは「ネゴねこジン」(=画像)。
http://nego.jp
▲お話を聞いた人:「日本交渉協会」常務理事の安藤さん
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自分のことばかりを考えてはダメ!
——交渉のために「親にとってのNintendo Switchを買う価値」を創造するって、一体、どういうことなんでしょうか!?
今回は、子どもが親にNintendo Switchを買ってもらうというテーマですよね。自分の「欲しい」という気持ちを押し付けるのではなく、親と子どもにとっての共通の価値を考えればいいんです。つまり、「親にとっても、こんな魅力があるよ」と提案することが大切なんですね。たとえば、ダイエットや運動不足を解消したいと考えている親に対してなら、『リングフィット アドベンチャー』でエクササイズができることを主張するのも、一つの手です。
釣りが好きなお父さんなら、釣りのゲームがあることを教えてあげるのもよいでしょう。Nintendo Switchにはパーティーゲームもありますから、家族や友人とのコミュニケーションツールにもなります。さらに、持ち運びだってできますから、おじいちゃん・おばあちゃんの家に帰省した時でも、みんなで楽しめます。
——おお〜〜〜!! Nintendo Switchがあると、いいことづくしですね!
親にそう思ってもらえれば、交渉が一歩前進したことになります。ただ、メリットを並べるだけでは、決定打にはならないでしょう。なぜなら、親はデメリットについて考えているからです。たとえば、ゲームに夢中になって勉強が疎かになると心配しているようなら、「1日1時間以上はしません」という約束を、しっかり親にすることが大切です。
もし、高額なものを理由もなしに買うのが教育上よくないのではと考えている親ならば、「子どもが相応の努力をしたから買ってあげる」という方向にもっていくのも一つの手です。勉強が苦手な子ならテストで何点以上取るとか、運動が苦手な子なら頑張って逆上がりや二重跳びをできるようにする、といったことです。
子どもが努力を成し遂げた上での成功体験として、ご褒美をあげるのなら、それは教育的にもよいことですよね。ここまで具体的に提案できると、かなり親の財布のひもが緩んでくるものだと考えられます。
交渉成功のカギは「普段の行い」
——いやぁ、すごい! これはぜひ小学生に読んで実践してもらいたいです!! でも、それでも断られてしまった場合は、どうすればいいでしょうか。
振り返りが大切です。つまり、なぜ断られてしまったのかを考えましょう。タイミングが悪かったのか、自分が伝えるべきことをしっかり話せていたかなどが重要です。
——でも、自分の気持ちや考えをうまく伝えるのって、大人でも大変ですよね。上手に話すコツなどがあれば教えてください!
結局は、そこに大義名分があるかどうかだと思います。言葉では相手のことを考えている風に装っても、本心では「自分が欲しい」という気持ちで支配されていると態度に表れてしまいますから。逆に、話がたどたどしくても「みんなと一緒に楽しみたい」という気持ちが伝われば、交渉がうまくいくケースもあります。
あとは、交渉において最も重要なことの一つは、相手との普段の関係性です。「勉強を頑張る」「運動を頑張る」と約束しても、普段から約束を守らない子なら「ダメよ」となるでしょう。普段から宿題をきちんとする、歯磨きを言われる前にする、など信頼関係を築いていくことが必要なんです。
——あぁ、それは本当にその通りですよね……。「親にNintendo Switchを買ってもらう交渉術」というテーマですが、ビジネスシーンにおいても、めちゃくちゃ参考になることばかりです!
社会人の人にぜひ知っておいていただきたいのは、「バトナ(BATNA)」です。「Best Alternative To a Negotiated Agreement(ベスト・オルタナティブ・トゥー・ア・ネゴシエーテッド・アグリーメント)」の略で、直訳すると「交渉決裂時の最適代替案」。つまり、交渉の合意が成立しない場合の、代わりとなる最良の案です。
たとえば、これを読んでいるあなたが人生を掛けたプロジェクトを上司に提案するとします。上司に誠心誠意、思いを伝えて「よし、やろう」となればよいですが、「それはできない」となった時にどうするか、です。
もし、あなたが交渉の前にバトナとして、転職先の内定を得ていたとすれば生活が保証されるので「それなら、私は退職します」と強く出ることができます。しかし、バトナがなければ、相手に丸め込まれて不本意な気持ちを抱いたまま、そこで働き続けることになります。交渉において、相手に迎合しないためのバトナをつくっておくことも、一つのテクニックと言えるでしょう。
最後に伝えたいのは、小学生でも社会人でも、生活の根っこにあるのは人との信頼関係だということです。相手のことを思いやる「仁(じん)の精神」が大切なんですね。そこを分かり合える人とは、価値創造型の交渉がうまくいくでしょう。価値創造型の交渉を行っている人は、社会課題を解決する行動力のある、志のある人が多い印象です。
——今回聞いたお話は、いろいろなことに応用できそうです! そう考えると、交渉って日常にあふれているものなんですね。
そうですね、大小問わずにいろいろな交渉が日常で起きているはずです。今回の記事を読んだ小学生がみなハッピーになる交渉を実践し、家族と一緒にゲームを楽しめるようになれば、とてもうれしいです。交渉上手になるためには、まずは親や友だちなど周囲から信頼される人になることです。それと共に「自分ファースト」ではなく、「相手の立場に立つ」ことを常に心掛けてほしいです。
——ぜひ、お互いにとって価値のある交渉にチャレンジしてほしいですね! 小学生のみんなは、目指せNintendo Switch!! アニキ・アネキは仕事に生かしてくれよな!!!