親子連れに言われたこと
――完成品については、海外からの指摘もなくすんなりと?
そうですね。最終的には何もなく、無事に終えることができました。……ただ。
――ただ?
プレイステーション 4のタイトルって、映像のクオリティーが高いものが多いじゃないですか? SIE、ファーストパーティーの作品でも、『Horizon Zero Dawn(ホライゾンゼロドーン)』とか、凄いですし。そういったゲームと、どうしても比べられちゃうんです。でも「みんGOL」はそういう部分を追い求めるタイトルではないし、ゲーム性も違うので、落としどころをどこにするかについては最後まで調整が必要でした。
――あ、そうだったんですか!
発売間近の段階でも、「もうちょっと映像をなんとかできないか……」と言われることもありましたしね。
――それは、フォトリアリティーを求めろとか、そういう意見?
はい、そうです。リアルな映像を売りにしたゲームを例に出されて、「こんな感じで」と言われても、「いや、それはジャンルも違うし……」としか(笑)。
――そもそも、ゲームのコンセプトが違いますもんね。
ただ、そう言われた意味もわかるんです。ジャパンスタジオの看板を背負って出す以上、ハンパなものにはできませんし、ましてや今回は海外も同発だったので、どうしてもほかのファーストパーティーのタイトルと比べられてしまいますから。とはいえ、譲れないところは譲れないので、最後まで戦いましたけど。
――まさに、プロデューサーのお仕事って気がしますね。
いや本当に……。それでも、取り入れるところはキチンと取り入れましたよ。たとえば木や芝生の表現とか、キャラクターのシェーディングもギリギリまで調整していましたし。
――ああ、そうなんですか。
落としどころを見つけるために、ビフォーアフターを並べたものを海外の人にも見てもらったり。それもあって、『New みんなのGOLF』発表初期の映像と製品版のソレを比べると、キャラクターの等身やシェーディングが変わっているのがわかると思います。
――え! そうだったんですか!? まったく気にしてなかった……。いやでも、こんなかわいらしい見た目のゲームで、そんなやり取りがあったとはね……。
あるんですよー、いろいろと。
――しかし、ただでさえ発売まで長かったタイトルなのに、ギリギリのところで修正やら調整が入るとなると……クラップハンズの皆さんも、かなり疲弊されたんじゃないですか?
それはもう、大変だったと思います。本当に。かなり作り込んでくれました。
――そんな苦労の末にようやく発売されたわけですが、ファンの反応はいかがでしたか?
『New みんなのGOLF』が出展されるイベントに何度も出掛けて、その様子を見ていたんですが、あるときお父さんとお子さんの親子で来られている方に話し掛けられたんです。聞くとお父さんが、「私は子どものころから『みんGOL』で遊んでいました。そんなゲームを、今度は息子といっしょに楽しみたいんです」とおっしゃってくれて。これがもう、なんとも言えずうれしかったんですよね。「あ、これぞまさに『みんなのGOLF』だ」と思えて。これまでたくさんのゲームに携わってきましたけど、こんなに直接的にユーザーに届いている感じを覚えたのって初めての経験でした。すごく貴重な経験でしたし、改めて「本当に大事なIPだな」と痛感しましたね。
――プレイステーション 2でオンラインゲームが始まった黎明期、『みんなのGOLF オンライン』にめちゃくちゃハマって、顔も名前も知らない一般の人と1日中遊んでいたことがありました。そのとき、地方に住む小学5年生と仲良くなって、チャットで、「いつか大人になったら、ミドさん(大塚の「みんGOL」ネーム)とお酒飲みに行くんだ!」なんて言っていたんですけど……それから10数年経ったある日、大人になった彼が訪ねてきて、本当にいっしょに酒を飲みに行ったことがあります(笑)。
うわー、いい話ですね!
――「みんGOL」とともにこいつは育って、いつの間にか大人になったんだなぁ……と。「みんGOL」って、なんかそういうタイトルですよね(笑)。
そうなんです。なので、『New みんなのGOLF』の初回購入特典で昔の「みんGOL」にあったコースを付けました。きっと、当時遊んでいたお父さん世代の人は、「これ、父ちゃんが昔遊んでいたコースだぞ!」なんて、自慢しながら遊んでくれるんじゃないかと思いまして。
――うんうん! そういうアプローチ、「みんGOL」ならではですね!
かなり無理はしましたけど……(苦笑)。というのも、当初の計画にはまったくなかったコースだったので、クラップハンズさんにムチャを言って……。でもどうしても欲しかったので、「お願いします!」と。
――しかし、昔の「みんGOL」はミリオンヒットの常連でしたけど、昨今は「みんGOL」に限らず、ミリオン自体が出なくなりましたが、そんな中、『New みんなのGOLF』はキチンとファンに評価されているように思うのですが、プロデューサー的にはいかがですか?
そうですね。難しい時代だと思います。
――そんな中、『New みんGOL』はキチンとファンに評価されているように思うのですが、プロデューサー的にはいかがですか?
『New みんなのGOLF』は発売から2年半が経過しているにもかかわらず、いまだにテレビ番組とかイベントで使いたいと要請をもらうことが多くて、「やっぱり『みんGOL』の力はスゴいな」と実感しています。販売傾向も、ふつうのタイトルは発売直後に売れたら下降線を辿るものですが、『New みんなのGOLF』はじわじわと売れ続けているんです。
――渋野日向子選手が全英オープンで優勝して、『New みんなのGOLF』の売れ行きがピョコっと上昇した……なんてことはありませんでした?(笑)
あーーー、どうだろう! あとで調べてみよう(笑)。