明るくて楽しい! プレイステーション®ファミリーの看板タイトル
1994年に始まったプレイステーションの歴史において、間違いなく“プラットフォームの象徴的タイトル”に数えられるのが“みんGOL”こと「みんなのGOLF」シリーズだ。
今回は、満を持してプレイステーション4用ソフトとしてリリースされた『New みんなのGOLF』(2017年8月31日発売)と、その発展形として2019年5月21日に発売となった『みんGOL VR』について、シニアプロデューサーの本村健太郎さんに話をお聞きした。
ちなみにインタビュアーと文章は、ファミ通で長くみんGOLを担当してきた大塚角満です。
キャラクターの等身の秘密
――改めてお聞きしますが、本村さんが「みん GOL」のプロデューサーになられたのは、どの作品からですか?
じつは『New みんなのGOLF』からなんです。それも、途中からの参加で。
――え。それはちょっと意外! というのも……昔からの知り合いなので(笑)。
具体的にお話しますと、『New みんなのGOLF』は予定よりもかなり開発が長引いてしまい、なかなかまとまらなかったんですね。そこで開発の後半になって、僕が加わることになりました。
――僕も個人的に楽しみにしていたタイトルなので、「出ないなぁ……。まだかなぁ……」って、ずーっと思っていました。
発表してからが長かったので、ファンの方は余計に気を揉んでいましたよね……。
――E3(毎年アメリカで行われる、世界最大のゲーム見本市)に行くたびに、新しいバージョンを体験プレイしていた印象があります。それでも……なかなか発売されませんでしたけど。
2014年のカンファレンスで初お披露目されたとき、僕はまだプロデューサーとしてアサインされていなくて、まったく別のタイトルを担当していたんです。なので発表を見ながら、「おお、ようやく公開された」なんて思っていたんですけど、その後……まさか自分も加わることになるとは(笑)。
――「みんGOL」シリーズは掛け値なしに、プレイステーションファミリーを象徴するタイトルです。それに関わることになったときの心境はいかがでしたか?
やっぱり凄かったですよ、プレッシャーが。というのも……初代『みんなのGOLF』は、小林康秀さん(※初代『みんなのGOLF』を立ち上げた名物プロデューサー)が立ち上げたじゃないですか?
――はい。「みんGOL」のシリーズプロデューサーをされている小林さん。名物プロデューサーですね。僕も何度も、お話を聞いたことがあります。
僕、当時から小林グループにいたので、そういう意味では“お父さんがずっと作っていたゲーム”が「みんGOL」なんですよ。それこそ、開発の初期の初期……誰も“みんGOL”ってものを意識していなかった時代から知っていて、発売後に“化けて”大ヒットした様子も間近で見ていたので、それに関わるというのは言いようのないプレッシャーでした。
――しかも『New みんなのGOLF』は、これまでのシリーズ作品と比べて、一足飛びに進化したような内容ですしね。
いや本当に……。僕はこれまで『Bloodborne(ブラッドボーン)』や『白騎士物語』など、RPGに関わることが多くて、スポーツゲームはまったく担当したことがなかったんです。なので、知見のあるジャンルではないし、さらにジャパンスタジオの看板タイトルでもあるので、不安は小さくはなかったですね。
――そうか……。看板を任せられた喜びなんて、実作業に入ったら吹っ飛んじゃうよなぁ(苦笑)。どうやって、その不安を払拭されたんですか?
初代のプロデューサーが小林さんで、2代目が池尻さんだったじゃないですか。
――池尻大作さん(※『みんなのGOLF オンライン』など、数々のプレイステーションタイトルを手掛けてきたプロデューサー)とは、10数年前から仲良くさせていただいております。
池尻さんはプロデューサーとして、僕の兄貴分にあたる方なんですね。つまり、お父ちゃん、兄ちゃんが育ててきたのが「みんなのGOLF」というシリーズです。となれば……末っ子の僕も、やるしかないな! って感じ(笑)。
――そうか。そういう流れでしたね、確かに。
いまでも、プロデューサーとして雲の上の人と思っているおふたりです。そんな彼らの想いを引き継いで……というのは確かにプレッシャーではあったんですけど、それ以上に光栄なことだなと腹をくくって、要請を受けることにしました。
――そんな「みんGOL」シリーズは、開発会社のクラップハンズがずっと作り続けているタイトルです。そういう意味では、作り手側のこだわりも非常に強いと思うのですが、そこに『New みんなのGOLF』の途中から参画されるのはたいへんだったんじゃないですか?
最初はもう、様子見です。僕もクラップハンズさんも、お互いに。どちらもソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に関わって長いですが、仕事をするのは初めてですからね。それでも、ひと月経ったころにはざっくばらんに話をするようになりましたし、何かと理由をつけてはクラップハンズさんにお邪魔させてもらうようになりました。
――ほうほう。ちなみに本村さん、もともとリアルゴルフをやられるんですね?
それが……ぜんぜんなんですよ! 間違いなく、歴代の「みんGOL」プロデューサーの中でいちばんゴルフから遠い人間です(笑)。ゴルフゲームは「みんGOL」に限らず大好きなんですけど、リアルゴルフはまったくやったことがありません。
――そうだったんですか! それがゲーム作りに影響したことは?
前出の小林さんが、シリーズプロデューサーとして外部からサポートしてくださっていたので、ゴルフの部分は徹底的に監修してもらいました。その安心感があったので、僕はゲーム性とかプレイステーション 4らしさとか、ゴルフ以外の部分に注力することができました。
――そうか。逆に割り切れてできた部分もあるんですかね。
はい、その通りです。
――思い起こせば、僕は何度か池尻さんとリアルゴルフ行きましたよ。
ああ、そうなんですね!
――昔、『みんなのGOLF場』というゲーム……というかアプリケーションがPSP®「プレイステーション・ポータブル」で発売されたじゃないですか。
はいはい! ありましたね!
――あのときに、僕もゴルフはまったく門外漢だったんですけど、池尻さんに「ゴルフに行きましょう!」と誘われて。ゴルフレッスンに通ってから行きましたわ(笑)。
開発メンバーも、ゴルフ好きが多いですからねー!
――ですよね! クラップハンズの村守さん(※『New みんなのGOLF』エグゼクティブプロデューサーの村守将志さん)を始め。
そうなんですよ。加えて小林さん、池尻さんもお好きですし、僕の前にプロデューサーをしていた小番(※SIEのプロデューサー、小番芳範さん)も。
――ああ、小番さんもゴルファーですよね。
メインで関わっているプロデュース陣でゴルフをしていなかったの、僕くらいじゃないかなぁ。……正直、ちょっと申し訳ない気が(苦笑)。
――でも、逆にゴルフをやらないことで、客観的な視点から意見を言えることは多かったんじゃないですか?
それは大きかったと思います。ゴルフ部分はお任せしつつ、たとえばプレイステーション 4における昨今のオンラインのトレンドだとか、キャラクターの方向性だとか……。そういった視点の話は、かなり突っ込んで提案させていただきました。
――『New みんなのGOLF』はとくに、プラスαの要素がメチャクチャ多くなったので、本村さんのような他のジャンルのゲームを扱っていた人こそマッチしたんだと思います。
加えて、「みんGOL」は“日本の強いIP”というイメージが強かったですし、それは変わらないんですけど、プレイステーション 4がプラットフォームになったことにより、いままで以上にグローバルで戦っていかなければならなくなりました。全世界同時発売も初めてだったので、ジャパンスタジオの意見だけではどうしても賄いきれない部分も出てきたんです。海外を意識したときに、「こういう表現はNG」とか、「あえてこういう造りにしてほしい」とか……。
――ぜひ、具体的にお聞きしたいですね。たとえば、フィールドがオープンになったりとか?
はい、それもありますし、他にもキャラクターもかなり細かくチェックされました。「どことなく、実在の有名人に似ている気がするので直しましょう」なんて意見も含めて。
――あー、過去の「みんGOL」にはいますもんね。「この女の子キャラ、誰かに似てるなぁ……」みたいなの。
はい、いると思います。でも、いまは時代的に、コミカルなパロディーも難しくなってきましたからねぇ。
――そっかあ。そういった部分は事前に潰しておかないと、完成直前になって指摘されたら大工事になっちゃいますもんね。
はい。先ほども言いましたが『New みんなのGOLF』は海外も同時発売だったので、やれることは徹底してやらないといけませんでした。
――昔と比べると……たいへんだなぁ……。
とはいえ、今回はオンライン環境もグローバルで統一し、世界中の人といっしょにスタートすることを目標に作っていたので、それが実現できた満足度のほうが大きいですねー。いままでは日本での発売後、しばらく経ってから海外版のリリースだったので、「外国のファンの方に申し訳ないな」と感じていましたから。
――しかし、グローバルで同発、しかもオンライン環境も統一して……って、作るうえでの苦労はかなりのものがあったんじゃないですか?
ありました! 「みんGOL」シリーズは歴史的にも、プレイステーション®2の『みんなのGOLF オンライン』とか、前作の『みんなのGOLF 6』ではプレイステーション®3とプレイステーション®ヴィータ(PS Vita)でマッチングして遊んでもらったりとか、かなりのチャレンジをしてきましたよね。そして『New みんなのGOLF』も、僕が加わったときにはすでにマルチプレイのロビーができていたりして、かなりオンラインに比重を置いた作りになっていました。そこで、どのように新しいことを打ち出すのか? 僕は僕で『白騎士物語』や『Bloodborne(ブラッドボーン)』でオンラインの知見があったので、そこで得たノウハウをうまいこと救い上げ、取捨選択し、『New みんなのGOLF』のオンラインサービスに活かしました。過剰になりすぎず、かつ、みんなが遊びやすいように注意しつつ。
確かに、オンラインでやるときにやたらと煩雑な操作が必要だったり、ハードルがあったりするとイヤになっちゃいますけど、『New みんなのGOLF』はすごく遊びやすくなっていると思います。
ありがとうございます。ここはかなり試行錯誤し、何度も何度も作り直したんですけど、結果的にユーザーを誘導しやすくなったかなと思います。