【大塚角満のゲームを語る】第6回『ボイド・テラリウム』に大いに期待する!!


 

1月の伏兵

 
前回の日記で、2020年に遊びたいと思っているゲームの展望を書かせてもらった。その中で、“1月に遊びたいゲーム”として挙げたのがつぎの2本だ。
 
・『パズドラGOLD』(1月15日発売 ガンホー・オンライン・エンターテイメント)
・『龍が如く7 光と闇の行方』(1月16日発売 セガゲームス)
 
書いたからにはということで、当然のようにこの2タイトルを購入。
 

 
「よーし、時間的にも1月は、これ以上ゲームを買ったらあかんぞ自分! オノレの首を絞めることになるからな!! そんなに遊べないんだかんな!!!」
 
自分で自分にブレーキを掛けるために、毎日のようにこんなことをわめきつつ……ご近所にあるヨドバシカメラ マルチメディアAkibaのゲーム売り場を覗きに行った(買う気満々じゃねえか)。そこで、とある新作タイトルのポップを目にして、
 
「!!!!!」
 
となり、編集部に戻るやいなや↓こんなことをしてしまいました。
 

 
日本一ソフトウェアから1月23日に発売のNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『ボイド・テラリウム』の体験版やっちゃったぁぁぁああああ!!!www
 

 

ローグライクゲームとは?

 
『ボイド・テラリウム』の物語の背景は、なかなか重い。
 
舞台となるのは、文明が滅びてから何百年も経った荒涼とした世界。人類は滅亡し、言葉を介する者も、意思を持つ者も存在しない……はずが、なぜかひとりの少女が朽ちたシェルターの中で眠っていた。でもこのままでは、遠くない未来に少女の命も尽きてしまう。このコを救えるのは、スクラップ工場で目を覚ましたロボットと、入るたびに形を変える不思議なダンジョンだけ--。“テラリウム”の中で命の灯をともし続ける少女のために、ロボットは危険なダンジョンに身を投じて、食べ物や薬、拠点を整えるための物資を集めることを決意するのであった--。
 
これが、『ボイド・テラリウム』の舞台設定とゲームの目的だ。読んでピンと来た方もいるかと思うけど、ゲームジャンルは“ローグライク”となっている。
 
ローグライクというのは要するに、自動生成されるダンジョンでアイテム収集や強敵と戦うゲームのこと。基本的にダンジョン内でゲームオーバーになるとレベル1からやり直しで、拾ったアイテムもすべて失うゲームが多い。日本では『トルネコの大冒険』や『風来のシレン』シリーズが有名で、これらの大ヒット後にはさまざまなメーカーから“シレン・リスペクト”のゲームが数多く発売されている。ダンジョン内では、ひとつの行動、ひとつのミスがゲームオーバーにつながることもしばしばで、詰将棋のようなヒリヒリするゲーム性が病みつきになる人も多い。
 
そしてもちろん、俺もそのひとりである。
 
『ボイド・テラリウム』の存在を知ったその日、編集部で、
 
「掘り出し物のゲーム見つけたかも!! 日本一ソフトウェアの、『ボイド・テラリウム』ってやつ!!」
 
と、誰彼構わず吹聴していたところ、同僚のスタッフにこんなことを言われた。
 
「どれどれ……って、また自動生成ダンジョンゲーかよwww キミ、ホントに自動生成系が好きやねぇ~~~w」
 
確かに俺は、入るたびに新鮮な気持ちで遊べる自動生成ダンジョンゲーが大好きだ。図星を突かれて、
 
「う……ぐ……」
 
と二の句が継げなくなっていると、同僚はさらに畳みかけてきた。
 
「キミが惹かれるゲームの傾向、わかりやすすぎや。“自動生成”、“ハック&スラッシュ”、“ドット絵”……。このうちのどれかひとつでも当てはまると、やらずにはいられないやろwww」
 
自動生成でドット絵でハクスラのゲームが出てしまったら、俺はどうなってしまうんだろう……((((;゚Д゚)))
 
自分が自分でなくなってしまうような予感を覚えつつ、体験版を起動した。
 

ペットを飼われている方へ

 
『ボイド・テラリウム』はパッケージに、
 
“ローグライクお世話RPG”
 
と明記されているのだが、ナルホド、確かにこれは他のローグライクゲームとは匂いが違う、いい意味で“クセ”のある作品のようだ。
 
ゲームの目的は前述の通り、ひとり残された少女“トリコ”を救うことだ。そのためにプレイヤーキャラのロボット君は、危険を顧みずに自動生成のダンジョンに潜らなければならない。
 

 
……そう、目的の根っこにあるのは少女の“お世話”だ。トリコは自分ひとりでは身を守ることはもちろん、モノを食べることもできない。そのうえ、彼女が暮らすテラリウムも決して安全とは言えず、汚染物質によって体調を崩したり、風邪をひいたりすることもある。ゆえにロボットはダンジョンの探索をしながらもつねにトリコの様子を気に掛け、甲斐甲斐しく世話を焼く必要があるのだ。たとえば、寝心地のいいベッドを用意してあげたり、トリコがひとりでも寂しくないようにテラリウム内を植物やぬいぐるみで華やかにしてあげたり……。多くのローグライクゲームが、
 
“死なずにどこまで潜れるか”
 
にカタルシスを覚えるゲーム性なのに対し、『ボイド・テラリウム』は“少女を守ること”に最大の重きが置かれている。もうこの時点で、他のゲームと一線を画していると言わざるを得ない。ダンジョンで死ぬことよりも、トリコが熱を出したり、寂しがったりすることのほうがマイナスダメージが大きくて、
 
「たとえ自分が死んでも……あの子が元気ならそれでいい!><」
 
なんて、ナイトを気取って再びダンジョンに赴きたくなる。
 

 
このゲームを遊んでいて脳裏に浮かんだのは……いつも家で待っている、2匹の飼い猫だった。
 

 
ご飯を用意し、トイレの片づけをして、ちょっとでも調子が悪いと思ったら速攻で病院に連れていく--。
 
そこに損得勘定なんて微塵もなくて、ただ快適に、ただ幸せに暮らしてくれたなら、飼い主にとってそれ以上の“ご褒美”はない……。
 
『ボイド・テラリウム』が纏う、ちょっと切なく、ちょっとホンワカした世界観は、ペットを大切に飼われている人には間違いなく届くはず。そして、
 
「今日はいつもより早く帰って、あいつら(ペット)の相手をしてやろうかな!」
 
そんな気持ちにさせてくれるに違いない。
※この原稿、けっこう前に書いたものなので捕捉します! その後キチンと、Nintendo Switch版の『ボイド・テラリウム』を購入し、毎日のようにトリコちゃんの世話をしておりますw その上で、「飼い猫の世話をしているような感覚……」という自身のファーストインプレッションは間違いではなかった! とよくわかりましたとさw
 

大塚角満(おおつか・かどまん)

1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。