デュエマ妄想構築録 vol.17-5 ~番外編:ガチヤバ4限定構築を制覇せよ!~

By まつがん

0. 前日譚

関係者大会というイベントがある。その名の通り、デュエル・マスターズの関係者だけで大会が行われるというイベントだ。
 
つい先日、私はこの関係者大会に参加してきた。昨年に続き、2回目の出場となる。
 
ところでこのイベントでは、慣例によってカードゲーマー (カードゲーム経験者) には縛りが課せられることとなっている。
 
それも当然だろう、デュエマの関係者といっても必ずしも全員が全員カードゲーム出身というわけでもない。デュエマを担当するまでカードゲームになんて触ったこともない……そんなカジュアルなプレイヤーがいたとして、いざ我々のようなカードゲームのオタクとガチで対戦したらどうなるか。ザパンプマグナジョースターミッツァイルジョースターミッツァイルラッキーナンバー7ラッキーナンバー3タイセンアリガトウゴザイマシタ。なんてことをされたら、その場で引退してしまうかもしれない。
 
もちろん私も、社交パーティとしての側面もある関係者大会に、空気の読めないループデッキやCS優勝レベルの《BAKUOOON・ミッツァイル》デッキをあえて持ち込んだりはしない。その程度の社会性を有してはいる……が、しかしやはりカードゲームオタクなので限界を追求してしまうのである。たとえばカミカミ王子は昨年、《至宝 オール・イエス》で相手の手札をすべて刈り取ってからブロッカーを並べてガチガチの場で相手を嬲り倒すデッキを使って (コンセプトもそうだが、主に大会進行が遅くなる関係で) 顰蹙を買った。
 
そんなわけで大人同士の社交パーティをめちゃくちゃにしないよう、夜の世界を生きる吸血鬼が昼の世界を生きる人間と棲み分けるがごとく、カードゲーマー側は自発的に縛りを設けることにしたのである。
 
ちなみに2回目の出場と書いたが、昨年の関係者大会では各カードゲーマーごとに異なる縛りを設けることにした結果レアリティ縛りが採用され、アミダくじで私はコモン縛りとなった。
 
「コモン (最低レアリティのカード) だけでどう勝つか」というのは他のカードゲームでも議題になりうるところだろうが、ことデュエル・マスターズにおいてはかなり難しいテーマである。なぜなら、勝利貢献度が高くなるであろう切り札格のカードには、平均的に高いレアリティが設定されがちだからだ。
 
つまるところ、コモンでもクリーチャーは並べられるしカードは引けるしS・トリガーで耐えることもある程度はできるのだが、コモンだけでは最終的にゲームに勝てないのである。
 
では、どうするか。そんな状況で私が考えたのは、「とにかく相手よりカードを引き、相手よりクリーチャーを出し、相手より多くのS・トリガーを使って頭数で上回れば勝てる」というコンセプトのもと作り上げた、以下のようなデッキであった。
 
『コモン単ムートピア』

枚数
カード名
4
《一番隊 ザエッサ》
4
《貪欲な若魔導士 ミノミー》
4 《貝獣 ホーラン》
4
《龍装者 タルスーパ》
4
《改速 テンペンチーW》
4
《蓄積する者 アルコウス》
4 《蓄積された魔力》
4 《サイバー・チューン》
4 《蓄積された魔力の渦》
3 《オクトーパの相対性魔力講義》
1 《貝獣 ホタッテ》

 

▲新4弾
「誕ジョー!マスター・ドルスザク!!
~無月の魔凰~」収録、
「蓄積された魔力の渦」
▲新2弾
「マジでB・A・Dなラビリンス!!」
収録、
「蓄積された魔力」

コモン環境で最強クラスのS・トリガーである《蓄積された魔力の渦》に、墓地次第でコモンにあるまじきドロー枚数を実現できる《蓄積された魔力》を組み合わせることで、予想外の角度からのカウンターとそれに乗じた物量攻めを決めようとしたのである。
 
だが実際には、某社の偉い人がユニバースデスザークを持ち込んでいたのを踏んでしまったり、某編集が《ジョット・ガン・ジョラゴン》から無慈悲にも《ガヨウ神》を捨ててきてボコボコにされたりして予選突破はならずという結果に終わってしまった。
 
そして、そこまでガチではないとはいえデッキに何の縛りもないプレイヤーも普通に出場している以上、縛りのもとでできる中途半端なコンセプトよりも、相手がノートリならうっかり勝ててしまうような「勝ち手段の先鋭化」こそが必要だったな……という教訓を得たのであった。
 
さてそんな話を踏まえて、今回は今年の関係者大会での話をしようと思う。
 

1. シチュ―は死の香り

今年採用されたカードゲーマー向けの縛りは、「『ガチヤバ4! 無限改造デッキセットDX!!』縛り」であった。
 
といっても「ジョーのビッグバンGR」と「ゼーロのドラゴンオーラ」、2つあるうちのどちらかのデッキをそのまま使用せよという話ではなく、カードプールの限界がそれによって規定された、という意味である。要はこの2つのデッキに収録されているカードの範囲でデッキを構築せよ、ということだ。
 
今回は各カードゲーマーごとに縛りの内容が違ったりするようなことはなく、カードゲーマー側は全員共通でこの縛りなので、環境を突き詰めると全員似たようなデッキになるのでは……とも危惧されたが、全員が全員そこまで真面目にはやり込むことはないだろうということで、この範囲であれば自由にデッキを構築してしまって構わないことになった (すなわちカードプールにあるならば、収録枚数なども気にする必要はない)。
 
では、少し考えてみて欲しい。この「ガチヤバ4限定構築」とも呼ぶべきフォーマットの中で……厳密にはこれに縛られない関係者もいることから統一されたフォーマットではないが……最強のデッキを作るとしたら、どんなデッキになるだろうか?
 
最強ということは、「返す手がない」ということだ。そしてそのような状況は、大抵は「スケール」によってもたらされる。チャージしたマナ以上の行動を行うことで、相手が使えるマナでは返しようがないという状況を作ればいいからだ。
 
そうなったとき、「ガチヤバ4限定構築」のカードプールの中でそのようなスケールを持つカードとしては、何が挙げられるだろうか?

▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ジョーのビッグバンGR」収録、
「無限杖 フェニクジャーラ」
▲双極篇 第1弾
「轟快!!
ジョラゴンGo Fight!!」 収録、
「龍装艦 ゴクガ・ロイザー」

まず最初に思いつくのは、何といっても《無限杖 フェニクジャーラ》だろう。何せこのカードは《龍装艦 ゴクガ・ロイザー》のように呪文の効果を倍にできる上に、呪文のコストをジョーカーズの数だけ下げることができる。
 
つまりこのカードを出してクソ重スペルのコストを下げつつ効果を倍にすれば、相手が二度と追いつけないほどのスケールを獲得できるのだ。
 
だが、そんな都合のいいクソ重スペルがカードプールにあるはずも……あった。

▲ガチヤバ4!無限改造デッキセットDX!!「ジョーのビッグバンGR」収録、「ポットパイハット小僧/シチュー引き回し」

《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》。このカードこそ、《無限杖 フェニクジャーラ》を出してから唱えるのにぴったりの相棒だ。
 
何せ《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》から打つだけで相手の盤面が崩壊する「新時代の《超次元ガロウズ・ホール》」と呼ばれているほどのカードである。そんな呪文が1マナで打ててしかも効果が2倍になったなら、どんなに温厚な対戦相手でもブチ切れのあまり顔面が憤怒の形相に変形したまま二度と元に戻らなくなることだろう。
 
しかしここまで考えたところで私は、このコンセプトの重大な欠陥に気づいてしまった……というのも。
 
逆に相手に《シチュー引き回し》を打たれたら《無限杖 フェニクジャーラ》が機能停止するのでは???
 
そう、この縛りを受けているのは私だけではない。ならば《無限杖 フェニクジャーラ》からの《シチュー引き回し》というルートにたどり着くのは必然。そしてもし同型戦で先に《シチュー引き回し》を打たれてしまったなら、《無限杖 フェニクジャーラ》を出したところで呪文軽減効果はほとんど発動できなくなってしまう。
 
また、先に《シチュー引き回し》を打たれると《シチュー引き回し》自体の効果も弱まってしまう (先打ち有利) であるということもあって、私が結論を導き出すのには十分すぎた。
 
すなわち、《シチュー引き回し》が《シチュー引き回し》と《無限杖 フェニクジャーラ》に対して強い以上、「《無限杖 フェニクジャーラ》が最強」というのは幻想であり、起こりえないものであるということだ。
 
面が並ばないと100%の力を発揮できない以上、「《無限杖 フェニクジャーラ》はオーバーキルであり、《シチュー引き回し》だけで十分」という結論を導くのにそう時間はかからなかった。
 
こうして「ならば《シチュー引き回し》を連打できればいいのでは?」という境地にたどり着いた私は、《シチュー引き回し》と相性が良いカードをカードプールからピックアップしてデッキを作っていくことにしたのである。

▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ジョーのビッグバンGR」収録、
「ドトシオール・タバローチェ」
▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ジョーのビッグバンGR」収録、
「ドンドン吸い込むナウ」
▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ジョーのビッグバンGR」収録、
「ドトシオール・タバローチェ」
▲超天篇 第3弾
「零誕!
魔神おこせジョルネード1059‼︎」収録、
「天啓 CX-20」

《ドトシオール・タバローチェ》は《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》を墓地から回収できるアドバンテージの塊だ。リソースが尽きそうになったら、これを《ドンドン吸い込むナウ》で自ら手札に戻すことによっても呪文の再利用が可能となる。
 
《ひゃくよウグイス》は生きたリソース生産機で、早いターンにこいつを着地させることでその後の行動にすべてボーナスを付けることができる。また多少序盤に手札が事故っても、6マナ溜まったところで《天啓 CX-20》に向けてGR召喚を毎ターン試行していれば、いつかは《シチュ―引き回し》連打のルートに入れるだろう。
 
というわけで、できあがったのがこちらのデッキだ。
 
『レイヤー1:水自然マナドライブ』

枚数
カード名
4
《フェアリー・ライフ》
4
《ジョラゴン・オーバーロード》
4 《イェーガー a.k.a. 噴射》
4
《スペルブック・チャージャー》
4
《ドンドン吸い込むナウ》
4
《バリスイトーヨー/水筒の術》
4 《ひゃくよウグイス》
4 《ドトシオール・タバローチェ》
4 《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》
4 《マン・オブ・すて~る》
超GRゾーン
2 《パッパラパーリ騎士》
2 《無限合体 ダンダルダBB》
2 《バイナラシャッター》
2 《ジェイ-SHOCKER》
2 《天啓 CX-20》
2 《シャギーⅡ》

 

「《シチュー引き回し》を無限に打ち続ける」という、そのことのみに特化したデッキである。
 
《天啓 CX-20》と《ドトシオール・タバローチェ》がある以上手札が尽きることはなく、盤面は無限に処理し続けることが可能ということもあって、もはや一分の隙もないように思えた……最初のうちだけは
 

2. Dream Drive

ふと考えてみると、「《シチュー引き回し》を連打することが勝負を決定づける」というレイヤー1の考え方は、関係者大会に縛りのあるプレイヤーしかいないことを前提としていた。
 
しかし、実際には昨年のようにデスザークやジョラゴンといったデッキとも当たるかもしれない。そうなったとき、《シチュー引き回し》が打てるようになるまで自分のリソースを伸ばすことしかできないレイヤー1のような構成では、悠長すぎて相手側の準備が万全に整うのをむざむざ許してしまうことにもなりかねない。
 
つまり必要なのは、「状況次第で相手とリソースを交換できる選択肢」なのだ。
 
だが、水と自然というカラーリングはこの点にあまり長けていない。となれば思い浮かぶのは、3色目を入れるというプランである。
 
そしてリソースを交換するとなれば、闇文明のお出ましだろう。

▲超天篇 第3弾
「零誕!
魔神おこせジョルネード1059‼︎」収録、
「マジン 丁-二式」
▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ゼーロのドラゴンオーラ」収録、
「タイザイ 丁-二式」

水と自然だけでデッキを組んだ場合における最大の問題点は、GRクリーチャーが弱いという一点に尽きる。
 
だが闇を入れれば、「ガチヤバ4限定構築」において最強のGRクリーチャーの一角である《マジン 丁-二式》を採用できる。《タイザイ 丁-二式》も、除去できる範囲は広くないものの、相手のGRクリーチャーを倒すなら十分すぎるスペックだ。

▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ゼーロのドラゴンオーラ」収録、
「ソゲキ 丙-一式」
▲ガチヤバ4!
無限改造デッキセットDX!!
「ゼーロのドラゴンオーラ」収録、
「轢罪 エクスマ疫ナ」

他にも盤面には干渉しないものの、《ソゲキ 丙-一式》はマナドライブの緩さの割りに手札という干渉しづらいリソースに触れるので、たとえ相手の盤面にクリーチャーがいない状況でもGR召喚一回ごとのバリューを上げられる。
 
また、《轢罪 エクスマ疫ナ》はそうしてGRを強力なマナドライブ能力持ちに寄せた相手にほど突き刺さる、同型最強のこの環境の《SMAPON》だ。
 
こうしてできあがったのがこちらのレイヤー2のデッキだ。
 
『レイヤー2:水自然闇マナドライブ』

枚数
カード名
4
《フェアリー・ライフ》
4
《ジョラゴン・オーバーロード》
4 《κβバライフ》
4
《幽鬼ドレッシャ》
4
《ドンドン吸い込むナウ》
4
《バリスイトーヨー/水筒の術》
4 《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》
4 《マン・オブ・すて~る》
4 《轢罪 エクスマ疫ナ》
4 《幽鬼バールギーノ》
超GRゾーン
2 《ソゲキ 丙-一式》
2 《タイザイ 丁-二式》
2 《マジン 丁-二式》
2 《バイナラシャッター》
2 《天啓 CX-20》
2 《シャギーⅡ》

 

32枚という厚いS・トリガー枚数を実現しつつ、マナドライブ4~6によってGRの質が向上したことで、6マナ目到達以降のGR召喚は確実にアドバンテージがとれる行動となった。
 
すなわちこれこそ、「ガチヤバ4限定構築」におけるシータミッツァイル
 
一つの到達点にたどり着いたという実感を得た私は、デッキの出来に満足してしばらく放置する選択をとるのであった。
 

3. 無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)

だが当日に備えてできたデッキを一人回ししていたとき、私はふと、ある一つの疑問を心の中で抱いた。
 
「このデッキ同士で同型対決をした場合、お互い盤面の処理能力が高すぎて山札切れ以外で決着が付かないのでは?」
 
そう、それはレイヤー3への入り口。つまり「自分が考えることは他人も考える」のである。
 
カードプールが限られている以上、レイヤー2くらいのデッキは誰でも組んでくる。そしてもしそうなるのであれば、差を付けるべく決定打となるカードが必要となってしまうのだ。
 
だがお互いに《天啓 CX-20》でリソースが切れず、《バイナラシャッター》《マジン 丁-二式》《タイザイ 丁-二式》で無限に盤面を処理し続けられる以上、決定打になりえるとしたらスピードアタッカーしかない。
 
私はカードプールにあるスピードアタッカーを探し……はたして、運命の邂逅を果たしたのである。

▲ガチヤバ4!無限改造デッキセットDX!!「ジョーのビッグバンGR」収録、「無限剣 リオンザッシュ」

《無限剣 リオンザッシュ》。このカードこそ「ガチヤバ4限定構築」における真の最強カードだ。
 
なぜなら、レイヤー1で《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》を、レイヤー2でマナドライブ6による超GRの最適化を実現した時点で、テンポの概念が消滅することはもちろんリソース勝負も全否定されるので、結果として原始時代のようにスピードアタッカーでグルグルパンチが可能な方が必ず有利になるからである。
 
「どうせコンセプトに限界があるならば、勝ち手段を先鋭化させた方が強い」……昨年のコモン限定構築で得た学びが、《無限剣 リオンザッシュ》を見出したことによってまさしく生かされた形であった。
 
だが、問題が一つあった。レイヤー2のリソース交換を実現するには水闇自然というカラーリングが不可欠だが、《無限剣 リオンザッシュ》は火文明のカードであり、闇文明の代わりに火文明を3色目にすると超GRがジョーカーズ主体となって弱くなってしまうのだ。
 
『レイヤー2:水自然火マナドライブ』

枚数
カード名
4
《フェアリー・ライフ》
4
《ジョラゴン・オーバーロード》
4 《κβバライフ》
4
《ドンドン吸い込むナウ》
4
《バリスイトーヨー/水筒の術》
4 《無限剣 リオンザッシュ》
4 《救世主ウマシカ》
4 《行燈どろん》
4 《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》
4 《マン・オブ・すて~る》
超GRゾーン
2 《パッパラパーリ騎士》
2 《無限合体 ダンダルダBB》
2 《バイナラシャッター》
2 《ジェイ-SHOCKER》
2 《天啓 CX-20》
2 《シャギーⅡ》

 

もちろん水自然火のデッキにも利点はあって、たとえば《無限合体 ダンダルダBB》や《ジェイ-SHOCKER》を《無限剣 リオンザッシュ》でSAにできるので急角度の追撃が可能であったり、4枚しか入れられない《無限剣 リオンザッシュ》の代替を《救世主ウマシカ》によって図ることが可能であったりはする。
 
しかし、闇文明の採用によって得られるリソース交換の柔軟性に代わるほどのメリットがあるとは、到底言いがたかった。
 
かといって、有用な多色カードが 《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》くらいしかない環境で4色のデッキが回るとはさすがに思えない。
 
そう、さすがに4色はない……。
 
……。
 
……ん?
 
別に4色にすればよくね???
 
そのコペルニクス的転回が、私をレイヤー3へと導いた。
 
思えば殿堂構築におけるシータミッツァイルも、《Dの牢閣 メメント守神宮》をタッチするなどして4色のデッキを回していた。あのデッキがどうして回るのかというと、一旦マナに自然文明を1枚置いた後の《フェアリー・ライフ》や《霞み妖精ジャスミン》などのマナ加速カードは、色マナとの関係では常に「確率的な色マナ」としてカウントされるからである。
 
つまり、デッキ内に特定の色のカードが見かけ上n枚しか入っていなかったとしても、《フェアリー・ライフ》などの山札からマナゾーンにカードを置くことによってマナ加速するカードを大量に搭載しているデッキなら、実際にはn+m枚入っているかのようにその色を供給できるというのがある。
 
加えて、「GR召喚が持つ特殊性」がある。本来マナゾーンに色マナを供給するのは「その色のカードを使うため」なので、4色のデッキが回らないというときには、「マナゾーンのカードとそのターンに使うべきカードとの色が必ずしも合致しない」ことによって本来のスケールが発揮されない、という問題が発生していることになる。
 
しかしマナドライブを達成したGR召喚を前提とする場合、スケールを定義しているのは多くの場合「GR召喚という行動そのもの」なので、「そのターンに使うべきカード」というのは常に「GR召喚できるカード」であり、逆に言えば「GR召喚さえできれば《κβバライフ》だろうと《イェーガー a.k.a. 噴射》だろうと《行燈どろん》だろうと、どんなカードを使ってもスケールが大して変わらない」という構造になるのである。
 
つまり「マナゾーンに4色を用意した上で」「何らかの方法でGR召喚する」ことができる限り、どんなアクションをとろうが事故ったことにならないので、「マナゾーンのカードとそのターンに使うべきカードとの色を合致させる必要がそもそもない=手札のうちの1枚が合致していればいい」ということにできてしまうのだ。

▲ガチヤバ4!無限改造デッキセットDX!!「ジョーのビッグバンGR」収録、「バリスイトーヨー/水筒の術」

もちろん《バリスイトーヨー/水筒の術》のように「GR召喚そのものを2倍の回数行える」ようなカードのバリューは相対的に大きくなるし、そもそもこの考え方を許容するためには「4ターン目以降にGR召喚1回したのみでターンを返すことがスケール的に常に見合っている」という必要がある。
 
だが超GRを「GR召喚すれば最低でも必ず1:1交換はできる」というような構成にしている限りは、極端な話すべてのカードが《天啓 CX-20》をめくるための試行に過ぎなくなる (そして《天啓 CX-20》をめくると次のターン以降のGR召喚回数が増えるので、その前に自分が死なない限りは、どこかで必ず帳尻が合わせられる) ので、とりあえずGR召喚さえできれば最低ラインはクリアしていると考えていいだろう。
 
ともあれこの考え方にたどり着いたことで、ついに私は「各色のGR召喚できるS・トリガーを片っ端からぶち込めばデッキになる」という身も蓋もない境地に達することができたのである。
 
というわけで「レイヤー2:水自然闇マナドライブ」に《無限剣 リオンザッシュ》を無理矢理ぶち込み、できあがったのがこちらのデッキだ!
 
『レイヤー3:4色マナドライブ』

枚数
カード名
4
《フェアリー・ライフ》
4
《ジョラゴン・オーバーロード》
4 《κβバライフ》
4
《バリスイトーヨー/水筒の術》
4 《轢罪 エクスマ疫ナ》
4 《幽鬼バールギーノ》
4 《マン・オブ・すて~る》
4 《無限剣 リオンザッシュ》
2 《イェーガー a.k.a. 噴射》
2 《ポットパイハット小僧/シチュー引き回し》
2 《行燈どろん》
2 《タイム・ストップン》
超GRゾーン
2 《ソゲキ 丙-一式》
2 《タイザイ 丁-二式》
2 《マジン 丁-二式》
2 《バイナラシャッター》
2 《天啓 CX-20》
2 《ジェイ-SHOCKER》

 

 
「自分が考えることは他人も考える」の精神はここでも生きており、《無限剣 リオンザッシュ》が決定打になるとわかった時点で、念のためにレイヤー3.5の解答として《タイム・ストップン》を採用することにした。マナドライブ6を追求する構造とはマナベース上干渉するので2枚しか入れられなかったが、万が一《ジェイ-SHOCKER》を絡めつつの過剰打点で攻めてこられてもワンチャンス作れるだけマシだろう。
 
最後まで悩んだのは「超GRの6種類目を《スカップⅢ》にするか《ジェイ-SHOCKER》にするか」で、《スカップⅢ》の方が1:1交換をより強力に担保することにはなるのだが、レイヤー2以降は最低でもお互いがマナドライブ6を悪用することになるため、《ジェイ-SHOCKER》で《バイナラシャッター》を戻して「4」を止める選択肢を持っている方がよりクリティカルになりうると思い《ジェイ-SHOCKER》を選択した。
 
「《無限剣 リオンザッシュ》以外は、マナ加速もしくはマナドライブ6を出すためのGR召喚材料にしてS・トリガー」……それがこの「ガチヤバ4限定構築」におけるソリューションだったのだ。
 

4. 危険地帯(レッドゾーン)を越えて

■第一回戦 VSジョーカーズ (イマムー軍曹)
 
一度マナドライブ6のアドバンテージで完璧にコントロールすることに成功。だが10打点くらい作って《無限剣 リオンザッシュ》で殴りにいくも、3点くらい殴ったところで《SMAPON》を踏んでしまい、GRクリーチャーが全部流れた上に《ソーナンデス》→《ドンジャングルS7》で復帰されてしまう。しかし、《天啓 CX-20》によるリカバリーから超GRを一周させて《マジン 丁-二式》を上の方に積んでいたのを再び出し直して、《ドンジャングルS7》を処理してもう一回打点作って勝ち。

 
■第二回戦 VS無色ジョーカーズ (関係者H氏)
 
相手は「Newヒーローデッキ ジョーのジョーカーズ」を少し改造したデッキ。先攻でかつ相手に《ヤッタレマン》がなかったので盤面処理が間に合い、《無限剣 リオンザッシュ》からの7打点で殴って《ジェットセット・バイト》だけ踏むも勝利。

 
■第三回戦 VS水闇自然ミッドレンジ (開発部M氏)
 
相手も縛りありで、「レイヤー1:水自然マナドライブ」と「レイヤー2:水自然闇マナドライブ」の間くらいのデッキ。《ポットパイハット小僧》を出され、先に打点を作られてコントロールされるも相手は《無限剣 リオンザッシュ》がないため中途半端に攻められない。それでも無理に攻めてきたところをS・トリガーの《行燈どろん》+《幽鬼バールギーノ》+《マジン 丁-二式》で返し、《無限剣 リオンザッシュ》でカウンターを決めて勝ち。

 
■第四回戦 VS闇自然オーラ (デッドマン)
 
相手も縛りありで、手札破壊とマナ回収でリソース削りつつ《卍∞ ジ・エンデザーク ∞卍》と《蒼卍龍 ドギラゲンム》でコントロールするデッキ。どこまでいってもこっちだけ《天啓 CX-20》があるため相性的には有利だが、手札と盤面を交換しあってお互いトップデッキ待ちの状態になり、目論見通り《水筒の術》からの《天啓 CX-20》でリカバリーして一方的に有利な盤面になるも、相手の手札が切れていたのにトップ《轢罪 エクスマ疫ナ》からの盤面崩壊を過度に恐れるあまりに中途半端なタイミングで殴ってしまい、S・トリガーで止まってそこから手札破壊でコントロールされ、《無限剣 リオンザッシュ》が2枚マナ落ちと1枚楯落ちしたこともあって山札切れで負け。プレイが下手だった。
×
 
■準々決勝 VS水闇自然オーラ (クイズ仙人)
 
相手も縛りありで、「ゼーロのドラゴンオーラ」をフルポテンシャルにした感じのデッキ。《無限剣 リオンザッシュ》で特攻して相手のシールドを残り2枚にした状態で盤面を制圧されるが、こちらは何をトップしても《天啓 CX-20》がめくれる可能性があるので相手も悠長に盤面は作れず、《百卍龍 プチョゲンム》を付けられながら無理に攻められたところでS・トリガー《行燈どろん》でブロッカーどかしてからの2枚目の《無限剣 リオンザッシュ》によるカウンターを決めて勝ち。

 
■準決勝 VS火闇自然ミッドレンジ (しゃばさん)
 
相手も縛りありで、《天啓 CX-20》を切り捨ててジョーカーズ軸で《無限剣 リオンザッシュ》を最大限生かす形にしたレイヤー2くらいのデッキ。お互いマナ加速から《無限剣 リオンザッシュ》を投げ合い、《ジェイ-SHOCKER》がぶっ刺さったりしながらもそれらが処理されたところでこちらが引き込んでいた2枚目の《無限剣 リオンザッシュ》でジャスキルを組み、相手にS・トリガーがめくれず勝利。

 
■決勝 VS火単レッドゾーン (関係者S氏)
 
相手が先攻、2ターン目《一撃奪取 トップギア》から3ターン目《暴走獣斗 ブランキー》+《熱き侵略 レッドゾーンZ》というぶん回り。だが《暴走獣斗 ブランキー》のブレイク効果で《轢罪 エクスマ疫ナ》を、《熱き侵略 レッドゾーンZ》による楯焼却 (《タイム・ストップン》だった) 後のW・ブレイクで《フェアリー・ライフ》と《マン・オブ・すて~る》をそれぞれトリガーし、楯1枚残して相手盤面なし手札1枚、こちらクリーチャー2体という状況に。
 
そこからマナ加速→《無限剣 リオンザッシュ》と盤面作っていた2ターンの間に相手に下バイを引かれず、その返しに並べたGRクリーチャーのうちの1体を《無限剣 リオンザッシュ》の攻撃でSAにしつつのジャスキルで相手ノートリだったので勝利。

 
優勝!
 
やはりカードプール的には水闇自然の3色で組むのが平均的で、縛りのあるカードゲーマーたちは多くがその中でデッキを組んでいたが、しゃばさん (火闇自然ミッドレンジ) とバイク仙人 (水自然火ミッドレンジ) だけは《無限剣 リオンザッシュ》にたどり着いていた。
 
そんな中で《天啓 CX-20》で長期戦の備えをしつつも4色フル投入でST厚めに振りきった構成が幾度となく窮地を救い、決勝はたまたま構成が刺さる相手で運よく勝利を勝ち取ることができた。
 
ただ他の人より多くの時間を使って考えたというだけだが、妄想がハマって勝利というのはこの連載のテーマにふさわしい結果になったと言えるだろう。
 
ここまで述べてきたような、メタゲームをレイヤーに分けて考察する考え方は、カードプールが広い殿堂構築などでは通用しづらいが、たとえばシールド戦などにおけるデッキ構築にあたっては役に立つものと思われるので、参考にしていただけると幸いだ。
 
ではまた次回!
 

ライター:まつがん
フリーライター。クソデッキビルダー。
論理的な発想でカード同士にシナジーを見出すのだが、途中で飛躍して明後日の方向に行くことを得意とする。
オリジナルデッキでメタゲームに風穴を開けるべく日夜チャレンジを続けている(が、上記のような理由で大体失敗する)。

デュエマ妄想構築録vol.16バックナンバー
デュエマ妄想構築録 vol.16-1 ~ループコンボ許すまじ!超全力メタビート!!~
デュエマ妄想構築録vol.17 バックナンバー
デュエマ妄想構築録 vol.17-1 ~大物一本釣り!フェンリ業アマテラス!!~
デュエマ妄想構築録 vol.17-2 ~力こそパワー!オーラ筋肉侵略!!~
デュエマ妄想構築録 vol.17-3 ~誰がギガ!?オレガギガ!《ダンゴ武者》登場!!~
デュエマ妄想構築録 vol.17-4 ~デュエマをバグらせろ!ダンゴヤマイオン!!~

 

次回は12/27(金)更新!!