【プロセカ】ボカロPに直撃! “EasyPop”さんが語る“モモジャン”と、オリジナル楽曲『DREAM PLACE』について!【ボカロPインタビュー企画 #47】

EasyPopさんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。 

『プロセカ』3周年記念特集は下記の画像をクリック!!
 

 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“MORE MORE JUMP!”(モモジャン)にオリジナル楽曲『DREAM PLACE』を提供された“EasyPop”さんだ。

 『DREAM PLACE』が書き下ろされたイベントストーリー“拝啓、あの頃のわたしへ”は、モモジャンが大きな節目を迎える印象的な物語が展開する。ついに迎えた、モモジャン初のワンマンライブ。夢が結実した舞台の上で4人は躍動し、ワンマンライブは大盛り上がりで終盤を迎える。そのクライマックスでマイクを渡された花里みのりは、ファンや関係者、そしてメンバーたちに熱いメッセージを贈るのであった――。

 モモジャン屈指の名シナリオに書き下ろされた『DREAM PLACE』には、どんな想いが込められているのだろうか? じっくりとお聞きしたぞ!

※インタビューは感染対策を徹底して行っております。

『ハッピーシンセサイザ』の作者として

――本日はよろしくお願いいたします!

EasyPop こちらこそ! いやあ、僕は今年で45歳になるんですけど、コロコロコミックは思いっきり世代なのでうれしい限りです。本気で毎月買っていましたもん。昔から分厚くて、家の中で場所を取ってしまってね(笑)。今日はあまりにもうれしくて、「コロコロからインタビューを受けるよ!」って、友だちに自慢しちゃいました。

――ありがとうございます! そう言っていただけると、我々も感激です!

EasyPop じつはめちゃくちゃゲームが好きで、今日もセガに来られてホントにうれしいんです。なかなかゲーム会社に来られる機会なんてないじゃないですか。

――確かに! でもゲーム好きということで、俄然インタビューがやりやすくなった気がします(笑)。

EasyPop もう、なんでも聞いてください! ゲームのことでしたら何時間でもお話しますので!!!

――ありがとうございます(笑)。でも今日はEasyPopさんが作られた『DREAM PLACE』のお話をじっくりとお聞きしたいのです! そこでまずは、簡単に自己紹介をお願いしたいのですが……!

EasyPop ……ボカロPとしてですよね?

――当たり前じゃないですか!!(笑)

EasyPop わかりました! ボカロ曲を投稿し始めてから、今年でちょうど15年になります。2009年5月23日に初めて、ニコニコ動画に楽曲を投稿しました。ボカロ歴は15年なんですけど、音楽をやり始めたのはもっと前で……19歳でDTMを始めたので、もう25年になりますでしょうか。

――大ベテランですね!!

EasyPop 長いですよね~~~! だったらもっと売れてもいいと思うんですが(笑)。

――またまた!(笑) で、今回は『プロセカ』からオリジナル楽曲の依頼が来たわけですけど、そのときはどのように思われましたか?

EasyPop 正直、絶対来ないと思っていたんですよ。期待すら微塵もなかったので、お声掛けをいただいたときはめちゃくちゃビックリしました。「え! 俺にも来るんだ!」って。

――EasyPopさんの代表曲である『ハッピーシンセサイザ』は、『プロセカ』のリリースと同時に収録されていましたよね。

EasyPop そうなんです。それが入っているからこそ、余計に「来ないだろうな」と思っていたんです。というのも、僕は最近になってマジカルミライの巡音ルカ10周年の曲とかも書かせてもらって、ようやく認知度が若干は上がってきたと思うんですけど、それまではぶっちゃけ、『ハッピーシンセサイザ』が当たっただけの音楽家……というイメージがあったと思うんです。アーティストとしてのバリューより、『ハッピーシンセサイザ』のバリューのほうが強いので、それが収録されている時点で僕自身には用はないだろうなと思っていました。

――なるほど。自分の役割は『ハッピーシンセサイザ』で終わっている、と。

EasyPop そうですそうです! 簡単に言えば、GigaちゃんとかDECO*27さんには書き下ろしをしてもらっただけでニュースになりますけど、僕にはそこまでのアーティストバリューはないですからね。決して卑下して言っているわけではなく、自分のアーティストパワーをよく知っている……ということです。

――ある意味、冷静に見ていたんですね。

EasyPop はい。ですので、本当にビックリして。驚きのあまり最初はひねくれて、(お情けで声を掛けてくれたんだろうなぁ)とまで思っていました(苦笑)。

――いやいや! そんなわけが!!(笑)

EasyPop でも、ボカロPなんてそんなものだと思うんです。SNSの発言だと自信満々に見えますけど、本音では(依頼をもらったけど、大丈夫かな……?)って感じで、怯えている人も少なからずいるはずです。

▲2010年に投稿されたEasyPopさんの代表曲『ハッピーシンセサイザ』。プロセカにも収録されており、セカイver.ではMORE MORE JUMP!、バーチャル・シンガーver.では初音ミク,巡音ルカ,鏡音リン,MEIKO、アナザーボーカルver.では桃井愛莉,日野森雫が歌唱しているぞ!

――それくらい、『プロセカ』の存在は大きいと……! いやでも、EasyPopさんの『ハッピーシンセサイザ』はいまや、モモジャンの定番曲みたいになっていますよね。

EasyPop ありがとうございます! 『プロセカ』は書き下ろしの依頼を受けてから始めたんですけど、気づけば夢中になってメインストーリーもイベントストーリーも読み終えていたんですね。すると、モモジャンのメインストーリーのいいところで『ハッピーシンセサイザ』が使われていて……! そこでますます前のめりになって遊ぶようになり、「こんなにいい感じで楽曲を使ってもらえるなら、書き下ろしもがんばらなきゃ!!」って気合が入ったんです。「ひねくれている場合じゃねえな!!」と。僕の書き下ろし曲が収録されるのは1年後というスケジュールだったんですけど、企画書を拝見した時点ですごく大事なイベントストーリーということもわかりましたしね。運営さんからも、「花里みのりの夢がかなったときの曲です」って言われたものですから、「えええ! 俺で大丈夫!?」という感じでしたが(笑)。

――(笑)。

EasyPop でもそこで、『ハッピーシンセサイザ』が活きるのかな……とも感じました。モモジャンファンにも受け入れられているこの曲を作ったボカロPが、彼女たちのワンマンライブにフィーチャーしたイベントの楽曲を書き下ろす……というストーリーからして、ちょっとステキじゃないですか。運営さんは、そこまで考えて僕に依頼をしてくれたんじゃないか……と思いました。

――個人的にも、『プロセカ』のイベントストーリーでもっとも好きなのが『拝啓、あの頃のわたしへ』なんです。そこでEasyPopさんの書き下ろしが来たのは、かなりグッとくるものがありました。

EasyPop ですよね! なので企画書をもらってすぐに……胃カメラを入れて診てもらいましたもん。

一同 (爆笑)

――どういうことですか!?(笑)

EasyPop そりゃ胃カメラ入れますよ!! プレッシャーがハンパないですから! いやでも、冗談抜きでこれまでの仕事でもっとも胃が痛かったです。人気コンテンツなのはわかりきっていましたから、制作していた1年間、ずっと気が気じゃなかったですもん。「早くリリースして、早く消えたい!」とまで思いました。

▲イベント『拝啓、あの頃のわたしへ』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

――そこまでですか!?(笑)それではいまお話に出たモモジャンですけど、彼女たちをどうご覧になっていたんですか?

EasyPop 曲を書くために当然、自分で研究しました。イベントを見て、セリフ回りもすべてチェックして。そのときに思ったんですけど、日本人って気質的に、ニーゴのようなミステリアスな子たちが好きじゃないですか。謎めいた雰囲気に弱い……と言ってもいい。その対極にあるのがモモジャンで、彼女たちの徹底した明るさとかキラキラした感じを、ちょっと引いた目で見る人って少なくないと思うんです。心の中では(かわいい!)と思っても、それを表に出すのがカッコ悪い……って思ったりとか。

――あーーー! でも、それはあるかもしれませんね。

EasyPop でしょう? 僕は『ハッピーシンセサイザ』を作った人間なので、身に染みて知っているわけです。そこでモモジャンなわけですが、彼女たちはド直球で、青春真っただ中なことを1ミリも隠さずに主張している子たちですよね。そういうグループは先ほどの論でいうと日本人にはウケにくいのかな……と思ったんですけど、実際は熱心なファンがたくさんついていて、他のユニットとしっかりと住み分けがされていました。僕はそれを、曲作り前に知ったわけですが、このアイドル全開の子たちを実装して、キチンとファンに愛される存在に育てている運営さんに対して、ものすごい感動を覚えたんです。同時に、モモジャンが歌ってくれるなら僕の曲も活きるし、自分がこれまでやってきたことが肯定される気もしたので、なんというか……すごくうれしかったんです。

――EasyPopさんらしさを活かせるユニット……なんですね。モモジャンは。

EasyPop 僕の居場所だ、って思いました。みのりちゃんも、ちょっと驚くくらい真っ直ぐな子ですけど僕もそういう傾向があるので、余計に居心地よく感じたんです。この子たちのために、一生懸命曲を作ろう……って思いました。

――そこでお聞きしたいのが、書き下ろし楽曲『DREAM PLACE』のテーマです。

EasyPop 最初に言ってしまうと、めちゃくちゃ『ハッピーシンセサイザ』に寄せました。それは、モモジャンのメインストーリーで流れまくっている『ハッピーシンセサイザ』を作った人の曲だ……と、一聴してわかるように、あえてそうしたんですけどね。むしろ、そうしなきゃいけない……という使命感も持っていました。僕自身の名前はそれほど有名じゃないですけど、“ハピシンの人”だと伝わりやすいので、その流れを汲む曲をしっかり作ろうと思った次第です。

――おっしゃる通り、『DREAM PLACE』はまさに“ハピシンの流れを汲む曲”だと思いました。

EasyPop わかりますよね! コード進行とかは違うんですけど、歌詞も含めて誰でもわかるようなギミックも付けていますので、聴き比べていただくとおもしろいと思います。

――違う曲なのに似てるよな……と思いながら聴いていたんですけど、EasyPopさんの狙い通りなんですね。

EasyPop まあ僕の作る曲はどれも「EasyPopっぽい」って言われるんですが、『DREAM PLACE』はもう、『ハッピーシンセサイザ』に寄せまくろうと思って作りましたから。実際、配信後にリスナーの反応を見てもすぐに「ハピシンぽい!」ってわかってくれたので(しめしめ……!)と思いましたし、喜んでくれる人が圧倒的に多かったので、作り手としては「してやったり!」でした。

――確かに、『ハッピーシンセサイザ』との親和性に気付いて感激している人は非常に多い印象です。

EasyPop そうですね! あえてそうしたとはいえ本当に寄せたので、(受け入れてもらえるだろうか……?)という心配もあったのですが、喜んでくれている人のほうが多かったので、ホッと胸をなでおろしました。

――では、より具体的なことをお聞きしたいのですが、この『DREAM PLACE』でEasyPopさんがとくに気に入っている歌詞は?

EasyPop 難しい質問ですね~~~! これはもう、『プロセカ』のイベントに特化して、“それだけのための曲”に仕立て上げたので、他のボカロイベントでは流せないレベルになっていると思うんです。100%、モモジャンの曲です。ですので、すべての歌詞が好きで、手前味噌ですけどうまく書けたと思っています。

――うんうん。

EasyPop その中からあえてピックアップするなら……2番の冒頭でしょうか。「その言葉に想いに救われて 同じように誰かを照らしたい」って書いたんですけど、これはメインストーリーにあった、モモジャンが生放送をしたシーンをフィーチャーしているんです。視聴者から「ほかの3人はいいけど、素人みたいな子がいる」みたいなコメントをされたのを見てみのりちゃんがショックを受け、放送後に街を歩いていたらさらに自分に対する非難のような会話を聞いてしまう……というシーンがあるじゃないですか。

――ありますね! みのりの歩みを象徴するような場面です。

EasyPop でもそこで、みのりちゃんのファンだという女の子が現れて励まされ、「アイドルになりたい!」という気持ちを新たにする……と。僕もう、このシーンを見て涙ポロポロでした。こういう仕事をしているので、叩かれて辛い気持ちがすごくわかるので……。なのでこのシーンを彷彿とさせる歌詞を入れたいと思って、「その言葉に想いに救われて……」の歌詞を書いたんです。でもリスナーのコメントを見ると、この歌詞が指しているのは別のストーリーだと思っている人が多いみたいですね。

――そこに象徴される通り、モモジャンのストーリーをご自身の中で吸収してから吐き出したのが『DREAM PLACE』の歌詞なんですね。

EasyPop おっしゃる通りです。ただ、ストーリーで使われている台詞を使いすぎるとダサくなってしまうので、その匙加減には時間を使いました。まあ、1年という時間があったのでじっくりと調整することができ、自分なりにいい塩梅にできたんじゃないかなと思っています。ですので産みの苦しみはまったくなく、むしろ“どこを削るか”の作業になりました。盛り込みたいものがたくさんあったので、捨てるのがたいへんで……。泣く泣く切ってしまった言い回しもたくさんあるんですよ。

――へーーーー!!

EasyPop 「遥の背中を追い掛ける」という歌詞を、最後の最後まで入れようかどうか迷ったんです。それって、みのりちゃんの大目標のひとつですから。でも、その要素を入れてしまうと途端に煩雑な歌詞になり、“みのりフォーカス”がブレてしまうんじゃないかと思って、あきらめました。遥の背中を追うことに注力したイベントは今後もあるでしょうから、そこに任せようかなと(笑)。

 

――そういう部分も含めて、歌詞ってやっぱり制限がある中での文学なので、苦労されることも多いんじゃないかと思うのですが。

EasyPop でも、僕はイメージソングを作ったのは初めてだったんですが、けっこうスラスラと書けたイメージです。直しもなかったですし。そもそも僕、作詞が好きなんですよね。苦しんだ記憶はほとんどなくて、どんな仕事でもたいてい、ポンポン言葉が出てくると言うか。

――すばらしいですね!! それは、ふだんから小説とか雑誌を見て使えそうな表現をストックされているとか……?

EasyPop 僕、本はまったく読んでいなかったんです。こういう仕事をするようになってからようやく活字モノに目を通すようになりました。

――意外ですねそれは!

EasyPop でも、子どものころからポエムは好きだったんです。読むのも、書くのも。小学校3年生のときに国語の授業で詩を書かされて、賞を取ったことも覚えていますし(笑)。もちろん、仕事がらメロディーも歌詞も溜めてはいますけど、書くこと自体が好きなので理屈じゃないかもしれませんね。

――僕も文章を書く人間ですけど、歌詞を書くことと長文を書くことって、まったく違う能力だと思いました。

EasyPop それは間違いないです! 僕、文章自体は下手ですもん。長い文章で人に刺さるようなもの、いっさい書けませんから。作詞できる人と文章を書ける人って、どちらが優れているという話ではなく、ぜんぜん違う能力の持ち主なんだと思います。その流れで言うと、作曲とかアレンジって、勉強すればある程度までは上達するんです。でも作詞は、いくら理屈で勉強してもなかなか身に付かないなと感じます。実際、有名な作曲家でも作詞ができない人はたくさんいますから。ちょっと特殊な能力なんでしょうね。

――思い出すなぁ……。学生のころに友だちに「作曲するから、歌詞を書いてくれ」って言われて書いたんですけど、「これじゃお経だよ」って言われたことを……(苦笑)。

EasyPop あははは!! いやでも、よくわかります(笑)。

――では歌詞だけでなく、曲の部分での聴きどころを教えてください!

EasyPop イベントストーリーの書き下ろし楽曲って、発表時にオケだけ公開されるじゃないですか。僕はこのオケだけで「いいね!」って思わせたかったし、キャッチーな曲を作ることが得意なので、そう感じてもらえる自信がありました。実際、オケが公開されたあとにSNSを巡回したら、「つぎの書き下ろし、オケだけで何杯もご飯おかわりできる」みたいなことが書かれていて、「よし!」と思いましたね。つまり歌詞が乗っていない段階でも「いい曲だ」と予感させることができたし、「モモジャンぽい」とも言ってもらえたので、成功の予感を感じました。とくにサビの部分は、歌詞がなくてもキャッチー、歌詞が乗ってもキャッチーな曲にできたなと思っています。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

――そんな『DREAM PLACE』の制作期間は、具体的にどれくらいになるのでしょう? 先ほど「1年がかりだった」とおっしゃっていましたが。

EasyPop 『DREAM PLACE』というタイトルは、依頼をもらったつぎの日にはできたんです。だって、“夢が叶う場所”と言ったら『DREAM PLACE』しかないじゃないですか(笑)。その後も、仮歌の日付を見ると……1ヵ月以内にメロディーの骨組みはできていましたね。デモを提出したのも3ヵ月後くらいだから、やっぱり1ヵ月ほどでほぼほぼ形は整っていたと思います。しかもそのうちの3週間くらいは資料を読み込んだり、ゲームに対する理解を深めることに使ったので、難産だった……という記憶もいっさいないですね。逆にスラスラと作れたのに対して締め切りまでの時間が膨大にあったので、「どこを切り捨てるよう……」とか、そういうことに心を砕くことが多かったと思います。

――時間は、たくさんあればいいってものでもないですよね。

EasyPop その通りです! それも含めて、勉強になりました。その長い時間の中で1回だけ、先ほどのメインストーリーの台詞をどれだけ使っていいのか悩んだので、セガさんに連絡して「関係者でミーティングをしたいんですが」とお願いしたことがあるんです。すると、その日のうちにオンライン会議を開いてくれたんですよ。大きい会社なので、そういう調整にも2、3日はかかるだろうと覚悟をしていたので、心底驚きました。あれはありがたかったなーーー。

――仕事のできる人って、そういう返信も早いんですよね!

EasyPop 間違いないです! 仕事でもプライベートでも、問い掛けに対する返信が遅い人って無理ですもん。自分もなるべく早くと心掛けていますが、おっしゃる通り優秀な人ほどレスポンスがいいです!! だって早く処理すればその分、ほかのことに割く時間もできるわけですからね。理にかなっていますよ!

――こういうところを、ぜひいろいろな人に読んでほしい!!(笑)

EasyPop いちばん重要なことですよね(笑)。

――そんな『DREAM PLACE』が実装されたのをご覧になったとき、どう思われましたか?

EasyPop やっぱりうれしかったですね。3DMVも早めにもらって見させてもらったんですけど、過去に感じたことのないような喜びがこみ上げてきました。だって、なかなか経験できないですもん。自分の作った曲が、こんな人気コンテンツに実装されて、キャラに歌ってもらえるなんて。改めまして、本当にありがとうございました!

――さまざまな反響がEasyPopさんにも届いたと思いますが。

EasyPop 全体的に言うと、「思っていたよりも受け入れてもらえた!」と感じました。もっと否定的なコメントが付くかと思って心臓がバクバクしていたんですけど、ほとんど見当たらないので心から安堵しました(笑)。

――ほとんど……というか、僕が見た限り、まったく見当たりませんけど。

EasyPop そうですね! 正直、ビックリしました。

――ていうかEasyPopさん、このイベントのときにかなり熱心にプレイされていましたよね?

EasyPop あははは!! はい、走りました!!(笑)

――全国ランキングも、相当なものだった気が……!

EasyPop そうですね! というのも、ボカロPが自分の曲のイベントのときに本気でプレイしている……という例、あまりないなと思いましてね。なのでせっかくだから自分のブランド価値を高めるために、“イベランを本気で走るボカロP”ってのを確立しようと思ったんです。

――へ~~~!!

EasyPop で、必死にプレイして最終的には……自分のイベントのとき、全国で500位くらいになりました。

――すげえええ!! プレイ人数がべらぼうに多いから、1000位内に入るだけで至難の業ですよ!

EasyPop ですよね! しかも、そのときだけ熱心に遊ぶってのもイマイチ感じが悪い気がしたので、その後も継続して遊んでいます。このあいだのモモジャンのイベントのときも、1000位内に入りましたし。

――これだけ本気でプレイしているボカロP、まらしぃさんとsasakure.UKさんくらいしか知らないですよ(笑)。

EasyPop あと八Pもめっちゃやってます!

――あ、確かに! 八王子Pもそうですね!

EasyPop これだけプレイするのって、運営さんへの感謝もあるんです。しっかりと遊んで恩返しがしたいですから。

▲非常に貴重なプロフィール画面を見せてくれたぞ!今までEasyPopさんが獲得した見事な称号がずらり!

――わかりました! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……EasyPopさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

EasyPop 冒頭で音楽活動歴25年になる……と言いましたけど、最初は趣味でやっていたんですね。でも徐々に、「もっと聴いてもらいたい」という欲が出てきて、インディーズのサイトとかに投稿を始めるんです。そこから、「さらに広めたい!」と考え始めたころにボカロが発売されて、どうやらこれで曲を作ると、より多くの人に聴いてもらえるらしいぞ……と知って。で、2009年2月に巡音ルカが発売されたのを契機に購入して、初めてボカロで曲を作って投稿しました。ですのでボカロPになった理由は、「多くの人に自分の曲を聴いてほしかったから」になりますね。

――ボカロのソフトは、すぐに使いこなせたのですか?

EasyPop ずっとDTMをやっていましたし、音楽理論も勉強していたので、初期のボカロは物理的に使いにくかった……ということを除けば、問題なく入ることができました。

――では、ボカロPになるために必要なスキルがあれば教えていただきたいのですが……!

EasyPop まず技術的な部分で言うと、“音楽理論を徹底的に勉強したほうがいい”と思います。メロディーとかを載せず、リズムだけとかラップを作るんだったら必要ないかもしれませんけど、“歌モノ”をやりたいのであれば音楽理論は必須なんじゃないかなと。最低限のコード進行の仕組みと、何にメロディーを乗せるといいのか……という知識は絶対に必要だと思います。実際、音楽理論をまったくわかっていないようなヒット曲って、あまりないですものね。そこを乗り越えずにいいメロディーは作れないと考えています。

――なるほど~~~!!

EasyPop もちろん、楽器が弾けたり楽譜が読めることもいいんですけど、それらの才能と作曲ってぜんぜん違いますから。席に着いて音楽を作りたい……というのであれば、コード進行を学び、簡単な作曲理論の本を買ってきて熟読しましょう。そこを乗り越えないと、前に進めないんじゃないかと思います。

――まずは、そこが基本なんですね。

EasyPop そうです。音楽は自由……っていうのは確かにそうなんですけど、やっぱり歌ものでメロディありきものを作るというのであれば、決まりはあるものだと思っています。その根本的な決まりは、しっかりと学ぶべきだと思いますね。

――いやあ、これは参考になります!!

EasyPop 逃げずに勉強しましょう! たいへんなことを乗り越えないと、いくらボカロPを名乗ってもみんなに聴いてもらえるような曲は作れませんから。この学ぶことを“楽しい”って思えるといいですね。

――ありがとうございます! では、ボカロPになってよかったと思うこと、何かあれば教えてください。

EasyPop “いま”が楽しいですね。ボカロが出たてのころって、何かとアングラなものを見る目で見られることが多かったんですけど、ここ数年でガラリと変わりました。そういう、日陰なところにいる感じも好きだったんですけど、たくさんの人に聴かれて、しかも若い子たちが「将来は自分も!」と思える環境になってきたことは、手放しで喜んでいいんじゃないかと思っています。

――うんうん。

EasyPop そういえば僕、娘がいるんですけどね。ピアノを習っていて、毎年発表会に出ているんです。

――はい。

EasyPop 去年かな……。発表会で娘の出番が終わったのでほかの子の演奏を聴いていたんですけど、高校生の出場者が……『ハッピーシンセサイザ』を弾き始めたんですよ!

――ええええ!! それはめちゃくちゃうれしいですね!

EasyPop そうなんです!! そうしたら娘が振り向いて僕を見て、「これ、パパの曲だよね?」って。僕はもう、ナゼかアタフタとして、「う、うん、そうかも……」って(笑)。

――情景が目に浮かぶようです(笑)。

EasyPop そうしたらピアノ教室の先生がこられて、「私もビックリしました! ●●ちゃんのパパって、スゴいんですね!!」って喜んでくれたんですけど、あれはうれしかったですし、ボカロ曲がピアノの発表会で弾かれる現場を目の当たりにして、(とんでもない時代になったなぁ……!)とも思いました。

――そんなEasyPopさんに、ボカロPを目指す少年少女たちにひと言お願いしたいのですが。

EasyPop 「やりたかったらやる!」ですね。SNSとかを見ると、「やる予定」とか「やろうと思っている」なんて発言をよく見かけますけど、それじゃあダメです。やろうと思えばやれるんだから、踏み込まないと。いまの時代、作曲だったらスマホとかタブレットがあればできるんですから、まずは飛び込んでみようと言いたいですね。

――わかりました! では最後に、『プロセカ』にもひと言お願いできますでしょうか。

EasyPop 人の心に刺さるストーリーを今後も配信してほしいですし、これからも長く長く続けていただきたいです。僕らボカロPは『プロセカ』に採用されることを目標のひとつに掲げているので、ずっと頂点で輝いていてほしいなと強く思います!

――ありがとうございます! 本日は楽しいお話、本当にありがとうございました!!

 

EasyPop

BETTI(べっち)による楽曲製作名義。

19歳(1999)からDTMを始める
2005年に音大卒のVo、HirokoとEasyPopを結成、2008年に解散
2009年にVOCALOID楽曲を初投稿

代表作品
「ハッピーシンセサイザ」「ハイファイレイヴァー」「Girls」
「マイルームディスコナイト」「トゥインクル×トウィンクル」「スウィートタイム」等

「DREAM PLACE」
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
MORE MORE JUMP!書き下ろし楽曲

「Jump for Joy」
マジカルミライ2019 巡音ルカ10thテーマ曲

「だから言ったでしょ?」
#コンパス 戦闘摂理解析システム
ヒーロー 輝龍院きらら テーマソング

「Scattered Dreams」
モーリーファンタジー「モーリーオンライン」BGM楽曲

「どうぶつビスケッツ」楽曲アレンジ

96猫×しまむら コラボレーション企画楽曲
「Days」製作

ボカロで覚える高校日本史
「SENGOKU LOOP MUSIC」楽曲制作

ボカロで覚える中学英単語
「ハッピーシンセサイザ」カバー収録

新潟VTuber「越後屋ときな」1stオリジナルソング
「TOKI NICE DAY!」制作

TeNY テレビ新潟リクルート楽曲
「僕が見えないもの(2019年度)」「見た事のない景色(2020年度)」製作

「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」
「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」
「CHUNITHM」「太鼓の達人」「D4DJ Groovy Mix」等
楽曲収録等

 

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タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai