Twinfieldさんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
リリース当初からこのコンテンツを追いかけてきたコロコロオンラインプロセカ班は、2023年10月に『プロセカ』3周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けてきた。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、プロセカが主催する楽曲コンテスト“一緒に作ろう! 第8回楽曲コンテストプロセカNEXT”の採用曲『ONESELF』を手掛けられた“Twinfield”さんだ!
第8回のコンテストのテーマは“EDM”(※エレクトロニック・ダンス・ミュージック)。このジャンルをとくに得意とするTwinfieldさんは、どんな思いを抱えながら楽曲制作に臨んだのだろうか? 存分に語ってもらったぞ。
※インタビューは感染対策を徹底して行っております。
難解な歌詞の秘密
――まずは、たいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いいたします。
Twinfield わかりました! Twinfieldと申します。ボカロP兼作曲家、トラックメーカーとして、いろいろな曲を作らせてもらっております。どうぞよろしくお願いいたします。
――ボカロP歴はどれくらいになるのですか?
Twinfield ボカロPとしてはかれこれ……7、8年になりますね。
――そんなTwinfieldさんは“一緒に作ろう!第8回楽曲コンテストプロセカNEXT”の受賞者ではありますけど、『レッドランドマーカー』という楽曲も『プロセカ』に収録されているんですよね。
Twinfield そうなんです! ありがたいことに今年の3月31日に収録していただきました。
――受賞者の中では、初めて2曲目が収録されたボカロPさんということで、お話聞けるのを楽しみにしておりました!
Twinfield ありがとうございます!本日はよろしくお願いいたします。
▲「MEIKO 18th Anniversary」を記念してTwinfieldさんが書き下ろしたレッドランドマーカー。
――では第8回目の楽曲コンテストを振り返っていただきたいのですが、これに応募したきっかけから教えてください。
Twinfield じつはこれ、“るぽさん”が関わっているんです。
――おお! このインタビュー連載にも登場してもらった、市瀬るぽさんですね! “一緒につくろう!楽曲コンテスト”受賞者の。
Twinfield はい。第8回の締切が1月末くらいだったんですけど、その前……12月末くらいに東京に来て、るぽさんといっしょにご飯を食べる機会があったんです。そのときにプロセカNEXTの話になったのですが、るぽさんが「つぎのプロセカNEXT、絶対にTwinfieldさんは出したほうがいいですよ! テーマがEDMですから!」って言ってくれまして……。それまで応募する気持ちはなかったんですけど、るぽさんがしきりに「絶対にテーマが合ってるから! 出しましょうよ!」と背中を押してくれたことでその気になり、応募した流れになります。
――プロセカNEXTに応募したのは、第8回が初めてなんですか?
Twinfield いや、じつは4回目だったんです。それまで落選続きで、4回目の挑戦のときのテーマがEDMでした。
――“EDM”……つまり“エレクトロニック・ダンス・ミュージック”ですね。クラブとかでDJによってプレイされるダンスミュージック。
Twinfield そうですね。正直、3回も落選していたのでかなり落ち込み、しばらく活動を休もうかな……って思っていたんです。「どうしよっかなぁ……」と暗く考えていたところでるぽさんから、「出したほうがいいですよ! 無理をしてでも応募ですよ!」って言われて、「じゃあ!」と踏み切った感じです。
――得意なジャンルということもあるし。
Twinfield ただ得意ジャンルゆえに、落ちちゃったときの凹み具合がエグイことになるだろうなぁ……とも思っていたんです。
――あーーー! 確かにそれはある!!
Twinfield ……なんて話を、るぽさんとウナギを食べながらしていました(笑)。
――市瀬るぽさんとは、付き合いが長いんですか?
Twinfield もう3年くらいになります。いまはけっこうな仲良しで、後日開催されるニコニコ超会議では、るぽさんのブースで僕のCDも展示させてもらいます。
――なるほど! いやでも、よかったですね。るぽさんに強く勧められて。
Twinfield そうなんですよ。なのでこの記事が公開されたら、るぽさんも喜んでくれると思います。
――さてここから受賞曲の『ONESELF』についてお聞きしたいのですが、コンテストのテーマは何度も言うように“EDM”だったんですよね。
Twinfield はい、そうなんです。これは得意……というか、好きなジャンルなのでよく作らせてもらっています。ただ、言うほど自信はなくて、「自分の音は、まだまだだな」と思い続けてもいます。ですので、“得意だから作る”ではなく“好きだから作っている”という感じでしょうか。
――では応募曲を作るにあたって、方向性はどのように?
Twinfield まず“EDMとはなんぞや?”というところで、歌がなく、音だけで攻める“ドロップ”という箇所があるんですけど、これは応募曲にも絶対に必要だなと思っていました。
――はい。
Twinfield でも『プロセカ』って、シンガーがメインになるじゃないですか。よって、歌を疎かにするわけにもいきません。僕はEDMはドロップがメインになると考えていたので、そこのバランスをうまく保ちながら作らないと成立しないんじゃないかな、と……。ミクの歌声をドロップと同じくらい主張させないとテーマに合致しないなと思ったので、ここには気を遣いました。
――お話を聞いているだけで、難しそうですね……。
Twinfield だいぶ難産だったと思います……! 構想にとにかく時間を使って、先ほどの12月末から3週間くらいは、パソコンをまったく触らずに紙とペンでひたすら曲の展開を書いていたことを覚えています。
――そして完成した『ONESELF』ですが、審査員のコメントにもあるんですけど、パートごとにガラリと表情を変える展開がすばらしいんですよね。
Twinfield ありがとうございます!!
――それと、独特な疾走感がたまらないなと。
Twinfield いやあ、すごくうれしいです!
――でも、これぜひ聞きたいと思っていたんですが、『ONESELF』って歌詞がすごく難解じゃないですか? 僕の読解力だと、なかなか読み取れないというか……!
Twinfield 難解……だと思います。と言いますのも……。……これ、言ってしまっていいのかなぁ。
――ごくり。
Twinfield じつは『ONESELF』の歌詞って、ほぼ意味がないんです。
――なんと!!
Twinfield 歌詞って基本的に、自分に言いたいことがあっても伝えきれないことが多いと思っているんです。そこでEDMなんですが、このジャンルってグルーヴとかリズム感とかがもっとも重要なので、“それをいかに強調するか”というところでクリエイターは腐心するんですよ。歌詞もその部品のひとつで、グルーヴ感を出せる言葉、単語をいっぱい並べて、結果的に何となくの文章になっている……という形が理想かなと。『ONESELF』もそうなんですが、ふだんからそういう感じで曲作りをしています。
――そういうことか……!!
Twinfield それをリスナーさんが聴いて、「このワードにはこんな意味が」とか、「これにはきっとこのような背景が」みたいに考察してくれればいいかな、と思っているんです。
――特定の意味を込めるより、いかに耳障りとかノリを作れるか……ってところに注力して言葉選びをしていると!
Twinfield まさしく、その通りです!
――そんなアプローチの仕方もあるんですねぇ……。『ONESELF』を聴いていて、「めちゃくちゃ乗れる曲だけど、歌詞が難しいな!」と感じていたので、何がテーマで言葉を紡いだのか、ぜひお聞きしたいと思っていたんです。
Twinfield 一応、裏テーマとして、“初音ミクが切なげに「私の存在を感じて」と発している”……というものはあるんです。これに沿って、ちょっと心に響くようなワードをいっぱい並べて……という作りにしてみました。でもこういった楽曲作りって、メジャーなアーティストの方も採用されているみたいです。リズム感を第一に、コラージュするように単語を並べて、テーマはつじつま合わせでもいいから後で考える……と。
――言われてみれば確かに、すごく耳障りはいいんだけど、歌詞は何を言っているのかわからない……ってメジャーな曲、いくつも思いつくな……!
Twinfield そうですよね。そういった方もきっと、まず曲のノリを大事にしているんだろうなって思います。
――ってことはTwinfieldさんはいつも、曲を作ってから歌詞を入れていくんですね。
Twinfield はい、そのほうが多いですね。EDMをやっている人はドラムから展開を作っていく……ってことがポピュラーだと思うんですけど、僕もそうやって作っています。
――なるほど、わかりました! そんな中でこの質問をするのはどうかと思うんですが、お気に入りの歌詞があったらぜひ……(笑)。
Twinfield お気に入りの歌詞!!(笑) そうですね……。序盤から駆け上がっていった先に「際限ない、優しい言葉なんて 偽りのまま」という箇所があるんですけど、ここは聴かれた皆さんも「お!」と引っ掛かるんじゃないかと思っているんです。スピード感が増していって、メロディーも流れるような感じになっているんですけど、歌詞的にも1コーラス目と2コーラス目で「際限ない」、「さりげない」とちょっと韻を踏んでいて、自分的にも気に入っています。
――まさに、そのあたりから疾走感が激増するんですよね!
Twinfield ありがとうございます! そこからBPM(Beats per Minuteの略。1分間にいくつのビートがあるかで曲の速さを表している)が160から170に跳ね上がっているので、そう感じてもらえると思います。
――では『ONESELF』の聴きどころも、このへんになりますかね?
Twinfield ドロップのところ……と言いたいんですけど、歌も含めるとサビじゃなく、そういった箇所の細かなスピード感を増すための技を聴いてほしいな……と思いますね。
――スピード感というところで言うと、いかにもボカロっぽい早口で展開していくのが、昔のボカロシーンを髣髴とさせるんです。これは、多くのリスナーも指摘していますけど。
Twinfield ありがとうございます!! やっぱり『初音ミクの暴走』(“ⅽosMo@暴走P”によるオリジナル曲)などを聴きながら育ってきた人間なので、そういった“ボカロらしさ”は出したいと思っていました。加えてリズムゲームの曲になると、プレイヤーはやっぱり歌に合わせて叩くわけです。そのとき、高速歌唱でリズム感がある曲のほうが楽しいと思ったので、それも目標のひとつに掲げていました。
――そこまで意識して作られたんですね……!
Twinfield はい、考えていました。
――では、『ONESELF』の制作日数はどれくらいに? 先ほど「難産だった」とおっしゃっていましたが。
Twinfield 難産……でしたね。かなりいろいろな曲を作って、最終的にできたのが『ONESELF』だったので……。でも実質的に、パソコン上で作業をしたのは3日くらいだったと思います。
――3日!? それは逆にすごくないですか?
Twinfield ただそこに至るまでに、コレは違うアレも違う……とドタバタし続けていたので、これまでに作った他の楽曲と比べても、相当思い悩んだほうだなと……!
――構想に時間が掛かると、どこかで何かが弾けないとつぎに踏み込めない感じなんですかね。
Twinfield そうですね。しかも『ONESELF』は……すごく妥協した曲なんです。
――え、そうなんですか?
Twinfield はい。自分のやりたいこととか出したい音がぜんぜんできなくて、でも締切があるので3日でどうにか固めた……という印象なんです。要するに、個人的には納得できないままの状態で応募してしまったわけです。なので受賞できて「ビックリ!」以外ないですよね。もっと時間があればいろいろできたし、ほかの展開もあったのになぁ……とは、いまでも思います。
――締切って、痛し痒しですよね。それがあるからこそがんばれる……ということも、厳然としてあるわけで。
Twinfield まさに……! 締切が夕方の5時だったので、その日は有休を取ってギリギリまで作業をしましたもん(苦笑)。けっきょく、「さすがにヤバい!」ってところでなんとかまとめて、4時半くらいに送信を押したと思います(笑)。
――心に決着をつけて。
Twinfield 「もうこれで行くしかない!!」って感じで(笑)。
――……受賞できて、よかったですね(シミジミ)。
Twinfield いやホントに(笑)。ありがとうございます!
――受賞の連絡が来たときは、どんな感じだったのですか?
Twinfield 「え?」って感じでした。というのも、自分的には「今回も落ちたな」って思っていたので……。
――ああ……。
Twinfield 加えてリズムゲームが好きな層って、EDMで育ってきた人が多いと思うんです。なので第8回のコンテストはすごくレベルが高いと思ったし、音が強い曲もいっぱいあったので、「これが受賞しそう」、「これもいいな」なんて、いちリスナーとして応募作品を視聴していました(苦笑)。そうするとますます「俺はダメだな……」と思えてきて、「プロセカNEXTはまたあるから、つぎがんばろう……」って考え始めていたんです。でもそんなときにSNSのDMに通知が届いて、「……ん??」と。信じられなかったです。
――受賞者の皆さん、通知が届いたときはいたずらを疑ったそうですよ(笑)
Twinfield 同じくです(笑)。30分くらい経ってから、ふつふつと興奮がこみ上げてきました。
▲『プロジェクトセカイ クリエイターズフェスタ2024 inニコニコ超会議』にも参加されていたTwinfieldさん。快くサインにも応じてくれた。
――そんな『ONESELF』が『プロセカ』に実装されたわけですが、ご自身でもプレイはされましたか?
Twinfield もちろんです! でも僕、リズムゲームがヘタクソなので、『プロセカ』もHARDが限界なんです……。なので自分の曲も、頑張ったもののEXPERTまでしかクリアできないという……。
――では、ゲーム実装後にたくさんの反響があったと思いますが、とくに印象に残っていることは?
Twinfield それまで伸び悩み……というか燻っている時期が長かったので、長年ファンでいてくれた方々が「おめでとう!」と心から祝福してくれたのが、まずはとてもうれしかったです。と同時に、僕のことを知らなかった人たちにも楽曲を届けるきっかけができたので、それがすごく新鮮でした。「なんかスゴいのが現れたぞ!」なんて言ってもらえて、こそばゆかったですけど(笑)。『プロセカ』に見つけてもらえたおかげで、注目度がそれまでとは段違いになりました。
――実際、『ONESELF』は多くの方に視聴されてますしね。
Twinfield そうですね。 この第8回のプロセカNEXTって、EDMというテーマもあってか応募数がとても多かったんですよね。そういう意味では盛り上がりもすごかったので、タイミングがよかったんだと思います。
――あと、「こういうジャンルの曲が欲しかった」っていう論調も目立つ気がします。
Twinfield これまで、打ち込み全開でドロップもある、いかにも音ゲーな曲って、プロセカNEXTであまり採用されていなかったと思うので、そういう意味でもユーザーには新鮮に聞こえたのかなと感じました。
――ちなみに……! “ONESELF”というタイトルの意味は?
Twinfield 初音ミクが自分自身のことを歌っている……という意味で『ONESELF』と付けたんですけど、作っているときはまったくタイトルは考えていませんでした。完成したあとに聴いてみて、「これは自分自身のことを歌っている曲だ」と思って、後付けで『ONESELF』にした感じです。
――わかりました! では、この曲が大好きなファンに向けてひと言お願いいたします。
Twinfield そうですね……! いつもプレイしてくれて、本当にありがとうございます! 感謝以外に、皆さんにお伝えできることが何も思い浮かばないです(笑)
――それも、初々しくてすごくいいと思います!
Twinfield でも……たくさん楽しんでほしいです。『プロセカ』でプレイしてもらうのはもちろん、楽曲もフルで聴いて感想を聞かせてもらえればうれしいです!
――ありがとうございます! ……ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……Twinfieldさんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!
Twinfield 大学4年のときに、『GarageBand』っていうタブレット端末で簡単に作曲ができるアプリに触れたんです。興味本位でいじっているうちに、(曲って、こんな感じで作れるんだ)と感動したんですけど、すぐにそれだけだと物足りなくなってしまいました。そこで、バイトをしてちょっといいパソコンを買って、「これで曲を作るなら、『ボーカロイド』しかないよな!」って思って、ソフトを購入するに至ります。なので、何か大きな志があったわけではなく、ヌルッと始めてしまった感じです(笑)。
――それ以前に、音楽の経験はあったのですか?
Twinfield それまでずっと、バンドを組んでベースを担当していました。幼少期にピアノを習ったりもしていたんですけど、中学から大学まではずっとベースです。
――じゃあ、作曲の経験は?
Twinfield ゼロです! ……ですので他のボカロPさんと比べると、かなりスタートは遅かったんじゃないかなと思います。
――ちなみに、ボカロのソフトはすぐに使いこなせたんですか?
Twinfield それが、まっっっ……たく!!(苦笑) 自分の思い描いている滑舌とか音程の取り方と齟齬があって、納得のいくものになってくれないんです。調声の仕方をいっぱい調べて挑戦していたんですけど、「違うな……」、「おかしい……」のくり返しでした。でも、何らかの形にして発信していかないと意味がないと思ったので、妥協に妥協を重ねながら曲作りを行っていました。
――納得のいくものができたのは、いつごろですか?
Twinfield 始めてから1年くらい経ったころに、ちょっとマニアックな話になるんですけど、“オートチューンをかけるとミクの声がすごくキレイになる”という話を聞いたんですね。そこで、「オートチューンに合う曲だったら、うまくいくかもしれない!」と思って、EDM……というか、電子音楽を意識して作り始めました。それまではやっぱりベーシストなので、ロックとかポップスみたいな、ポピュラーな音作りをしていたんですけど。
――お話を聞いていると、すごく手探りで始めた感じがしますね。
Twinfield おっしゃる通りで、そもそも「電子音楽がやりたい!」って思って始めたわけでもなかったですから。
――そんなTwinfieldさんに、ボカロPになるために必要なスキルを、ぜひお聞きしたいです。
Twinfield いちばん大事なのは、とにかく“たくさんの曲を聴く”ことではないでしょうか。そして、“音楽が好き”なこと。この2本柱が本当に大事だと思います。
――うんうん。
Twinfield いろいろな曲を聴いていると、「こんな曲を、自分でも作ってみたい!」と思う瞬間が来ると思います。すると自然と、「じゃあ曲を作るには何が必要なのか?」という疑問が芽生えて、楽器をやってみたり、楽譜の勉強をしてみたり……ってことに派生していくんじゃないかなと。すべてのきっかけがそこなので、ジャンルの好き嫌いは度外視して、いっぱい聴いてみてください!
――その楽器というところでお聞きしたいのですが、Twinfieldさんはベースをやられていましたが、楽器の経験は、重要ではあるのですか?
Twinfield もちろん、強みにはなります! というのも、どんな楽器にも“奏法”があって、それを知っているからこその、自然に聞こえる音作りができると思うので。人前で演奏するレベルじゃなくてもいいので、この楽器はどういう感じで音を鳴らしているのか……ということを確認する意味で、いろいろと触ってみるといいかもしれません。
――では、おススメの楽器を聞かれたら?
Twinfield ギターじゃないですかね。ギターって、自分で作曲をするときにコードもメロディーも弾きやすい……という楽器なので、いまから始めるならコレを推したいです。……まあ、僕はまったく弾けないんですけどね(苦笑)。
――あの……。シロウト質問でお恥ずかしいんですけど、ベースをやられている人はギターもいけるのでは……と思ってしまうんですが。
Twinfield ああ、わかります。でも、これが……! まったく演奏方法が違うんですよ。ギターって和音を奏でる楽器だと思うんですが、ベースはリズムを刻むのがメインの役割なので、だいぶ立ち位置が違うんです。逆にギターからベースへ……という流れはわりと楽だと思うので、先にギターに触ってみるのがいいかなと思います。加えて、ピアノもいいと思うんですが、これこそ子どものころから習っていないとなかなか身に付かないと思うんです。それなりのハードルは覚悟しておいたほうがいいかもですね。
――具体的で、おもしろいなーーー。
Twinfield あと、ピアノはそれなりのものを買おうと思ったらけっこうな値段になっちゃいますけど、ギターだったら数千円から買えますからね!(笑)
――わかりました! では、ボカロPになってよかったと思うこと、なにかございますか?
Twinfield うーーーん、これは悩む質問ですねぇ……!
――市瀬るぽさんの話が出ましたけど、そういう横のつながりはボカロPになったからこそじゃないですか?
Twinfield あ、それは間違いないですね! 友だち……というか、“同志”ですね。お互いに高め合うことができる人がまわりにいてくれる環境は、ボカロPになったからこそ作れたものだと思います。とくに、いまはSNSが発達しているので、新しいボカロPが出てきてもすぐにコンタクトが取れますし。そういう意味では、すごくやりやすい時代になったんだなぁと感じます。逆に、ボカロPになっていなかったら出会えなかった人が大勢いるので、話すたびにありがたみを噛みしめていたりします。
――同じ視点でしゃべれる仲間って、年を取ってくるとなかなか作れないですから。とてもすばらしいと思います。
Twinfield そうですね。社会人になってから友だちを増やすことって、難しいですもんね。僕は、恵まれていると思います。
――そんなTwinfieldさんに、ボカロPを目指す人たちに先達としてエールをお願いしたいのですが!
Twinfield 僕はボカロP、作曲家としてかなり遠回りしてしまったんですけど、その道中で得た経験も、いま思えばすごくありがたかったなと思うんです。小さいころから「ボカロPになる!」って決めて活動を始めるのももちろんいいんですが、曲とか歌詞に厚みを出すために、いろいろな経験をしたほうがいいと感じるんです。ゲームでも、映画でも、それこそ恋愛でもいいので、身の回りにあるさまざまなことに興味を持って、そこでの経験を大事にしてほしいと思います。作曲の技術なんてあとからいくらでも付いてくるので、まずは“インプット”を意識してみてください。
――技術は勉強すればいいですけど、経験はそうもいかないですもんね。
Twinfield そうなんです。僕は大学を卒業してから会社員として働いていて、そのさなかにボカロPとして活動をしてきました。プロセカNEXTで受賞してから、ようやく作曲や編曲の仕事が入るようになったので、脱サラして音楽家として再スタートしたんですね。いまは10代のころから作曲家として活躍されている人もたくさんいますけど、そういった方とは明らかに歩みが違います(笑)。でも、さっきも言ったようにそういった経験は確実に活きていると思うので、皆さんもいろいろなことにチャレンジしてみてください。
――ありがとうございます……! では最後に、『プロセカ』にもひと言いただけますでしょうか。
Twinfield 改めて、採用していただいてありがとうございます! 2曲も『プロセカ』に収録してもらったおかげで、たくさんの人に注目してもらえるようになりました。『プロセカ』さんには、足を向けて寝られません! 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
――わかりました! 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!
Twinfield
エレクトロサウンドを中心として、ジャンルに捉われずに様々な楽曲を制作、発表している。ボカロPとしてだけでなく、音楽プロデューサー、トラックメイカーとしても意欲的に活動。
活動範囲はメジャー、インディーズ問わず作編曲家としての参加、音楽ゲーム、Vtuber、アイドルへの楽曲提供、クラブシーンなど多岐にわたる。
代表作:プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク「ONESELF/ feat. 初音ミク」
マジカルミライ2023「レッドランドマーカー / feat. MEIKO」
ホロライブ所属AZKi「FreeGeo」等
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タイトル概要
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
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■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)
■価格:基本無料(アイテム課金あり)
■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
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