【プロセカ】ボカロPに直撃! “YASUHIRO(康寛)”さんが語る“ワンダショ”と、オリジナル楽曲『ワンスアポンアドリーム』について!【ボカロPインタビュー企画 #12】

YASUHIRO(康寛)さんの曲作りに迫る!

 2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。

 2021年10月には1周年を祝した特集を展開し、

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 さらに2022年10月には『プロセカ』2周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。

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 そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!

 “子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!

 『プロセカ』はゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!

 そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!

 さて今回ご登場いただくのは、“ワンダーランズ×ショウタイム”(ワンダショ)にオリジナル楽曲ワンスアポンアドリームを提供された“YASUHIRO(康寛)”さんだ。

 超人気楽曲『踊れオーケストラ』の作者としても知られるYASUHIRO(康寛)さんが作られた『ワンスアポンアドリーム』は、ワンダショの鳳えむの苦悩と葛藤を描いたイベントストーリー『スマイルオブドリーマー』に合わせて書き下ろされたもの。明るく、弾むような音色はまさにワンダショならではのものだけど、その音に隠されている秘密とは……?

※インタビューはオンラインで実施したものです。

リアルとファンタジーの狭間の楽曲

--まずはたいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いしたいのですが!

YASUHIRO(康寛) わかりました! ボカロPのYASUHIRO(康寛)と申します。代表作としては、『ねぇ、どろどろさん』という楽曲と、『プロセカ』にも収録していただいている『踊れオーケストラ』などになるでしょうか。もともとは『東方Project』のアレンジ楽曲を作っていまして、ボカロを始めたのは2013年になります。

--2013年と言いますと、ボカロPとしてはベテランと呼んでもいい感じですね。

YASUHIRO(康寛) あー、どうなんですかね? 自分の中では、まだまだ新人ぽさが抜けていないんですけど(笑)。とはいえ、自分の動画を見返していると、初期のものは7年も8年も前だったりするのでそのたびにギョッとしますが(笑)。……でも、ボカロPって僕よりも長くやられている人でも、ずっと駆け出しのころと変わらない気持ちで活動されている気がします。

--言われてみると確かに……! この連載ではかなり多くのボカロPの方にインタビューをしていますけど、皆さん一様に少年少女らしさを失っていないというか、キラキラしている感じを受けました。

YASUHIRO(康寛) 若いころに作った作品って、やっぱりグイグイと前に押し出していっている感じがするんですよね。三つ子の魂百までじゃないですけど、そのころの余韻がいま作っている作品にも出ているんだろうなぁ……と思います。

▲2016年に投稿されたYASUHIRO(康寛)さんの代表作『踊れオーケストラ』。プロセカにも収録されており、巡音ルカとワンダショの4人が華やかに歌い上げている。

--そんなYASUHIRO(康寛)さんは『プロセカ』に、オリジナル楽曲の『ワンスアポンアドリーム』を提供されています。この依頼を聞いたとき、率直にどう思われましたか?

YASUHIRO(康寛) まずは何より、“とてもうれしかった”ですね。というのも、近年の僕はボカロP以外の活動がかなりの割合を占めていて、なんと言うか……ボカロPとして認識されにくくなっているだろうなって自分で思っていたんです。このオファーを受けたときも、積極的にボカロPとして動いていた時期でもなかったですし……。ですので、僕のことをしっかりとボカロPのひとりとして認識してくれていて、なおかつこのような仕事を振っていただけたことに感激しましたし、「あ、俺、まだボカロPを名乗っても大丈夫なんだ!」と安心したことを覚えています。

--あーーー! 「俺、ちゃんと認められていた!」みたいな……!

YASUHIRO(康寛) そうですそうです。やっぱり一時的にでもボカロから離れてしまうと、「あの人、やめちゃったのかな」と思う方がたくさん出てくるんですよね。僕はその状況にかなり近かったと思うので、『プロセカ』からお声掛けをいただいて、自信を取り戻した感じがしました。

--そんな中、楽曲提供をしたユニットがワンダーランズ×ショウタイム(ワンダショ)だったわけですけど、彼らを初めて見たときにどのような印象を持たれましたか?

YASUHIRO(康寛) 『プロセカ』がリリースされる前にお話をいただいたので、最初に見たのは全5ユニットのイラストと、ちょっとした資料だったんです。その中でワンダショは……すごく自分好みのユニットだなと思いました。彼らの持つキーワードって、テーマパークとか、ミュージカルとか、ちょっと現実から離れた世界観じゃないですか。

--はい、そうですね。

YASUHIRO(康寛) そんな、非現実的なものを駆使してみんなを楽しませる……というスタンスって、僕がこれまでに作ってきたボカロの楽曲とリンクするんです。僕はリアルな世界を描くよりも、どちらかというと創作のお話とか、童話からヒントを得て楽曲を組み立てたりすることが多いので、ワンダショが持つ感覚とすごくマッチしていると思いました。ですので、「ぜひ彼らに、いい曲を作ってあげたい!」と強く感じたんです。

--先ほど代表作として挙げられた『踊れオーケストラ』ですけど、この曲もワンダショの雰囲気にピッタリすぎると、ファンのあいだで話題ですよね!

YASUHIRO(康寛) もう、すっごくうれしいです(笑)。『ワンスアポンアドリーム』が発表された直後、SNSとかでも、「『踊れオーケストラ』も『プロセカ』に入れてほしい!」、「『踊れオーケストラ』をワンダショに歌わせて!!」という声が上がっていたのを見ましたけど、そう言ってもらえると……やっぱり感激しますよねー!

--うんうん!

YASUHIRO(康寛) 実際に収録が決まったときも、本当にたくさんの人に喜んでもらえて。なかには、「『踊れオーケストラ』って、6年も前の曲なの!?」と驚いておられる方も大勢いたんですけど、そうやって過去に作った作品に再度スポットが当たるきっかけにもなってくれたので、本当に『プロセカ』には感謝しているんです。

--じつはこの連載ではすでに、ピノキオピーさん、OSTER projectさん、sasakure.UKさんなど、ワンダショに書き下ろし楽曲を提供されているボカロPさんにインタビューを行っているんです。そこにきてYASUHIRO(康寛)さんにもお話を伺えることになったので、個人的にも今日は楽しみにしていました(笑)。

YASUHIRO(康寛) あ、そうなんですね! いやあ、そんな名高い方々と肩を並べる……わけじゃぜんぜんないんですけど、同じ枠組みで自分の名前があるだけですごく光栄に思います。そういう意味でも『プロセカ』に関われたことは、今後のボカロPとしての活動を支えてくれる礎になるんじゃないかなと。

※MV画面はバーチャル・シンガーver.のものです。

--さて、『ワンスアポンアドリーム』はイベントストーリー『スマイルオブドリーマー』用に書き下ろされたものです。これは鳳えむちゃんがキーキャラクターですが、彼女にはどんな印象を持たれましたか?

YASUHIRO(康寛) 最初に資料を見させてもらったときから、すごく明るくて、元気をまわりに伝染させるくらい活動的な女の子……という印象でした。それは『プロセカ』がリリースされてからしばらくは変わらなかったんですけど、このイベントストーリーを見てちょっとイメージが変わりました。

--ふむふむ……!

YASUHIRO(康寛) 仲間に頼ることが苦手……という一面を見せるじゃないですか。これが最初は意外だったんですけど、考えてみたら学生時代って多かれ少なかれ同じような経験をした人がほとんどで、そのいたいけな感じがすごくリアルに思えたんです。僕も、えむちゃんと同様に弱音を吐いたり、人を頼るのが苦手だったりしますしね。この、じつはすごく人間臭いというところに共感を覚えて、最終的には「なんて魅力的なキャラなんだろう」と感じました。

--『ワンスアポンアドリーム』は、えむちゃんに感情移入して作られた曲、と……!

YASUHIRO(康寛) そうですね。楽曲を作るにあたって、ユニットの説明とか『プロセカ』の設定資料、イベントストーリーのプロットなどを見せてもらって、「じゃあどんな曲にしようかな……」といろいろと迷いはしたんですが、最終的にえむちゃんの気持ちに寄り添ったものになりました。

--この楽曲とイベントストーリー、見事なまでに合致しているんですよね……!

YASUHIRO(康寛) ありがとうございます。弱音を打ち明ける行動って大人になっても難しいのに、それを高校生のえむちゃんが勇気を振り絞って実行する……というストーリーじゃないですか。その健気な行動をどうにか曲に落とし込みたい……と思いながら作ったので、多くの人に共感してもらえたならうれしいです。

--おっしゃる通り、『ワンスアポンアドリーム』とストーリーが相まって、とくにワンダショのファンたちに影響を与えたと思います。

YASUHIRO(康寛) 依頼をいただいたときも、「えむちゃんの曲ではありますけど、YASUHIRO(康寛)さんのやりたいように作ってもらって大丈夫です!」と言っていただいて。ボカロPのやりやすいように、場を整えてくれたんです。

--あ、そうなんですね。

YASUHIRO(康寛) なので余計に意気に感じて、えむちゃんを始めとするワンダショの雰囲気や世界観をしっかりと楽曲の中に取り入れるぞ……!! と思いながら作っていました。

--それが、『ワンスアポンアドリーム』のテーマになるのでしょうか?

YASUHIRO(康寛) そうですね。コンセプトとしては、先ほど言った“非現実感”を押し出した、現実離れした舞台を描きたいと思ったんです。とはいえ、おとぎ話にしてしまうのは何か違うし、現実の学生さんたちに刺さるようなものにしたいなと考えました。でも、ここが考えどころなんですけど、この部分を強くし過ぎて説教臭くなるのはすごくイヤだったので、リアルな部分とファンタジーの部分をバランスよく詰め込むことに腐心した……という感じでしょうか。

--説教臭さはもちろん感じませんでしたけど、全体を通してすごくメッセージ性が強い楽曲だなと思いました。

YASUHIRO(康寛) ありがとうございます。そう言っていただけると安心します(笑)。

▲イベント『スマイルオブドリーマー』の書き下ろし楽曲としてリリースされた。

--強い言葉で諭すようなものではありませんが、しっかりと若者に響くような言葉を選ばれていると感じました。そこでお聞きしたいのですが、とくにお気に入りの歌詞があったらぜひ教えてください!

YASUHIRO(康寛) 自分がいままでやってこなかった手法……という意味でも印象に残っているんですけど、やっぱり最初の「きっとここはユメの中だ」という部分。ここまで断言した歌詞を曲の頭に持ってくること、僕は一度もやったことがなかったんです。それくらい、“夢”というフレーズが持つメッセージだったり、えむちゃんのキャラクター性だったりをこの1文に詰めたかったんですね。よって、すごくお気に入りです。

--このインタビューをするにあたり、改めて『ワンスアポンアドリーム』の歌詞を読み直したんですけど、個人的にも「きっとここはユメの中だいつか覚める 想像は出来ないけど」という部分はすごく刺さりました。

YASUHIRO(康寛) ありがとうございます! 説教臭さを出したくない……ということも含めて、可能な限り直接的な表現はせず、聴いた人がいろいろな捉えかたをできるように作りたかったんですよね。それが音楽のおもしろいところだと思っているので。人によっては、「現実はつらいことが多いけど、夢のように楽しく過ごしていきたいよね」と捉えるかもしれないですし、別の人は「楽しいことも、明日には醒めてしまうかもしれない」と受け取るかもしれない。そこは、それぞれの感じかたに身を委ねて聴いてもらいたいと思いました。

--もうひとつ、「君が思うより“セカイ”は都合が良い様に出来てる」っていう歌詞、すごくいいです。

YASUHIRO(康寛) これは、僕が心から思っていることを歌詞にしたものです。悪いことって重なりがちだと思いますけど、巡り巡って振り返ってみれば、「あれも、そんなに悪いことじゃなかったのかも」と思える瞬間が来たりするじゃないですか。どうしてもイヤな体験に目が向きがちですけど、じつは忘れてしまっているだけで、その周辺でステキなこともたくさん起こっていると思うんです。それに気付けるか……思い出せるかどうかの話で。いまおっしゃられた箇所もそうですし、1番のサビにある「“魔法”は傍で待ちくたびれてる」という歌詞も、魔法という現実離れした言葉を使っていますけど、じつは遠くから眺めているものじゃなく、近くに寄り添ってくれているものだよ……って伝えたかったんですよね。

--なるほど……! いや、改めて巧みな言葉の紡ぎかただなと驚くんですけど、いったいどうやって作詞をされているんですか?

YASUHIRO(康寛) たとえば、「“魔法”は傍で待ちくたびれてる」という歌詞も、ただ読んだだけだと意味がわかりにくいじゃないですか? でも音に乗せた瞬間、ほんのりと聴き手に伝わる言葉になっていくんですよね。これができるのが歌の良さだし、歌詞のおもしろいところなので、連綿とその歴史を作ってきた先輩たちの手法を真似したり、ひたすら数を積み重ねたことによっていまの自分ができあがった……という感じでしょうか。

 

--では、ちょっといまの質問とカブってしまうのですが、『ワンスアポンアドリーム』の聴きどころといいますと?

YASUHIRO(康寛) 「全部聴いてほしい!!」が本音ではあるんですが(笑)、とくにこだわったり、意識した部分となると……。ちょっと個人的な話になっちゃうんですけど、僕、すごくよく寝るタイプの人間なんですよ。

--ほう?

YASUHIRO(康寛) 忙しいときでも眠気が来たら逆らわず、ベッドに飛び込んで寝てしまうくらい睡魔に弱いんです。でも、まどろみが訪れた瞬間の独特の感覚……日常から意識が切り離されてどこかに落ちていくような刹那が大好きで、あの夢見心地をサウンドで表現できないかな……と考えたんです。

--なるほど!! それが『ワンスアポンアドリーム』なんですね!

YASUHIRO(康寛) はい。細かく言うと、たとえばトラックは極力重ねず、最低限の音色で仕上げています。それまで僕が作ってきた楽曲の中には、80から100トラックくらい重ねているものもあるんですけど、『ワンスアポンアドリーム』に関しては50くらいに収めています。ピアノをベースに、できるだけ丸みを感じる音色を足していって、騒ぎ過ぎないバランスを見極めて作っていきました。

--それくらいこだわって作り込むと、制作期間はかなり長くなったのでは?

YASUHIRO(康寛) かなり苦労したほうだと思います! ほら、あるじゃないですか。眠気を吹き飛ばすドリンク剤。あれをガブ飲みしながら作っていた記憶が(笑)。

--あははは! それほどまでに(笑)。

YASUHIRO(康寛) 眠るのが大好きな僕が、睡眠時間を削ってまで「いい作品にしたい!!」と思って作り込んでいたんです。でも、逆に迷走もしてしまって、納品予定を1週間延ばしてもらったりしました(苦笑)。でもその甲斐あって、満足できる作品に仕上がったと思います。……まあ、難産だったのは間違いないですが。

--ゲームに実装されたのを初めて見たとき、いかがでしたか?

YASUHIRO(康寛) まず驚かされたのが、譜面です。“夢”というフレーズが出てきた瞬間に「zzzz」と眠りの表現がポンと出てきたり、“花畑”という言葉に合わせて花の模様がパーっと広がったり……! あと“チグハグだらけなこのセカイで”という歌詞があるんですけど、そのときは譜面がデコボコになっていました。歌詞をしっかりと解釈して譜面としても表現してくれていて、とても楽しかったし、ありがたかったです。

 

--ファンからの反響も、たくさん届いたんじゃないですか? 『ワンスアポンアドリーム』は、いろいろと考察されている楽曲でもありますし。

YASUHIRO(康寛) ああ、そうですね。「この歌詞には、こういう意味が隠されているのでは?」なんていう声がたくさん寄せられています。これこそ、先ほど言った音楽の楽しい部分で、聴いた人の感性でいろいろなことを想像したり、解釈してくれていいと思うんです。そういう意味では、僕ら作り手が「ここはこういう意図で作ったものです」なんて言ってしまうのは好きではなくて、いまの皆さんの想いとか環境とかを重ねて、自由に受け取ってほしいなと思います。

--ああ、すごくわかります。

YASUHIRO(康寛) 正直、僕ら作り手よりも濃い考察……というか、「あ! そっちのほうがいいじゃん!!」と驚くような解釈をされている方がたくさんいますからね!(笑)

--あの読解力はスゴいですよね。

YASUHIRO(康寛) 『ワンスアポンアドリーム』の話ではないんですけど、昔作った曲を同級生がすごく気に入ってくれて、会ったときに、「お前の作ったあの曲、こういう裏設定で、こんなメッセージが込められているよな!!」と熱弁されたことがあるんです。……でも、何ひとつとして自分が狙った解釈ではなく、僕の想像力をはるかに超えていたので、「そう! もうそれで大丈夫!!」と言うしかなく(笑)。

--あははは!

YASUHIRO(康寛) 『ワンスアポンアドリーム』にしてもそうですけど、そこまで聴き込んでくれて感激しましたけどね。

--では、そんなファンに向けてひと言お願いいたします!

YASUHIRO(康寛) まずは、聴いてくださってありがとうございます! 『ワンスアポンアドリーム』は、えむちゃんとワンダショのみんなの背中を押すような楽曲にしたい……と思って作ったものです。ワンダショ推しの皆さんはぜひこの曲を聴きながら、いっしょに彼らを応援してくれたらと思います!

--ありがとうございます! ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……YASUHIRO(康寛)さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!

YASUHIRO(康寛) 楽曲制作自体は『東方Project』のアレンジから入ったんですけど、そこからジミーサムPさんの『from Y to Y』という楽曲に触れてボーカロイドの原曲の良さに気付いていきます。そして決定的だったのが、このインタビュー特集にも登場されている“じん”さんです。

--おお……!

YASUHIRO(康寛) じんさんが作った『カゲロウデイズ』などが本当に大好きで、それを聴いた瞬間に「俺もボカロを始めてみたいな!」と思ったんですよねー。そこから、ボカロ界隈の楽曲を聴きまくって、最初は他の方が作ったものをマネするところから始めました。

--すぐにボカロを使いこなすことができたのですか?

YASUHIRO(康寛) 音楽ソフトは使っていたので操作自体はさほど難しくはなかったんですけど、問題は“調声”ですよね……! どのボカロPさんも調声がめちゃくちゃうまいですけど、ここは本当に難しかったです。僕が調声で意識しているのって“リズム”なんですけど、ボカロって人間ではできないような刻みかたができるし、音の動かしかたもできるので、そこを活かしたいと考えるんです。もちろん、いかに人間ぽくボカロを歌わせるか……ということに注力するのも楽しいんですけど、僕は逆に、せっかくボカロなんだから、ボカロでしか歌えない調声をしてみたいな……と初期のころから思っていました。だからこそ、苦戦したんですけど(笑)。

--何事もそうかもしれませんけど、最初のハードルを乗り越えるまではたいへんですよね。

YASUHIRO(康寛) そうですね。でも、いまの若い子たちってパソコンがそもそも身近ですし、生活の一部に組み込まれていると思うので、我々の世代とはちょっと違うかもしれません。調べればたいていのことはわかりますし、YouTubeには実際にボカロを操作しながら教えてくれる動画もたくさんあります。そういう意味では、誰もが基本となるところはクリアーできると思うんですけど……問題は、その先ですよね。“自分らしさ”を出したボカロの調声をしていくとなると、これはいまだに僕も悩んでいる壁ですから。

--そこでぜひ、何かヒントとなる言葉をいただけたらと思うのですが、ボカロPを目指すうえで持っていたほうがいいスキルって、何かあるのでしょうか?

YASUHIRO(康寛) 僕の経験から話すと、まず楽器は何かしら始めたほうがいいと思います。絶対に役に立つと思うので。オススメは、ギターかピアノ。おそらく、誰もが最初につまずくのは“コード”だと思うんですけど、僕は楽曲制作を始める前に趣味程度ですけどギターをやっていたおかげで、コードの壁にぶつかることはなかったんです。それと……。

--それと?

YASUHIRO(康寛) 楽器特有の、“気持ちのいいツボ”ってものが絶対にあって。ギターでもドラムでもピアノでも、弾いていて、「あ! いまのところ、めっちゃよかった……!」と感じる瞬間が必ず来ると思います。それを知っているだけでも、楽曲制作にプラスになります。「音楽って楽しい!」と実感できていることが、作る楽曲のクオリティーを一段上に上げてくれると思うので。そしてもうひとつ、必要なものがあるとすれば、“重い腰をすぐに上げられるスキル”でしょうか。

--あー!!

YASUHIRO(康寛) 自戒も込めて言いますけど、このスピード感に満ちた世界で活動するには、思い立ったときに動けるフットワークの軽さは絶対に必要だと思うんです。楽曲が作れたとしても、投稿するまでには、イラストレーターさんに絵をお願いしたり、動画をどうしようか考えたり……とか、やらなければならないことがたくさん出てくるんですね。それなのに、僕みたいに基本的にノロノロしていると締切がどんどん近づいてきて焦るハメになるので、“思い立ったらすぐに動く”ことを意識して生活するといいと感じます。これがあれば、きっと無敵になれますよ!!

--人間って、“やれない理由”を探しますもんね……(苦笑)。

YASUHIRO(康寛) そうなんですよー! とくに仕事にでもなっていない限り、どうしても作らなければいけない……ってものじゃないですもんね。それでもしっかり動いて作品を作れる人って……やっぱり、圧倒的に強いです。でも、僕みたいにノロノロしている人間でも今回みたいにお声掛けいただけることもあるので、「あきらめる必要はないよ!」と強調しておきたいかなと(笑)。

--その上で、何かコツがあるとすれば?

YASUHIRO(康寛) まず“マネをする”ことでしょうか。先ほども言った通り、僕はじんさんの楽曲が本当に好きで、まずは『カゲロウデイズ』などを聴きまくって、それを分析することから始めました。ボカロPを目指している人には当然のように“推し”の方がいると思うので、その方がどうやってメロディーを作り、楽器を鳴らしているのか……ということを、細かく解体してみるといいと思います。そして、大雑把でいいのでマネしながら曲を作ってみて、それを聴き込んで自分で分析して……。そういうことをくり返しているうちに、気が付けば、「マネではなく、俺にしかできない曲を作りたい」という気持ちが芽生えてくると思うんです。

--自分も文章力をつけるために、若いころはひたすら、好きな作家の文章をノートに書き写していました。それに通じるものを感じます。

YASUHIRO(康寛) あ! まったく同じだと思います! 「マネごとはイヤだな」と思う人もいると思うんですけど、多かれ少なかれ、いまプロとして活躍している誰もが通ってきた道ですからね。もしも、「YASUHIROみたいな楽曲を作りたい!」なんて思ってくれる子がいたら、なんなら直接僕にメッセージを送ってくれてもかまいませんから!

--それはさすがにたいへんだと思いますけど(笑)、YASUHIROさんもそういった経験をされているんですか?

YASUHIRO(康寛) じつは以前、すごく好きなボカロPさんがいて、どうしても楽曲作りの真髄を知りたいと思ったんです。そこで、SNS経由のダイレクトメールで、「この箇所の作りを知りたいんですが! 教えていただいてもよろしいでしょうか!?」なんてアプローチしたことがありました(笑)。

--……先ほど、「自分はノロノロしている」なんておっしゃっていましたけど、めっちゃ積極的じゃないですか!!

YASUHIRO(康寛) あ、確かに(笑)。思いが強すぎて、止められなかったんですよねー。でも、やりすぎはよくないですけど、それくらいの情熱をもって臨まれるといいと思いますよ! それと、最初に機材や楽器をそろえることになりますけど、ここで妥協せず、しっかりとお金を貯めて、なるべくいいものを使うようにしたほうがいいと感じます。僕の実体験として。

--具体的なヒント、ありがとうございます! では、ボカロPになってよかったと思うことはありますか?

YASUHIRO(康寛) ひとつに絞れないくらいたくさんありますけど……! やっぱり、自分の作品が聴かれた方の生活の一部として組み込まれていると知った瞬間の感動は、何年経ってもまったく色褪せないですねー。動画のコメントなどで、「部活がしんどいけど、この曲を聴いたおかげでがんばれた!」とか、「仕事のストレスも、YASUHIROの曲で癒された」なんて生活に根差したものを見ると、心からうれしく思います。僕も、洗濯物を干しながらとか、食器を洗ったりしているときに、まるで空気のように好きなアーティストの楽曲を流していますけど、それと同じように誰かの生活の中で自分の作った曲が流されているかも……と考えられることは、幸せ以外のなにものでもありません。

--あー……。それはたまらなくステキな瞬間だなぁ……。では、最後にボカロPを目指そうとしている少年少女にメッセージをお願いできますでしょうか。

YASUHIRO(康寛) 「重い腰を上げて、すぐにこちらのセカイに飛び込んでこよう!」ですね。いろいろな締切が迫ってくるのと同じで、もたもたしていると人生の締切もやってきてしまいますから。これを読まれたその瞬間に「動く!」と決めて、本当にステキなボカロの世界にやってきてください! そして……いっしょにワチャワチャと楽しみましょう!!(笑)

--もうひとつ! 『プロセカ』に対してもメッセージをお願いします!

YASUHIRO(康寛) 『プロセカ』に参画できたことを出発点に、「YASUHIRO(康寛)さんのことを初めて知りました!」とか、「『踊るオーケストラ』も作られた人なんですね!」なんて言ってもらえる機会がすごく増えました。新たなきっかけをくれた『プロセカ』とワンダショのみんなには本当に感謝していますし、ステキな未来を願いながらこれからも応援させていただきます!

--本日はお忙しい中、本当にありがとうございました!!

YASUHIRO(康寛)
作曲・編曲・作詞
VOCALOID P
代表作”踊れオーケストラ””ねぇ、どろどろさん””アブソリュート”

 

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#1:市瀬るぽさん       

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#3:ナユタン星人さん

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#6:OSTER projectさん

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#8:八王子Pさん

#9:いるかアイスさん

#10:DIVELAさん

#11:Ayaseさん    

#12:YASUHIRO(康寛)

 

2周年『衣装カタログ』

#1:バーチャル・シンガー編

#2:Leo/need編    

#3:MORE MORE JUMP!編

#4:Vivid BAD SQUAD編

#5:ワンダーランズ×ショウタイム編

#6:25時、ナイトコードで。編

 

1周年ボカロPインタビュー

#1:DECO*27さん

#2:ピノキオピーさん

#3:Mitchie Mさん

#4:Gigaさん

#5:syudouさん

 

 

タイトル概要

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

■対応OS:iOS/Android

■App Store URL:https://itunes.apple.com/app/id1489932710

■Google Play URL:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sega.pjsekai

■配信開始日:配信中(2020年9月30日(水)配信)

■価格:基本無料(アイテム課金あり)

■ジャンル:リズム&アドベンチャー

■メーカー:セガ/ Colorful Palette

■公式Twitter:https://twitter.com/pj_sekai