取材・文=石川裕二
みんなー! 「6G」って聞いたことあるか!? 「5G」の次の規格のことで、何やら6Gになると、「人間拡張」と言って、テレパシーや相手の動きをシンクロすることができるようになるらしいんだ! そんなすごい技術を開発中のNTT ドコモに話を聞いてきたから、みんなで未来のことを一緒に夢見てみよーぜ!!
人間の能力を拡張するのが「人間拡張」
――本日はよろしくお願いいたします! コロコロオンラインの石川と申します。
奇遇ですね! 私も石川と申します。
――(名刺を見て)石川博規さんというお名前なんですね。えーっと、6G-IOWN推進部の担当課長で……博士(工学)!?!? 博士なんですか!?
はい、一応……というか、博士です。はは。
――ひぇぇ、コロコロオンラインでうんこのことばかり書いているおれには、荷が重い取材かもしれない……。
そんなことはございませんよ。わかりやすく説明いたしますので。
――ドキドキ……! では、「3G」とか「5G」とか「6G」って、そもそも何を指す言葉なのでしょうか!? なんだか、僕の認識では3Gから急に5Gになった記憶があり、5Gはただの高速通信みたいなイメージがあったのですが、6Gになるとテレパシーができると聞いて、頭がこんがらがっています。
まず、「G」というのは「Generation(ジェネレーション=世代)」の略です。世代の通信規格が何代目かを表しているんです。
まず、第1世代の時は電話ができるようになりました。第2世代の時はインターネットに接続できるようになり、第3世代になると動画が見られるようになり、第4世代になるとIoTやウェブ決済ができるようになりました。第5世代ではXRだったり、医療現場などにおける遠隔操作ができるようになったりと、いろいろと進化してきたのです。
――あ、そうだったんですね! おれって、記者をやっているくせに、本当に無知だなぁ……。じゃあ、じゃあ、その夢のようなことができる6Gは、いつ頃から整備される予定なんでしょうか!?
1世代10年の間隔で開発をしているので、2030年からの商用化を予定しています。ただ、日本だけが使えても仕方がなくて、ローミングと言って各国で使えるようにする標準化の活動に時間が掛かるんです。
――ほぉ〜。それで、6Gでは一体、何がどう変わるのでしょうか!?
6Gの要求条件というものがございまして、高速大容量はどんどんやっていきますし、通信エリアも広げていきますし、消費電力やコストも下げていきます。遅延を少なくするとか、さまざまあります。
――遅延というのは?
衛星通信をすると、自分が喋ったのが少し遅れて聞こえますよね。あれをできる限り少なくする、ということです。各世代ごとに、前より良くしていこうというのが基本的な目標ですね。現在は、通信における陸上のカバー率は100パーセントに近いですけれど、今度は水中や空のカバー率を上げようとしていたりもしています。
――なるほどぉ。……あの、急かしているわけではないのですが、テレパシーの話はいつ出てきますか!?
おっと、すみません! 今から人間拡張の話をしますね。人間が指を動かそうと考えてから指先が動くまでの速度って、20ミリsec(秒)なんですね。でも、6Gの実装によって、ネットワークが1ミリsec以下に実現できるようになるんです。つまり、人間が指先を動かすのと同じ感覚で、ネットワークに接続したもの……たとえばロボットを動かすことができるようになるんです。
――おぉ、動作のコピーの話ですね!! 6Gはとにかく高速大容量だから、そういうことができるようになる、と。
そうです! これについては、あとで別の部屋でデモンストレーションをお見せしますね。
――うおぉ、めっちゃ楽しみです!
少し話が戻りますが、先ほど、第1世代から第5世代に至るまで、何ができるかお話しさせていただきましたよね。その先の6Gが、人間拡張という話になるのです。ブレインテックと言って、自分の考えたことが相手に伝わるとか、そういうことの実現度が増してきました。
まずは、相手がストレスを感じているとか、リラックスしているとか、大きな分類での共有から始まるものだと思っていますが、最終的には、人間の感情そのものを共有する、というところまでチャレンジしていきたいなと考えています。たとえば、イヤホンみたいなものを装着することで、それができるようにしていきたいなと。
病気や事故などでコミュニケーションが取れない方など、医療現場のコミュニケーションにも実装できればと思っています。
――うわ、すごい! 正にテレパシーじゃないですか!!
機能や効率以外にも、できることを増やしていく、というのが世代毎に目標としてあって、6Gでは人間拡張が期待されています。
――でも、人間拡張って、つまりはどういうことなんですか?
人間の能力を拡張しよう、というものです。
――なるほど、能力ですか。
たとえば、通常では持てない重さのものを持てるようになるとか……。パワードスーツのようなものですね。これは身体能力の拡張です。あとは、東京にいる人が九州にいる人と映像ツールでコミュニケーションを取れますよね、それは存在を拡張するということになります。今は音声と映像でのやりとりですが、6Gでは、正に九州にいるかのような感覚になれるんですが……うーん、まだお見せできないことを言葉で説明するのは、なかなか難しいですね。
――そうですねぇ……、ちょっとイメージしづらいです。
じゃあ、こんなのはどうですか? 認知の拡張というのがございます。スキルの共有ですね。スキルのシンクロ、とも呼んでいます。綾瀬はるかさんが、ピアノのスキルをプロのピアニストから転送するという映像をつくったのですが、それが正に人間拡張になります。映画『マトリックス』でも、主人公が飛行機に乗ろうとした時に、操縦のスキルがなくて、操縦データをダウンロードして操縦した、みたいなシーンがありましたよね。
▲同社による綾瀬はるかさん出演の6Gのイメージ動画
――SFの世界じゃないですか!! すごいなぁ。今日、「すごい」しか言ってない気がしますよ!!
五感も共有できますよ。食レポって、今なら言葉で説明していますが、それを自分で体感できるようになります。
――えー、そんなことまで! でも、人間拡張を体感するには、先ほどのイヤホンの話のように体に接続するなり、何かしらのデバイスが必要になるわけですよね?
仰る通りです。それがどのような形になるかは、未来のお楽しみということで。しばし、お待ちいただければと思います。
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――たとえば、プロゲーマーのスキルを小学生にデータを移すことで、ゲームがめちゃくちゃ上手になれる、みたいなこともあり得るんでしょうか!?
今は「こうやったほうがいいよ」みたいなことを実際のプレイで見せているのを、直接動作で伝えることによって感覚をつかみやすくなる、ということはできると思います。早く上達できるようになる、というか。説明がラクになるはずです。
――おぉ〜、じゃあ、小学生が何かしらのプロ相手に勝てるようになったりするのも夢じゃありませんか!?
ん〜、それは難しいかもしれませんね。というのも、骨格や筋肉などの問題がありますから、たとえばプロ野球選手の動きを共有したとしても、小学生が160キロメートルの速度の球は投げられないわけです。
――あぁ、たしかに!
ただ、力とかが関係ないものなら勝てるかもしれませんね。それこそ、楽器とかならプロ級に上手く弾けるかもしれません!
――うわぁ、めっちゃ夢がある!! じゃあ、カードゲームのチャンピオンが小学生とデバイスでつながってテレパシーでつながれば……!
そのカードを出す時の思考を共有できて、上達できるでしょうね! 奥が深まるというか。
弊社はコミュニケーションの会社なので、人間拡張もコミュニケーションの一種として捉えていただければと思います。今までは言葉で伝えていたことを、人間拡張で齟齬なく伝えることができるようになる、と!
――そうかぁ、根っこはコミュニケーションなんですね!
そうです! では、センシング(動作の共有)のデモンストレーションを見にいきましょうか!
▲右の人の動きを、左の人の動きに共有している! 取材現場でも撮影したんだけど、よりわかりやすいデモ動画を提供してもらったぞ!
――す、すっげぇ〜〜〜!!!! ……あの、これって、僕も体験させていただくことって可能でしょうか?
はい、可能ですよ。じゃあ、センサーを腕に巻いていただいて……!
――う、うわぁ! なんじゃこりゃぁ! す、すげー! 手が勝手にグーパーする!! 石川さん、すごいですよ、これ!!
医療現場のリハビリなどでも導入される予定なんですよ。この記事を読んだ読者が夢を持って、10年後、20年後に7G、8Gの開発に携わってくれるようになってくれるとうれしいな、と思います。
――本当にそうですね、本日はありがとうございました!!