ナユタン星人さんの曲作りに迫る!
2020年9月のサービスイン以来、コロコロオンラインがひたすら追い掛け続けているセガ×Colorful PaletteのiOS/Android向けアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』。
2021年3月にはハーフアニバーサリーを祝した特集を展開し、
さらに2021年10月には『プロセカ』1周年を記念した大特集を実施するなど、担当からほとばしる圧倒的な“プロセカ愛”をカタチにし続けている。
そんなコロコロオンラインプロセカ班がとくに情熱を注いで追っているのが、このゲームの根幹でもある楽曲……そして、それを制作されている“ボカロP”と呼ばれる“才能たち”であります!!
“子どもが将来なりたい職業ランキング”において、ゲームクリエイターやユーチューバーらと並んでボカロPが上位にランクインし、コロコロの読者層との親和性もめちゃくちゃ高いということで、前述のプロセカ1周年特集の際にボカロ界のビッグネームにつぎつぎとインタビューを敢行!! その内容の濃さは業界内外に衝撃を与え、このたび……不定期連載で、さらに多くのボカロPの皆様にご登場いただき、ナマの声をお届けできることになったのです!!
『プロセカ』は、ゲーム内容はもちろん、楽曲のすばらしさが高く評価されて現在の人気を確立したと言っても過言ではない。それらを生み出したボカロPたちの考えかた、作品への向き合いかたを掘り下げたこのインタビュー連載を読まれることで、ゲームを遊ぶだけでは知りえない情熱や、楽曲に対する想いを知ることができるはずだ。その結果……さらに登場キャラやユニット、『プロセカ』そのもののことが好きになること請け合い!!
そしてインタビューの後半では、“いかにしてボカロPになったのか?”という、将来この道に進みたいと思っている読者の皆様の道しるべになるような質問もぶつけているので、とにかくあらゆる人たちに読んでいただきたいなと!!
さて今回ご登場いただくのは、MORE MORE JUMP!(モモジャン)にオリジナル楽曲『モア!ジャンプ!モア!』を提供された“ナユタン星人”さんだ。
4人の女の子の群像劇が人気のアイドルユニット・モモジャンに提供された『モア!ジャンプ!モア!』は、思わずいっしょに踊ってコールしたくなるような最高のアイドル曲! そんな楽曲を作られたナユタン星人さんの曲作りに迫った! ちなみに『プロセカ』には、ナユタン星人さんが手掛けた楽曲『ダンスロボットダンス』も3DMV付きで収録されているぞ!
※インタビューは、オンラインで実施したものです。
いろいろな要素を詰め込んだアイドル曲!
--ナユタン星人さんは、コロコロ初登場! そこで、たいへん恐縮なのですが、簡単に自己紹介をお願いしたいのですが……!
ナユタン星人 “ナユタン星人”という言う名前でボカロPをやっております。2015年から投稿を始めたのですが、“宇宙”が好きなので、宇宙の曲ばかりを作っています。これと並行して、さまざまなアーティストや作品、あとゲームなどに楽曲提供をさせてもらっております。
--ナユタン星人さんって楽曲だけじゃなく、イラストや動画もご自身で作られたりしていますよね!?
ナユタン星人 あ、そうなんです。……頼む友だちがいなかったので(笑)。
--え、そのような理由だったのですか!?
ナユタン星人 はい、そういう理由だったんです。「これは……全部自分でやるしかないかー!」ってことで……。
--そんなナユタン星人さんは、MORE MORE JUMP!(モモジャン)にオリジナル楽曲『モア!ジャンプ!モア!』を提供されていますけど、この依頼を受けたときはどのように思われましたか?
ナユタン星人 じつは依頼を受けたときのこと、すごくよく覚えているんです。
--お! それは興味深いですね……!
ナユタン星人 リリース前の、本当に初期も初期の段階でお話しをいただいたと思います。プロジェクトを企画されたトップの方が都心から離れた僕の地元までわざわざ来てくださって、小さな喫茶店で話をしたんです。
--おお……!
ナユタン星人 話し始めてすぐに、その方が音ゲーやボカロというものを心から愛している人だとわかって、ふたりですごく盛り上がったことを昨日のことのように覚えています。それもあって、まだリリースされていないにも関わらず、これから目にする『プロセカ』というものをこの段階で好きになっていました(笑)。
--いやでも、それは心に来るものがありますねぇ!
ナユタン星人 僕、これから始まるコンテンツにトップバッターで関わる……つまり最初を任せてもらうことが多いんですけど、そのたびに胸に抱くのが、「この曲でコンテンツを成功まで引っ張っていこう!」という気持ちなんです。なので当然、『プロセカ』のときも、同じ気持ちで『モア!ジャンプ!モア!』を作りました。
--実際、「『モア!ジャンプ!モア!』を聴いて、モモジャンを推すことに決めました!」と、多くのファンが発信されているのを拝見しました!
ナユタン星人 本当ですか!? それはすごくうれしいですね……! まさに、そういう曲になってほしいと思いながら制作したものなので……!
--でも、現場の人が情熱にあふれていると、受けるほうも燃えますよね。
ナユタン星人 ええ、まさにそんな感じでした。でも、そのときはこんなに巨大なプロジェクトになるなんて、まったく想像もしていなくて。その方も、「これから力を入れて、なんとしても成功させたいんです!」というようなことをおっしゃっていたので、その段階ではまだまだ夢物語だったのかもしれませんね。
--まさに“意気に感ず”(※相手の心意気に感動して行動すること)って感じで、積極的に関わろうと決められたんですね。
ナユタン星人 はい、そうですね。僕、とにかくボカロが好きで、それこそ初期の初期から追い掛けている“ボカロオタク”のひとりだと思います。なので、すぐにわかったんです。「この人たちは本気で、ボカロに愛を持って『プロセカ』というゲームを作ろうとしているんだな」って。だったら僕も中途半端なことはせず、一生懸命がんばろうと思いました。
--では、モモジャンのユニットやキャラクターを見たときの印象は?
ナユタン星人 お話をいただいたときは設定も固まっていなくて、紙に描かれたイラストだけを見せてもらいました。でも、その段階ですでにルックスも衣装も見るからにアイドルで(※モモジャンは女の子4人組のアイドルユニット)、「コレは……アイドルのド真ん中を行く曲が作れそうだな!」とワクワクしたことを覚えています。
▲イベント「ここからRE:START!」の書き下ろし楽曲としてリリースされた。
--『モア!ジャンプ!モア!』は、愛莉ちゃん(※桃井愛莉)のシナリオに合わせて公開されましたが、楽曲を作られたときのテーマはやはり“アイドルの曲”だったのですか?
ナユタン星人 個人的な意気込みとしては……僕はプロデューサーで、これからデビューする実在のアイドルに曲を提供し、華々しくデビューさせ、「世界規模で売れていけー!」と叫ぶ……というもの(笑)。簡単に言うと『モア!ジャンプ!モア!』は、“実在するアイドルのデビュー曲”がテーマになります。
--すごく『モア!ジャンプ!モア!』っぽくていいです!!
ナユタン星人 アイドル曲って意外に、ナユタン星人として作ったことがなかったんです。でも、じつはいち時期アイドルに超ハマっていて、そのころはアイドルの曲ばかり聴いていたので、「いつかこういう曲を作りたいな~」とは思っていました。モモジャンへの楽曲提供は、いままで溜めてきた“アイドル曲への想い”を解放できると感じて、作業もすごく楽しかったですよ。
--確かに『モア!ジャンプ!モア!』って、すごくモモジャンというか、愛莉ちゃんのストーリーにハマっているんですよね……! 物語を体現しているというか……! シナリオを読みながら『モア!ジャンプ!モア!』を聴きましたけど、驚きましたもん。
ナユタン星人 僕も、シナリオを読んでビックリしました(笑)。曲を作っていたときは、まだシナリオは読んでいなかったので。
--あ! そうなんですね!
ナユタン星人 何も決まっていない時期からお話をいただいて、それから徐々に固まっていったものを小出しに教えてもらったりはしていたんですけど、具体的なストーリーについては、当時はぼんやりとしか知りえなかったんですよね。彼女たちのアイドルとしてのイメージだけを頼りに作っていった感じでしょうか。
--ひたすら元気というだけではなく、彼女たちが乗り越えていく壁だとか、立ち向かっていかなければいけないものも表現されていたので、完全にシナリオを読まれていたのかと……。逆に、モモジャンの物語は『モア!ジャンプ!モア!』の歌詞を膨らませたものでは……とまで感じます。
ナユタン星人 あはは! だったらうれしいですね(笑)。
--では、『モア!ジャンプ!モア!』の中でとくにお気に入りの歌詞はございますか?
ナユタン星人 サビの最後に「こんなもんじゃないぞ!」ってフレーズがあるんですが、これの語尾を「ぞ」にしているのが個人的にはポイントかなと。『モア!ジャンプ!モア!』は全体的に柔らかい口調で歌っている曲なので、その流れに合わせれば「こんなもんじゃないよ!」や「こんなもんじゃないの!」とするのが自然だと思うんです。でも、そこであえて、ちょっと強めの「ぞ!」。そういう口調を頻繁に使うキャラじゃないのに力を込めて強めに言っているのでインパクトがありますし、「こんな面もあるんだ!」という印象付けもできるので、“キャラを好きになるポイント”のひとつとして「ぞ」を使ってみました。
--すごくわかります!
ナユタン星人 それを汲み取ってくれたのか2DMV(ミュージックビデオ)でも、「こんなもんじゃないぞ!」の歌詞が出るときに一気に表示せず、「こんなもんじゃない」まで出して……そのあとに「ぞ!」が全画面でバーン! と出てくるんですね。それを見て、「ここがいいってことをわかってくれてる!!」と思い、テンションが上がりました(笑)。
--あの「ぞ!」は、男子的には心つかまれるものがありますよねぇ……。めちゃくちゃわかります(笑)。
ナユタン星人 それともうひとつ、お気に入り……というか、気になっている箇所があるんですよ。
--ほう?? なんですか??
ナユタン星人 先ほども言った通り、『モア!ジャンプ!モア!』はゲームの仕様も詳しいストーリーも知らずに作ったわけですが、その歌詞の中で“想いのカケラ もうちょっと足りなくても”という文言を使っているんです。でもその後、実際に『プロセカ』で遊んでみたところ、消費アイテムがまさに“想いのカケラ”だったという……! これ、偶然だったとしたら、僕と制作サイドの心がシンクロし、同じものを目指して作ったからこそ出てきた言葉みたいで感動ですし、『モア!ジャンプ!モア!』から採用してくれたのならそれもまた光栄でうれしいなぁ……と! どっちなのか、ずっと気になっているんです。
--いや、確かにそうですね……! これは、調べてみないと!
セガ広報 確認してみますね!!
※後日、セガさんから連絡があり、「まったくの偶然で驚きました!」との回答を得ることができました。つまり……ナユタン星人さんと制作チームが、期せずして想いを共有していたということですね!
--個人的にこの楽曲を聞いて、「進みだした夢はあきらめない! やめたくない!」という歌詞が、すごく響きました。
ナユタン星人 その部分、歌いかたもすごくいいですよね! 僕もお気に入りの箇所です!
--学生さんが、「学校や部活で壁にぶつかったときにこのフレーズを聴いて、ちょっと前に進もうかなって思った」なんてコメントで書いてるの見て……正直、泣きそうになりました。
ナユタン星人 ああ……! それは、作った自分としてもすごくうれしいですね……! 元気を与えるような曲にしたかったので、そういうふうに受け取ってもらえると、作った甲斐があったと思います。
--では、この楽曲の聴きどころを教えてください!
ナユタン星人 これって、すごくいろいろな要素がある曲じゃないですか。音ゲーでもプレイするし、キャラクターたちの紹介ソングという意味合いもあるし、なによりモモジャンの子たちの魅力を伝える曲にならないといけないし……。加えて、アイドルの曲として“アイドルファンが納得できる曲”にしたかったですし、将来的にライブでもやる可能性があるので、そういった場でも盛り上がれる曲にしないと……。こんな感じで、さまざまなシチュエーションで満足できるような、どの角度からでも楽しめる曲にしようと思いました。それが、最大の聴きどころでもあり、こだわりでもあります。
--モモジャンのファンから、「ライブでもっとも聴きたい曲のひとつ!」と言われていますね!
ナユタン星人 僕自身も、「コールが絶対に楽しいだろうな!」って思います(笑)。
--確かに、これほどコールをしたい曲は滅多にないかも……!
ナユタン星人 ライブ好きな人には「コールがしたい!」と思ってもらいたいし、音ゲーが好きな人には「この曲を叩きたい!」って思ってもらいたかったんですよねー。
--でも、それだけその要素を考えながら作るとなると、制作日数がたいへんなことになりそうですが……?
ナユタン星人 制作は……1日くらいですかね。
--ええ!? 本当ですか!!?
ナユタン星人 他の方と比べたことはないですけど、僕、どの曲もけっこう短い期間で……というか、だいたい作業は1日くらいなんです。とはいえ、『モア!ジャンプ!モア!』の難度はめちゃくちゃ高かったですけど……。
--いや、それにしても……スゴいな!
ナユタン星人 僕の作曲時のクセだと思うんですけど、達成すべきミッションがあればあるほど燃える性質をしているんです(笑)。先ほども言った通り、『モア!ジャンプ!モア!』はいろいろな要素を盛り込みたかったので、高いモチベーションを保ったまま作業ができました。なんというか……すぐにクリアーしたくなって、夢中でやっちゃうんです。もちろん、手を動かす作業が1日ってことで、曲の構想自体はお話をうかがったときからずっと練っていましたけど。
--構想には、かなり時間をかけられるのですか?
ナユタン星人 『モア!ジャンプ!モア!』のときは、日常の移動のときにアイドルの曲を聴きながら、頭の中であれこれと考えている感じでした。ほかにもいろいろな仕事や作曲を並行して進めていますけど、その間も頭のどこかで思考を巡らせていたと思います。
--では、『モア!ジャンプ!モア!』がゲームに実装されたときの感想をお聞かせください。
ナユタン星人 僕、“超”が付くほどの音ゲーマーなんです。10年……いや十数年は音ゲーにハマっているので、『プロセカ』に『モア!ジャンプ!モア!』が実装されたときもいちばん気になったのは“譜面が楽しいかどうか”でした(笑)。なので、速攻でプレイしてみたんですけど……これが、じつにおもしろい譜面にまとめてもらってあって、感激したんですよね。
--おお!!
ナユタン星人 音ゲーマーから見てもっともいい曲の形って、“神曲神譜面”だと思うんです。『モア!ジャンプ!モア!』に関しては完璧にこの形になっていたので、それがもうめちゃくちゃうれしくて。いい譜面にしてくれて、本当にありがとうございます!
--ファンのコメントを見ても、譜面の評価はすごく高いです。「叩いていて楽しい!」と。
ナユタン星人 毎日、祈っていましたもん。「いい譜面になりますように!」って(笑)。難易度配分的に、初心者にも楽しめるかつ、難しいのがやりたい人にも相応の手応えを……という構成が個人的な理想なんですが、まさしくそういう造りにしてくれていると思います!!
--以前、コロコロオンラインでは譜面制作チームにインタビューさせていただいたんですけど、彼らがこの記事をご覧になったら感涙ものだと思いますよ。
ナユタン星人 すっごく感謝しています!! 音ゲーの譜面を作る人って、僕からしたら神様みたいなものですから!!
--とくに『プロセカ』の譜面って、楽曲の解釈をエフェクトで表現したりしてくれるので、見ても遊んでも楽しいんですよねー!
ナユタン星人 そうなんです! あれは、本当にすばらしいですよね。
--そんな、神曲神譜面が実現されたわけですけど、ゲームに実装後にファンからいろいろな反応があったんじゃないですか?
ナユタン星人 僕の曲が実装されたころには、すでに『プロセカ』は大人気になっていました。なので僕のまわりにも、ふだんボカロはまったく聴かないけど『プロセカ』は熱心にプレイしている……という人がけっこういるんですが、そういう人たちから、「こんないい曲が入っていたよ」なんて声を聞く機会が増えました。
--それは、ナユタン星人さんが作られた曲を指して?
ナユタン星人 そうですそうです。僕、まわりの人に、ナユタン星人の名前でボカロP活動をしているってこと、まったく言っていないので……(笑)。
--あ!! そうだったのですか!!
ナユタン星人 そうなんです。よって、「この曲、僕が作ったんだけど聴いてみてよ」と言うことができないので、まわりの人からの評価は“待つしかない”という(苦笑)。そんな中、先ほど言った通り『プロセカ』は本当にいろいろな人が遊んでいるので、曲の評価を知る機会が増えてよかったなと。……ていうか、初期のころは自分で誘導しているときがありましたよ。「『プロセカ』やってるって言ったよね? モモジャンって知ってる?? モモジャンにいい曲なかった??」みたいな……。
一同 (爆笑)
--そんな涙ぐましいことを!(笑)
ナユタン星人 誘導尋問みたいなことをやっていました(笑)。
--でもいまや、少年少女から大人まで、『プロセカ』ファンは拡大していますもんね。。
ナユタン星人 そこからボカロ自体に興味を持ってくれる人もたくさん生まれているのが、たまらなくうれしいんです。これも、最初の喫茶店で話していたときに話題に出たんですよね。「『プロセカ』をきっかけに、ボカロ界隈が盛り上がるといいですね」って。本当その通りになっていて、スゴいなって思います。
--僕が見たファンの声の中に、「『モア!ジャンプ!モア!』をプレイしていると、ついつい頭の中でコールを始めてしまってミスる」ってのがあって、笑ってしまいました。確かにこの曲、頭の中でリフレインするもんなー!! と(笑)。
ナユタン星人 いやあ、それはうれしい反応ですね(笑)。そういう聴かれかたを狙っている……というか、口ずさみたくなる曲を目指しているので、感激です。
--では、熱心に『モア!ジャンプ!モア!』を聴いているファンに向けてひと言お願いいたします!
ナユタン星人 先ほど言ったように、いろいろな楽しみかたができる曲を目指して制作しました。ですので、さまざまな角度から『モア!ジャンプ!モア!』に触れてほしいと思うんです。たとえば、音ゲーだけやっている人はカラオケで歌ってみたり、逆に動画で知ってる人は『プロセカ』でプレイしてみたり。あと、『プロセカ』はオーケストラコンサートも行っていますけど、去年のオーケストラコンサートではまた違うメロディーになったと思いますので、そういったものも楽しんでいただければと思います。
--ありがとうございます!! ……ではここから、将来の夢として「ボカロPになりたい!」と思っている人たちのために用意した質問にお答え願えればなと……! まずは……ナユタン星人さんが、ボカロPになられたきっかけを教えてください!
ナユタン星人 冒頭でも言いましたけど、僕、完全なボカロオタクなんですね。そういう意味では、ほかの方が作られた曲を聴いているだけで楽しめていたので、とくにボカロPを目指す予定もなかったんですけど……ある日、「こういう感じの楽曲があるといいな」と頭に浮かんで、一生懸命探したんです。でも……どこにもなくて。
--はい。
ナユタン星人 それでも、どうしても聴きたかったんです。そういう曲が。同時に、「こういった曲があれば、きっとたくさんの人がハマるのに」との想いも膨らんできて、最終的には「ないなら、自分で作るしかないな」となりました。
--動機としては非常にクリエイターらしいですね! でもナユタン星人さん、それまでに音楽の経験とかおありだったんですか?
ナユタン星人 曲はずっと作っていたんです。友だちに聴かせるとか、どこかで発表するとかではなく、本当に趣味ですけど。そもそも、不特定多数の人に自分が作った曲を聴いてもらうって、めっちゃ恥ずかしいなと思っていましたし……。なので、まったく公開したくなかったんですけど、「どうしてもこういう曲が聴きたい!」という必要に迫られて、気付けばボカロで作っていました(笑)。
--その際に、何か必要なスキルというものはありましたか?
ナユタン星人 僕、楽譜も読めませんし、楽器もまったくできないんですよ。楽曲は、キーボードとマウスだけでずっと作っている感じです。もちろん、そういった音楽のスキルはあるに越したことはないと思うんですけど、「絶対に必要か?」と言われたらそんなことはないです。ただ、ボカロPを目指す方に参考になるとすれば……『Cubase』や『Logic』などの作曲ソフトの使いかたを熟知し、使いこなせるようになることは大事だと思います。
--ふむふむ!!
ナユタン星人 作曲ソフトにも、コードを勝手に教えてくれる機能とか、ハモリを付けてくれる機能とかがあるので、音楽理論を知らなくてもソフトのほうでなんとかしてくれます。たとえば、「ドラムの打ち込みパターンがわからない!」となっても何万パターンもソフトの中に入っていたりするので、それを使いこなせたら……相当な武器になるかなと。“ソフトという道具を使いこなす技術”を磨くと近道なんじゃないかと思います。あとは……ボカロとか音楽が好きという、気持ちが大事だと思いますよ! いろいろな音楽ジャンルを聴いてみることをオススメします。
--ちょっとクサいですけど、そのものに対する“愛がある”って、重要ですよね。
ナユタン星人 いや、本当にその通りで……! 曲作りって基本的にはたいへんな作業が多いので、愛がないと続かないですもん。
--ちなみに、ボカロPになってよかった! と思うことはありますか?
ナユタン星人 これはやっぱり、聴いてくれた方々からいろいろな感想をもらえることですねー。最近、活躍目覚ましい若手のボカロPさんと話す機会があったんですけど、そのときに「ナユタンさんの影響をめっちゃ受けてます!」とか、「ナユタンさんのこういうところをマネしています!」なんて言ってくれたんです。また別の人からは、「ナユタンさんの動画のパロディーを作ることをきっかけに動画に目覚めて、いまその分野で活動しています!」なんて言われたり……。自分の作品が誰かの刺激になっている……ということがわかったとき、「ボカロPをやってきて、本当によかった!」という幸せな気持ちになりました。
--それは、たまらないですね。
ナユタン星人 何度も言うように僕はボカロオタクなので、その歴史……というか歩みにもすごく興味があるんです。つぶさに観察していると、「このボカロPは、あの人の影響を受けている」とか関連性も浮き彫りになってきて、その魂が脈々と受け継がれていることも見えてくるんですね。その連なりの中に僕も組み込まれて、誰かに影響を与えることができているのなら……こんなにうれしいことはありません。
--誰かに憧れて、その人のマネをしてみる……って、クリエイティブな仕事をする上ではすごく重要な過程ですよね。
ナユタン星人 そうですよね! 初心者のころって、オリジナリティーだけを欲して作品作りに取り掛かる人も多いと思いますけど、それだとあまりにも難しすぎて、挫折しちゃうことも多いと思うんです。だったら最初は、「この人のマネをしてみよう」を取っ掛かりに始めたほうが、圧倒的に楽しい。いろいろな人がやっていることをミックスしているうちに、いつの間にか唯一無二の、自分だけの武器が握られていることもありますから!
--その流れで、ボカロPを夢見る人たちに先達としてエールをお願いできれば!
ナユタン星人 これはもう、ひとつしかないです。「楽しんでください!」ですね。楽しむことがいちばんですから。最初のころはボカロもうまく歌ってくれないし、作曲もゼロから組み立てていくのは難しいので、まったく理想の形にならないかと思います。それが影響してやめたくなることもあるかもしれませんが、始めから完璧な作品を目指す必要はないんです。ヘンな作品ができてもなかったことにしないで、おかしくても、短くてもいいから、曲として完成させてください。それ聴いて、「今日はこんなのできた。こんな歌わせかたができた!」と、そのときにしかできない作曲を楽しんでほしいんです。人気のボカロPさんを見ていると、個性は凄いし、技術も凄いし、動画も凄いし……ってことで理想が高くなっちゃうと思いますけど、そういうときこそ僕の動画を見てほしいです! 僕、マジで何もスゴいことはやっていないんで!
--いやいやいや!!
ナユタン星人 「これくらいならできそう!」って、思ってもらえると思います!
--ナユタン星人さんの動画、キャラの腕がひたすらグルグル回ってるところとか、めっちゃ好きで延々と見ていられますよ(笑)。
ナユタン星人 ありがとうございます! アレなんて、動画制作を始めたばかりの人でも作れますから、たぶん(笑)。そういう部分からマネしてみると、きっと楽しく作業できると思います。
▲これが筆者もお気に入り『ダンスロボットダンス』の腕ぐるぐるだー!
--先ほど楽曲を発表することが恥ずかしいっていうお話が出ましたけど、他のボカロPの方も同じように言われますね。これ乗り越えるための心構えってあるんですか?
ナユタン星人 僕の場合、「これは自分ではない」と思い込んで活動しています。「ナユタン星人がやっていることだ」と割り切っているので、恥ずかしさは消えると言うか(笑)。
--ちょww それ、めちゃくちゃおもしろいですよ!!(笑)
ナユタン星人 ……ボカロPも最近は、自分で歌われたり、顔出しかつ自分で歌うほうがむしろ主流な印象があるので「本当にスゴイな!!」って思います……。自分じゃ絶対にできないので……逆にそういう方に、恥ずかしさの克服方法を教えていただきたいですよ!!
--そんな状況の中、本日はインタビューにご登場いただいてありがとうございます(笑)。では最後に……『プロセカ』に対して、エール等がありましたら!!
ナユタン星人 まずは、人気作品になってよかった……と思います。最初に喫茶店で話したときも、「これは成功させないといけない!」、「でも不安で……!」、「それでもやる!」という不安と気合の言葉をたくさん聞いていたので、いまの隆盛を自分のことのように喜んで見ています。また、『プロセカ』のユニットって、それぞれカラーが違って個性的じゃないですか。どのユニットに楽曲を作っても僕の新しい面が出ると思うので、機会があれば別のユニットの楽曲を制作するのも楽しそうだと思いますね。
--本日は楽しいお話、本当にありがとうございましたー!
ナユタン星人
2015年に「アンドロメダアンドロメダ」を投稿し侵略活動を開始し、怒涛の勢いでヒット曲を連発する宇宙系ボカロP。
代表曲に「エイリアンエイリアン」「太陽系デスコ」「惑星ループ」などがある。
最近では妖怪ウォッチへの主題歌提供、ピンク・レディーとのコラボ、ナナヲアカリへの「チューリングラブ」「ダダダダ天使」書き下ろしなど、楽曲提供でも活躍する。
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プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
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■ジャンル:リズム&アドベンチャー
■メーカー:セガ/ Colorful Palette
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