2021年9月15日発売の『コロコロコミック10月号』にて、真の最終回を迎えた『ウソツキ! ゴクオーくん』(吉もと誠先生)。
ウソをもってウソを制すダークヒーロー・ゴクオーくんの活躍を描た本作は、2011年の別冊コロコロコミック6月号の読み切りからスタートし、今年で連載10年を迎えた。
長年にわたり多くの読者を魅了してきた『ウソツキ! ゴクオーくん』。そんな伝説まんがの最終回を記念して、コロコロオンラインでは吉もと先生に特別インタビューを実施!
作品が生まれたキッカケやキャラクターへの思い入れ、印象深いエピソード、愛読者へのメッセージなど、超貴重なコメントを頂いたぞ! 現コロコロ読者はもちろん、子どもの頃に読んでくれていた方、必見だ!!
閻魔の男の子・ゴクオーくん誕生秘話
――「ウソ」を手段にして悪事を暴く、特徴的なゴクオーくんのキャラクターが生まれたキッカケは何でしたか?
吉もと誠先生(以下、吉もと):まず”ウソをテーマにした物語を描こう”と思ったところから始まり、ウソツキな主人公がいいなぁと考えていました。最初はクールで頭のキレる人間の男の子にしようと思ったのですが、「なにか非現実要素があった方が子どもたちが興味を持つのでは?」と考え直し、「ウソ=閻魔(えんま)様”かな?」と思って、”閻魔の男の子”であるゴクオーが生まれました。
吉もと:ただ人を騙して喜んでるようなウソツキじゃなくて、ウソならなんでも興味を持つようなヤツというのも、ポイントのひとつですね。性格は今まで自分が全く描いたことのない飄々としたキャラクターだったので、楽しく描く事ができました。
けれど結局最後まで「コイツ本当は今何を考えてるんだろう?」という掴み所のないキャラでもあったかもしれません。でもそっちの方がゴクオーらしくていいかなぁと思ったので、この距離感で良かったかなと。僕はすぐキャラに感情移入してしまうので!
――初期は別冊コロコロでの掲載、連載途中から月刊コロコロに移っての連載でしたが、それぞれ連載が決まったとき・移籍が決まったときの思い出を教えてください。
吉もと:別冊コロコロで連載が決まった時は忘れられませんね。ゴクオー読み切り時のアンケート結果の電話が当時の担当・大嶋さんからきたのですが、ドキドキする僕に言った大嶋さんの第一声が「すいません、アンケートダメでした」だったのです……!
僕はこの時ゴクオーに自信があったし、個人的に色々追い詰められてたのでショックで目の前がクラクラして部屋の雨戸をボーゼンと見ていたのをハッキリ覚えています。……しかし、大嶋さんは続けてこう言ったのです。
「――……というのはウソでアンケート3位でした! おめでとうございます!!」と。
もう一度ボーゼンとする僕に大嶋さんが「まっ!こういういいウソもあるんですよ吉もとさん♪」みたいな事を言ったのですが、僕としては「タチの悪いウソじゃねーか!!」と、喜びと安堵と怒りが混ざったとても忘れがたい瞬間になりました。もちろん嬉しかったですけどね!
吉もと:月刊コロコロ移籍の時は正直不安だらけでした。今までは2ヶ月に1話描いていたものを1ヶ月に1話描かなくてはならなくなるので、「話のクオリティを保てるのか?」「締め切りは大丈夫なのか?」とネガティブな事ばかり考えてました。
で、開き直って目標を低くしたんです。「とりあえず5話は続かせよう!」と。それができたら次は「10話続かせよう」、そのあとは「コミックスが5巻出るまで続かせよう」と少しずつ伸ばして。そしたらいつの間にかこんな長く続ける事ができました。のちに沢田ユキオ先生が同じやり方をしていたと知り、あぁ、まちがっていなかったんだと嬉しくなりました。
――吉もと先生といえば、小学館の打ち合わせブースで色々な作家さんと楽しそうにお話ししていた姿が印象的でした。コロナになる前のお話を考えるときはどのようなスタイルでお仕事されていましたか?
吉もと:アイデアを練るときは昔も今も基本的には家にいます。集めてきたネタや情報を家でうろうろしたりゴロゴロしながら練っていくのです。時にはゲームをしながら(笑)。そうするとその時に浮かばなくても寝る前歯をみがいてたり風呂に入ってる時に「ピン!」とくるのです! もちろんこないときもありますが!
そういう時は本気でウ~ンウ~ン言ってしまうので、やっぱり僕は家で考えるのが向いてますね。でも、その時が孤独なので編集部の打ち合わせブースに行って、他の漫画家さんや編集さんたちとおしゃべりするのはかなり楽しみでしたね。
特に森多ヒロ先生、鈴木サバ缶先生、土田しんのすけ先生の誰かは必ずいてくれてたので!(笑) 今はまったくそういう事ができなくなって寂しいのですが、きっとまたああいう日々が戻ってくると信じてます!
――他の先生とはどんなお話をされていましたか?
吉もと:コロコロ漫画家さんたちとはやっぱり漫画の話、健康の話とかが多いですね! 僕は本当におしゃべりが楽しくて、ひどい時は打ち合わせより長くしゃべってて、よく横を通る編集さんたちに「まだいたの!?」とか「どうせまた俺たちの悪口言ってんでしょ?」とかツッコまれていました。(悪口は言ってません!笑)
ただ、もちろん周りの迷惑もあるので注意はしています。長くなりそうだとそのまま神保町のカレー店にみんなで食べに行ったりとかもしていました。共栄堂のカレー、またみんなで食べたいです!
前代未聞! かつてない”ウソ”の最終回!!
――物語の大きな鍵である各話の「ウソ」はどうやってアイデアを練っていますか?
吉もと:まず、新聞を読んだり、テレビを観たり、ラジオを聴いたり、書店で気になる本を買ってきたりと、色々世間をみて「頭にきたこと」と「感動したこと」をメモしていきます。そのメモの中から悪者とエピソードを作り出して、ゴクオーたちがどうその中で動き出すか……というふうに考えてます。
――先生が毎回「ウソ」を繰り出している中で、印象に残っている読者の反応は?
吉もと:5巻第21話の天子誕生日の回の反響がすごかったですね。あのお話はいつもと違ってウソ暴きとか舌を抜くとかなかったのですが、読者さんからのファンレターをはじめ、漫画家さん仲間や友人知人からもメールが来たりして、「感動したよ!」と言ってもらえました。ありがたかったですね!
――ウソ最終回&真の最終回の仕掛けについて、周囲の人の反応はいかがでしたか?
吉もと:ウソ最終回&真最終回は、まず僕がワガママで終わるなら「最後に何かデカいウソがつきたい!!」と言い続けていたのです。僕としては本編中の話だったのですが、秋本じゃけぇ編集長と担当編集のカーくんが「じゃあウソの最終回やっちゃおうぜ!」と、とんでもないアイデアを言ってきて!!!
でも、なんかすごいワクワクしてきたんです。まるでゴクオーの如く「これはみんなたまげるぞ~!」ってテンション上がっちゃって! ……でもまさか100ページ描くことになるとは思いませんでした……!(笑) 最高のウソを創ってくれた編集部のみなさん、ありがとうございました!
ちなみに周りの方々の反応は「すごい!」「伝説になる!」と大絶賛だったので、プレッシャーもありましたけど、とにかく楽しみでした!
――本作では非常にたくさんのキャラクターが登場します。そのなかでも先生の記憶に強く残っているキャラクター3人を教えてください。また、なぜそのキャラクターが記憶に残っているのか理由も教えてください。
吉もと:「天子」「ユーリィ」「千十郎」の3人ですね。(※ネタバレもあるので注意してください!)
天子は、やはりコロコロでヒロインとはいえ「女の子を目立たせるのは色々大丈夫か?」と最初は不安でしたが、ゴクオーという漫画は人間ドラマを描こうと決めていたので老若男女は必ず出したいと思っていたのです。
ありがたい事に読者のみなさんが天子を受け入れてくれたのでたくさん活躍させる事ができました。天子にしかやれない、できない事が多かったので本当にこの漫画を支えてくれた登場人物だと感謝しています!!
吉もと:ユーリィは性格、目的、ヘビバトなどあっという間にキャラが決まったのですが、顔だけがまったく決まらなくて本当に苦労したのを覚えています。
100種類以上顔を描いてもピンとこなくてポカーンみたいになった時、自分の頭の引き出しの奥にあった80、90年代アニメのキャラクターによくあったウネウネした髪、太めの眉毛、これを天使っぽく仕立てて眼鏡をかけさせて、ついに「これだ!!」という顔になって喜んだのを覚えてます! コイツもゴクオーと同じであまり描いたことのない性格のキャラだったので楽しく描けました。
吉もと:千十郎は元はボツキャラだったのですが、クラス替えの時があったら新クラスにいれてみようと思ってました。
「ゴクオーを閻魔と知る新ライバル?」と、思わせて普通の人間だったというミスリードキャラなので、僕としては千十郎の到着地点は”普通の6の2の児童になること”だったんです。だから後半出番は減ってしまって寂しかったのですが、普通にクラスの1人として生活する千十郎に「よかったな!」と思いながら描いていました。石豆ともとても仲良くなってくれて嬉しかったです!
――先生がキャラクターを生み出す時に考えていること、気をつけていることは何ですか?
吉もと:「こいつ何のためにいるんだろ?」みたいな悲しい気持ちにさせるキャラを作らないように気をつけています。
あと僕はキャラの設定に縛り付けられるのが苦手なので、細かい所はあまり考えずにキャラクターを生むんです。で、そのあと白い紙にそのキャラがゴクオーや天子達と会話させたりする所を自由に描いて「お、いけそう」と思ったら本編に出しています。
キャラクターは本当に多かったのですがゴクオー天子はもちろん、あまり出番のないキャラクター(ゆめ、タメイキ、険市先生などなど)にもファンの方がいてくれたりと嬉しかったですね! ありがとうございました!!
――最後に、10月15日発売のコロコロ11月号でも読み切りが掲載される新作『カシバトル』で挑戦したいことを教えてください。
吉もと:お菓子を通じて大切な事、面白い事、カッコいい事を魅せたい!! 読んだらお菓子が食べたくなるような 、お店でお菓子を見たらキャラクター達を思い出しちゃうような漫画にしたいですね!
今まで自分が漫画で表現しきれなかった事もバシバシやっていきたいです! みなさん、『カシバトル 』応援よろしくお願いします!!
――ありがとうございました! そして10年間もの連載、本当にお疲れさまでした!!
商品概要
『月刊コロコロコミック 10月号』
■発売日:9月15日(水)ごろ
■定価:600円(税込)