By ドブフクロウ
みなさんこんにちは。MtGライターのドブフクロウです。
街を彩ったクリスマスの装飾が嘘のように消え去り、テレビをつければ常時何かしらの特番が放映されている――いよいよ年の瀬ですね! 今年はいろいろと大きな出来事が多い年となりましたが、みなさんにとってはどんな1年でしたか?
マジックに関して言うと、今年はテーブルトップのマジックフェストやプレイヤーズツアーがすべて開催中止となってしまったというのが一番大きなニュースだったと言えるでしょう。僕はもともとプレイヤーとしてはあまりマジックをプレイしていませんが、マジックフェストのカバレージチームに参加したり、会場で友人たちやプロプレイヤーと会うのは大好きだったので、この件は非常に悲しいニュースでした。
【お知らせ】新型コロナウイルス感染症拡大を受け、マジックフェストを含む2020年の対面式ハイレベルイベントは休止となります。詳細はeスポーツ部門部長のエレイン・チェイスよりお送りします。記事は後ほど翻訳版を公開予定です。
状況が終息し、再び皆さまと会える日を楽しみにしています。#mtgjp https://t.co/4qR57RPuEA— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) May 30, 2020
しかしながら、マジックの競技シーンもまた時代に即して大きな変化を遂げつつあり、特に今年はMTGアリーナやMagic Onlineでのイベントが盛況で、一気にマジックのオンラインシフトが進んだように思います。公式主導のイベントだけでなく、ファンコミュニティの開催する大会や、Discordを使った交流イベントが開催されるなど、改めてマジック・コミュニティの土壌の強さを感じさせられました。
また、トーナメントシーンだけでなく、マジックのメタゲームの変化も多い1年でした。詳細は後ほどご紹介しますが、禁止カードにまつわる話や、「相棒」ルールの変更に関する事柄など、マジックの歴史的にも珍しい出来事がいくつか見られました。
さて、今回の記事では、そんな2020年のマジックの変遷を簡単に振り返っていきたいと思います。ほとんどが禁止カードに関する言及にはなってしまいますが、一緒に今年の出来事を見返しましょう!
コンボ旋風を巻き起こした『テーロス還魂記』
https://corocoro-news.jp/94963/
https://corocoro-news.jp/95820/
今年1月に発売された『テーロス還魂記』は、スタンダードのみならずパイオニアやレガシー、ヴィンテージに大きな影響を及ぼしたカードが多く見られました。
《死の国からの脱出》はスタンダードレベルであればおもしろいカードだと思うのですが、カードプールが広がれば広がるほど危険性の増すカードです。実際に《死の国からの脱出》を使った「ストーム」系のデッキがレガシーで猛威をふるい、発売から2週間後にはレガシーで禁止カードに指定されました。
また、《タッサの神託者》は、リリース直後から(当時新フォーマットだった)パイオニアの顔となりました。『ゲートウォッチの誓い』のカードである《真実を覆すもの》との組み合わせは強力で、わずか2枚のカードですぐにゲームを終わらせることができました。
下環境をコンボ一色に染め上げたのと対照的に、スタンダードでは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《夢さらい》の登場によってミッドレンジ~コントロール系のデッキが強化されました。特にこの頃はまだスタンダードがローテーションしておらず、《ハイドロイド混成体》が使用できたので、《ウーロ》と《ハイドロイド混成体》を採用した緑青系のデッキは非常に強力でした。
相棒。以上。『イコリア:巨獣の棲処』
https://corocoro-news.jp/106029/
https://corocoro-news.jp/107415/
ゴジラとのコラボなどが実施された『イコリア:巨獣の棲処』。蓋を開けてみれば大暴れしていたのは「相棒」でした。スタンダードはもちろん全てのフォーマットで「相棒を使用しないのは損」とまで言わしめるようになり、マジックの風景は一変しました。
端的に言えば「相棒」メカニズムが”壊れて”いたために起きた出来事で、『イコリア:巨獣の棲処』リリースにより、マジック史上類を見ない「相棒」ルールに関するエラッタ変更とヴィンテージで禁止カードが登場するといった自体を招きました。
親の顔より見た《ルールス》と《ヨーリオン》。特に《夢の巣のルールス》はありとあらゆるフォーマットでひっぱりだこで、モダンではバーン系のデッキでさえ《ルールス》を採用する(※参考)といった有様でした。
また、「相棒」に目が行きがちではあるのですが、スタンダードでは「ジェスカイルーカ」のようなデッキも非常に流行りました。トークンクリーチャーを《銅纏いののけ者、ルーカ》によって《変身》させ、(これまた後に禁止カードになる)《裏切りの工作員》を叩きつけるというデッキです。
他にも、『イコリア:巨獣の棲処』初出である《サメ台風》は現行スタンダードのベストカードと言っても過言ではないでしょう。今年最も「サイクリング」されたカードの一つで、青いデッキ同士の対決は《サメ台風》をめぐる駆け引きが大きなファクターとなっていました。
臨界点を迎えた『基本セット2021』
https://corocoro-news.jp/117493/
https://corocoro-news.jp/121196/
『基本セット2021』リリース後、いよいよスタンダード環境が限界を迎え、大量の禁止カードが出ることになります。特に《成長のらせん》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》で土地を伸ばしながら《荒野の再生》で隙をなくし、最終的に《発展+発破》に大量のマナをつぎ込む「ティムール再生」はもはや手のつけようのないほどにデッキリストが洗練されていました。
《荒野の再生》、《成長のらせん》、《時を解す者、テフェリー》、《大釜の使い魔》の4枚がスタンダードで禁止され、他にはパイオニアでも大量の禁止カードが出ます。そのあたりはこちらの記事でも詳しくご紹介しております。
https://corocoro-news.jp/125424/
ここまで『基本セット2021』のカードが紹介されていないじゃないかと思われるかもしれませんが、実際この『基本セット2021』にはオーバーパワーというほどのカードはほとんどありません。とはいえ決して『基本セット2021』が弱いわけではなく、他のセットが異常だっただけです。
強いて言うなら《精霊龍、ウギン》だけは頭一つ抜けていますが、ほかは強すぎもせず弱すぎもせずといった調子で、様々なデッキの強さを底上げするような、非常に『基本セット』らしいセットです。
緑のランプ戦略を支える《耕作》の再録や、《精神迷わせの秘本》のような色を問わず採用できる強力なドローエンジン。他にも出てヨシ死んでヨシな《真面目な身代わり》に、白ウィニーを支える《歴戦の神聖刃》などなど、いぶし銀なカードが多数採用されています。
ウーロ。オムナス。以上。『ゼンディカーの夜明け』
https://corocoro-news.jp/136803/
https://corocoro-news.jp/139973/
https://corocoro-news.jp/141343/
これまでなんとか禁止を免れてきた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》でしたが、ついにお縄につくときが来ました。能力の全てが強力で、「《ウーロ》はマジックのルールとコンボしてる」なんて言われていましたが、ここにきて《創造の座、オムナス》という史上最凶の相棒を得たことで、ついに誰にも手のつけられない存在となってしまいました。
その後、《ウーロ》を失ってなお環境トップに君臨した《オムナス》はなんと『ゼンディカーの夜明け』発売から17日で禁止されることとなりました。この記録はマジック27年の歴史の中でも最速で、いかに《オムナス》が強力なカードだったかが伺えます。
禁止カードは出てしまいましたが、『ゼンディカーの夜明け』環境自体は非常におもしろい環境です。ローテーションしたこともあってメタゲーム上に様々なデッキが誕生し、特に現行環境の二大巨頭である「ディミーアローグ」と「グルールアグロ」が登場しました。
また、『ゼンディカーの夜明け』では新メカニズムである「モードを持つ両面カード」が出ました。これは手札からプレイする際に呪文としてプレイするか土地としてプレイするかを選ぶことができるというカードで、土地事故を減らしてくれる非常に良いメカニズムです。
こうしたカードを擁する現行スタンダード環境は、2021年2月に発売される新セット『カルドハイム』を迎えることでどのように変化していくのでしょうか? 今後が楽しみですね!
さて、今年も本連載にお付き合いくださり誠にありがとうございました。来年も何卒よろしくおねがいします。良いお年を!
ライター:ドブフクロウ
青春時代のほぼ全てをテキストサイトやゲーム系サイトを徘徊することに費やしていた根暗ライター。人間としての軽薄さに定評があり、親しい間柄では「空っぽ」というあだ名で呼ばれることもある。 MtGプレイヤーとしての腕前は自他ともに認めるヘッポコだが、青春時代に (いろいろなものを犠牲にして) 培ったMtG知識量は他の追随を許さない。
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