パイオニア新妄想紀行 vol.14 ~最終回:パイオニアよ永遠に!~

By まつがん

1. オムナス対再生を取り囲むTier2たち

 MOCS以降、大型大会のなかったパイオニアフォーマットだが、それでもメタゲームには変化が見られている。

 ここ数週間の環境のテーマは明確にスパイの克服にあり、メイン戦で圧倒的な勝率を誇るスパイに対し、速度もしくはメタカードで少しでも抵抗の余地のあるデッキでないとメタ上位に来ることは難しい。

▲《影の評決》
▲《集団的抵抗》
▲《大いなる創造者、カーン》
▲《トーモッドの墓所》

 その点、スゥルタイ再生の《影の評決》や赤単スライやまれに赤白バーンが採用する《集団的抵抗》は、デッキコンセプトに沿いつつもスパイ相手にはメタカードとして機能するため、環境のキーカードの一つとなっている。

 また、緑単信心は《大いなる創造者、カーン》でサイドカードをメイン戦から手札に入れることが可能なため、2~3ターン目に《トーモッドの墓所》を設置することが可能であり、それでも先手ゲーにはなるものの、普通のデッキなら必敗のところを五分にまで持ち直せるという時点で相対的なポジションが上がることは間違いない。

 では、それを踏まえて現環境はどのようなメタゲームとなっているのか。

・Tier1
4色オムナス
スゥルタイ再生
・Tier2
赤白ルールスバーン
白黒/白緑オーラ
緑単信心
スパイ
・Tier3
赤単スライ
ジェスカイファイヤーズ
ティムール再生
ロータスストーム
ニヴミゼット再誕
黒単アグロ

 メタ上には11~12種類の常連アーキタイプがいるという点は変わりがないが、そんな中で4色オムナスの躍進が目覚ましい。

 これについては、「速度」が環境のテーマの一つとなっているところ、アグロや信心と違って土地を使ったマナ加速の速度がコンセプトになっている点が他のデッキよりも妨害しづらく、かつ《自然の怒りのタイタン、ウーロ》+《創造の座、オムナス》の構造がバーンやコントロール相手にまんべんなく強い点が活躍の理由ではないかと思われる。

 スパイ耐性だけは低いものの、他のデッキに勝てるならということで目をつぶれる範囲内の欠点だろう。

『サンプルデッキ:赤単スライ(ShowTime_ チャレンジ優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
13 《山》
4 《ラムナプの遺跡》
4 《ボーマットの急使》
4 《僧院の速槍》
4 《損魂魔道士》
4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《砕骨の巨人》
4 《乱撃斬》
4 《棘平原の危険》
4 《稲妻の一撃》
1 《髑髏砕きの一撃》
4 《舞台照らし》
4 《集団的抵抗》
2 《魔術師の稲妻》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《乱動する渦》
3 《墓掘りの檻》
2 《減衰球》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》

 

 スパイ耐性のある赤系アグロということで注目されたデッキ。単色特有のサイドの種類の少なさと、《夢の巣のルールス》がないことによるリソース不足の不安はあるものの、「え、そんなところから死ぬの?」という奇襲性はかなりの魅力。その分プレイ難度も高いが、ギリギリのスリルを味わいたい方にはお勧めのデッキだ。

『サンプルデッキ:赤単ウギン (gottelicious チャレンジ優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
3 《山》
4 《ラムナプの遺跡》
3 《戦場の鍛冶場》
4 《大瀑布》
4 《ダークスティールの城塞》
1 《爆発域》
1 《屍肉あさりの地》
4 《砕骨の巨人》
4 《難題の予見者》
1 《不屈の巡礼者、ゴロス》
4 《浄化の野火》
4 《ヴァラクートの覚醒》
4 《神々の憤怒》
3 《アイレンクラッグの妙技》
3 《突沸の器》
4 《精神迷わせの秘本》
4 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《目覚めた猛火、チャンドラ》
4 《精霊龍、ウギン》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《魂標ランタン》
3 《漸増爆弾》
3 《減衰球》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《嵐の怒り》
1 《破滅の刻》
1 《目覚めた猛火、チャンドラ》
1 《爆発域》

《浄化の野火》は自分の破壊不能土地を対象にして唱えると1ドロー付きの《不屈の自然》になる。このギミックを生かした赤単のランプデッキだ。

 また、スパイには土地が入っていないため、スパイ相手なら単純な2マナの土地破壊として使用し、《神々の憤怒》でマナクリーチャーも対処することで相手の機能不全も狙える。

 《難題の予見者》も使用デッキは少ないもののパイオニア屈指のパワーカードであることは間違いなく、特に《精霊龍、ウギン》が有効なメタゲームにおいては侮れない脅威となるだろう。

『サンプルデッキ:パラドックス (Curveiganhei チャレンジ6位)』

枚数 カード名(メインボード)
6 《森》
2 《島》
4 《繁殖池》
4 《植物の聖域》
2 《イプヌの細流》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《エルフの神秘家》
4 《眷者の神童、キナン》
2 《森の女人像》
4 《湖に潜む者、エムリー》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《バーラ・ゲドの復活》
4 《モックス・アンバー》
4 《黄金の卵》
2 《スカイクレイブの秘宝》
2 《パラドックス装置》
4 《大いなる創造者、カーン》
4 《伝承の収集者、タミヨウ》
枚数 カード名(サイドボード)
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒)
4 《否認》
1 《祖先の像》
1 《トーモッドの墓所》
1 《真髄の針》
1 《魂標ランタン》
1 《減衰球》
1 《聖域の門》
1 《霊気貯蔵器》
1 《パラドックス装置》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の立像》

 

ヒストリックで活躍したアーキタイプをパイオニアに逆輸入した形のデッキ。3ターン目《大いなる創造者、カーン》によるスパイ耐性は緑単信心と同様で、そこにミッドレンジ+コンボ要素が加わることで一筋縄ではいかない粘り強さを獲得している。まだまだ新興アーキタイプのため、これからの研究が待たれるところだ。

 ……というような環境の動きは今回も一切無視して、例によってクソデッキを作っていくことにしよう。

2. ハイパープリズン

 パイオニアはマジック・オンラインで遊べるスタンダードに最も近いエターナルフォーマットだが、他方MTGアリーナではヒストリックという、スタンダードとパイオニアの間のようなカードプールのフォーマットも存在している。

 そしてヒストリックで活躍したコンボとして、《九つの命》と《厳粛》のプリズンコンボが挙げられる。

 ならば《九つの命》も《厳粛》もパイオニアのカードプールに存在しているのだから、パイオニアでも同様のプリズンデッキが組めないだろうか?

▲《九つの命》
▲《厳粛》

 だが、この発想には問題があった。

 それは、《九つの命》+《厳粛》コンボの対処されやすさだ。

▲《時を解す者、テフェリー》
▲《大いなる創造者、カーン》

 パイオニアでは《時を解す者、テフェリー》が普通に使用可能(※ヒストリックでは一時停止カード)だし、緑単信心などは《大いなる創造者、カーン》越しに《王神の立像》をサーチしたり、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をサーチしてきたりもする。

 これではいくら《九つの命》+《厳粛》コンボを決めたとしても、簡単に突破されてしまうことだろう。

 つまり必要なのは、プレインズウォーカーへの対抗手段

 しかし現代マジックを象徴する強カードタイプであるプレインズウォーカーに対抗できる手段がそんな簡単に見つかるはずも……。

 あった。

▲《真髄の針》
▲《魔術遠眼鏡》

 8枚積みの《真髄の針》と《魔術遠眼鏡》でプレインズウォーカーを全力で指定しまくれば相手は憤死するのでは???🤔🤔🤔

 というわけで、できあがったのがこちらの「ハイパープリズン」だ!

『ハイパープリズン』

枚数 カード名(メインボード)
16 《平地》
3 《アーデンベイル城》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》
4 《牧歌的な教示者》
1 《空の粉砕》
1 《副陽の接近》
1 《耳の痛い静寂》
4 《ルーンの光輪》
1 《安らかなる眠り》
4 《厳粛》
4 《九つの命》
4 《排斥》
4 《ギデオンの介入》
4 《真髄の針》
4 《魔術遠眼鏡》
1 《石成エンジン》
1 《試練に臨むギデオン》

▲《副陽の接近》
▲《試練に臨むギデオン》

  《九つの命》+《厳粛》コンボから相手が抜け出せる手段を《真髄の針》《魔術遠眼鏡》《ギデオンの介入》でひととおり指定し終えたら、あとはこっちが勝利手段に辿り着くまでほぼドローゴーになる。

 勝利手段としては《副陽の接近》が最も簡単だが、手札破壊やデッキ破壊でぶち抜かれてしまったときのために《試練に臨むギデオン》も用意しておいた。

 こちらはライブラリーを圧縮する要素は《排斥》のサイクリングか《牧歌的な教示者》くらいしかないので、ライブラリーアウトはお互い近いタイミングになるだろうし、そうなったときに《空の粉砕》から《試練に臨むギデオン》を着地させつつ《排斥》を構えれば、そう簡単には落とされないだろう。