【大塚角満のゲームを語る】第46回 実りの秋に米作り


 

やっぱり話題に『天穂のサクナヒメ』

 
 何度か当コラムでも言及したことがあるけど、この秋最大のダークホース的ソフトにマーベラスのプレイステーション4、Nintendo Switch用ソフト『天穂のサクナヒメ』が躍り出た。
 

 
 予想通りの展開である。
 
 絶対に売れると思っていたんだよこのゲーム!!!
 
 オノレの先見の明に極めつけのドヤ顔を決め込みたいところだが、もっともっと話題になってほしいので地道な啓蒙活動を続けている(他誌でプレイ日記を書いたりね)。本当によくできたゲームなので、老若男女問わずにぜひとも触ってほしいのだ。
 
 そこで満を持して、いま俺がもっともお世話になっているコロコロオンラインの読者に向けても『天穂のサクナヒメ』をアピールしようと思った。すでにバリバリにプレイしている人もいると思うけど、いまだパッケージ版が品切れで手に入らない……という方もいると伝え聞いているので、そんな方もちょっとだけ“やった気”になれる記事を書きたいと思った次第である。
 

 

お米を作るということ

 
 さて、『天穂のサクナヒメ』がどんなゲームかと言えば、ジャンル的には“和風アクションRPG”になるらしい。なぜかというと……公式サイトにそう書かれているからw
 
 実際、プレイを始めて最初に「おっ!!」と思わせられるのは、簡単にして爽快、シンプルにしてド派手な“コンボアクション”の部分だと思う。
 
 元気な主人公・サクナヒメが、ぴょんぴょんと気持ちよく飛び跳ねながら敵を蹴散らすバトルシーンは動画でこそ映えるんだけど、ここではひとまずスクリーンショットを見てほしい。
 



 
 王道の横スクロールアクションに、伸縮自在の羽衣を組み合わせて動きに深みと自由度を持たせ、ボタンと方向キーを使い分けて数々のコンボアクションをぶっ放す。
 

 
 いい意味で、古き良き時代の横スクロールアクションのセオリーを踏襲し、そこに現代風の味付けを「これでもか!!」と盛り込んで新しさを演出している感じ。これが、想像以上に美しいグラフィックと相まって画面映えし、一種独特なカタルシスをプレイヤーにもたらしてくれる。
 
 ……そう、このアクションゲームのパートだけでも、『天穂のサクナヒメ』は十分に戦っていけるだけの戦力を有している。正直、アクションに全振りしたタイトルでも、『天穂のサクナヒメ』に比肩できるものってどれだけあるだろう……と、ちょっと考えてしまうレベルなのだ。
 
 それなのに……!
 
 『天穂のサクナヒメ』がもっとも話題になっているのは、このよくできたアクションゲームの部分ではないのだから恐れ入る。
 
 プレイヤーが夢中になっているのはじつは、ゲームのもうひとつの車輪である“米作りシミュレーション”の部分で、誤解を恐れずに言えば注がれる視線の9割9分が、
 
 「お米を作るゲームって……なんなの?w」
 
 ↑これになっているんだから驚く以外にないのである!!w 
 

 
 それでも、多くの人は思うはずだ。
 
 「お米を作ると言っても、あくまでもゲームでのことでしょ? テキトーに苗を植えて肥料撒いて、時間を進めれば実るんじゃないの?」
 
 このように。じつはプレイ前の俺も、同じように考えていたと記憶している。
 
 でも……違うのだ。
 
『天穂のサクナヒメ』はお米作りにいっさいの妥協を許さず、
 
 「肥料はウンコを回収して、肥溜めで自ら作るところから!!」
 

 
 「田植えも稲刈りも、アナログスティックを操作して1本1本行う!!」
 

 
 「タニシやカエルなど環境生物を捕獲して田に放ち、豊かな田んぼを作れ!!」
 
 「稲の乾燥も脱穀も、すべて手作業!!」
 
 「もう、米作りのすべての工程をアナログに全部やってくれ!!」
 

 
 うわあああああ!!!ww どんなゲームやねーーーーん!!!www
 
 ……こういうゲームなんです(苦笑)。
 
 ナゼお米を作るのかと言えば、その収穫量やデキが主人公のサクナヒメの成長に大きく関わってくるから。そしてたくさん収穫できないと……厳しい冬を越すのが心許なくなるから(切実)。
 

 
 ゲームのサイクルは、田んぼの世話→付近の山や峠に出向いての狩り→鬼退治→成長……と、こんな感じ。あくまでも中心にあるのは米作りで、そのまわりを日本昔話のようなストーリーと、前述の爽快アクションが固めている感じか。このサイクルが軽快で小気味よく、わかりやすいので、ついつい何シーズンもぶっ続けで遊びたくなってしまう。こんなゲームを……たったふたりで作ったというのが本当に信じられないわ……。
 

 
 お米の実りに一喜一憂しつつ、ストレス発散に野山に行って鬼退治をする……という、シンプルながらも奥が深いゲーム性に魅力を感じたなら、ぜひとも触っていただきたい。もしかしたら、良作がたくさん発売されたこの秋で、もっともオススメの作品かもしれないよ!
 

大塚(おおつか) 角満(かどまん)
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。

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