「12人の子どもたちが世界の終わりに立ち向かう」小高和剛氏×打越鋼太郎氏『ワールズエンドクラブ』開発インタビュー【前編】(※ネタバレあり)

現在、イザナギゲームズよりApple Arcadeにて配信中のサスペンスパズルアクションゲーム『ワールズエンドクラブ【World’s End Club】』

『ダンガンロンパ』シリーズを手掛けた小高和剛氏がクリエイティブディレクターを担当し、『極限脱出』シリーズなどで知られる打越鋼太郎氏がシナリオ、ディレクションを務めることで話題になり、2021年春Nintendo Switch版の発売を控えている本作だが、今回、コロコロオンラインにてスタッフインタビューを実施!! 作品の振り返りや今後の展開など気になる内容を前後編でお届けする。  

また、本記事には『ワールズエンドクラブ』に関するネタバレが含まれているので、未プレイの読者は注意してほしい。  

子どもたちによるデスゲームが中止!? 「世界の終わりに僕らは立ち向かう」

2020年9月に、イザナギゲームズよりApple Arcadeにてゲリラリリースされたサスペンスパズルアクションゲーム『ワールズエンドクラブ【World’s End Club】』。

本作は、ある夏の日のこと、全国から落ちこぼれだけが集められたクラス「ガンバレ組」が東京から修学旅行に向かう途中、謎の隕石落下事故に巻き込まれるところからストーリーが始まる。

謎の光に包まれた後、主人公・れいちょをはじめとした子どもたちは、見覚えのない海底遊園地にて目を覚ますが、突然現れた謎のキャラクター「ピエロピ」によって閉じ込められてしまい、仲間同士のデスゲームを命じられてしまう……。

絶望的な状況の中、何とかデスゲームを退けて脱出したガンバレ組だったが、彼らは荒れ果てた地上を目の当たりにする。  

抜け出した場所は東京から遠く離れた鹿児島県。人の気配もなく、町並みは廃墟と化していた……。「なぜ人がいなくなったのか?」、「世界はどうなってしまったのか?」、すべてが謎のままガンバレ組は東京に帰ることを決意する。はたして、彼らは無事に東京へたどり着けるのか……そして世界の真実とは……?  

▲「ガンバレ組」は左からそれぞれ、兄貴・パイ・たっつん・ニョロ・ジェンヌ・れいちょ・関西・チュー子・バニラ・ポチ・モーちゃんの11人
▲更に謎の少女「雪」が加入し、合計12人による長い旅が始まる

コロコロオンラインが開発スタッフに突撃!!

もともとは、『デスマーチクラブ【Death March Club】』というタイトルとして発表され、ゲーム内容も「子どもたちによるデスゲーム」と紹介されていた本作。開発スタッフは『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛氏と、『極限脱出』シリーズの打越鋼太郎氏の共作ということもあり、「いったいどんなゲームになるんだ……!?」と発売前から期待を集めていた作品だ。

一方、初報を聞いたコロコロオンラインは「なにーっ!? 小高さんと打越さんのタッグですって!? チェックしないと!」と、おふたりの大ファンということもありウキウキしながら詳細を覗いてみたものの、その内容に「子どもたちによるデスゲームだなんて……ゆ、ゆるさーん!!!!」と怒っていた!!

しかし、ゲリラリリースに合わせて公開されたティザームービーでは、「このデスゲームは中止しまーす!」の宣言とともにタイトルが『ワールズエンドクラブ』に変更!

デスゲーム展開というのはウソであり、「世界の終わりに僕らは立ち向かう」というキャッチコピーとともに、子どもたちによる希望に満ち溢れた冒険作品に生まれ変わったのであった。

さて今回、見事にスタッフさんたちの掌で転がされていたコロコロオンラインだったが、「子どもたちが世界の終わりに立ち向かう冒険ストーリーとか最高じゃないですか!! ぜひ取材させてください!」とオファーを送り、本作に携わったエグゼクティブプロデューサー・梅田慎介氏、クリエイティブディレクター・小高和剛氏、シナリオ&ディレクター・打越鋼太郎氏にインタビューを実施!! 『ワールズエンドクラブ』の制作秘話や、今後の展開などをたっぷりと語って頂いた。  

プロフィール概要
・小高和剛(こだか かずたか)
トゥーキョーゲームス代表。本作のクリエイティブディレクターを務める。 『ダンガンロンパ』シリーズすべての企画、シナリオを手がける。シリーズ作品はそれぞれ舞台化(本郷奏多主演)、アニメ化され、国内外から高い評価を得る。 その後、打越鋼太郎、小松崎類、高田雅史らと共にToo Kyo Gamesを設立。漫画、アニメ原作、小説執筆など精力的に活動を行う。

・打越鋼太郎(うちこし こうたろう)
トゥーキョーゲームス所属。本作のシナリオ、ディレクションを務める。 『Infinity Series (Never7、Ever17、Remember11)』、『Zero Escape Series (Nine Hours、Nine Persons、Nine Doors、Virtue’s Last Reward、Zero Time Dilemma)』、『AI:The Somnium Files』など、多数の有名ゲームタイトルのディレクション、シナリオを担当。海外からの評価も高く数々の賞を受賞しており、GDCやAnime Expoで何度も講演を行うなど幅広く活動している。

・梅田慎介(うめだ しんすけ)
イザナギゲームズ代表。本作のエグゼクティブプロデューサーを務める。

 

残酷表現無しで全世界で売るゲームを作りたい

──今回はインタビューにお応えいただきありがとうございます。早速ですが、『デスマーチクラブ』改め『ワールズエンドクラブ』というプロジェクトはどういった経緯で誕生したのでしょうか?  

小高和剛氏(以下、小高):最初は単純に、全世界で発売できる、主に中国で発売できるゲームにしようといったところからスタートしました。なので、残酷表現のせいで全世界で発売できない……ということがないように気を付けていました。  

──世の中では、小高さんと打越さんのおふたりはデスゲームジャンルの印象がかなり強いと思うのですが、本作は、ハードな作風ではなく全年齢向けかつ全世界で売るタイトルを作ろうという考えは初めから決まっていたのでしょうか?  

小高:発売の順序が変わってしまったんですけども、もともとこのプロジェクトはうちのトゥーキョーゲームズが作っている中でいちばん最後にスタートした企画でした。ただ、ある意味残酷的な作品などは打越の方でも作っていたので、「同じようなタイトルを2本走らせてもしょうがない」というのもあり、でも全世界に向けて発売できるのであればやっておくことはないし、残酷表現無しという作風も僕らにとっては新しいチャレンジかなと思い『ワールズエンドクラブ』がスタートしました。ゲーム制作は子どもを主人公にするのが初めてだったのもあって、凄く新鮮で楽しかったです!  

──少し掘り下げた内容になりますが、本作にはパズルアクションというジャンルや、デスゲームから子供たちの旅に変更など様々な要素が盛り込まれていますが、作品を作るうえでいちばん最初に決まったことは何でしょうか?  

小高:シチュエーションですかね。子どもたちが旅をするということを決めて同時に横スクロールアクションパズルみたいなジャンルでやろうとしていたのは覚えています。

打越鋼太郎氏(以下、打越):今回自分たちが作るのもあって、まぁアドベンチャーだろうという考えはあったんですけど、アドベンチャーと言ってもジャンルややることがいっぱいあるんですよね。じゃあどういう内容にしようかって話になって、そこから「横スクロールアクションにしよう」とかいろいろ企画会議で決めていきました。

梅田慎介氏(以下、梅田):少し補足させていただきますと、難しいことですがクリエイターの方たちが手掛けたものを世界に届けたいという理念がありまして。実は、世界では「Steam」のアクティブユーザーの使用言語の50%以上が中国語だったりするんです。なので「中国市場は無視できないですよね」という話もありプロジェクトを進めていましたが、検閲にもかなり気を付けないといけない。なので小高さんが仰ったとおり、今まで作ってきた残虐表現含む刺激が強いものじゃなくても、「おふたりやクリエイターの皆様なら面白い作品ができるんじゃないか?」ということで、今回は『IT』『グーニーズ』のような少年少女の旅ストーリーにしようという経緯がありました。  

──そのような経緯があったのですね。次にプロモーションについてですが、デスゲーム展開を逆手に取った宣伝は私も完全に騙されていました。てっきり本当に子どもたちの争いが始まってしまうのかと……小高さんはユーザーのリアクションをどのように感じていますか?  

小高:『ワールズエンドクラブ』ですが、本当はデスゲーム部分だけを体験版で出そうと思っていたんですよ。コンシューマーゲームは、今は体験版がいちばんのバズりポイントと思うので、僕は体験版は出すものだと考えていました。「ずっとデスゲームだと思っていたら旅が始まる!」っていう展開までが体験プレイの範囲になっていて、そこからユーザーにワクワクしながら待ってもらう……みたいな感じを予想していたんですけれども、Apple Arcadeで配信することになりまして。こちらは体験版みたいなものはないので、当初考えていた構想とは違うけど許容範囲かなと思いました。  

──『ワールズエンドクラブ』は「小高さんと打越さんの共作」と様々なメディアで紹介されていましたが、制作上でのおふたりの役割を改めてお聞かせください  

小高:共作っていうより僕がクリエイティブディレクターで入って、ディレクターには打越のほかに中澤というスタッフもいまして、基本はふたりに任せつつ、僕がちょっとこうしたいああしたいと、わがままを言う係みたいな感じでしたね。実働としてゲームを作っているのは打越・中澤のコンビで、そこにちょっと自分の意見を出していく……というのが僕の役割でした。  

──キャラクター面に関する意見などはあったのでしょうか?  

打越:小高はそう言っているんですけれども、この人はすごい重要なことを決めてくるんですよ。例えば「バニラが死んでいることにしよう」とか……僕たちがそれを聞いて「いや~……」「それって……」ってなりつつも辻褄を合わせたりしてまして。多分ポチをロボットにしようとかそういうのも小高発案だったと記憶しているんですよね。  

小高:いや違うんじゃないかな!(笑) 全然覚えてないけどね! 俺が言ったのはニョロの語尾を「~ニョロ」にしてくれっていう……してくれなかったけど(笑)。  

打越:その件は最初語尾キャラにしようとしたけど、「それはやりすぎ」って言われて今のキャラにして、しばらくして「やっぱり最初に戻そう」みたいな(笑)。このゲームは初期の頃はトゥーキョーゲームスで打ち合わせをしていて、そういったキャラクター要素もその場で決まったことが多いんですよ。  

▲「ニョロ」 

  ──こういった設定などは初めから決まっているものだと思っていたのですが、打ち合わせで練っていった結果今のキャラクターが誕生したんですね。  

打越:僕の記憶ではそういった感じですね。

小高:なんというか昔の週刊連載のような……ワクワクすることが連続で起きてほしいというか、ワクワクするネタを集めてその部分を頑張って繋ぐ! みたいな作り方でしたね。子どもたちの物語だしどんどん色々なことが起きてほしいみたいな。

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