パイオニア新妄想紀行 vol.12 ~カードプールの隅っこを探せ!~

By まつがん

1. 『ゼンディカーの夜明け』発売から1ヶ月、平たくなったメタゲーム

 『ゼンディカーの夜明け』発売から1ヶ月が経った。
 
 前回述べたように『ゼンディカーの夜明け』がパイオニアに与えた影響はマナベースがほとんどだったため、環境に全く新しいアーキタイプが登場するようなことはほぼ見られなかったが、総じて「小道シリーズでマナベースが改善されたTier2以下のデッキたちが、『ゼンディカーの夜明け』で得たものがほとんどなかったTier1の黒単アグロに対抗できるようになった」というのが、この1カ月のメタゲームの動きを表す言葉になるだろう。
 
 では、それを踏まえて現環境はどのようなメタゲームとなっているのか。
 
・Tier1
黒単アグロ
80スパイ
エスパーヨーリオン
ニヴミゼット再誕
再生(ティムール/スゥルタイ)
オーラ(白黒/白緑)
・Tier2
スピリット(青白/バント)
ロータスストーム
ジェスカイルーカ
赤緑アグロ
・Tier3
ナヤウィノータ
赤白ルールスバーン
白黒人間アグロ
4色オムナス
 
 現在のメタゲームはパイオニアの歴史上でも類を見ないほどに群雄割拠となっており、便宜上Tier1~3という分類をしているがこれらの差もかなり少なく、実質メタデッキが14種類程度存在する屈指の良環境と言える。
 

『サンプルデッキ:80スパイ (andrw1232 チャレンジ優勝)』

枚数 カード名(メインボード)
4 《アガディームの覚醒》
4 《海門修復》
4 《変わり樹の共生》
4 《ハグラの噛み殺し》
4 《ペラッカの捕食》
4 《絡みつく花面晶体》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《バーラ・ゲドの復活》
1 《巨森の補強》
4 《森の女人像》
4 《楽園のドルイド》
4 《地底街の密告人》
4 《欄干のスパイ》
4 《秘蔵の縫合体》
3 《銀打ちのグール》
2 《憑依された死体》
2 《世界棘のワーム》
4 《思考囲い》
4 《新生化》
4 《異界の進化》
4 《這い寄る恐怖》
1 《悪戦+苦闘》
枚数 カード名(サイドボード)
4 《突然の衰微》
4 《神聖の力線》
4 《虚空の力線》
1 《再利用の賢者》
1 《エメリアのアルコン》
1 《強迫》

 

 
このデッキこそ『ゼンディカーの夜明け』が生み出した最もメタゲームへのインパクトが大きな新アーキタイプにして、パイオニアにおけるデッキ構築論に革新を巻き起こしたアーキタイプである。
 
 両面土地の登場によって誕生した「スパイ」はもともと青黒型が主流で、それに対し前回書いたように私は緑黒型を調整していたわけだが、そんな中で出てきたこの形は「緑黒型で、かつライブラリーを増量する」というダブルのイノベーションを起こした。
 
 どういうことかというと、もともとこのデッキは《欄干のスパイ》もしくは《地底街の密告人》による1枚コンボだが、マナクリーチャーを引けているなら《新生化》《異界の進化》でも代替できるのでライブラリーを増やしても実質コンボパーツが16枚に増量できているのでコンボ成功率に影響が少ないのに対し、ライブラリーを増やせば《秘蔵の縫合体》《銀打ちのグール》《這い寄る恐怖》《世界棘のワーム》のような「デッキの中に入っていること自体に価値があって、決して手札に来て欲しくはないカード」が手札に来る確率を下げることができるのである。
 
 ちなみにほぼ初出であるPTQ突破の際には80枚だったが、その後「どうせ《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒にしないなら」と77枚まで削られている。細かい話だが、Magic Onlineで使う分にはヨーリオンを見せない限り相手のライブラリーの枚数など毎回きちんと確認したりしないので、相棒を見せて「お、ヨーリオンか」と意識させるよりも、このデッキのように開き直って最適なライブラリー枚数を追求した方が良いと思われる。
 

『サンプルデッキ:スゥルタイ再生 (oskiyaa チャレンジ4位)』

枚数 カード名(メインボード)
3 《島》
1 《森》
1 《沼》
3 《湿った墓》
1 《草むした墓》
4 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《寓話の小道》
4 《内陸の湾港》
1 《水没した地下墓地》
1 《伐採地の滝》
1 《ロークスワイン城》
1 《ヴァントレス城》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《選択》
2 《致命的な一押し》
4 《検閲》
2 《否認》
1 《タッサの介入》
1 《取り除き》
4 《悪意ある妨害》
4 《薬術師の眼識》
3 《荒野の再生》
2 《絶滅の契機》
1 《巻き直し》
4 《サメ台風》
枚数 カード名(サイドボード)
3 《神秘の論争》
2 《思考囲い》
2 《致命的な一押し》
2 《夜群れの伏兵》
2 《絶滅の契機》
2 《永遠神の投入》
1 《厚かましい借り手》
1 《減衰球》

 

 
再生デッキは《発展+発破》を生かせるティムールカラーで組まれるのが主流だったが、最近ではよりコントロール要素を強めたスゥルタイカラーで組まれた形が台頭してきている。
 
 《成長のらせん》が採用されていないことからも、思想的には青黒コントロールとして組まれていることがわかる。特に目新しいカードが投入されているデッキというわけではないが、現在のメタゲームに適応したパイオニアならではの新しいコントロールの形ということで、似たようなコンセプトのデッキを組みたい方には参考になるかもしれない。
 

『サンプルデッキ:4色オムナス (Snusnumrick チャレンジ2位)』

枚数 カード名(メインボード)
4 《森》
4 《島》
1 《山》
1 《平地》
3 《寺院の庭》
2 《繁殖池》
2 《踏み鳴らされる地》
4 《ラウグリンのトライオーム》
2 《ケトリアのトライオーム》
4 《寓話の小道》
3 《内陸の湾港》
4 《水蓮のコブラ》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《創造の座、オムナス》
1 《帰還した王、ケンリス》
4 《成長のらせん》
1 《耕作》
3 《時を解す者、テフェリー》
3 《フェリダーの撤退》
4 《僻境への脱出》
2 《発生の根本原理》
枚数 カード名(サイドボード)
3 《自然に帰れ》
3 《神秘の論争》
3 《神々の憤怒》
2 《マグマのしぶき》
1 《霊気の疾風》
1 《魂標ランタン》
1 《厚かましい借り手》
1 《減衰球》
1 《精霊龍、ウギン》

 

 
スタンダードにおける4色オムナスをそのまま移植してきたようなデッキだが、スタンダードで最終的に禁止になっている以上、パイオニアでもそのまま通用しえたという結果に対しては驚きは少ないことだろう。
 
 アーキタイプ的にはマナランプに分類されるだろうが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《創造の座、オムナス》のおかげでライフ水準がかなり高く保てる点が特徴的なのと、《成長のらせん》絡みのぶん回りがかなり理不尽なこともあって、現在のメタゲームの中だと相対的に実質アンフェアに近い立ち位置とも言えそうだ。
 
 ……というような環境の動きは今回も一切無視して、例によってクソデッキを作っていくことにしよう。