By まつがん
1. 環境崩壊の禁止改定とパイオニア3.0の始まり
今月頭、パイオニア環境に激震が走った。
8月3日の禁止改定で、長らく環境のトップを走ってきた《真実を覆すもの》をはじめとする、4枚のコンボ関連カードが一度に禁止となったのだ。
パイオニアは (相棒のルールが壊れていた期間を除けば) 2月ごろからほぼずっとコンボデッキが環境の中心となってきたわけだが、この禁止改定によってその前提が根本から崩されたことになる。
環境のデッキがほぼすべて塗り替わるほどの大変革。《真実を覆すもの》コンボがトップメタを唯一譲った相棒時代をパイオニア2.0とするならば、いわばパイオニア3.0への突入と言えるだろう。
では、それを踏まえて現環境はどのようなメタゲームとなっているのか。
・Tier1
ティムール再生
緑単信心
・Tier2
ニヴミゼット再誕
青白/バントスピリット
エスパーヨーリオン
ジャンド城塞
・Tier3
赤単スライ
ロータスストーム
黒単アグロ
ジェスカイルーカファイヤーズ
ルールスタカオーラ
禁止改定前のスタンダードの最強デッキであるティムール再生がいきなりトップメタに躍り出ると同時に、《ニッサの誓い》の解禁で全盛期のパワーを取り戻した緑単信心がブン回りの強さでTier1を勝ち取っている。
こちらもスタンダードで活躍していたサクリファイスに近い構造のジャンド城塞もTier2に進出しており、総じてかなりスタンダードに近い環境になったというところだろうか。
アーキタイプ的にはコンボが死滅したことでコントロールが強くなり、逆にアグロのポジションがかなり弱まっているのがわかると思う。
『サンプルデッキ:ティムール再生 (wkmidori チャレンジ優勝)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
2 | 《島》 |
1 | 《森》 |
1 | 《山》 |
4 | 《繁殖池》 |
4 | 《蒸気孔》 |
1 | 《踏み鳴らされる地》 |
4 | 《ケトリアのトライオーム》 |
3 | 《寓話の小道》 |
3 | 《根縛りの岩山》 |
3 | 《ヴァントレス城》 |
2 | 《爆発域》 |
3 | 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 |
4 | 《検閲》 |
4 | 《成長のらせん》 |
1 | 《霊気の疾風》 |
4 | 《神秘の論争》 |
3 | 《神々の憤怒》 |
1 | 《中和》 |
1 | 《薬術師の眼識》 |
4 | 《発展+発破》 |
4 | 《荒野の再生》 |
3 | 《サメ台風》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
3 | 《霊気の疾風》 |
3 | 《否認》 |
3 | 《焦熱の竜火》 |
2 | 《イゼットの静電術師》 |
1 | 《長老ガーガロス》 |
1 | 《薬術師の眼識》 |
1 | 《霊気渦竜巻》 |
1 | 《サメ台風》 |
スタンダードで一世を風靡し、ついには禁止カードまで生み出した凶悪アーキタイプがパイオニア環境でもついに頭角を現した。
スタンダード当時のリストと大きく異なるのは《検閲》と《神々の憤怒》。前者は《成長のらせん》との2枚看板で後手番をまくるのに貢献し、後者はアグロやナヤウィノータといった幅広いクリーチャーデッキを最大効率でケアしてくれる。
『サンプルデッキ:緑単信心 (Beekeeper チャレンジ2位)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
15 | 《森》 |
2 | 《ギャレンブリグ城》 |
4 | 《ニクスの祭殿、ニクソス》 |
4 | 《ラノワールのエルフ》 |
4 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《炎樹族の使者》 |
4 | 《大食のハイドラ》 |
3 | 《翡翠光のレインジャー》 |
4 | 《ニッサの誓い》 |
4 | 《狼柳の安息所》 |
4 | 《大いなる創造者、カーン》 |
4 | 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》 |
4 | 《世界を揺るがす者、ニッサ》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
1 | 《石とぐろの海蛇》 |
1 | 《長老ガーガロス》 |
1 | 《新緑の機械巨人》 |
1 | 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 |
1 | 《トーモッドの墓所》 |
1 | 《真髄の針》 |
1 | 《墓掘りの檻》 |
1 | 《キランの真意号》 |
1 | 《減衰球》 |
1 | 《霊気圏の収集艇》 |
1 | 《連結面晶体構造》 |
1 | 《領事の旗艦、スカイソブリン》 |
1 | 《王神の立像》 |
1 | 《グレートヘンジ》 |
1 | 《ダークスティールの城塞》 |
アグロのポジションが落ちたことで、先手1ターン目《ラノワールのエルフ》のバリューは環境的にかなり高まった。さらに《ニクスの祭殿、ニクソス》での爆発的なマナ加速でプレインズウォーカーという「クリーチャーを出さなければ逆転不能になる装置」を一度に2面以上展開することで、あらゆるデッキに対して理不尽を押し付けることが可能である。
ぶん回り続ければすべてのデッキに勝てるようにメインボードが最適化されているため、サイドボードは《大いなる創造者、カーン》と《アーク弓のレインジャー、ビビアン》のためのスロットにすべて割かれているという潔さが特徴的である。
『サンプルデッキ:ジャンド城塞 (katuo079595 チャレンジ7位)』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
1 | 《森》 |
4 | 《血の墓所》 |
4 | 《草むした墓》 |
3 | 《踏み鳴らされる地》 |
4 | 《花盛りの湿地》 |
3 | 《ラノワールの荒原》 |
1 | 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 |
4 | 《金のガチョウ》 |
4 | 《膨れ鞘》 |
2 | 《ラノワールのエルフ》 |
2 | 《エルフの神秘家》 |
4 | 《忘れられた神々の僧侶》 |
4 | 《ズーラポートの殺し屋》 |
4 | 《地下墓地の選別者》 |
4 | 《波乱の悪魔》 |
4 | 《悲哀の徘徊者》 |
4 | 《集合した中隊》 |
4 | 《ボーラスの城塞》 |
枚数 | カード名(サイドボード) |
4 | 《思考囲い》 |
3 | 《致命的な一押し》 |
2 | 《長老ガーガロス》 |
2 | 《突然の衰微》 |
2 | 《グルールの魔除け》 |
2 | 《秘宝探究者、ヴラスカ》 |
こちらもスタンダードからの流用となるコンセプトだが、《膨れ鞘》《ズーラポートの殺し屋》《地下墓地の選別者》《集合した中隊》と、よりコンセプトに合致したパワーカードが増えており、安定して高いライフ水準を保ちつつ《ボーラスの城塞》までのマナが伸ばせるようになっている。
……というような環境の動きは今回も一切無視して、例によってクソデッキを作っていくことにしよう。
2. バスリ隆盛
「基本セット2021」には、《時の支配者、テフェリー》以外にもプレインズウォーカーが存在していたのをご存知だろうか?
《バスリ・ケト》。「灯争大戦」以前はプレインズウォーカーが3マナというだけで一定の評価を受けたものだが、現在ではさして珍しい存在でもないということもあってか、発売以降各フォーマットで全く音沙汰がない状態となっているカードである。
だが、私はこのカードの使用法について見た瞬間から思いついていた。
なぜなら、私が慣れ親しんだあるカードと、非常に似た能力を持っていたからだ。
そう、《マルドゥの隆盛》である。
《バスリ・ケト》の「-2」能力は《マルドゥの隆盛》設置時と同様にトークンとグルーヴ感を生む。
ならば《マルドゥの隆盛》と《バスリ・ケト》を同時にデッキに積むことで、ウルトラハイパーなグルーヴ感 (?) を持ったデッキが爆誕するのではないか。
だが、この発想には一つ問題があった。
《マルドゥの隆盛》と《バスリ・ケト》を最大活用するなら、1マナクリーチャーを大量搭載したデッキであり、かつ土地がぴったり3マナで止まるよう組むことが望ましい。
ところが1マナのクリーチャーしか入っていないようなデッキは本来2マナまでしか必要としないはずのところ、3マナ出せるだけの土地をデッキに入れてしまうと、一瞬にしてマナフラッドに陥ってしまうのだ。
かといって2マナまでしか出ないような土地の枚数で《マルドゥの隆盛》や《バスリ・ケト》を設置しようというのは、これまたマナスクリューのリスクの観点からさすがに無理がある。
この問題を解決するにはどうすればいいか……悩んだ末に、私は一つの結論を出した。
《知りたがる人形》まで採用して極限まで土地を削ればいいのでは???🤔🤔🤔
《知りたがる人形》は1マナクリーチャーでありながら登場時に占術が可能であり、3マナ目を探しにいくことに貢献してくれる。
もちろん単体だと追放してトークンを生まない限り打点は全く出せないが、《マルドゥの隆盛》や《バスリ・ケト》との関係では非トークンのクリーチャーが攻撃さえしていればトークンは生み出せるのであり、本体に打点がなくても何の問題もない。
こうしてできあがったのがこちらの「バスリ隆盛」だ!
『バスリ隆盛』
枚数 | カード名(メインボード) |
---|---|
4 | 《血の墓所》 |
4 | 《マナの合流点》 |
4 | 《秘密の中庭》 |
4 | 《感動的な眺望所》 |
4 | 《羽ばたき飛行機械》 |
4 | 《ボーマットの急使》 |
4 | 《ジンジャーブルート》 |
4 | 《知りたがる人形》 |
4 | 《アクロスの英雄、キテオン》 |
4 | 《模範的な造り手》 |
4 | 《軍勢の忠節者》 |
2 | 《マルドゥの影槍》 |
4 | 《地揺すりのケンラ》 |
4 | 《バネ葉の太鼓》 |
4 | 《マルドゥの隆盛》 |
2 | 《バスリ・ケト》 |
1マナクリーチャーの過積載問題を解決するもう一つのカギは、《アクロスの英雄、キテオン》にあった。大量の速攻持ちクリーチャーを採用することで、《アクロスの英雄、キテオン》を2ターン目に変身させるというサブコンセプトを実現しているのだ。
「このデッキはガチですか?」と問われると必死で首を横に振らざるをえないが、一人回しでのグルーヴ感は抜群のデッキなので、暇なときにぜひ試してみてもらいたい。