ファンを捨てない運営
7月になり、ゲーム業界も“夏商戦”に入ったのか、一気に動きが慌ただしくなってきた。期待の新作がドドドドドっと雪崩を打って発売されているのはもちろん、既存のタイトルでもアップデートや新コンテンツ追加のニュースがかまびすしい。
俺がコロコロオンラインでプレイ日記連載をしている『あつまれ どうぶつの森』と『マインクラフト ダンジョンズ』も同様で、前者は海開き、後者は初のダウンロードコンテンツ配信と、非常に大きな動きを見せた。
とはいえ、この2タイトルは発売から半年も経っていないので、どちらかというと“新作”に分類されるゲームであろう。ファンの熱量も高く、メーカーサイドも前のめりで、鉄は熱いうちに打てとばかりに矢継ぎ早に新規の楽しみを追加する時期にあると言える。
「今日から『あつ森』デビューです!!」
って人が、毎日何万人もいるわけだしね。
そんな中。
オリジナル版の登場から8年以上、もっとも新しいNintendo Switch版の発売ですら2年近く前となる“ベテランゲーム”が、なんとこの7月にも元気にアップデートを行っている。
そのタイトルは……『ディアブロ III』。俺がライフワークのひとつとして追いかけている、Blizzard Entertainment社が誇るハクスラの金字塔だ。
前述の通り、オリジナルのPC版は8年以上前に発売されたにも関わらずいまだ世界中に多くのファンを抱えていて、このたびゲームをイチから楽しめる恒例のコンテンツ“シーズン”が、21回目の更新を迎えたのである。
このゲームを愛してやまないファンたちに、少しでも長く、新鮮な気持ちで遊んでもらうために労力を厭わない--。
初代『ディアブロ』から貫かれるこのスタンスが、いまだ多くの熱狂者を惹きつける理由なんだよなあ。
愛されたゲーム
というわけで俺も、春先から3ヵ月ほど『ディアブロ III』はご無沙汰だったのだが、シーズン21が開幕すると聞きフンドシを締め直した。そして、いまや使い込み過ぎて自分の手になりつつあるNintendo Switchを握り締め、固く固く誓ったのである。
「シーズン21は、久しぶりに本気を出す!! トップグループで突っ走るぜ!!!」
そして本当に、現在進行形で走り回っております。
このシーズンというコンテンツは前述した通り、“ゲームをイチから楽しむもの”となっていて、プレイヤーはキャラメイクから始めることになる。
当然、レベルも、スキルも、持ち物も真っ新の状態で、要するに裸の赤ん坊となって敵が跋扈する地獄に乗り込むことになるのである。
といっても、やることは基本的に同じだ。
くり返しくり返しダンジョンに赴き、アイテムを持ち帰って鑑定して、よりよい装備に着替えていく。そのうち、レベルが上がってスキルも覚えるようになるので、そこで初めてアイテムとスキルを紐づけた“ビルド”の構築に進む。
ビルドがハマったときの、言い知れぬ快感……。
それにより、さらに深く、恐ろしいダンジョンに潜入することができるようになる……。
言ってしまえば上記の流れを、『ディアブロ III』は21回も続けていることになる。もちろん、新シーズンに合わせた新しいアイテムやバフも用意されているけど、根幹でやることはまったく同じなのだ。
それでも、ファンは新シーズンに殺到する。
「またレベル1からやるのかよ!!w」
なんて悪態をつきながらも、その顔はだらしないほどニコニコで、
「しかたねえなあ!!w やってやるよ!!w」
と、嬉々としてダンジョンに飛び込むのだ。
これが、完成され尽くしたゲームの運営だ。
『ディアブロ』シリーズは、スマホアプリの『ディアブロ イモータル』、最新作の『ディアブロ IV』の制作が進行中だが、発売がいつになるのかはまったく見えてこない。
それでも……ファンは言うのである。
「しかたねえなあ!!w 『IV』が出るまで……シーズンやりながら待ってるよ!!w」
愛されたゲームは、強い。
大塚 角満
1971年9月17日生まれ。元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。在職中からゲームエッセイを精力的に執筆する“サラリーマン作家”として活動し、2017年に独立。現在、ファミ通Appにて“大塚角満の熱血パズドラ部!”、ゲームエッセイブログ“角満GAMES”など複数の連載をこなしつつ、ゲームのシナリオや世界観設定も担当している。著書に『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』シリーズ、『折れてたまるか!』シリーズなど多数。株式会社アクアミュール代表。
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